家人が寝静まった夜の紫呉邸。  
 二階の一室、本田透が寝起きする部屋に、一人の客人が泊まっていた。  
 淡い栗色をした髪に、やわらかく端を垂らした瞳を持つ少女。草摩杞紗はベッドに横  
たわったまま、星明りによって静かに照らされていた。  
 彼女の視線は、すぐ横で眠る透の口許に注がれている。  
「きれい……だね」  
 朱唇には、白い光が乗っていた。  
 窓から入りこんでくる、星月夜の光。  
 それらの吸われてしまうような色を見ていると、幼い杞紗の心に何かが芽生える。  
「お姉ちゃん……」  
 杞紗の呼吸が早まった。  
 胸が鼓動を鳴り響かせると、体がじんわりと熱くなっていく。  
 未成熟な体を火照りが包む。腰の熱は指先を呼び、掌が下腹をめざして滑り落ちた。  
(ダメなの。ここでしちゃ、いけない……の)  
 心が奏でる警句は、肉体に受け入れられることはなかった。  
 短い指に不慣れな動きがあって、下着の上に到達する。  
「……ふぁ」  
 誰にも触れさせたことのない秘所。そこに指先が重なるだけで小さな声が漏れた。  
 指の腹を用いて摩擦を送る。不器用さを感じさせる動作でも、想像を胸に抱くと、そ  
れは杞紗の呼吸を乱すほどに刺激的な快感となった。  
(この指が、お姉ちゃんのだったら)  
 杞紗の心に描いた透が、指をたぐる。  
 
 腰からの震えが生じると、背を上りつめて肩まで伝わった。  
 そうすると、ますます指先は速くなる。心に眠っていた欲が、蕾から開花の膨らみへ  
と変わっていく。  
 杞紗は透の顔を見ていると、片手だけでは物足りなくなった。  
 なだらかな恥丘をさする手を止めず、反対側の手を胸元に添える。  
 薄い胸乳の中央で乳首が隆起していた。指でこね回しつつ、またもや想像の手を重ね  
れば、一層のこと固さが増していく。  
 全身を愛撫してもらいたいと願い、その感触を思い浮かべる。  
 繊細で優しく、滑らかな線をなぞる手つき。それを考えるだけで、杞紗は達してしま  
いそうになった。さらなる妄念が浮かび、微熱の温度が体を包んでいく。  
「お姉ちゃん、お姉……ちゃん。私……」  
 声をかけても透は眠ったままだった。  
 返事をする様子もない。夜の空気の中、ひっそりとまどろみに落ちている。  
 興奮に背中をひと押しされて、杞紗は毛布をずらした。  
(ちょっとだけ、だから)  
 幼い体を震わせながら、透の元へ近づける。  
 杞紗は息を止めて、寝顔に頬を寄せた。  
 夜空の光だけが、この唇を独占していると思えば、ほんのすこしだけでも自分にわけ  
てほしいと望んでしまう。  
 その思いは、自然に罪深い行動となる。  
 
 唇を重ねた瞬間は、心臓が爆ぜてしまいそうであった。  
 一瞬だけの柔らかさを胸に収めて、少女は毛布の中に戻る。  
(お姉ちゃん、ごめんなさい)  
 高鳴りを残す胸の動悸を感じると、それは罪悪感に変わる。  
 杞紗は、口中に満ちていく唾液の流れを感じた。  
 それを嚥下すると、毛布の下でゆるやかに手が滑る。  
 指先は透の手に重なった。その腕をすこしづつ動かして、自分の体をも寄せる。  
 何をしようとしているかとも、こんなことをしてはいけないとも思った。だが、それ  
らの思いよりも、もっと熱い流動が体の中をめぐっている。  
(どうして……も、止められないの)  
 杞紗は全身を痙攣させた。  
 透の指先が、隙間のできるほど細い太股に触れている。  
 心で描いたままの感触を味わうと、もう止めることはできなかった。  
 姉と慕う少女に手を重ねて、自身の秘所へと導く。  
「はぅ……」  
 思わず声が出てしまうほどの快感が、体の奥でうねる。毛触りのいい動物に触れるの  
と似ているようで、それを幾億倍もしたような感触であった。  
(お姉ちゃんの指……こんな、に)  
 杞紗の秘所から淫水がとめどなくあふれていく。  
 自分で慰めるのとは、比較にならぬほど。どんな刺激物よりも強烈で、何にも比べが  
たいほど愛しくやわらかな温度があった。  
 
