とあるシルバーリーブにある居酒屋で私は一人で飲んでいた。
なんでかって言うと…トラップと派手に喧嘩したから。
私とトラップはちょうど付き合い始めて2年ぐらい。
トラップの方から告白されて、私もトラップのことが好きだったからもちろんOKした。
誰が見ても仲の良いカップルで、クレイにも「トラップは本当にパステルにベタぼれなんだな」なんてからかわれることもしょっちゅうだった。
そんな時、トラップが帰ってこない日があるのに気が付いた。
それも毎週決まって同じ曜日に。
今まではこんなことなかったのに、ここ2、3ヶ月、何かと理由をつけて朝まで帰ってこないんだよね。
最初はあまり気にしていなかったんだけど、やっぱり何をしているのか気になってある晩こっそり後をつけてみた。
そしたら――トラップに限って浮気なんてありえないと思ってた自分が馬鹿みたい!!
トラップが待ち合わせをしていた場所にいたのは、私の知らない女性。
トラップが帰ってこなかった理由は、女と会っていたからだったなんて!
私はまさかトラップが浮気しているとは思っていなかった。私だけを好きでいてくれるって信じてた。
私は目の前で起こっている出来事が作り物なんじゃないかって疑ってしまうくらい、トラップのことを信じていた。
ずきんと胸が痛む。もやもやとしたどす黒い塊が私の胸の上にのしかかる。
「何で…何で浮気なんかっ…」
私はそんなに魅力がないのだろうか。飽きられちゃったのかな。
トラップと親しげに腕を組んで歩いている女性を良く見ると、私とは違って対照的な、グラマーかつ大人の雰囲気漂う女性。ふんわりとカールしたブロンドの長い髪、胸元が大きく開いている服に、きわどいスリットの入ったスカート、ゴージャスなアクセサリー、リップが塗られた唇にも艶があって…。
色気ゼロの私なんか到底かないっこない。
トラップの好みの女性がグラマーって言うのはわかってた。だけど…。
トラップは確かに女の子にもてるし、親衛隊もあるくらいだから遊び慣れてる。それでも私に対しては誠実でいてくれるって思ってた。それなのに。
裏切られた。
自分の信じていた気持ちが踏みにじられてショックだった。今は何も考えたくない。いっそ知らない方が幸せだったのかもしれない。
その場に出て行く勇気もなくて、私は夜の町に消えていく二人をただ見送るしかなかった…
翌日の朝、トラップが帰ってきたところを問い詰めたら、意外なことにあっさり浮気を認めて謝ってきた。
「…わりい。実はさ、おめえにばれる前にそろそろ別れようと思ってたんだけどよ。あの女の旦那にもばれてさ…そっちの方も大変でずるずるきちまって」
「なっ!何それ!?あの人結婚してるの!?それって不倫じゃない!!浮気してた上に相手が人妻だなんて
最低!」
「だあら悪かったって!けどよ、俺からあの女を誘ったわけじゃねえからな」
「そんなの、どっちから誘ったとかは関係ないじゃない!自分から誘ったわけじゃないから悪くないって開き直るつもり?」
「あ、あの女が色目使ってきて誘うもんだからつい…な。本当に悪かったって!もうぜってー浮気はしねえから…」
なんて大して反省もしてないような態度でさらりと言ってきた。
浮気も女のせいにするなんて最低!人妻と浮気だなんて本当に信じられない。
トラップもその女も許せない。
――だけど私はまだトラップのことが好き。
昨日まで好きだった相手をいきなり嫌いになるなんて、私にはできない。
別れる決心はつかなくてまだ悩んでるけど、またこんなことがあったら傷つくのは自分。
別れるしかないかもしれない。そのときには「ちょっと考えさせてほしい」って返事をしたけれど。
