「もおートラップのバカっ。何やってるのよー!」
「うっせえなー。ありゃ俺じゃなくて後ろの車がわりいんだよっ!」
わたしの文句に、トラップはそっぽを向いた。
わたしの名前はパステル・G・キング。このアンダーソン病院で看護婦をやってるんだ。
目の前で頭に包帯を巻いてベッドに横たわっているのはトラップ。わたしの恋人で、職業は探偵。
忙しくってデートもままならないって、トラップがよくぼやいてるけど。わたしはこの仕事が好きだからね。今のところやめるつもりはないんだ。
で……何でトラップがこんなところにいるのかというと。犯人を追跡中、車で追突事故を起こしたとか……
あれほど、「運転には気をつけてね」って言ったのに!
「わたしが知らせを聞いてどれだけ驚いたと思ってるのよ、もお! 幸い怪我は大したことないって、クレイが言ってたけど……」
「んだよ。なら別にいいじゃねえか」
「よくないの! 2〜3日は検査のために入院してもらうからね。無茶ばっかりして……いい機会だから、ゆっくり休んでよ?」
「ん〜〜そだなあ……」
わたしの言葉に、トラップはぴたっと言葉を止めて。
上から下までわたしの全身眺め回して、にやりと笑った。
「そだな。おめえの仕事着姿なんて、滅多に見れないし……そういやあ、おめえって看護婦だったんだよなあ」
「そういやあってどういう意味よー」
「いんや、文字通りの意味。なあ、おめえ、知ってっか?」
「え? ……きゃあっ!?」
突然、トラップの腕が伸びたかと思うと。わたしは腰を抱き寄せられて、悲鳴をあげた。
「ちょっと……ちょっと、トラップ! いきなり、何をっ……」
「へへっ。おめえ、知ってっかあ? ナースってな、男が抱きてえ職業ベスト3に絶対ランクインしてんだぜ?」
「なっ……し、知らないわよそんなことっ! わ、わたし仕事中でっ……」
「あんだよ。ちっとくらい平気だろ? 患者が痛がって離してくれなかったんです、とでも言え」
「ななな……」
本当に怪我人なの? と疑うような素早さで。
トラップは、腕の力だけで、あっという間にわたしをベッドの上にひきずりあげた。
「きゃああっ!?」
「この制服姿が……なんつーかそそるんだよなあ……」
「きゃあっ、ちょっ……ん、あああっ!?」
ひきずりあげられた拍子に、スカートが派手にまくれあがった。
それを見て、トラップの目がひときわ輝いたように見えるのは……多分、気のせいじゃ……無い。
「やっ、ちょっ……」
「あんま大きな声出すなよ。外に聞こえるぜ?」
「ひっ……んっ……」
トラップの手が無遠慮に伸びて。制服のボタンをあっという間に外してしまう。
大部屋が空いてなくて個室を当てたことを今更後悔する。こっ、この男はっ……
「やだっ……やだ、ってばっ……んんっ……」
「嫌って言いながらも、身体は正直だよなあ……」
耳元で囁かれる甘い声。
トラップの手が、うなじを優しく撫でた後、つつっと胸に下ろされる。
ブラと素肌の間に強引に手をこじ入れられて。もうそのときには、わたしの身体は、熱く火照り始めていた。
「いっ……あっ……んっ、やあんっ……」
「いい声出すようになったじゃねえの」
「ち、ちがっ……やっ……ああああっ!」
「無理すんなって」
首筋に熱いキスを落としながら、トラップは面白そうに笑った。
背後から抱きしめるような形で、彼の手がわたしの身体を這い回るたび。
中心部が熱くうずいているのを、どうしようもなく実感してしまう。
ばっ、ばかっ……ここは、病院なのにっ……
そう文句を言いたいけれど。口をついて出るのは、意味を成さないあえぎ声だけで。
手慣れた様子でわたしの身体をまさぐるトラップが、何だかとても腹立たしい。
「いっ……あ、あんっ……」
手が、下半身にまわった。
もともとまくれあがっていたスカートの内部に侵入して、ストッキングをずりおろしながら、下着の間に手がこじいれられる。
「ほー……すげえな、何つーか大洪水?」
「…………っ」
羞恥で顔が染まるのがわかった。
自分でもわかっている。トラップの手が触れたその部分が、もう下着に染みになりそうなほどに内部から熱い欲望を溢れさせているって……
わ、わたしって……
トラップも、わたしも。
しばらくの間、行為に没頭していた。
だから、気づかなかった。ドアの前で止まった、小さな足音に。
身体がわずかに持ち上げられる。熱いものがお尻の下であてがわれるのがわかった。
トラップの手が離されて、一気にわたしの中へもぐりこんだその瞬間!