 指の動きが加速する。  
 透が目覚めてしまうのではないかという危惧は、なおのこと体を熱くさせた。  
「はふ、あう、ひ、あ、お姉ちゃん……あ、あふぅ」  
「はい……杞紗さん?」  
「ひぅ……!」  
 杞紗は失禁してしまいそうなほど驚いた。  
 快楽に酔いしれたあまり、とんでもない事をしてしまったと後悔する。  
 取り返しのつかない事態を前に、幼い心は惑い、恐怖すら感じるほど萎縮した。  
 それでも、愛情を支えにして、必死で声を出そうとする。  
「ご、ごめんなさい、私……」  
「え?」  
「……ごめんなさい」  
 杞紗は泣いた。すすり泣きの嗚咽が止まらない。  
 その泣き顔を前に、透は眼を丸くした。  
 やがて何かを察して、幼い少女の体を抱きしめる。  
「いいんですよ、杞紗さん」  
 いたわりを感じさせる優しい声、それが透の囁きだった。  
「一人で困っている時は、誰かに助けてほしいって。そばにいてほしいって、お願いし  
てもいいのですからね」  
「でも……私、ね」  
「はい。女の子が気持ちよくなりたい、って思うのは素敵なことですから」  
「怒って、ないの……?」  
 答えるかわりに、透が頬を寄せた。  
 
 杞紗は愛情あふれる頬ずりに戸惑いを感じはしたが、すぐに柔らかな肌触りが不安を  
打ち消してしまう。気持ちをなごませて、受け入れようとする行為にひたりだす。  
(お姉ちゃんのほっぺた……お母さんの香りがする、ね)  
 香気に蕩けそうな杞紗の舌先が、おずおずと差し出された。  
 透は何も言わずに、桃色の舌先に応じる。  
「んぅ……」  
 ひと舐めされただけで、指先の神経にまで通り抜けていく感覚があった。  
 舌先を自分から動かす。  
 蝶のひらめきで、二人は互いの舌を求めあった。  
 かすめる接触があるごとに、杞紗は頤を震えさせる。透の唇が、やわらかに少女の舌  
を食んだ。その途端、喉奥を通り抜けて、体の端々まで響く律動が駆け抜けていく。  
「はぁ……ひぅ、あ」  
 舌先が頬に移った。やんわりとひと舐めしたのちに、杞紗の耳たぶを吸う。  
 外周を舐めなぞりながら、半周とすこし。前面のふくらみに唇が吸いついた。  
「はぁっ、あ、あうぅ」  
 巧みな吸着は腰骨を砕いてしまいそうほど、未経験の絶頂感を杞紗に与えた。短く切  
り揃えられた髪の一本づつ、その先端までが快感にさらさらと震える。  
 気を失いかけた少女をみつめて、透は心配げな表情した。  
「杞紗さん、大丈夫ですか」  
「うん。もっと……もっとして、くれるの」  
「はい。でも、草摩のみなさんには内緒にしてくださいね」  
 杞紗は黙って頷いた。  
 
「では、参りましょう」  
「……うん」  
 透の手が頬を撫でた。  
 そのまま、パジャマの胸元へと落ちて、体を撫でまわしながらボタンを外していく。  
 白い磁器の色をした肌、杞紗の胸元がはだけた。  
 触れ撫でる指先の動きに、唇が加わる。  
「あ……」  
 杞紗は小さなあえぎをこぼし、透によって施される愛撫を受け入れた。  
 指が胸上と肩をつなぐ鎖骨の浮きをなぞり、唇が追う。うっすらとした胸の肉肌を刺  
激されると、幼さの残る体が期待で桜色に染まる。  
「く……ふぅ」  
 胸乳の中央、小指の爪ほどに小さな乳暈まで指が達した。  
 杞紗は両腕を開いて、続く吸着を待ち受ける。  
 透の唇が乳首を吸う。まさしく望んでいた快感に、幼い少女の体が大きく跳ねた。  
(お母さんになったみたい)  
 乳先を吸われた杞紗は、そんなことを思った。  
 赤子のような動きでありながら、透は女の熟練を感じさせる舌づかいで、少女の快楽  
を導いていく。夢を見るかのごとき心地が、杞紗の背中を押す勇気になった。  
「お姉ちゃんのおっぱい、吸ってもいい……かなぁ」  
「遠慮はいりませんよ、杞紗さん。はいっ、どうぞ」  
 底抜けの明るさを感じさせる声で応じると、透はパジャマの上着を脱いだ。  
 
