「透くん。透くん。この子すっごく可愛いよ」  
「本当ですね。可愛いです。」  
今、透と神楽は街にくり出していた。  
夾も由貴も紫呉も用事だかで出掛けるというのを聞いて、神楽が透の元を訪れ、  
暇つぶしに街へ行こうという結論に達したのだった。  
傍目から見ればただの女の子同士のお買い物。彼女2人にもそれ以外に街に来た理由はない。  
そして、ショーウインドウ越しに見えるぬいぐるみに2人は魅入っていた。  
「私、この子ほしい〜。」  
茶色のくまのぬいぐるみと、黄色のくまのぬいぐるみ、  
2つとも可愛らしくそこにある。  
「でも・・・ちょっとお値段が。」  
街中のショーウインドウに飾られているそれは、とてもじゃないが  
2人が出せるような金額ではない。  
勿論、ただ見て回るだけというのも1つの楽しみであるが。  
「・・・う〜ん、さすがにこの金額は・・・ちょっとね。」  
何せ0が5つもついている。2人は諦めながらも、様々な所を見て回っていた。  
 
「ね、透くん。あのお店何かな?」  
しばらく歩いて、足がそろそろ痛くなりかけてきた頃、神楽は1つの店を指した。  
「ピンクの・・・可愛らしいお店ですね。何でしょうかね?」  
ピンクはピンクでも、可愛らしいほんわかしたピンクではなく、  
濃い色をした、怪しい色合いであったが、  
2人は何もわかっていない様子でその店へと入っていった。  
 
 
「何か暗いね・・・。」  
店内は薄暗く、怪しい雰囲気が辺りを包んでいる。  
棚が高く聳え立っているが、棚の中には何一つ商品が並んでいない。  
「すみませーん・・・?」  
透が奥に向かって声を上げるが、店員もいそうにない。  
「お店、閉まってるのかな?商品何もないよ?」  
「・・・そうかもしれませんね。しかたないからでますか?」  
少し肩を落としながら入ってきた扉から出ようとした、すると、  
「お嬢さん達はここにようかい?」  
年輩の男が2人の前に立ちふさがっていた。  
『きゃ――――!!!』  
2人は声を揃えて叫んだ。何せ、後ろを振り返ったら全然知らない人が立っていたのだから。  
気配もなく。透はふと、親友を思い出した。  
「す、すみません!と、と、突然声を上げたりして・・・!」  
「いやいや、私の方こそ突然声をかけて悪かったね・・・」  
年輩の男はモップをもってこの空間を片付けている様子であった。  
「えっと、その・・・ここは・・・」  
「ああ、すまないね。ココはもう移店するからもうやっていないんだよ。」  
陽気に笑うその人を見て、透と神楽はほっとする。  
「そうだったんですか・・・あの、ここは一体何屋さんなんですか?」  
看板は普通(だと思っている)のに、中は暗くて怪しい雰囲気。  
きっと凄いアイテムを売っていたのだろう。と考えて2人の目は光輝いている。  
「うーん・・・そうだ!折角来てくれたお嬢さん達に売れ残り品で良かったらあげるよ。」  
ちょっと待っていて。と、おじさんは店内の奥へと行ってしまった。  
 
1分も経たないうちにおじさんはすぐに2人の元へ戻ってきた。  
灰色の箱を抱えて。  
「何ですか、これは?」  
持っているのは、間違いなく灰色の箱。  
「問題は中身さ。お嬢さん達はこれが欲しくて来たんじゃないのかい?」  
灰色の箱の中には、何か玩具のような物が沢山入っている。  
「えっと・・・これは?」  
「こっちはちょっと大きめかな。まぁ、それは人の好みだから自由に選んで使ってね。」  
人の良さそうなおじさんは、大量の玩具が入った箱を透に渡した。  
「これは無害、無臭なタイプだから安全だよ。」  
よく分からない、何か透明の液体のような物を取り出しておじさんは1つ1つ説明してくれる。  
けれども、透と神楽にはその玩具の山や謎の液体などの正体は分からなかった。  
だが、おじさんがあまりにも熱心に説明してくれるため、2人はそちらに耳を傾けていた。  
「まぁ、うちの所は初心者向けにマニュアルみたいなのあげてるからお嬢さん達にも1冊あげよう。」  
ピンク色の、小さな冊子が入っている。  
「え、あ・・・ありがとうございます。」  
「いやいや!お嬢さん達みたいな可愛い子がそれを使ってくれるんなら、おじさんも嬉しいよ。」  
無料でこんなに玩具を貰って良いのだろうかと。少し疑問に思った2人だが、  
おじさんがあまりにも嬉しそうにしているため、それを受け取った。  
「悪いけど、そろそろ運送業者が来るんだ。新しい店の方にも来てね。」  
そして、半ば追い出されるように、2人は店の前で呆然と立ち尽くしていた。  
「・・・・・これ、何でしょうね?」  
「とりあえず、家に帰ってみてみましょう。沢山あるし。」  
2人は家へと逆戻りしていった。  
 
