「だめ、だめだよギア。わたしのこと触っちゃ…」
指を軽くあてがって、ちいさく擦る。
右手は彼の皮のパンツの中へ。そして左手で、服の下にもぐりこもうとする彼の手を掴む。
骨ばった手は、戸惑ったように(あるいは非難するように?)わたしの左手に従った。…ように見えた。
「…ん、それもだめだよぅ…。いまはわたしがいじめてるんだからね?」
顔を引き寄せて口付けようとする手と瞳。
「良いって言ったんだから、わたしの言うことちゃんと聞いて?」
いじめたい。
いつもいじめられてるから。
夜露に濡れている樹の幹に彼を押し付けて、首筋からキス。うなじ。耳。穴の中まで。
抱きしめようとする腕を両手で掴んで、元の位置に戻した。首を振る。だめ、だめだめ。
ギアはとっても不満げに、でもそれに従った。
声を出しちゃいけない、というのは、最初に決めたルール。
じっと目を見つめると、彼は恨めしそうにわたしを見つめ返した。
…楽しーい。
いつもされっぱなしだったけど、こっちも楽しいな。ギアがなんだか可愛い。
腕を押さえながら、彼の着ているさらさらしたボタンダウンのシャツに鼻先を付けて、滑らせた。
ギアの香りがする…
それをいっぱいに吸い込む。ドキドキする、…どうしよう?
くらくらする。それを必死に堪えながら、シャツに噛み付いてボタンを外していった。
「上手になった?」
これを教えてくれたのは、いまわたしの目の前にいるひと。ギア。
一番最初のとき、彼はわたしのブラウスのボタンを、口で器用に外していったのだ。
唇を右手でなぞって、左手で下着の上から刺激して。
彼の皮のパンツの中で熱くなる「彼」をさすりながら聞くと、ギアは苦笑して、頷いてくれた。
はだけた彼の逞しい胸。どれだけ触っても、きっと飽きないだろうな。
彼の乳首に乳首に唇を近づける。いつもしてくれるように、息を軽く吐きながら触れた。
…こんな感じだったよね?
彼をちらりと見上げると、少し気持ちよさそうな感じで…嬉しくなっちゃう。
だから左手をまた、彼のパンツの中へ滑り込ませた。男の人の下着はちょっと固い。その中も硬い。
舌先で絡め取りながら吸うと、彼の乳首はなんだか立ってきたみたい。
「男のひともここ、気持ちいいの?」
肯定する彼の目。そうなんだぁ。
どうしてだろう。
彼の手は樹の幹を掴んでいるのに。わたしは何もされてないのに。
されているみたいに、体がとっても火照る…
背伸びして深く深く口付けて、しゃがみながら彼のパンツを下ろした。下着も一緒に。
もう立ち上がってる。わたしを誘ってる。
「ねぇギア、舐めてくれって言ってるよ?舐めていい?」
彼の返事を待つ気は…あんまりなかった。
ぺろ、とまず舐めあげた。
そして指で擦りながら吸い込む。奥まで吸い込んで、舐めた。
手にぎゅっと力を込めて、先端から溢れてる液体を舐めとって、また舐めた。
そうしたら、彼はずるずると樹の幹をつたって座り込んでしまった。あれ?
もしかして。
「…気持ちよくて、立ってられなかったの?」
おずおずと聞くと、バツの悪そうな顔で、ギアは目を逸らしてしまう。
うそー。
そんなにいいんだ?
いつもはベッドの上で、仰向けの彼にしてるから…知らなかった。
おなかの下あたりがきゅうう…と熱くなる。
挿れたい…
自然にそう思った。
合わせた視線は二度と外せない。キスするまで。
彼の舌と絡み合いながら、わたしは自分のスカートに手を入れて、パンティを押し下げてしまった。
…こんな。
「自分で脱いだのなんて…初めてだよ」
触ろうとする彼を制止する。大丈夫。
…じゅうぶんに、濡れてるから。
彼にまたがって、そしてわたしはゆっくりと腰を落とした。
「ああ…」
彼も息を吐き出した。
…当たってる。
彼の体を抱きしめて、わたしは腰を上下させた。…彼も突き上げてきた。
「だ、だめだよギア、今日は、わたしが…」
「…もうだめだよ、パステル」
背中に彼の腕が回ってくる。耳元で、唇が囁いた。
「おしまい。俺は、もう我慢できないからな」
「や、だめ、ずるい…ずるいよぉっ…!!」
わたしの非難の声を…彼は、無視した。