 下着を外すときは、杞紗に照れの笑みを見せる。急に恥じらうようにして、両腕で胸  
を隠してみせた。  
「大きい……お姉ちゃんのお胸、素敵なの」  
「いいえ、私などそれほどでは。それに、杞紗さんもすぐ大きくなりますよ」  
「そう、かなぁ……」  
 気弱そうな杞紗に、透は手をさしのべた。  
 ゆっくりとした動きで、少女の小さな掌をふくらみに重ねる。指には砂糖菓子のやわ  
らかさ、中央に飴の突起を感じて、杞紗は動悸を速めた。  
「おなじ、だね」  
「はい。私も杞紗さんといっしょで、ドキドキしています」  
 その言葉に興奮を共有する安心感があったのか、杞紗は指を動かした。  
「こっちの手も……いい、の」  
「いいですよ。お好きになさってくださいね」  
 杞紗は両手で透の胸をもみしだく。  
 ふにふにとした感触を味わっていると、どうしてもこらえきれない、こみ上げてくる  
ものがあった。  
「あの……あの、ね」  
「どうしたました。杞紗さん」  
「お姉ちゃんの……お姉ちゃんのお胸にっ」  
 断わられるのを怖がりながら、杞紗は必死で言葉を継ぐ。  
「ほっぺたをつけても、いい?」  
 恐々と眼を閉じた杞紗に、透が母親の笑みを返す。  
「いいですよ。さあ」  
 透が両手を伸ばして抱き寄せた。  
 
 杞紗は吸われてしまうような動きで、その胸元に顔を埋める。頬に、甘い香りを放つ  
やわらかな感触があった。触れているだけで腰のあたりが熱を帯びてしまう。  
「あ……」  
 秘所を包む着衣に湿度があった。  
 居心地の悪さといったようなものを感じて、杞紗は太股を閉じる。  
 閉じきらないほど肉の薄い腿が持て余された。もどかしげに膝をすりあわせる。  
(どうしよう、濡れてきちゃった)  
 そんな杞紗のじれったさそうな様子がわかって、透が気を利かせた。  
「杞紗さん。お洋服が濡れてしまいますから、脱いでしまいましょうか」  
「……うん」  
「私が脱がせても、よろしいですか」  
 杞紗が何も言いだせなくなるほど、首筋に強い血の流れが脈を打つ。  
 少女は黙ってうなずいた。  
 体を仰向けにすると、眼を固く閉じる。透の指がするすると動いて、パジャマと下着  
を脱がせていく。身を任せてしまう恐怖と、どことない安堵があった。  
 生まれたままの姿になってしまうと、杞紗は怖れが羞恥に変わっていくのを感じる。  
 手が自然に動いて、秘所を包み隠そうとした。  
「は……ぅっく」  
 あまりに敏感なほどまで高まっていたせいか、指先がかすめただけで、快感が寒気に  
変わって肩まで伝わる。  
 
 これほどの刺激があっていいものかと、杞紗は幼な心に不安を感じた。  
 そんな様子の少女を安心させようとして、透自身も一糸まとわぬ姿になる。  
「お姉ちゃん。私、怖い……の」  
「はい。私もです」  
「そうなの……?」  
 恐怖というものをまったく感じさせない透の声で、杞紗は微妙な惑いを抱く。  
「こんなに気持ちがよくなってどうしよう、って。私の体はおかしくなってしまったの  
でしょうかと、怖くなってしまうものなのです」  
「うん。今、すごく気持ちいい」  
「でも、それは女の子には普通のことなんですよ。好きな人といっしょにいると、それ  
だけで幸せになれるのですから」  
「私、お姉ちゃんが……大好き」  
「はい。それでは、気持ちよくなりましょう」  
 無邪気な口調、それに通じるほどの無垢な動きで、透の手が動いた。  
 杞紗の脚、腿の内側、膝のあたりと流れるように触れていく。  
「ん……」  
「お嫌なときは言ってくださいね。すぐにやめますから」  
 少女の太股を撫でて手は、ゆるく、ゆったりと上がっていく。  
 秘所を守っていた、小さな手が自然に離れていくのを杞紗は感じる。それは、体が透  
を迎え入れたいと願っているのだという、自覚に変わっていった。  
 