 
「これ、どうやって使うんでしょうか?」  
帰った後、2人は箱の中身を全て出してみた。  
中には大、中、小の太くて長い玩具が沢山あり、  
玩具だけではなく何かの小瓶やら錠剤っぽいのやら色々と入っている。  
「そういえば、マニュアルがあるって言ってたわよね。」  
マニュアルと称されていたピンク色の本が机の片隅にあった。  
「えっと・・・・・・この玩具は大人の玩具・・・?」  
「形が変だと思ったら、これは大人の玩具なんですね?」  
何か、激しく間違えている2人だが、それにも気付かず  
神楽はマニュアルを読みあげる。  
「液体は、挿入時のローションです・・・ローションって何?」  
「私も分かりません。それに、何を挿入するのでしょうか?」  
マニュアルの説明書を読んでもイマイチよく分かっていない。  
「これは…小型のバイブで、入り口が狭い人はこれで!・・・だって、透くん何のことか分かる?」  
透と神楽は性に関することは小学生並みに無知であった。  
 
しばしマニュアルのよく分からない説明書きと  
玩具の使い方に格闘していると、  
『ピンポーン』  
家のチャイムが鳴った。  
もし夾、由貴、紫呉の誰かが帰って来たのならば  
チャイムなど鳴らさずに鍵で家に入って来るだろう。  
来客かと、透は玄関へと向かった。  
「あ・・・っ」  
扉を開くと、そこには杞紗が立っていた。  
小さく揺れる金髪と、彼女の白い肌と、白いワンピースが可愛らしさを引き立てていた。  
「お姉ちゃん・・・っ、あの・・・これ・・・っ」  
顔を赤らめながら、透の前に持っていたバスケットを差し出す。  
「ケーキ、作ったの・・・だから・・・」  
「杞紗さん!」  
透は杞紗をぎゅっと抱きしめる。この2人の突然の抱擁は今に始まったことではないが、  
杞紗のバスケットが透との抱擁によって変形されているということに気付く気配はない。  
 
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい!せっかく杞紗さんが作ってくれた物を…!!」  
バスケットの形が変形したことにより、当然、中に入っていたケーキも見事に変形していた。  
そしてそれに気付いた透はこの通り、ひたすら杞紗に謝っていた。  
「いいよ、まだ食べれるし。」  
皿の上に出されたショートケーキをフォークで突っつきながら杞紗は答える。  
「うん。これ美味しい!この大きさが違うつぶれたケーキが可愛い!」  
神楽は杞紗が作ったケーキを頬張りながら笑う。  
だが、それはフォローをしているのかしていないのか、少々疑問が残る。  
「あのね…ケーキの大きさが違うのは、いちごの大きさも違うの…」  
数あるケーキの中でも、大きさが違うケーキはいちごの大きさもそれぞれ違っていた。  
「・・・・大きさ・・・・・・・・・・あっ!」  
突然透は大きな声を上げた。  
 