「ぱーるぅ。あんね、くりぇーがねえ……」
バタンッ!
可愛らしい声とともに突然開いたドア。
予想外な出来事に、わたしとトラップは、繋がったそのままの状態で、凍りついたように動きを止めた。
きょとん、とわたしを見ているのは。見た目は3歳前後の、ふわふわのシルバーブロンドがとても愛らしい女の子。
もっとも、彼女はれっきとした看護婦仲間(先天的な体質で、身体の成長が止まっちゃってるんですって)。その証拠に、ナースキャップも、制服も。特注サイズだけど、ちゃんと身につけている。
「る、ルーミィ……」
「ぱーるぅ……何してるんだあ?」
ルーミィの視線が、わたしとトラップを交互に捉える。
彼女はトラップのことを知っている。わたしのことを本当の姉みたいに慕ってくれて、何度か三人で遊びに出かけたりもした。
ああ、だけど、だけどっ……い、一体この状況を、どう説明すればっ……
「ルーミィ!」
そのとき。
あわあわと顔を青ざめさせているわたしとは打って変わって飄々とした口調で。トラップが言った。
「ルーミィ、ドア閉めてちっとこっち来い」
「……とりゃー?」
と、トラップ。
あなた、一体何を言い出すつもり!?
わたしは何だかものすごく嫌な予感がしたんだけど。そんなわたしの様子には気づかず、ルーミィは言われた通り、ドアを閉めてとことことこちらに歩いてきた。
トラップが、片手を伸ばして、ルーミィの身体をベッドの上にひっぱりあげる。
トラップの上にわたしが、わたしの上にルーミィが乗るような形になって。そこで、トラップは面白そうに言った。
「なあ、ルーミィ。ちっと俺を手伝ってくんねえか?」
「とりゃー?」
「あのな、パステルがちーっと具合が悪いみたいなんだよな〜。だあら、俺が今診察してやってたとこ」
「具合悪いんかあ? くりぇー呼んでくるおう!」
「いいのいいの。天下のアンダーソン病院の跡取り息子を呼ぶほど大層なもんじゃねえから。だあら、俺が今こうして身体張ってパステルの中を調べてやってんだけどなあ……」
とととトラップ! あなた……あなた一体何をっ……
「けど、ちいっとばかり俺一人じゃ荷が重いんだよなあ。っつーわけでルーミィ、看護婦として、おめえも診察手伝ってくんねえ?」
「診察かあ? やるー!」
「よーしよしいい子だ」
嫌な予感がした。
すごーく嫌な予感がして逃げようとしたけど。トラップの手が、がっしりとわたしのウェストに回っていて、逃げ出せない。
「とりゃー。ルーミィ、何すればいいの?」
「ん〜〜まずな、パステルのここ、見てみ」
「きゃああああっ!?」
ずるり、と。今の今までわたしの中で小刻みに震えていたトラップのソレが、引き抜かれた。
瞬間、身体の中で、満たされない熱いうずきのような感覚が燃え始めるのがわかった。
い、嫌っ……トラップっ!?
