「うがぁあああああああ!!!」
部屋に戻るなり天照の衣装をかなぐり捨てながら、アイシャ・ゴーダンテ王女は体中を掻き毟った。
「ど、どうなさいました!?マスター!」
度肝を抜かれたアレクトーの声が耳に届かないのか?体中に蕁麻疹でも発疹したかの様にアイシャはブラウスを引きちぎるように脱ぎ捨てると、パールホワイトの下着姿のままに部屋中をねり歩く。
「キ、キモイッ キモ過ぎるッ!!!」
「ええっ!?お加減が悪いのですか!?」
主人が床に放り出した、どれもこれも馬鹿らしい位に高価な着衣や装飾品を健気に拾い集めながらアレクトーはアイシャの後を追いかける。
「ブタっブタに・・・ブタがぁああ!」
「はぁ?豚さん・・・!? あの・・・夕べのパイン・セオとカー・コー・トーがいけなかったのでしょうか?お腹、下されました?」
「あれはうまかった!」
そう言いながらバスルームに直行する王女。
「アレクトー!飲み物用意しといてよね!」
そう言い残し、王女はバスルームの戸を勢いよく閉めた。
「・・・」
随分長い時間シャワーを浴びていたというのにアイシャの顔は冴えなかった。
ホクホクとバスローブの襟元から軽く湯気が立っている。
「マスター・・・身体ちゃんと拭いてないでしょ? あ、髪も半乾き!ダメですよ、変なクセがついちゃいますよ!」
「うっさいわねぇ・・・やってよ、アレクトー」
不機嫌な騎士はパートナーにぶつぶつ言いながら銀のシガレットケースから細巻きのモンテクリフトを一本抜き出すと火を付けた。
「飲み物は!? 冷たい奴!それとお摘まみっ」
はぁと溜息を付きながらアレクトーはそれでもキッチンから用意していた盆を持ってきた。
「ケストリッツァーシュヴァルツです。冷やしておいたビア、これだけで・・・お摘まみ、ヴルストとカルトッフェルンザラートとザワークラウトしかありませんよ?」
アレクトーの言葉が終わらないうちに王女様は冷えた小瓶からグラスに黒色の液体を乱暴に注ぐと、こぼれる泡もそのままに一息に飲み干した。
「いったいどうなさったのですか、マスター?」
小皿に用意したお摘まみを盛りつけながらアレクトーは主人に尋ねた。
「・・・ナデナデされた・・・」
「? 頭をですか?」
「違うっ!! 此処よココ!」
ダンっと王女は左足をテーブルに上げると、内腿を指差した。
「ココを撫でられたのよ!イッヤらしく・・・あの豚やろ〜」
「あ、あの・・・」
「あ? 豚ってねユーバーの事よユーバー!あんにゃろ〜ブッタ斬ってやろうかと思ったんだけど」
「あの、マスタ・・・」
「ヌーソードの奴が邪魔してぇ ああ、もう!触られ損!?アタシって触られ損!コレ・・・ム・カ・ツ・ク〜!!」
二杯目を手酌で注いで勢いよく呷る。
「・・・ね、ね、アレクトー・・・どっかにバスター砲落ちてない?誰か持ってないかな?」
目つきが異様だ。アイシャ・ゴーダンテ王女は黒ビールより怒りに酔っていた。
「お、お披露目中のこの国にそんな物騒なものなんて・・・」
いや、実際は持ち込んでいる人物をアレクトーは知っていた。
『バスター砲装着時のバランスもチェックしなきゃ!』ともっともらしい事を言いながら、意気揚々と新しいMHにバスターランチャーを括り付けてこの星に出発した人物を、アレクトーは知っていた。
しかしである。それよりも、彼女はマスターに注意しなければならない事があった。
「マスター、よろしいですか?」
「あによ」
「その、み、見えてます・・・」
「あ?」
お摘まみを盛るために、テーブルの前に腰を下ろしていたアレクトーから片足を上げた王女の一番大事なところが丸見えだったのである。
「何がよ?」
「・・・え〜・・・」
全く気がついていないのか、アイシャは『何言ってんだコイツ』みたいな顔をしてアレクトーを見下ろしている。
「ああ、そんな事より・・・まだ感触が残ってるわ! うう・・・」
ガジガジと爪を立てて"ナデナデ"された部分を引っかく王女の様は何かに憑かれているようだ。
「あっ、ダメですよ!傷ついちゃいますよ!」
慌てて主人の手を押さえたアレクトーの手に、もう片方のアイシャの手が添えられた。
「舐めて」
「はい?」
「どんなに洗ってもアイツの脂ぎった手の感触が消えないのよ・・・」
「え? だからって・・・私・・・ですか?」
「そうよ!アレクトーに舐めてもらったら消えるかも知れない!」
「な、舐めるんですか!? あのナデナデなら・・・」
「ナデナデじゃ嫌!ナメナメ!!」
「ナメナメ・・・」
「アレクトーは私が苦しんでるのに助けてくれないって言うの!?」
「え〜?」
もはや聞き分けの無い子供の言動だ。これでルーマー王国国主にして元老院議長が務まるのだからAKDも平和である。
「ほら・・・」
ぐいっと手を引かれてアレクトーの身体はテーブルの上に引き出される。
「・・・」
目の前には真っ白な肌が自分の舌を待っている。
「マスター・・・しなきゃ駄目?」
「ダメ」
もうこれは何を言っても聞かないな、とアレクトーは観念した。
そっと舌を出し、顔を寄せる。
「ん」
ピクッとマスターの身体が震える。
両手が優しく自分の頭を抱え込み、腿に押し付ける。
「ここも・・・そっちも・・・きれいにして・・・」
アイシャに導かれるままにファティマは目を閉じ、一生懸命に騎士の太ももを清めていく。
〜んん 気持ちイイ 〜
人工生命体とは思えぬ舌の滑らかさ!
〜バランシェ博士、天才ぃ〜
そんな事を思いながら、アイシャは腕を動かした。
「あ・・・」
アレクトーが奉仕を中止し、不安げな表情で主を見上げた。
アイシャは自分の頭を腿の付け根に動かしている。
「あの・・・」
「続けなさい・・・」
「・・・・・・ここまで、触られたのですか?」
「・・・」
返事は無言。しかし、腕だけは自分の頭を動かす。そこに・・・
頬に毛の感触がある。いつの間にか鼻を突く熱い臭い。
「・・・」
「・・・」
両手が頭から離れた。
「して・・・」
汗ばむ肌、舌を通じて伝わる興奮、そして
顔のすぐ横で、うっすらと蜜にぬれるソコ
アレクトーの舌が動いた。奥へ・・・
二人きりの夜が始まる。
お終い