「トール!」  
 バイトが終わり草摩家に帰ろうと、階段へ向かっていた透は、元気の良い声に驚いて振り向いた。  
「紅葉さんっ…!どうされたのですか?」  
「トールを待ってたんだよー。」  
「わ、私をですか…っ?」  
「うん!今日は、トールにお願いがあるんだ。」  
「お願いですかっ…!私でよければっ、なんなりと…!」  
「ほんとうっ!!じゃあ、こっち!こっち!」  
 紅葉は透の手をぐいぐいとひっぱり歩き出した。  
「えっ…、あ、あの、どこへっ…?」」  
「いいから、いいから♪」  
 透はわけもわからぬまま、手の引かれる方へ進むしかなかった。  
 
「さぁ!入って、トール!」  
 入って、と紅葉に示された場所は、透の清掃区域でもある男子トイレであった。  
「えっ…はっ!も、もしかして、汚れが落ちてなかったのでしょうかっ!ああっ、申し訳ないです!すぐに、すぐにお掃除を!」  
「アハハッ!違うよっ、トール!僕のお願いはもっと違うことだよっ。」  
 すでに片手にデッキブラシを持って掃除をする気でいた透は、慌ててブラシを元の場所に戻すと、聞いた。  
「あの…では、お願いというのは…」  
「んーとねぇ…トールのね、おしっこするとこがみたいんだっ♪」  
「ぇ……え゛え゛え゛えっ!!」  
「わぁっ!シーッ!声、大きいよ、トール。」  
「でもっ…紅葉さんっ!そのお願いはっ…!」  
 人差し指を唇に当てられ、声のトーンを下げるよう促す紅葉に気付き、透は最大限に声をひそめて、言葉を続けた。  
「そのお願いは…あの、申し訳ないのですが…」  
「出来ないの…?」  
「えっ…あ…」  
「…今日ね、家庭科の実習でね、幼稚園に行ったんだ…。幼稚園の子たちとね、たくさん、話したの。  
 みんなね、ムッティと仲良しでね。一緒に、お風呂に入ったりしてるんだって。  
 僕のムッティは、僕とは、絶対にお風呂に入ろうとしてくれなかったから…いいなって。  
 きっと、それは、すごく暖かい事なんだろうな、って思ったの。」  
「紅葉さん…」  
「トールは、すごく優しくて、僕にとってムッティみたいだから。  
 トールと一緒にお風呂入れたら、って思ったんだけど。そうしたら、ユキとキョーが怒るでしょ?  
 だから、お風呂と同じくらいの事、トールと出来たらいいなって思って…でも、こういうのは、ちょっと、違うのかもね。」  
 悲しげに眉をひそめて微笑む紅葉の顔に、透はいたたまれなくなってしまい、思わず言ってしまった。  
「あのっ…!わ、わたしでよければっ、ぜひっ…!」  
「…トールッ!ほんとうっ!!」  
「は、はい…っ!」  
 直立不動でこたえる透を見て、紅葉はどことなくいつもと違う、不敵な微笑みを浮かべていた。  
 
「あっ…あのっ、紅葉さん…っ」  
「なーに?トール。」  
「そんなに覗き込まれては…恥かしいのです…っ」  
 和式トイレに身をかがめ、用をたす姿勢でいる透の陰部を、紅葉は透のすぐ横にしゃがんで覗き込んでいた。  
「だって!トール、なかなか出さないんだもんっ」  
「あっ、あぁ、申し訳ないです…っ、で、出ないのですっ…」  
「…じゃあ!僕がお手伝いをしてあげるよっ!」  
「えっ…お、お手伝いともうしますと…っ…!」  
 紅葉の白い手が、透の陰部を指ですっとなぞり、しっとりと指を濡らした液を舐めると答えた。  
「トールのここ、僕見てただけなのに、こんなに濡れちゃってるんだもん!きっと、おしっこもすぐ出ちゃうよ♪」  
「ぁ…あのっ…ぁ…っ」  
「はやく、おしっこでますよーにっ!」  
 透の太ももの内の方を優しく撫でながら、紅葉は透の耳にパクッと噛み付いた。  
「はうっ!も、紅葉さん…っ!」  
「いただきっ♪」  
 驚いて、顔を真っ赤にさせる透を見て、紅葉は満足そうに言った。  
 
その間にも、紅葉の右手は透の太ももから陰部ギリギリのとこまでを、触れるか触れないかの微妙なタッチで撫で続けていた。  
「トールはすごーくエッチなんだねっ!僕は、トールにおしっこを出して欲しいのに、違うのがいっぱい出てきてるよっ?」  
「ぁ…あぁっ、紅葉さんっ…ちがうんです…っ」  
「ここを触ったらトールのおしっこでるかなっ」  
 透の言葉にはお構いなしといった感じで、それまで太ももを撫でていた手で、  
花弁の内側をなぞり始めた、ゆっくりと形を確かめるようになぞると、糸がすーっと垂れ落ちた。  
湿度に満ちたそこに指を差し込むと、卑猥な水音を立てて飲み込まれていった。  
紅葉は、わざと音を大きく立てながら、指を抜き差しし始めた。  
指の数を二本にすると、さらに音は大きくなり、中から溢れる液の量も増え、和式トイレの水の上にポタポタと落ちていく。  
「トール、聞こえる?すごーく響いてるよ、トールの音。」  
「や…いやなのですっ…」  
「いやなの?僕の指、ぎゅっってきつく締めてるのに?」  
 わざと耳元でくすぐるように囁いた紅葉の言葉に、透は今でも充分赤い顔をさらに赤くさせた。  
「おしっこなかなか出ないねっ…。よーしっ!じゃあ、ここはどうだっ!」  
 紅葉は、既に赤く腫れてしまっている、敏感な部分を親指で軽く弾いた。  
「っあああっ!!だ、だめですっ!!」  
「だめ?ここじゃないのかなぁ…」  
「ぁあっ、やっ…っ!」  
 そう言いながらも、紅葉は執拗に同じ個所を親指でねったり、摘んだりしていた。  
 まるで、その度に、透の口から洩れる声を楽しんでいるかのように。  
「あっ、ああっ、紅葉さっ…でちゃ、でちゃいます…っ!」  
 勢いの良い音と共に、黄色の水が和式トイレの水を濁した。  
「ぁ…はぁ…っ……」  
 
「………っ」  
「トールっ!!気付いたっ?」  
「え…紅葉さん…?」  
 辺りを見回すと薄暗いビルの廊下のようで、透は自販機の横のベンチに横たわっていた。  
 どうやら、疲れと羞恥で気を失ってしまったらしい。  
「大丈夫…?」  
 心配そうに顔を覗き込む紅葉を見て、透は起き上がり、両腕でちからこぶを作るようなポーズをとった。  
「はい…っ!このとおり、大丈夫ですっ!」  
「…よかったっ!!」  
「紅葉さっ…!!」  
爆発音と煙のあとに現れたうさぎが、少し申し訳無さそうに笑うのを見て、  
透も思わず一緒に微笑んでいた。  
 

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