ぐいっ、と。トラップの両腕がわたしの膝にまわって。強引に脚を開かされる。
ルーミィの目の前にさらけだされる、わたしの中心……それに気づいて、全身が真っ赤に染まるのがわかった。
「トラップっ……や、やだっ、やだやだやめてっ……」
「ん〜〜患者さんは黙ってな。ほれ、ルーミィ。パステルのここ、何かなあ、濡れてんだろ?」
「本当だおう。ぱーるぅ、どうしたんだあ?」
「ど、どうしたってっ……」
トラップの指が、わたしのソコに遠慮なくこじいれられる。
ぐじゅっ、というような音と共に、内部から溢れ出す何かが、まとわりつくようにしてシーツを汚していく。
や、やだっ……は、恥ずかしいっ……
「トラップ、やめてっ……やめて、ったら……」
「まあまあ、大人しくしてろって。あのな、ルーミィ。ここがこーんなに濡れてたら、診察し辛いんだよなー。だあらな、おめえ、ここなめてやってくんねえ?」
「と、トラップー!!」
「なめればいいんかあ?」
「そっ」
「ちょっ……ルーミィ、駄目駄目、やめてっ……やっ……あああああっ!!」
ぴちゃり
わたしの制止も聞かず。
ルーミィの顔が、ソコに近付けられた。
柔らかくて、生暖かい感触。背筋を走り抜ける、怖いくらいの快感。
理性が飛びそうになるのがわかった。どれだけ我慢しようと思っても。漏れ出す声を、止めることができない。
「やっ……んっ……あ、ああああっ……」
「へへっ。ルーミィ、どんな感じだあ?」
「んーとね、ぬるぬるしたのが、いっぱい出てきたおう」
「そっかそっか〜〜」
そんな会話を交わしながら。トラップの手が、わたしの胸を、脇腹を、背中を。微妙な場所を愛撫していくことを忘れない。
わたしの全身は怖いくらいに火照っていて。理性も何もどこかへ飛んでいくのが、わかった。
「あっ……や、やあんっ……は、ああああっ……」
「……うし、こんなもんか。ルーミィ、ご苦労。次は胸」
「むね?」
「そそ。パステルのここ、な。診察の手伝いのために、なめてやってくれ」
「わかったおう」
そうして、トラップが指差したのは。ついさっきまで自分でいじくっていた、胸の先端部分。
もうすっかり硬くなったそれを、ルーミィの可愛らしい唇がつまみあげた。
同時に、腰を持ち上げる力強い腕。
太ももやシーツ、トラップのパジャマをどろどろに汚すくらいに濡れそぼったソコは、トラップ自身を、何の抵抗もなく、受け入れていた。
「もお、やだって、言ったのに……」
涙で濡れた目で、トラップをにらみつけたけど。
彼はひょうひょうとした顔で、「偉いぞルーミィ、よくやった。さすが看護婦」なーんて、ルーミィの頭をぐりぐりなでている。
わたしは、もう全身からぐったりと力が抜けてしまって。意識がとびそうになるくらいの快感の余韻がまだ抜けきらなくて。
ほとんど身体を隠す役目を果たしていない制服を、直そうという気にもなれなかった。
「トラップのバカっ……もう、最低っ……」
「あんだよ。おめえだって喜んでたくせに」
「っ……だ、誰が喜んでなんかっ……」
「あんだよ。派手な声で腰振ってたくせに。俺達の診察がそんなに嫌だったのかよ。なあ、ルーミィ?」
「ぱーるぅ、ルーミィの診察、嫌だったんかあ?」
トラップの言葉を受けて、ルーミィが、今にも泣きそうな顔でじいっと見上げてきた。
……うっ!
そ、そんな顔されたらっ……わたし、嫌だって……言えないじゃない……
「そ、そんなことないよ? ルーミィ。あ、ありがとうね」
「本当かあ? ぱーるぅ、具合よくなったかあ?」
「う、うん。もうすっかり!」
ほとんどやけくそになって叫ぶと。
トラップのそれはそれは嬉しそうな声が、耳に届いた。
「ほー。それはよかったな……んじゃ、またやってやろうな? し・ん・さ・つ」
「うっ……」
ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべるトラップの顔を見て。
わたしは、悟っていた。きっと、彼が退院するまで……この「診察」は、続くんだろうって。
「ぱーるぅ、ルーミィ、またお手伝いするおう!」
その意味がよくわかっていないルーミィが、元気な声をあげて、トラップに「よーしよし。また頼んだぜ」と頭を撫でられている。
あああっ……わたし、看護婦さんなのにっ……
患者に診察されて、どうするのよっ……!
わたしの心の叫びに、答えてくれる人は、誰もいなかった……