冬風が身に染みてくる季節を迎え、草摩家の居間にコタツが現れた。
「暖かいですねえ」
「そうだな」
ミカンの皮を剥きながら、本田透はぬくぬくとした表情をしてみせる。
草摩夾も、彼女の意見に賛成だった。多少の寒さはこたえない体だが、やはり寒いよ
りは暖かいほうがいい。
コタツの所有者は家主の紫呉だ。
だが、カビが生えそうな布団を甦らせたのは透である。それから必要以上に分解され
て、物置にうち捨てられていたコタツを組み立て直してから、居間に運んだのは夾だ。
コタツ設置の務めを果した二人は、まったりとコタツのぬくみにひたっていた。
「一生懸命にがんばったから、神様からのごほうびですね」
笑顔を輝かせて、透が言った。
何の変哲もない口調であったが、夾の視線がわずかに横へと流れた。
コタツに肘をついて、ぎこちなく返答する。
「お、おう」
「はい。きっとそうだと思います。コタツの神様が見守っていてくれてますよ」
「コタツの神様ってのは、なんだ?」
耳慣れない言葉を夾が問いただす。
「えっと……冬場になるとコタツで猫さんたちを守護したり……」
夾の視線が、どんよりとしたものになった。
透は慌てて言葉を濁す。
「そ、そうです。コタツの神様には、お茶をお供えするといいんですよ。夾くんもお茶
を飲まれますか?」
「ああ」
透がそそくさと台所に向かった。
一人で居間に残された夾はコタツに足をつっこんだまま、片肘をついた。
「ふぁ……体が鈍るな」
そのまま何をするでもなく、ぼんやりと思考をめぐらせる。
透の天然ぶりに苦い表情しか見せられない、そんな自分が歯痒かった。由希といると
きの彼女は、笑顔でいることのほうが多いような気がする。いつもの闘争心とは違う、
どことなく不慣れな感情が由希に対して生じてしまう。
そんなことを考えている自分に、いささか驚くものがあった。
「なんであいつは……ん?」
コタツの底、足先から冷気が感じられた。
「なんだよ。床に穴でも開いていやがるのか」
布団の裾を持ち上げて、夾は中をのぞきこんだ。
赤外線に照らされた赤い畳。
その中央では、引きちぎられた無惨な破壊孔が、暗い色彩を漂わせている。
穴から室内へと、床下を流れる冷風が吐き出されていた。
「マジか……?」
驚きを肯定するかのごとく、闇の底でふたつの光点が輝いた。
穴の底から二本の手が伸びる。
「どわああああああっ!」
足首をつかまれた夾は、コタツの奥深くに引きずりこまれていく。
「どどどどどうしましたっ!」
悲鳴を聞きつけてやってきた透は、眼を丸くした。
「あの……お風呂ではないのですから。肩まで入らなくてもよいのですよ、夾くん」
コタツ布団の裾から、オレンジ頭と手だけが出ている。
透にのんきな物言いをされて、夾は怒鳴り声を発した。
「そうじゃねえ! 中から引っぱられているんだよっ」
「こ、コタツがですか……!」
ばたばたと上下に暴れるコタツ。
透にしてみれば、楽しげに踊っているようにも見えた。
夾は指先で畳をむしりながら、コタツから逃れようともがく。
「違うっ! コタツじゃないっ!」
「もしかするとコタツの神様がいるのでしょうか。でもでも、なんだか蟻地獄みたいか
もなどと思えてしまいますね」
透は緊迫感があるのかないのか、硬直した微笑みを浮かべる。
夾の体がコタツの中に沈んでいく。
「笑っている場合かっ! どこでもいいから引っぱれ!」
「は、はいっ!」
透は腕をつかんだ。まったくびくともしない。
強く引こうと思って、反射的に夾の首へと抱きついてしまう。
ぽん、と何かがはじける音。
「だあーっ!」
「はわわわわわ。お、落ちついてください、猫さん」
コタツからすっぽ抜けて、頭へ飛び乗った猫を透は必死の懸命になだめた。
「のわにゃ!」
「きょエぐぁーッ!」
猫の悲鳴に、奇怪な雄叫びが重なる。
コタツが天井まで跳ね飛んだ。
続けて、穴の中から黒い影が飛び出す。
「か、楽羅さん!」
床にコタツが落ちるよりも速く、穴から飛び出てきた楽羅が突進する。