私はもうトラップのことを信じることができなくなってしまっていた。
「……トラップの馬鹿」
裏切られてもトラップを完全に嫌いになれない自分が悔しい。私の胸に広がった、もやもやとした得体の知れない何かを、とにかく早く忘れたくて、一人で居酒屋で自棄酒をあおってここに至るっていうわけ。
なんだか一人で飲むって寂しい。
忘れようと思ってもどうしても思い出して暗くなっちゃうし。クレイでも誘えばよかったかもなあ。
そんなことを考えつつ、マティーニをぐいっと飲み干そうとしたとき背後から聞いたことのある声で止められた。
「パステル、君にはそのお酒はきつい。一気に飲むのはやめておいた方がいい」
「え…?」
「久しぶりだね」
声のした方を振り向くと、スレンダーな体つき、少し長めの黒髪、端正な顔立ちに切れ長の目、おまけに背も高くってちょっと人を寄せ付けないようなオーラを纏ってるけど、女性にはもてそうなファイター、ギア・リンゼイがそこにいた。
実はギアには昔、プロポーズされたことがあったんだよね。
あの時素直にギアと結婚してたら、こんな辛い思いしなくて済んだのかな、なんて考えがちらっと頭に浮かんでしまった。
ギアって優しくて、トラップと違って大人だから頼りになるし、おまけに強い。
ギアみたいな人が恋人だったら、さしずめ、お姫様を守る騎士のように大切にしてくれそうな気がする。
自分のギアへの気持ちはただの憧れだって思ったからあの時は断ってしまったけれど。
もったいなかったかもって思ってしまうくらい、相変わらずギアはかっこいい。
まだ自分のことを好きでいてくれてるのかな、…なんて。
それはないかな。あはは。
でもそんな風に勘違いしてしまうくらい熱っぽい目で見つめられてるような気がするのは気のせい?
「ギア!本当に久しぶりだね」
「泣いてたのか?パステル。目が赤い」
そう言ってぐっと顔を近づけて私の顔を覗き込む。
うわっ。
こんなに間近にギアの顔を見るとなんだかどきどきしてしまう。
顔も熱いかも…さっき飲んでたお酒のせいかな?
「何かあったのか?俺で良ければ話してくれないか。俺はパステルが泣いている所なんて見たくない。その原因が誰かにあるとしたらそいつを許すわけにはいかないからな」
「ありがとう。実は……あ、話をする前に飲み物注文しなくちゃね」
「それもそうだな。俺はウイスキーをロックで」
今はどこにいるの?とかあれから何をしていたの?とか、他愛もない世間話をした後、出されたお酒を飲みながらぽつりぽつりと私はギアに話始めた。
「あの、ね…私、トラップと付き合ってるんだけど…」
一瞬、ギアの目が鋭く光った気がしたけれど、かまわず話を続けた。
「……浮気されちゃったんだ」
「浮気?最低だな、彼は」
「男の子ってやっぱりグラマーな女の人が好きなのかな。トラップの浮気相手を見たことあるんだけど、私とは全然違って大人っぽくてスタイルも良くて…私なんかじゃやっぱり遊び相手にしかならないのかな」
「それは違う。パステルは十分魅力的だよ」
「わ、私はそんなっ!顔だって十人並みだし幼児体型だし…」
真顔で褒められると、どうリアクションしたらいいのかわからない。さっきよりも顔が熱くなった気がする。
トラップはどちらかというと私をからかうのが好きみたいだから、褒められたことってないかも。まあ、トラップに褒められたらって想像すると柄じゃないって言うか、気持ち悪いかも。
「――私、どうすればいいのかな…?」
カラン、とグラスに氷が当たる音がして、ギアは一気に残ったお酒を飲み干した。
「そういういいかげんな奴とはとっとと別れた方がいい。パステル、君だってもう答えは出ているんじゃないか?
