そう、すべては美朱の食欲から始まる。
宮中の食材を食い荒らす美朱を折檻するため、星宿は美朱を捕らえ柱に縛り付けるように部下に命じた。
静寂の中に聞こえるのは縄の擦れる音、美朱の微かな吐息…
星宿「美朱、そなたはいささかお痛が過ぎたようだな」
美朱は猿轡からうめき声を出すことで精一杯のようだ。
星宿の手には六条鞭が握られている。
すっと腕を上げ、鞭を振り下ろす。石床に乾いた音が響く
「今宵の六条鞭はそなたの苦悶の姿が所望のようだ」
星宿は虜囚を責め立てる刑吏の様に、美朱の耳元で囁いた。
星宿の鞭がうなりをあげて、美朱の肢体を責める。
制服は切り裂かれ、露になった白磁のような瑞々しい肌には、艶かしく淫らな傷跡がまたひとつ、
またひとつと増えてゆく。
美朱「んんぐっ!んあんんっ!(星宿!止めてっ!)」
毎日宮中の厨房を食い荒らすんじゃなかった・・・
せめて二日に一回にしておくんだったわ
薄れゆく意識。美朱は自省と後悔が渦巻く中、救いを求めた。
だから、近寄る足音は美朱にとって福音にも似たるものであった。
星宿「むっ!誰ぞおるのか?!姿を表せい!」
星宿の誰何に応じたのは、何者ではなく七星士がひとり、翼宿であった。
翼宿「なんや?星宿はんやんけ、どないしたんや・・って、美朱ー!!」
驚愕の面持ちで近寄り、紅南国皇帝に詰問の表情を浮かべる。
星宿「…という訳で、美朱に宮中の礼法を身をもって学んで頂いてる」
星宿は、書類仕事を処理する官吏の様に、淡々と語った。
「そういえば俺も、美朱におやつの桃饅頭食われとるしのー」
翼宿は愛用の鉄扇を振り回しながら、加虐の笑みを浮かべる。
「しばいたろか?われぇっ!」
鉄扇の放つ、冷ややかな鋼鉄の煌きが一閃したのはそのときであった。