透は、お母さんどうしたらいいのでしょう、といった顔をするしかなかった。
「夾くぅん! 何でどうしてそんなところにいるの、私のことが嫌いになったの、ねえ
言ってよ言ってよ言ってってばあ!」
「やめ……ギニャー!」
「お、お、落ちついてください、楽羅さん」
透から猫をひったっくると、ぐりぐりごろごろ乱暴に抱きついたり撫でまわす楽羅。
猫がぐったりと動かなくなるまで、二秒とかからなかった。
小さな音がはじけ、夾が元の姿に戻る。
もちろんぐったり動かない。首筋に力が入っていないあたり、哀れな感じすらする。
全裸の夾を抱えたまま、楽羅は眼光に凶悪な輝きを宿らせた。
「しゃきしゃき答えんかァ!」
楽羅は夾の股間に手を伸ばし、全力で握る。
「のぐあああっ!」
夾は悶絶した。
天国に行ってしまいそうな悲鳴と表情、透にはそんなふうに思えてしまう。
「かかかかか楽羅さん。やややりすぎなのではないでしょうか」
顔を手で覆いつつ、透は震える声で言った。
「え、そうなの? ねえ、夾くん。しっかりして、私の声が聞こえている? 返事をし
てよ。夾くんの言うことだったら、私は何でもするから」
「お、オレの……」
「うん。夾くんの、夾くんの夾くんがどうしたの?」
「タマ……が」
くったりと床に倒れる、夾。
その体の一点に、楽羅の視線が吸いよせられた。
「ここが痛いの?」
楽羅は膝をついて、夾の股間に手をさしのべた。
萎れた竿に触れると、ゆるやかに愛撫して刺激を送る。心臓の律動と同じタイミング
で流れる、血管の感触が彼女を興奮させてしまう。
透が、はらはらと心配げな表情で見守る。
楽羅は熱のこもった息を吐いた。
「夾くんのここ、どうしてほしいの」
楽羅の指が複雑な動きをして、陰茎の各所を触れてまわる。
体を痙攣させたままで、夾は、まず男根だけを蘇生させた。透は顔をそむけつつも、
視線をふさいでいる指先が、どうしても隙間を作ってしまう。
「夾くん、こうしてほしいの? これでいいの」
左手で竿をつかんで、右手の指先を鈴口にすべらせる。熟練を感じさせる大胆な手つ
きではあったが、どことなくぎこちない。
楽羅は、想像の中だけで幾度もやってきたことを反芻する。
妄想の中で生まれた技巧によって、夾の陰茎はたちまち剛直な屹立となった。
「もっと、よくしてあげるから……」
おずおずと震える舌先を伸ばし、楽羅は勃起の先端に顔を近づける。
いったん舌が触れてしまうと、貪婪な女の性が覚醒し、激しい吸着となって肉棒に刺
激を送りつけた。
「んっ……んっ、うくっ、んむっ」
舌の全体を使って、亀頭から根元までにまんべんなく唾液を塗りつける。抑圧を解放
した楽羅は、想像で蓄えてきた淫らな奉仕欲を存分に発揮し、陰嚢を口にふくむことま
でしてのけた。精巣を舌で転がすと、手の中で肉竿が硬度を増していく。
涎の滴に糸筋を曳かせつつ、震える唇が離れた。
「胸も、使ってあげるね」
楽羅は熊ポーチを床に落とす。
ワンピースとカーディガン、着衣を脱ぎ捨てて、靴下と下着のみの姿となった。
「恥ずかしいから……見ないで」
気絶しており、見れないはずの夾に声をかけてから、楽羅は胸を露わにした。
豊乳が下着からまろび出る。ふくよかで量感のある乳先は、充血するほどの赤味を帯
びていた。大きめの乳暈に埋没していた乳首が、ぷくりと先端をのぞかせている。
「……ん、と」
楽羅は両乳で、夾の陰茎をはさんだ。
そのまま、ゆるやかに上下運動を開始した。胸乳の狭間で肉棒が往還すると、カリの
硬さと体温が伝わる。男を手に入れた実感が満ちて、それは楽羅をいちじるしく昂ぶら
せるものとなった。
「わ、私、夾くんに……すごくエッチなことをしてるよ」
呼吸を乱しながら、楽羅は動きを続ける。
全身が性器になってしまったのではないか、と思えるほどに興奮していた。無我夢中
で体を性器にこすりつける。夾が自慰に用いてくれるだけでもいい体だと、みずからを
貶めているのが、ひどく心地よく感じられてしまう。