(早く、早く来てほしいな)  
 杞紗が大きく息を吸っているあいだに、透の手は秘所を迂回する。  
 小ぶりな尻の側面を撫でるころには、いつの間にか両手が使われていた。  
「ふぁ……あ、う」  
 腰を抱かれるようにしていると、杞紗はそこに熱が集まっていくのを感じた。  
 透が腹部を吸う。臍のあたり、ほんのわずかに上の部分。  
 唇は触れたままで、下に落ちていく。  
「あぁ……っ!」  
 舌先が秘所のふくらみに触れると、杞紗はたまらずに喘いだ。  
「お、お姉ちゃんっ……はくぅ、あふ、あうっ」  
 透は唇で、秘所の襞を優しくもてあそぶ。撫でるようなゆるい吸着が繰り返され、そ  
の度に杞紗は体をぷるぷると震えさせた。  
 自分がやわらかい生き物になってしまったのだと、子供心にも何とはなしにわかりは  
する。それはいけないことなのにと思うほど、体は蕩けてしまった。  
(お、おかしくなっちゃいそうなの……お姉ちゃん、助けて)  
 さらに透は舌を使う。なぞり上げる動きが紅珠に達すると、杞紗は背をそらす。  
「あ……ふ、あっ」  
 それでも拒絶の言葉は出ない。透の舌が滑らかな舐動で、杞紗を味わっていく。  
「いいっ、お姉ちゃんの……こんなに気持ちよく、て」  
 与えられるものを満喫する震えで、杞紗は悦びを表現した。  
 
 舌の愛撫を受ける動きは、女の萌芽そのものであった。  
「はぁ、ひぅ。そこ、そこぉ、お姉ちゃん、お姉ちゃん、いいっ」  
 普段の怖じ気を消し去って、杞紗は喘いだ。  
「あ、あ、ふ、あう、は、はうっ、はあ、う、あああっ!」  
 透が吸う。ちゅるちゅると吸引する音が響くほどに。  
(吸っちゃダメ。でも、もっとしてほしいの。どっちなのかわからないよぅ)  
 杞紗はたまらないといった表情で快楽を訴えた。潤みきった秘所からの熱が、体じゅ  
うを駆けめぐっている。透もこのようになるのだろうかと、好奇心が首をもたげた。  
 唇が離れると、思いきって口を開く。  
「お姉ちゃん」  
「どうしました、杞紗さん」  
「お姉ちゃんの……見てもいいかなぁ」  
 透は眼を点にして、すぐに笑顔で頷いた。  
「なんだか恥ずかしいですけど。さあ、ど、どうぞ」  
 透はベッドに寝そべる。  
 
 開いた足の間に杞紗が入り、暗さに眼をこらした。  
「ふわぁ……」  
 陰毛の茂みは杞紗を驚かせたはしたが、すぐに羨望の念を抱かせるものとなった。  
 透の秘所は母親と同じ造作なのである。そこに何か共通するようなものを見て、うら  
やましいと思う気持ちが杞紗の心に生じた。  
「お姉ちゃん。私も……生えるかなぁ」  
「そうですね。杞紗さんのお年からすると、そろそろでしょうか」  
「そうなんだぁ。さ、触ってもいい……?」  
 透は頷いて、小さな掌に伸ばした手を重ねる。  
 そして、そのまま自身の秘所へと指を導く。杞紗は腕が震えるのを感じてしまい、先  
端から眼が離せなくなった。視線の先には恥丘の描く、ゆるやかな曲線がある。  
 肌に触れると熱が伝わった。  
 その熱が、自分の体内に満ちる温度と等しいものだと、杞紗は理解する。  
 感覚によって得た知識に従って、指先が秘裂をなぞった。襞を軽く押し広げると、透  
がせつなげな喘ぎを発する。  
「お姉ちゃん、気持ちいいの」  
「は、はい。とてもお上手ですよ、杞紗さん……あっ!」  
 透は、肩に首を押しつけて悶えた。  
 その様子を見た杞紗の人さし指と親指が、襞をかるくはさんで上下に動く。さらに反  
対側の手も使って、とろとろとこぼれていく淫水を指にこすりつける。  
 
