「でも…違うんだ」  
翔はよく解らないと言う顔で俺をみた。  
でもこれ以上は翔にも話す事が出来ない。本田さんをこれ以上傷つけたく無いから…。  
 
 
 
あの日、風呂からあがると、紫呉と夾は早々と寝てしまい居間には誰もいなかった。  
キッチンを見ると本田さんは夕食の片付けを終わろうとしている。  
 
「本田さん、ちょっと話があるんだけど良いかな?」  
「はいっ。あ、でも、洗い物を終わらせてしまいたいので、  
お部屋で待っててもらえますか」  
 
申し訳なさそうに答える彼女に精一杯の笑顔で「解った」と返事をした。  
謝るのは俺の方なのに――。  
 
部屋で待っている時間はそう長くはなく、彼女はやって来た。  
 
「遅くなってすいません」  
 
謝らないで。悪いのは俺だから――。  
 
彼女を部屋に通すなり、抱き寄せ唇を重ねる。  
甘く切ない罪の香り。  
彼女は求めもせず拒否もしなかった。  
ただ何が起きたのか解らない。  
そんな表情だった。  
 
「由希…くん…?」  
「何?本田さん?」  
茫然としている彼女を抱き上げるのは容易で、軽がるとベッドまで運ぶ。  
「少し…声を小さくしてくれるかな…?紫呉たちに気付かれたくないでしょ?」  
彼女の顔色が変わった。  
「ゆ、由希くんっ!ダメですよ…こ、こんな……」  
ベッドから起き上がろうとする彼女に覆い被さり、口付けを交わした。  
彼女の心を開くようにゆっくりと舌を這わす。  
「…ぁ…っ…」  
吐息が漏れた瞬間、強引に舌を入れ彼女の口腔内に走らせた。  
時には彼女の舌を吸い、時には彼女の唇を咬んだ。  
唾液が交わり一つになるのが解る。  
 
大丈夫、俺はちゃんと彼女を女性として見れているじゃないか――  
 
唇を離しても彼女の口からは吐息しか漏れてこなかった。  
 
 

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