(夾くん……夾くんっ、大好きだよ。だからこんなにエッチなんだよっ)
亀頭が顎にぶつかると、カウパー氏線液のぬめりで照り輝く。
ごきゅ、と楽羅は唾を飲む。
肉棒をしごく動きを止めぬまま、舌先で先走る汁を舐めとる。
「……あ、夾くんの味がする」
楽羅は、もう一度、夾の陰茎を舐めた。
赤味を帯びた茎先に、桃色の舌が幾度も這いまわる。舐めるだけでは飽き足らず、も
どかしげに唇で吸いつく。誠意をつくした愛撫は淫猥きわまりない動きであった。つつ
ましやかな奉仕でありながらも、次第に大胆な欲望にまみれた舌技となる。
胸乳に肉棒をはさんだまま、首を曲げて奉仕する様子は、健気にして淫らすぎた。
「夾くん、気持ちいい? ねえ……んっく。ねえ、気持ちいいの? ん、あむ……何か
しゃべって……しゃべれやっ! ウドラァッ!」
「ぐあああああああっ!」
乳肉で竿を圧搾された夾は、悲鳴を放って昏倒した。
透は、お母さん助けてください、といった様子で必死に楽羅をなだめだす。
「かか楽羅さん。男の人のそこは……そ、そんなに乱暴にしては、いけないものなので
はないでしょうか」
「そ、そうなんだ……」
楽羅は泣きそうなほどに眼を潤ませて、おろおろと透を見つめた。
「どうしたらいいの? 教えて、透くん」
「私もあんまり詳しくないのですけど……さっきのやつをもう一度、再挑戦です」
「胸で……あっ!」
楽羅の背後、腋下から手をくぐらせ、透は豊乳を包むように撫でまわした。
「おっきいですね。なんだか、うらやましくなるのです」
「あふっ、そんなに触っちゃ……ダメ、だよ」
まろみのある質感に羨望を感じた透の手が、無意識のうちに動く。
乳暈をゆるやかになぞる指先の動きは、あきらかに女体を熟知した巧妙さがあった。
楽羅は愛撫に我を忘れそうになる。細い指先が上下から乳先をはさむと、陥没気味の乳
首が、もぴゅるりと突き出てきた。
「そんなにしないで……。夾くんに……、私の体は夾くんのものなんだから」
楽羅は幼児のように首を振って、透の愛撫を拒んだ。
「あ。す、すみません。それではやってみましょう」
「うん……」
先程と同様に、乳房で夾の陰茎をはさみこむ。
透が乳肉を支え、上下にずらしだした。
楽羅は、そこに手を重ね、奉仕の悦びにひたる。
(私の胸で夾くんが感じてくれている。どんどん熱くなってきてるよ)
熱気を増す肉棒の感触に酔いしれる楽羅。
乳肉を刺激する強ばりは、膨張しきった剛直に犯されたいとすら願わせる。夾の陰茎
で刺し貫かれ、存分に嬲られたいと楽羅は淫乱な妄想を描き、狂気に満たされてしまい
そうですらあった。
そんな願いが通じたのか、竿が唐突に脈動する。
「あっ……す、すごい。出てる、気持ちいいの?」
亀頭の先端から、白い液体が噴出する。
顔に叩きつけられる白濁をあまんじて受け止め、楽羅は恍惚とした表情で息をつく。
「ごめんなさい。次は……ちゃんと飲んであげるからね」
顔にこびりついた精液を指で拭う。
白濁ごと指を舐めしゃぶり、口中で味わいながら飲み下す。
続いて、楽羅は萎れかけた茎先を咥えると、一気に喉奥まで侵入させた。
「もご、ごぐ、んっ……んっ、うっく、んんっ」
高速の上下運動と、すさまじい吸引力で陰茎を責めたてる、逆イラマチオであった。
硬度をとり戻した肉棒が、楽羅の顎を押し広げる。やんちゃさを感じさせる勃起の猛
りすら楽しむがごとく、亀頭をいとおしげに舌で愛撫した。
楽羅は剛直を口に咥えたまま、膝を立たせて下着をずり下げる。
手招きで透を呼んで、つややかに丸い桃尻をつき出すと、媚肉を見せつけた。
「え? あの……何をすればよろしいのでしょうか」
楽羅の空いている手が陰唇をほぐすと、透は要求を察して指を伸ばす。
「すごいのです。こんなに熱くなっています」
淫液の滴を内側からあふれさせる花弁に触れながら、透が感心してみせた。
楽羅の秘腔はすでに濡れそぼり、夾の肉棒によって陵辱される期待に満ちている。直
