紫呉は草摩本家に来ていた。慊人が高熱をだしたというので見舞いに来たのだ。  
慊人の部屋へ行くと、布団に横たわる慊人と畳に散乱した料理やお膳が目に入った。  
またいつもの癇癪をおこしたのだろう。紫呉は嘆息した。  
「だめじゃないですか。ちゃんと食べないと体に毒ですよ」  
答えない慊人。紫呉が片付け始めると  
「・・・・んでこないんだ」  
「はい?」  
慊人は紫呉を振り向きざま  
「なんでもっと早くこなかったのかと訊いてるんだ!」  
「ああ、遅くなってしまってすみませんね。締め切り前でホテルに缶詰にされてたんですよ」  
「そんなのお前の都合だろ!犬は犬らしく主が呼んだらすぐに来いよ!」と怒鳴った。  
まだ熱が下がってないのだろう。いつもは蒼白と言っていいほど血の気のない顔が火照っている。  
整った顔立ちは一見男とも女ともとれる。  
紫呉は微笑して  
「今度からはもっと早く来ますよ。もしかして僕が来なくてさびしかったんですか?」と尋ねた。  
「はっ、ふざけるな!誰がお前なんかを!思い上がった口を聞くな!」  
激昂した口調とは裏腹に、紫呉を睨みつける目は焦点をむすばず意識も朦朧としているようだ。  
「そんなに気が立ったら余計熱があがりますよ。落ち着いてください」  
「うるさい!とっとと出てい・・・・」  
言いかけた慊人の体がぐらりとかしぐ。  
受け止める紫呉。  
慊人を抱きかかえる格好になった紫呉は、慊人の寝乱れてはだけた胸元から  
本来ならあるはずのないものを見た。  
草摩家や十二支の者でもごく少数しか知らない秘密。  
男だとされている草摩家の当主の本当の性を、そのふくらみは示していた。  
そして、その肌に残る微かな赤い斑点を認めた紫呉は、すっと目を細くし、表情が消えた。  
 
「大丈夫ですか。慊人さん」  
「僕にさわるな!」  
殴ろうと振り上げた手を、紫呉は逆につかみ返す。  
そしてつかんだ手首ごと慊人を布団へ押し倒した。  
「何するんだ!放せよっ!」  
慊人は紫呉からのがれようともがくが、体格差がありすぎるため紫呉はぴくりとも揺らがない。  
わめく慊人の言葉を紫呉はおのれの口で封じた。  
「う・・・ん・・・むぐっ」  
濃厚なディープキス。  
舌と舌の粘膜がたてる淫猥な音が、静まり返った部屋に響く。  
糸を引きながら離した唇を今度は慊人の耳におしあて、低い声で囁きかける。  
「紅野とは、どうだった?」  
目を見開く慊人。  
「紅野は気持ちよかった?何度あいつのを中に入れた?どんな声で喘いだの?」  
たたみかけるように問いながら、慊人の耳朶を甘噛みし、胸元に手を滑り込ませる。  
慊人の上気した肌は汗ばんでしっとりしている。  
「や・・・やめろ・・・お前・・・・」  
弱々しく言う慊人。  
「僕も知りたいんだ。」  
紫呉は上から慊人を見下ろし氷のような微笑とともに言った。  
普段飄々としてその真意をうかがいしれない男の目には、狂おしいほどの愛情と憎悪が浮かんでいた。  
 
侵入した男の手は柔らかい乳房を蹂躙する。  
薄い色の乳首を口に含むと、女の背はしなった。  
「んっ!・・・あっ・・・やぁっ」  
抑えきれない喘ぎ声が慊人の口から漏れる。  
「感じやすいんだね。」  
乳首をねぶりながら紫呉は慊人の帯紐をほどく  
「やっあっ・・・見るな・・・・」  
前を開こうとする手を慊人は弱々しく拒絶する。  
「他の奴にはたくさんみせたんだろう」  
そう言い放ち着物が開かれ、女の体のすべてが外気にさらされる。  
いつもの男装をしている慊人からは考えられないような華奢な腰だ。  
繊細な陰毛が大切な箇所を覆っている。  
それは成熟した女というよりは、成長の止まった少女のような身体だった。  
「とてもきれいだよ・・・かみさま」  
紫呉は自分も着流しを脱ぎ、閉じられてる足を押し広げた。  
「もうこんなに濡れてるよ。淫乱なひとだ。」  
「ち・・・ちがっ・・・」  
紫呉は足の間に顔をうずめ、透明な蜜で満たされた裂け目の最も敏感な箇所を舌先で転がす  
「あんっ」  
慊人の身体は海老反りになる。  
「はっあっあっあっうぅっ・・・」  
声は次第に大きくなり、膨張した突起を紫呉に押し付けるように腰を浮かす  
「やっあっあっあっ・・・ああっ!」  
膣がひくひくと痙攣し慊人は絶頂に至った。  
 
息の荒くなった慊人は、潤んだ瞳で  
「いっいれて・・・アレをいれてぇ・・・」と懇願した。  
「アレ?なあにそれ」  
ばつが悪そうに慊人は目をそらす。  
「お前の・・・アレだよ・・・」  
「あれじゃわからないな」  
「その・・・・・・・・・・・・・・・・おちんちん」  
涙目になって恥ずかしそうに言った慊人を、紫呉はあざ笑うかのように  
「どこでそんな下品なものいいを覚えたの」と尋ねた  
「それはっ・・・・・・・お前のせいだろっ・・・・」  
「そんなにほしいならいれてあげるよ」  
言いざま、紫呉は己の怒張した陰茎を一気に慊人の奥まで挿入した。  
「んっ・・・ふぐっ・・・・い、痛い・・・」  
紫呉は眉をしかめる。処女特有の圧迫感こそなかったものの、慊人の中は狭かった。  
「動けばゆるくなるよ」  
紫呉は激しく腰を動かしはじめた  
 
最初はきつく締め付けていた膣も、突くごとにすべらかに紫呉を通すようになった。  
苦悶に歪んでいた慊人の表情は、徐々に恍惚としたものに変わっていく。  
「んふぅぅっあっあっはぁうっ・・・」  
どうやら慊人は奥の恥骨にあたる部分がイイようだ。  
下から上へ突きあげるとそれと同じリズムで慊人は哭いた  
「あっんっ・・・くっふぅぅぅっ」  
慊人は紫呉の広い背中にがりがりと爪を立てる  
目をつぶり顔を紅潮させ快楽に没頭しているさまは、  
普段の人形のような様子からは想像もつかないほど淫らでで美しい姿だった。  
「あっあっあっ・・・・ああっ!」  
やがて慊人は絶頂に達し、その少し後に紫呉も射精した  
 
ぐったりとする慊人。どうやら失神してしまったようだ。  
そのまま眠ってしまった慊人に紫呉は少々物足りなさを感じたが起こすのはやめた。  
服を着せてやり、布団をかける。  
誰も聞いていないのを承知で、紫呉は語りかける。  
 
 
誰よりも君を思う。それこそが揺るぎない真実────  
 
 
静かに愛するひとに口づけし、紫呉は部屋を出ていった  
 

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