まだ彼を信じることができると言い切れるのか?」
「私はもうトラップのこと、信じられないと思う。でも…嫌いになったわけじゃないからまだ迷ってるの。許してあげるべきなのかなって。男の人なら浮気くらいするものなのかもしれないし」
「俺はそんな最低な真似はしない」
ギアの手が私の手を握ってきた。
突然のギアの行動にびっくりしていると、今度はギアが左手を私のふとももの上に置いてきた。
つつっとギアの指、手のひらが私のふとももを這う。
「ギ、ギア!?」
「俺はまだパステルのことが好きだ」
私もお酒が入っているからか、不思議と抵抗する気が起きなくて受け入れてしまっていた。
ギアに触れられているところが気持ちいい。
私のふとももに触れてさするように撫でながら、だんだんと手がスカートの奥まで伸びてくる。
「あっ……んっ」
「声を出したら他の客に気づかれるよ」
ギアの手がさらにスカートの中に入ってきて、私の下着の上からさする。
息が荒くなる。頭がぼーっとしてきた。
ギア指が私の一番敏感な部分を何度も優しく撫で上げる。
「う…っ……やあっ…それ以上はだ、だめ」
「何が駄目なんだ?もう濡れてきてるよパステル。ほら」
ギアの手を払いのけようとしたけど力が入らない。
秘部にそって指をさらに動かしてくる。
「…くぅ、…あ…あん……んっ…うう…」
「気持ちいいかい?もっと良くしてあげるよ」
「……え…?」
次の瞬間、ギアの指がするりと下着横から中に入ってきて直接触れた。
「ひっ…や、やだ…あん……やめて……はあ……嫌…」
「本当に辞めて欲しいなら本気で抵抗するんだな」
くちゅ、くちゅ、くちゅ
いやらしい音が他のお客にも聞こえてしまうんじゃないかって思ったけど、幸いにぎやかな居酒屋で、店の端っこの壁側に私が座っているからか、誰もこんなことになってるなんて気づいてないみたい。
もう私の理性はどこかに消えていた。ギアに触れられている部分が熱い。何度も何度も指が這う。
大事なところをまさぐられて私は感じてしまっていた。
「もっと乱れた君の顔が見たいな、パステル」
「きゃあっ…んふう……」
指が…私の中に差し入れられた。
ぐちゅ
こんなになってしまうなんて…私、一体どうしちゃったの?もう何も考えられそうになかった。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ
指が激しく出し入れされてさらに快感が襲ってきた。
「んっんっ…う……はあっ……あ、あ、あ、あ、あっ…」
快感の波に溺れて達しそうになったところでギアの指の動きが止まった。
「まだいかせてあげないよ」
意地悪そうに私の耳にささやいて、私の耳を舐めてきた。
「ひゃっ…ふ…あ」
くすぐったいような気持ちいいような感触。私の耳たぶを甘噛みして、ギアの熱い息が私の耳にかかる。
「これ以上はここじゃまずいな」
「ギ、ギア?ちょ、ちょっと…」
いきなりぐいっと私の手を引っ張って店のトイレがあるほうへと連れて行かれた。
「おいでパステル」
トイレの個室に押し込まれた。そして、後ろから私のセーターを捲り上げ、私のブラジャーをずらすと私の胸を少し乱暴に揉みしだいた。
「ここも硬くなってる」
「あんっ…」
くりっと私の胸の先端を摘み上げられて思わず声が漏れる。次の瞬間、無理やりギアに顔を横に向けさせられ、唇を奪われた。
「んん〜っ!!ん…う…」
ギアの舌が貪るように私の口の中を蠢く。ギアの手がスカートの中に入り、先ほどからうずいていた私の
敏感な部分を愛撫する。
指の動きがさっきとは比べ物にならないほど激しい。
口を塞がれてなかったらかなり大きな声が出てしまっていたかもしれない。
私の中に容赦なく指を差し入れては私の敏感な部分をこすりあげる。
あまりの気持ちよさにおかしくなりそうだった。