接の刺激などがなくても糸を曳いてしまい、甘酸っぱい芳香を放った。それほどまでに
夾が愛しく、燃え盛る肉欲の昂ぶりは止めることができない。
透は陰唇をなぞりながら、そんな楽羅の健気さに胸を打たれた。
「楽羅さん。夾くんと、その……結ばれたいのですか?」
夾の股間に吸いついた状態で、楽羅が頷く。
「なんだか素敵ですね。大好きって気持ちを伝えようとがんばる楽羅さんは、素敵な人です。それではがんばりましょう。不肖、本田透がお手伝いいたします」
そう言って、透は指先を動かすと、楽羅の媚肉をほぐしだした。
楽羅は腰から伝わる刺激にこらえきれず、尻肉を歓喜にわななかせる。透の指は巧み
に動き、痛みを感じさせずに快楽だけを引き出していく。指先だけで達しそうになった
陰部は、たちまちのうちに土手を湿度で潤わせた。
「透くん。どうしてそんなに上手なの?」
陰茎から口を放して、楽羅は言った。
「うおちゃんやはなちゃんと、いっぱいがんばりましたのです。あと、お母さんからも
教えて頂きました」
「そうなんだ。すごいね」
「はい。お母さんはすごい人なのです。でも、楽羅さんみたいに、大好きの気持ちをた
くさん持っている人も、すごい人ですよ」
「うん。ありがと……あんっ!」
「どういたしましてです」
礼を返しながら、透は楽羅の会陰をなぞり、菊座の窄まりまで指を這わせた。
「それ……すっごく、いい」
尻を歓喜に波打たせ、楽羅は心地よさげに言った。
「わわわわ。そ、それより夾くんとですよ」
「う、うん」
楽羅は、いまだに意識をとり戻さない、夾の腰を跨いで膝立ちになった。
陰茎に手をそえて直立させる。
胸を高鳴らせながら茎先をあてがい、腰を前後にずらす。亀頭が陰唇をなぞり、それ
だけで体が震えてしまう。さらなる刺激を貪欲に求めて、剥き出しの肉芽にまで滑走さ
せる。柔肉をこすりつけると電流に似た痺れが頭を白くさせ、おもわず失禁してしまい
そうになった。
「こ、これから入れるんだからね」
熱気を帯びた呼吸を繰り返しながら、淫穴に亀頭をあてがう。
楽羅は大きく息を吸ってから、一気に腰を沈ませた。
「くうっ、う、うあ……あああああっ!」
「が、がんばってください!」
純潔を喪失する痛みに耐えて、茎根までを秘裂に進ませる。膣を押し広げ、子宮の内
奥まで突かれると、激烈な痛みが未知の衝撃となって、背骨を通って脳髄までをも貫く
ように感じられた。
楽羅は眉で苦痛を描き、夾の体にしがみつく。
「痛いよ! すごく痛いよ、夾くん」
「う。いででででで……って、何をしてるんだおまえは!」
楽羅の胴締めで目覚めた夾は、眼前の光景に面食らった。
「私、きょ、夾くんに無理矢理っ。犯されて感じてるっ!」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
「あう! む、胸、もっとやさしく触って!」
楽羅を押しのけようとする腕が、胸に当たっていた。
夾は混乱し、楽羅は悶え、透はもう何をしていいやら。
(夾くんに強姦されているところを、透くんに見られているよ)
楽羅は状況に酔って、ひたすら興奮していた。
(頭の中がまっ白になってる。もっと突いて! 楽羅は夾くんが大好きだからっ)
夾の腕を胸まで誘導し、楽羅は掌を重ねて強引に揉みしだく。逃れようとする手指に
乳首をすりつけ、快楽の高まりで全身をくねらせる。性交というよりは、夾の肉体を用
いた自慰のようですらあった。
とりあえず、事態を丸く収めようと善処する透。
「手は包むようにするのですよ、夾くん」
「なっ……何を無責任なこと言ってるんだ、おまえは!」
「う、動かないで、あっ、うっ。夾くんが……乱暴に突いてくるっ」
押し放そうとする動きに抵抗して、楽羅は腰を深く沈ませた。なんだかよくわからな
いうちに自然な抽送とって、肉棒が膣壁を摩擦し淫肉がわななく。
極度の興奮のあまり、陰核は情欲の色に染まって、真珠の丸みかと見まがうほどまで