 浅く低くと呼吸を速める透が、杞紗の指先を秘腔の内部に導いた。  
「うっ……くぅ、はあ、ああぁ」  
「入っちゃった……お姉ちゃん、大丈夫なの」  
「平気です。杞紗さん、指を動かしてもらえますか」  
 杞紗が指を動かせば、律動にあわせて露の湿りがしたたるほどにあふれた。  
 快楽の心地に昂ぶる透。その姿を見ているだけで、杞紗自身も興奮を抑えきれない。  
(お姉ちゃんが、こんなに嬉しくなるなんて)  
 好奇の心につき動かされた杞紗は、自分の秘所に指先をあてがう。  
「うぅ……」  
 未成熟な性器に指を埋没させようとすれば、痛みが肉を固く閉じさせる。  
「どうしました、杞紗さん」  
「指が……入らないの」  
「それは、まだ杞紗さんには早いような気がするかもなのです」  
 もどかしげな様子で秘所をまさぐる杞紗に、透は説き伏せるような声で言った。  
「では、もっと気持ちがよくなることをしましょうね」  
「もっと……」  
 透は杞紗を向かいあう位置に座り、腰を密着させた。  
 
 足先をからめると、軽く動かす。秘所の摩擦で伝わる感触が、杞紗を身震いさせた。  
「くすぐったいね」  
「ふふ。では、動かしますよ」  
「はぅ……あ、う、あっ、あ、うふぅ」  
 透が腰をくねらせるようにしただけで、杞紗は骨まで砕けてしまうかと思った。  
 縦から横へ、円を描くようなグラインドが、少女を夢の世界に誘う。  
(すごいのっ。お姉ちゃん、好きな人といっしょだと、こんなに気持ちいいの)  
 すでに、杞紗は忘我の極にあった。透の秘所に快楽を返そうと、自身も必死で不器用  
に体を動かす。二人で奏でる音曲のような、華麗に花蜜を吸う蜂の踊りといった、優雅  
で荒々しい貪欲さを秘めた腰づかいとなる。  
「あっ、あっ、お、お姉ちゃん。お姉ちゃん、私っ、あっ、ひゃうっ」  
「は、はい。私も、杞紗さんが気持ちいい、ですっ」  
 お互いの体に昂ぶりを送ろうと、二人は懸命に腰をこすりつけあった。  
 秘所からこぼれた滴は太腿の上で、水飴の色を散らす。夜の光を照り返す色は杞紗を  
幻惑し、高みの果てへと導くようでもあった。それとは別に、襞と紅珠がしゅるしゅる  
とからまる度に、背から首筋へと抜けていくものがある。  
 
 杞紗の五感は、あらゆる快楽を堪能していた。だが、もっとも激しい興奮を呼ぶもの  
は、やはり本田透という存在そのものである。  
(私も、お姉ちゃんみたいに気持ちいい体になりたい)  
 体の触れあいで、その内に融け沈んでしまいたかった。透の体から返されてくる感触  
は、幼い肢体の内で、波の広がりを伝えていく。海に広がっていくようでいて、ひたす  
らなまでに暖かく心地よい。永遠に、このままでいたいと願う意識が浮遊していった。  
 その思いが頂点に達すると、杞紗は絶頂の極みに達する。  
「くぅっ、あっ、ふくっ……ああうっ!」  
 杞紗は全身を弛緩させて、くたりと枕に沈んだ。  
「き、杞紗さん。大丈夫ですかっ」  
 透が慌て気味に身を起こす。  
 杞紗は、すでに軽い寝息をたてていた。あまりの高まりに気を失っている。  
 幼さを残したやわらかな頬に、透は軽く口づけした。  
「おやすみなさい。杞紗さん」  
 透は、二人の体を毛布でしっかりとくるんだ。  
 杞紗を抱きしめて、肌の温もりを重ねると夜に身を委ねる。  
「お姉、ちゃん……大好き」  
 寝言だろうか、まどろむ杞紗がそう言った。  
「はい。私も大好きですよ」  
 杞紗の頭を撫でて、透は眼を閉じる。冷えた空気が火照った体から熱を奪うぐらいの  
速さで、ゆるゆると眠りに落ちていく。抱きあう二人の見る夢は、双方ともに愛しい人  
の現れる夢であった。  
 あとは、月が照らすだけの静かな世界。  
 

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