「んっ…んうう……はあ、はあ、はあ」
やっと長い口付けから解放されて、少し酸欠状態になったのかくらくらして力が入らない。
ギアは私をトイレのタンクの部分に手をつかせておしりを突き出すような格好をとらせると、私のスカートをめくりあげ、下着を膝までおろしてしまった。
「やだあ…恥ずかしいよ……あ、あん…やっ…んっ……」
「そろそろここに……俺のが欲しいだろう?」
「欲しくなんか……ない…もう離して……あんっ…やああっ…あ…あっ」
「そんな顔してやめろと言われても説得力がないな。かえってそそられる」
ぐちゅ、ぐちゅ
卑猥な音がまた聞こえ始める。私のあそこは今までにないくらい濡れていて欲しくないなんて言っても説得力は全くなかった。口では強がって辞めて欲しいって言っても、体は求めているのがわかった。
「や、やだ……うっ、やめてっ…あんっ…」
もう片方のギアの手がいつの間にか胸も弄んでいた。
「我慢しなくていい。パステル」
「ギ、ギア、だめっ…だめだめっ…あっ…っ!」
いきなりギアのそれに後ろから貫かれ、今までと比べ物にならない快感が襲った。
「きゃあ…あ…ああ…ギア…」
ギアはがっちりとわたしの腰を掴んでいて、入れただけで動かそうとはしなかった。
私の中の本能が、もっと刺激が欲しくて腰をくねらせる。
「うう……ギア…ギア……私…」
「動かして欲しいか?」
ギアの顔は見えないけれど意地悪な笑みを浮かべてるような気がした。
「んっ…だめ…変になっちゃうよ…」
「乱れればいい。しかしあまり大きな声を出すと外に聞こえるぞ」
そう言ってギアがゆっくりと動かしてきた。
ぎりぎりまで引き抜かれ奥までずっ、と差し入れられ腰を打ち付けてくる。
ずっ、ずっ、ずっ
「んっ、んっ、ああ…あん…あっ…あんっ…」
「声を出すと聞こえる」
ギアの手で口を塞がれる。
「むぐっ…んんっ…ん、ん、んっ〜〜」
ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ
だんだんと動きが速く激しくなるにつれ意識が朦朧としてきた。
私の口を塞いでいた方の手も腰に回され、ぐっ、ぐっとさらに腰をうちつけられる。
「あ、あん…あぅ…う……あっ…あっ、あっ、あ、あ、んっ、ん、ギアっ…わ、私…もう……」
「いきそうなのか?…くっ…ほら、早く逝け」
ずちゅ、ずん、ずちゅ
「ああっ…あ、あ、あん……だめ…だめ…やあっ……ああっ!」
びくん、びくん
頭の中が真っ白になって達してしまった。
がくん、と、崩れ落ちそうになるところをギアに支えられた。
「はあ…はあ……きゃっ!」
「まだだよ」
ぐいっと、抜けかけたそれをまた奥に突き入れられる。
「あぅ…うっ…うう……」
ずん、ずん、ずちゅ、ずちゅ
激しい動きが再開された。どろどろと溶け合って二つの体が一つになる感覚。もう何も考えられず、
再び快感の波が押し寄せてきた私は、いつのまにか自ら動きに合わせて腰を振ってしまっていた。
「…くっ……俺ももう限界だ…パステル」
いったばかりなのに私もまた達しそうになっていて限界が近かった。
「あん…あっ…ギア…っ」
「いくぞ」
ギアにぐっと腰を押さえつけられて私の中に暖かいものが放たれた感触がしたような気がした。
そして、今度は二人同時に果てた。
店を出た後、ギアに「俺と付き合う気はないか」と口説かれた。
順番は逆になっちゃったけど、ギアと付き合ってみるのもいいかもしれない。
トラップとちゃんと別れたら連絡することを告げて、私たちは別れた。
トラップを嫌いになったわけじゃないけれど、今はギアのこともっと知りたい。
「うーん…でもトラップにはこんなこと言えないし、なんて言えばいいんだろ」
独り言をつぶやきながら、トラップとのけじめをつけるためにあれこれなんと言おうか考えながらトラップの元へと私は向かった。