に肥大する。肉欲の虜となった楽羅は、ひたすらに暴れ狂う尻肉の狭間で陰茎を啜りあ
げるかのごとく、淫靡な柔肉で激しい蹂躙を行ってみせた。
腰を突きあげる肉棒の感触に酔いしれて、口から陶然とした喘ぎが発せられる。
「あっ、うっ、おふっ、奥までっ。夾くんが、エッチな動きをしてる……よ」
「してねえよ! どけってば!」
「根元まで入っていますよ。その調子です」
「うんっ。がんばるよ、夾くんのために、あっ、いいっ、やめられないよっ」
「だから、やめろっての!」
「うあっ……キリキリ腰振らんかい! がっつんがっつん突きやがれよやーっ!」
獣の咆哮とともに、肉襞が収斂した。
急激な締めつけに耐えきれず、夾の筒先が、子宮の内奥めがけて精液をとめどなく迸
らせる。灼熱の脈動が運ばれて、楽羅は脳裏に潮騒のさざめきを感じた。
「う、うぐぁっ!」
「……ああああああっ。で、出てるよ、夾くん。熱いよ、とっても熱いよ」
楽羅は背をのけぞらせて、はじめての絶頂感を満喫した。
透は慌てた様子で、壁にかかった時計に視線を送る。
「三分と……三十秒ぐらいでしょうか」
「おまえなあっ!」
透を怒鳴りつけながら、夾が上半身を起こした。
すかさず楽羅が手を伸ばす。
頭を胸に抱きとめて、がっちりと抱擁する。
「ぶぐっ、むぐぐぐぐ!」
「すごいよ、夾くん。まだ、まだ大きいままだよ」
顔面を胸乳に押しつけられて、夾は苦しげに手足をばたつかせる。
そんなことは知らないとでもいうように、楽羅はひたすらに腰を動かした。
陰部を摩擦する欲望だけで、すでに頭が支配されきっている。底知れない獣欲に支配
された淫行機関そのものとなって、口から涎をこぼしつつ歓喜に震え、秘裂で陰茎を嬲
りつくす。数分前まで生娘であったとは信じられない、痛快な淫乱ぶりであった。
「うっ、はあっ、太くて、硬いよ。素敵だよ、夾くん。んっ、あっ、えうっ」
押し寄せる波のごとき絶頂感、頭の中に反復する神経が焼けついてしまう衝撃、とめ
どなく膨れあがっていく快感が幾度も訪れる。
(す、すごいよ。またイクよっ。何度もイッちゃってる。頭がおかしくなりそうだよ)
楽羅は軽い絶頂感を味わった。
達してしまうたびに、四肢が震えて媚態を現出させ、淫肉を収縮することで射精を誘
う。野に暮らす牝の獣が発情してもこれほどではなかろう、というくらいのすさまじい
乱れぶりである。見ている者までをも圧倒してしまうものがあった。
透はおもわずスカートの裾から手を忍ばせ、下着の上から秘部をまさぐりだす。
「楽羅さん……一生懸命なのですね。すごいです」
見物をしながら、透は遠慮がちな自慰にふけった。
そんなことを気にする様子もなく、楽羅はひたすらに乱れ狂う。
「夾くんのほうがすごいよっ。何回も出しているのに硬いままで……あくっ!」
またもや体内に放精されて、紅潮した肌が痙攣する。上気のあまり昏倒するのではな
いかと思えるほど、楽羅の体内は熱く燃え盛っていた。
夾にしがみついたままの体勢で、煙を噴きそうなほどに陰部を往還させる。熱にこら
えきれないように、たちまち陰茎が精を放ち、楽羅は尻を悦びに震わせた。二人の間に
快楽の渦が盛大な波を呼び、とめどない交感となる。
「また出てる。すぐ大きくなるよね、何回でも出していいよ。いっぱい強姦して!」
「も、むが……」
それから、楽羅は数えきれぬほどの絶頂に満たされて、意識を失った。
乳肉にはさまれ窒息しかけて、またもや意識を失った夾の胸元へ倒れて、穏やかで満
足げな寝息を奏でだす。
自涜でご相伴にあずかった透は、幸せそうな二人が体を冷やさぬよう毛布を運んだ。
「それでは、おやすみなさいなのです」
畳の上で折り重なる二人に毛布をかけて、透は居間の障子を閉ざした。
「夾くん……」
照明の落ちた居間に、小さな寝言。
「大好きだよ、夾くん」
ひと言の後、ゆるやかな呼吸音が続く。
静かな、冬の気配が室内に戻る。
悪夢にうなされるかのような夾の悲鳴が響くまで、ひっそりと静寂は保たれた。