「その本、面白い?」  
 
ベッドの上に寝転んだまま本を読んでいる瀬伊の隣にむぎが腰を下ろす。  
本の中身を覗き込むように少しだけ体勢を崩すと、むぎが呟いた。  
 
「ん~・・・・・・」  
「瀬伊くん?」  
「・・・・・・・・・・・・」  
「瀬伊くん?聞いてる?」  
「ん~・・・・・・・・・」  
 
本をペラペラと捲りながらも集中しているらしい瀬伊は生返事だ。  
せっかく聞いているのだから、返事くらいしてくれてもいいものを。  
 
「せ~~い~~~くん!」  
 
わ!と瀬伊に覆い被さるような形でむぎが瀬伊の本を取り上げた。  
突然の声と動作に瀬伊の目が見開かれる。  
 
「びっくりしたなぁ。いきなり何するのさ、すず」  
「さっきから声かけてるのに瀬伊くんが生返事ばかりで無視するからだよ!」  
「生返事・・・そうだった?」  
「そーだった!瀬伊くんって何度も読んだのに『ん~』とか言ってた!だいたい・・・」  
「あ~ハイハイ。ごめんなさい。それより・・・中々大胆だね、すず♪」  
「え・・・・・。」  
 
ちっとも悪いとは思っていない楽しそうな笑顔で瀬伊が言う。  
その様子に怯んでむぎは改めて自分と瀬伊の状態を振り返る。  
瀬伊のベッドの上に自分と瀬伊。  
しかも本を閉じるべく何も考えずに行動した結果として、自分は瀬伊に覆い被さるように  
になってしまっているのだ。  
これでは瀬伊に大胆と言われても仕方がない。  
 
「ご、ごめん!あたし・・・!」  
「だ~めだよ」  
 
慌てて飛びおきようとしたむぎの腕を瀬伊がきつくひっぱった。  
この線の細いピアニストは、意外なところで男の子を発揮するのだ。  
引っ張られたせいでバランスを欠いたむぎの身体は簡単にベッドの上に倒れこむ。  
 
「せっかく君がこんな状態でいるのに・・・ね?」  
「こんな状態って・・・!」  
「読んでた本は君が閉じちゃったし。責任とってくれるよね」  
 
妖艶に微笑む妖精の口がそう告げた。  
両腕を押さえつけられて上半身の自由を拘束される。  
瀬伊の綺麗な顔に、男を見た気がして体温が上昇していくのが自分でもわかった。  
 
「むぎは・・・暖かいよね」  
「・・・・・・・・・瀬・・・伊く」  
 
首筋に瀬伊の唇が落とされる。  
冷たい感覚に、むぎの身体が少しだけ反応を見せる。  
服と下着を捲し上げて、瀬伊の繊細な指が服の中に侵入して柔らかいふくらみに触れる。  
 
「・・・ぁん・・・っ・・・」  
 
瀬伊の指がむぎの胸をもみくだしていく。  
瀬伊の冷たい指先に自分の身体の温度の差を意識してしまう。  
首筋から降りてきた唇がむぎの身体に小さな華を落としていく。  
繰り返し与えられる刺激と、自分の名前を呼ぶ甘い声に何も考えられなくなる。  
 
「むぎ、かわいい」  
「・・・瀬伊くんのせいじゃない・・・馬鹿・・・」  
「フフ、そうだね」  
「・・・っ・・・ぁあん・・・!」  
 
自らの唇でむぎの唇を瀬伊が塞ぐ。  
瀬伊の手が、スカートの中に進入し下着の上から割れ目をなぞる。  
 
「邪魔だからとっちゃっていいよね」  
「・・・そ・・・いうこと・・・言わないで!」  
「フフ、ごめんね」  
 
熱で潤んだ瞳でむぎが精一杯の強がりを言う。  
そんな目で睨まれても、瀬伊の欲情を煽るだけだ。  
言葉だけで謝り、スルリと下着を下ろしてしまう。  
 
「・・・もう濡れてるよ?」  
「・・・・・・は・・・んっ・・・せいく、や・・・っ」  
 
指先を割れ目に押し当てゆっくりとなで上げると、瀬伊の指を溢れ始めた  
蜜が濡らす。瀬伊の指の動きに応えるようにむぎの身体がピクリと動いた。  
 
「・・・ぁん・・・!」  
 
こぼれる自分の吐息が恥ずかしくて、むぎは声を押し殺す。  
 
「声、殺さないでよ。可愛いのに」  
 
耳元で囁くと、瀬伊は指の動きを早めた。  
 
痛いくらいの刺激に耐え切れず、むぎの腿が軽く痙攣し身体がしなる。  
 
「もっとむぎの声聴きたいな」  
「せいく・・・!や、だ・・・め・・・ぁあん・・・っ!」  
 
むぎの右足を折り曲げ、少しだけ浮かすと、瀬伊が秘場に口付ける。  
ザラリとした舌の感触に柔らかい膜を侵されていく。  
 
「・・・も・・・だ・・・ぁあん・・・や・・・ぁ・・・」  
「もう、だめ?」  
 
ペロリと指先を舐めて瀬伊が悪戯っぽく言う。  
答える事ができずに、むぎはただ頷いた。  
 
「・・・今日はやけに素直だね。でも僕もそろそろ限界みたい。こんな色っぽいむぎを見せられたらね?」  
「瀬伊く・・・ん・・・ぁあん・・・!」  
「むぎ・・・・・・・っ・・・」  
 
「はっ・・・ぁん・・・!」  
 
ゆっくりと、むぎの中に瀬伊が入ってくる。  
熱いのか、もう自分でも感覚がわからない。  
ただ、抗い難い波が押し寄せる。  
瀬伊の顔を見てみたいと思ったけれど、その余裕すらなかった。  
 
 
 
「・・・瀬伊くんのエッチ・・・」  
「え~?そう?」  
「絶対そう!あんな・・・」  
「・・・あんな?」  
「・・・・・・・・・・・なんでもないですっ!」  
 
シーツをひきよせてプイ、とむぎがそっぽを向く。  
 
「むぎが可愛すぎるからだよ」  
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」  
 
どうやら、むぎの機嫌を完全に損ねてしまったらしいと気付いて瀬伊が苦笑をもらす。  
 
「そんなに怒らないでよ。さっき読んでた本の内容教えてあげるから。  
面白いかどうか気になってたんだよね?」  
「なっ・・・!さっき話聞いてたの?!」  
「当たり前じゃない。僕が君の話を無視するなんて事ないよ?」  
「じゃあなんでさっき無視・・・!」  
「君がどうするかな~って思ってさ」  
「せ、瀬伊くんの馬鹿---------!!」  
「すず、真っ赤。大好きだよ」  
 
 
結局は、瀬伊の思い通りなのかもしれない。  
 
 
END  
 

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