私は、部屋に誰もいないことを確認すると、ホッと息をついてベッドに仰向けになった。  
 この間、リタから「自慰行為」というものを初めて聞いて、試してみたくなったんだ。  
 でも、部屋にはいつもルーミイやシロちゃんがいたし…。  
 やっぱり、それが恥ずかしいことだっていう認識もあったしね。  
 けど、今日は誰もいない。試してみるなら、今がチャンスだ。  
 
 私はそっとパンツをおろした。  
 ひんやり、冷たい空気がとおりぬける。  
 おそる、おそるソコに手を這わせると、慣れない感覚に身体がビクリ、と反応した。  
   
 自慰行為…それをすると、凄く気持ちが良くなるし、集中力が高まって、リラックス効果もある。  
 とにかく良いことづくめなんだ…ってリタには聞いてたんだけど…。  
 確かに最初は身体が反応した。でも、指をあちこちに這わせているうちに、なんだかよく分からなくなっちゃった。  
 それほど、気持ちよくはない…ような…うーん。なにがいけないのかな?  
 
 私が、ぎゅっと眼をつぶりながら、勘にたよって指をやたらに動かしていたときだった。  
 突然、耳元でその声がしたのは。  
 「おめえ、そこは位置が違うんじゃねえの?」  
 「うきゃあああっ!?」  
 
 聞きなれた声に驚いて、がばっと上半身をあげると、そこにはサラサラとした赤毛をたらした、トラップがそこにいた。  
 「な、な、な…」  
 あまりのことに、声もでない。  
 どうして!?確かに今日は誰もいないはずだったのに…!!  
 そ、それに、こんな格好をパーティのメンバーに見られちゃうなんて…ううう、恥ずかしいよう!!  
   
 いろんなことが一気に頭を駆け抜けて、あまりの恥ずかしさと混乱で涙がこぼれてしまった。  
 「…っう、……うう」  
 「あんだよ、泣くことないだろ?」  
 はあっ、と溜め息をついて、トラップがベッドの横に腰をおろした。  
 そして、私の髪を軽く指で梳きながら、トラップは普段とは別人みたいに甘い、優しい声で、慰めてくれた。  
 「別に泣くことなんか何もねーじゃん。恥ずかしいことじゃねーんだからよ。俺達の年なら、別に普通のことなんじゃねーの?それに、おめえ、こんなことしたの今日が初めてだろ」  
   
 「…ううっ、なんか、トラップらしくない」  
 そう、その時のトラップは、いつもの彼らしくなかった。  
 なんていうか、凄く暖かいっていうか、甘いっていうか…。  
 そう思うと、なんだか可笑しくなってしまって、ふいに涙が止まった。  
 そんな私を愛おしそうに見つめて、トラップが唇でそっと私の涙をぬぐう。  
 いつもだったら、そんなことされたら、きっともっとビックリしちゃってたと思うんだけど、今はそれよりもっと恥ずかしい所を見られた後だったからね。  
 不思議とあまり驚きはなかった。  
 「トラップ…?」  
 「おしえて、やろうか」  
 「…へ?」  
 「やりかた。おめえ、初めてでどこを触れば気持ちよくなるのか、よく分かってねーみたいだし。…教えてやろうか」  
 「トラップは…やりかた、知ってるの…?」  
 「ま、一応は、な」  
  そう言って、ニヤリと笑う彼の顔は、妙に嬉しそうだった。  
  私がぼんやりと、その顔に見惚れていると、彼はゆっくりと顔を近づけて、私に口付けをした。  
 それから、かすれた声で、もう一度、「いいか」と、聞いた。  
 さっきは随分嬉しそうな顔だったのに、今はなんだか不安そうで。  
 めまぐるしく変わる表情がおかしくて、私は思わずうなづいた…。  
 「おねがい、トラップ…教えて?」  
 
 教えて、そう言うと、彼は今度はさっきとは違う、深い深いキスを重ねた。  
 舌が、まるで別の生き物のように、私の口中を這い回る。  
 「んうっ…」  
 あんまり苦しくて、思わず身体をはなすと、トラップは困ったように笑った。  
 「わりい。けど、突然手をのばしたら、怖いんじゃねーかと思ったんだ。」  
 その言葉を聞いて、急に胸の中がほんわか暖かい気持ちになった。  
 「ううん…ごめん。ありがとう。嬉しい…」  
 言いかけてる途中なのに、もう一度繰り返される、キス。  
 そして、彼はセーターの中に自分の手を差し込んだ。  
 「あ…」  
 骨ばった彼の手が、ぎゅっと私の胸をつかむ。  
 最初は優しく、しだいに強く、私の胸をもみしだき、親指と人差し指で、頂点をつままれた。  
 「…っ」  
 不思議。男の人に身体を触られるのって、自分で触るのとは全然違う。  
 どうしよう…すごく、きもちがいい…。  
 その間にも、彼のもう片方の手は、次第に下へと延びていって…  
 「おめえは、さ」  
 トラップが言った。  
 「おめえはさっき、ここを触ってたみてーだけど…」  
 言いながら、彼も、さっき私が触れていた部分に指をのばした。  
 「ぅぁ……っ」  
   
 あ、あれ??な、なんか、さっき私が触ったときとは、少し違うみたい…。  
 何が違うんだろう…。  
 「けど、多分、ここが良いんだと思うぜ?」  
 そして、今度はほんの少し、彼の指が位置をずらす。  
 その時。  
 全身をビリビリと快感が走った。  
 「……ぁあんっ」  
 な、なに?  
 目の前がクラクラするような感覚。頭の芯がぼんやりして…。  
 そんな私を見ながら、ふっと小さくトラップは笑うと、ソノ部分を更にさすったり、つまんだりし始めた…  
 「あっ、あ、もうっ…」  
 「あー…濡れてきたな」  
 「…?」  
 全身の力が抜けて、声もだせなくなってきた。  
 すると、今度は、小さな痛みが走る。  
 グチュグチュと、なんだか恥ずかしい音が、静かな部屋に響いた…。  
 「な…に…して…」  
 悶えながらも必死に声を出したのに、トラップは無言で指を動かし続けた。  
   
 そして…  
 「…ぅぁあんっ」  
 自分でも意識してないくらい大きな声が漏れてしまい、頭のどこか遠くで、「イッたか…」と、小さく呟く声が聞こえた…。  
 

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