「そうです!大きさです!神楽さん、大きさですよ!!あの小さい玩具は杞紗さんサイズなんです!!」  
わーわーっと嬉しそうに透は立ち上がり、神楽の手をぎゅっと握る。  
「・・・・・あっ!」  
「?」  
神楽も透の考えを悟ったかのように握られた手を握り返す。  
だが、話題の中心人物である杞紗は、突然何が自分のサイズなのか全く分からなかった。  
「杞紗さん!協力して下さい!貴方が協力してくれると、あの遊び方が分かるんです!!」  
もはや本田透は、今目の前にある物事に夢中であろう。  
透だけではなく神楽も、一緒になって目をキラキラと光らせているが。  
「協力・・・?」  
「はい!このマニュアルの話では、とっても気持ち良くて素晴らしいことだそうです!」  
杞紗は透と神楽の事情を理解していないが、  
気持ち良くて素晴らしいこと、な上に、  
透のお願いなら、と、  
「うん。良いよ・・・」  
承知してしまった。  
 
「でも、このサイズが杞紗さんのは分かりましたが、どうやって使えば良いんでしょう?」  
大人の玩具を力一杯握り締めながら、透はマニュアルを読んでいる神楽に尋ねた。  
「うーん・・・『童貞にも分かるステップ1、2、3』っていうところがあるんだけど。」  
「どーてい・・・?」  
「どーていって何でしょう?」  
知らない用語がありすぎて、3人共しばし黙するが、  
すぐに気をとりなおしてマニュアルを読み上げる神楽の声に2人は耳を傾けた。  
「えっと、まず愛撫?をする際に、相手の服を脱がせます・・・」  
3人はえっ!?と、驚きながら顔を見合わせた。  
「でも、服を半分脱ぐだけでも良いです。だって…どうする?」  
「じゃんけんで、全部脱ぐ人、半分脱ぐ人、脱がない人を決めるのはどうですか?」  
自分の全ての運をかけて行われる、じゃんけん。  
これは昔からずっと行われてきた勝負方法であり、  
もっとも短い時間で、かつ簡単に決着をつけれる方法であった。  
「では・・・・・・・・いきますよ?」  
「ええ。」  
「う、うん・・・。」  
出さなきゃ負けよ、最初はぐーじゃんけん・・・  
よく見られる光景であるが、彼女達は真剣であった。  
 
「や、やりました!!」  
「あっ・・・・・・透君、じゃんけん強いね〜」  
「負けちゃった・・・」  
勝敗は透、神楽、杞紗の順で決着がつき、  
透は服脱がず、神楽は半分脱ぐ、杞紗は全部脱ぐという結果に終わった。  
「とりあえず私と杞紗ちゃんは脱がなきゃ。」  
「は、恥ずかしい・・・」  
杞紗はまだ脱いでこそないが、その顔は真赤に染まっている。  
「恥ずかしいと考えると、もっと恥ずかしくなっちゃうよ〜」  
神楽は笑っているが頬が少し赤い。  
「さ、さ、早く脱いで次のステップに行ってみましょう!」  
わくわくと、嬉しそうに笑いながら透はマニュアルのページを捲った。  
「そうよね。さ、早くさっちゃんも脱ごう?最初は恥ずかしいかもしれないけど、きっと楽しいよ!」  
しばし思い悩んでいた杞紗だったが、  
ようやく決心をすると白いワンピースのスカートの裾を自ら捲った。  
杞紗を見た神楽も自分の服のボタンを丁寧に外して行く。  
透は脱ぎ始めた2人をドキドキしながら見守っていた。  
「(こんなに、お二方の着替えを見てドキドキしてしまいます…何ででしょうか?)」  
杞紗は緊張して少し悶えながらもワンピースのファスナーを下ろし、一気に脱ぐ。  
白のワンピースと同じ白のスポーツブラと白いパンツがやたら鮮明に見えた。  
「(やっぱり、私、何か変です・・・)」  
神楽の服のボタンが全て外され、緑のチェックのブラジャーが顔を出した。  
「・・・・・・・・恥ずか、しぃ・・・」  
肌、下着は真っ白だというのに、顔はこれまでに無いくらい真赤である。  
あまり見ないでほしいと言う様にしゃがんでしまう。  
神楽もブラジャーを露わにして恥ずかしそうである。  
「そんなこと、ないです!お2人ともすごく綺麗です!」  
更に恥を増加させることとも知らずに透は言い切った。  
 

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