「ふふふっ、誰も起きてないわね。」
早朝の神庭家、その静寂の中に、忍び足で廊下を歩く影があった。
神庭家長女、神庭希春である。
その影は、音を立てないようにゆっくりと従弟である神庭幸宏の部屋に迫っている。
「ふふふっ、ゆーちゃんの寝顔を今日もおいしく戴いちゃうわ!」
彼の部屋の前に立ちながら、そんな事をささやいてゆっくりと幸宏の部屋へと入っていく。
そこにはまだ、熟睡中の少年、―――神庭幸宏がいた。
「ああん! ゆーちゃんったらっ! 今日も可愛いすぎよっ!
じゃあ、今日も張り切って…」
身を捩じらせながらそこまで呟いたあと、希春は両手を合わせ一言
「いただいちゃいますっ!」
と囁き未だに眠り続ける少年の唇と、自分の唇を重ね合わせた…。
新婚ならば何ら問題ない、俗にいわれるおはようのちゅーである。
ただしこの二人、別に新婚ではないし、ましてや付き合っているわけでもない。
ただ彼女自身は少年を異常なほど愛しており、彼女的に彼は夫のため万事OKだと思っている。
浅い、触れ合うだけのキス…。
と、思いきやそれで終わらないのが神庭家長女の凄さである。
彼女の行動は常に想像の斜め上を行っている。
こともあろうか希春は、
―――少年の口内に、舌を入れ始めた。
くちゅっ…ちゅくっ…
「んっ…ふっ…」
瞬く間にディープキス。唾液の混ざり合う音と希春自身が発する声だけが早朝の室内に響き渡る。
「ゆーひゃんのひた、ひもひいいよぉー」
などと言っている彼女の目は…、完全に悦に入っていた。
―――ことの始まりは2ヶ月ほど前。
「妻だもの! ゆーちゃんの朝は私から始まるのよっ!」
そう思った彼女は、早朝に幸宏の部屋へと忍び込んでいた。彼を起こすために。
彼の起床一番に、自分の笑顔を見せるために。
しかし、彼の寝顔を見た瞬間、彼女は当初の目的を………忘れた。
気がつくと彼女は、彼の額、頬、首筋…首から上のいたる所にキスをしていた。
それはまるで、動物が自分の所有物であることを主張するかのように。
それから1ヶ月、初めの内こそそれで満足していた彼女であるが、とうとう耐え切れずに彼の唇を、彼が寝ている間に奪ったのである。
彼女自身にとっても初めてのキス。彼のために、誰にも渡さなかったのだ。それを彼に捧げられた。
彼女は、嬉しさのあまり5分ほど失神していた。
そしてその日から、彼女の日課は寝ている彼にキスをすることになった。
―――以上が、今日まで歩いてきた彼女の暴走である。
一度キスをすると、もっと上の刺激を求めてしまう。最終的に彼女は、彼とディープキスを毎日するまでにいたった。
………もちろん、彼の同意は全くないが。
しかし、初めの内こそ眠りながら拒否していた幸宏であるが、
どんな夢を見ているのだろう、最近では割とすんなり彼女の舌を受け入れている。
『あぁっ! この瞬間にゆーちゃんが起きたらどんなことされちゃうのかしらっ!』
静寂の中響く水音の中で、彼女は彼に犯される妄想まで繰り広げていた。
もちろん、いつでも準備OKを見せ付けるために、そして自分が弄り易い様に、彼女が今はいているスカートの下には、何も穿いていない。
そしてゆっくりと、彼女の右手が彼女自身の秘部へと触れた。
くちゅっ―――
「―――っ!」
彼女の秘部は、すでにあふれんばかりの蜜を出している。
その場所を、彼女の指はゆっくりと撫でるようにスライドしていく。
舌を絡ませあいながら、ゆっくりとした指の動きで秘部のいじる彼女。
しかし彼女の指はもどかしく、秘部に入ろうとはしない。ただただ、撫でるように動かしているだけだ。
『だめよっ! だめよ希春! ここはゆーちゃんのものしか入っちゃダメなの!
いくら気持ちよくなりたくても、ここはゆーちゃんのものしか入れないの!』
彼女が自分で自分を言い聞かせる。
彼以外はこの中には入れさせない。たとえ自分の指であろうとも入ってはいけない。
それは彼女が取り決めた、彼のための約束事。
その代わりに、彼女は自身のクリトリスへと、指を伸ばしていく。
「ひゃんっ!」
思わず声が漏れる。慌てて彼の唇に自分の唇を押し付けて声を殺す。
その瞬間、彼がまるで求めるかのように、彼女の舌に自分の舌を絡ませてきた。
「んふっ、んはん…っ」
激しく絡まりあう双方の舌、よく見ると、どうやら彼は自分の唾液を飲んでいるようである。
まるで、水でも飲むかのように喉を上下させながら彼自身と、そして自分の唾液が混ざり合ったものを飲んでいる彼、それを見て彼女は感極まっていた。
『ゆーちゃんが私の唾液飲んでるっ…! 私の唾液、おいしそうに飲んでるよぅ…。
なんか私…おかしくなっちゃう…っ!』
「んっ! ゆーひゃ! なんかきちゃうっ…」
「―――ッッッ!」
………そして彼女は、彼が自分の唾液を飲んでいると言う精神的な快楽と、自分の秘部を弄って得られる肉体的な快楽から、初めての絶頂を迎えた。
「ゆーちゃん、おいしい? 私のアレ、おいしいの?」
事が終わった後、悦に浸りながら、自分の右手人差し指と、中指を眠っている彼にしゃぶらせている希春。
その指には、先ほどまで弄っていた自分の愛液がこれでもかと言うほどに付いている。
ある程度彼に指をなめさせた後、彼女はゆっくりと立ち上がると、何事もなかったかのように忍び足で彼の部屋を出て行く。
『ふふふっ、今日は妹たちが全員いないし、あの作戦を使うときがようやく来たわね!!』
などと考えながら……。
―――そして彼、神庭幸宏が、朝起きると口の周りに大量の唾液が付いているのがなぜなのか悩んでいるのは、また別のお話。