静かな夜だった。  
月明かりが煌々と、夜の宮殿を照らしている。  
美朱はぼんやりと、部屋の小窓からそれを見ていた。   
…痛む左腕。  
愛しい人、鬼宿に打ち砕かれた心と身体・・・。  
大粒の涙が、ポロポロと頬に零れる。  
さよならって、言ったのに…  
 
「…美朱。具合はどうだ?」  
星宿の声。  
そっと、美朱の頬を撫でる。  
「大丈夫。心配かけて、ごめんね。…ありがとう」  
美朱は懸命に笑顔を作り、涙を堪えていた。  
「美朱…」  
そんな美朱が痛々しくて、愛しくて、星宿は美朱を抱きしめた。  
「今は…鬼宿の事が忘れられなくても、私がきっと忘れさせてみせる」  
「星宿…ッ…」  
首筋に、星宿の熱い唇がつたう。  
重なり合う体からは、互いの熱い鼓動が伝わってくる。  
 
唇を幾度も幾度も交わしながら、二人は存在を確かめ合うように  
強く抱き合った。  
「…嫌ではないのか、美朱…」  
「…忘れさせて。鬼宿の事、全部…お願い」  
 

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