キットンの薬草収集を手伝うため、みんなで森に行った私たち。  
渡された絵入りのメモと籠を手に、森の中で薬草を探しまわる。  
なかなか薬草は見つからず、少しずつ森の奥へ分け入っていくと、  
そこには、探し回っていた薬草が群生していた。  
うれしくなって摘み取っていくうちに、いつものごとく、私は迷子になっていた。  
幾度迷子になっても、心細さに変わりはなく、動かない方がいいと知りつつも、  
声を上げながら皆の姿を探し、辺りを歩き回る。  
時間の感覚が狂いそうなくらいに歩くうちに、疲労感が足を止め、  
私は木の下に座り込んだ。  
低い視線から地面を見ていると、大きなナメクジでも通ったように、てらてらと光る粘液と、  
草の溶けた、黒い土の道筋がどこかへ続いている。  
…それに気づいたときには、すでに周りを数匹のスライムに取り囲まれていた。  
 
皆に届くことがあるのか分からない悲鳴を上げて、そこら辺の土や枯葉を手当たり次第に投げつける。  
それにもかまわず、スライム達は私の方へ歩み寄ってくる。  
枯れ枝を投げながら、スライムを見ると、溶かせているのは枯葉と枝だけ。  
土はそのままかぶったまま、止まることなくにじり寄ってきた。  
きっと、溶かせるのは植物だけなんだ…  
と考えているうちに、一匹が足に張り付く。  
張り付いたところがぬるぬるして気持ち悪い、と思う間もなく、足から急激に力が抜けた。  
え?な、なにこれ…  
必死に足に力を入れても、うんともすんとも言わない。  
別の一匹が腕に張り付くと、服がぼろりと溶けて、腕に粘液が垂れてくる。  
この粘液に触ってはいけないのだと分かっていても、布は溶かされるし、  
土をつけたところで、粘液が肌に触れるのも時間の問題。  
どうすることも出来ず、力が抜けていくのを甘んじて受けるしかなかった。  
 
へたり込んだままの私に、残りのスライムたちも張り付いてくる。  
スカートに触れたところから、ぼろぼろと布が溶けていく。  
お気に入りだったのに…と泣いている暇もなく、次々と身体にスライムが張り付いてくる。  
痺れるだけで、死ぬことはないと思うし、身体が溶かされてしまうこともないようだけど、  
暗い森の中、身を守るものが減っていくというのは、かなり恐ろしさを感じてしまう。  
「ひゃうっ!?」  
おへそに感じる冷たい感触。  
足に張り付き、スカートを溶かしつくしたスライムの一団が、隙間からアーマーの中に入ってくる。  
そして、お腹の上を這い回る。  
もう、一箇所を除いて、下半身にはほとんど感覚がない。  
未だ痺れてないその場所が、身体を這い回る刺激で熱く感じられる。  
「なんか、身体が変な感じがする…」  
誰も聞かないのに、私は一人でそうつぶやいた。  
 
続いて、服の袖を溶かしきったスライムたちも、アーマーの隙間から胸へと這い登ってくる。  
そして、その半分はそのまま背中の方へ這っていく。  
たぶん、アーマーの下に着ているものは全部溶けちゃうだろうな…  
そのうちに、胸の先端に冷たくぬめった感触がきた。  
ぬるぬると這い回って、服を消化していく。  
さっきから熱く感じていたところも、ますます熱を増してきた。  
今すぐ触れたい。  
でも、腕は痺れて動かないまま、足も痺れて、動かない。  
まだ動く首をよじらせ、一人で悶えるだけ。  
背中を、スライムが上下に這い回ってきて、一匹が首から髪へと上っていった。  
完全に身体が痺れて、指先一つ動かせない。  
リボンも溶けて、結んでいた髪の毛がぱさっとほどけた。  
 
しばらくすると、お腹の上を這い回っていたスライムたちが、下の方へと降りてきた。  
溶かしつくして、次の餌を探しに行くのかと思うと、ほっとした。  
けど、それはまだ先のようだった。  
下半身で唯一痺れていなかったそこへと、スライムたちが這い寄る。  
上半身の服を溶かしつくしたスライムたちが、足らないとばかりに一斉に。  
毛糸のパンツの隙間から、ぬるっと忍び込む感覚。  
それはひどく気持ち悪かった。  
粘液で溶かした、パンティだったものを奪い合い、  
熱く疼き続けるそこでスライムたちが暴れまわる。  
ぬるぬるぬるぬる…  
冷たくぬめったスライムが交互にそこをかすっていく。  
身体全体が熱くなってくる。  
ぬるり、とそこのある一部に触れていったとき、  
頭の中が白くはじけ飛んだような感じがした。  
 
意識が飛んだのはほんのわずかな時間だったみたいで、  
はっと意識を取り戻すと、スライムたちは来たときのように、足を伝って地面に下り、  
そしてどこかへ行ってしまった。  
アーマーとブーツだけになった私は、しばらくして皆に見つけてもらえた。  
見つけてもらえた頃には、痺れも消え、一人でも歩けるようになっていた。  
上から毛布を身にまとって帰った私を見て、  
宿屋の女将さんは奇妙な視線でクレイたちを見たけど、  
クレイの説明を聞いて、ほっと胸をなでおろしていた。  
こうしてまた、いつもの私たちに戻った…  
けど、私はあの感覚が忘れられずに、時々自分で再現しようとしてみる。  
でも、なかなか上手くいかない…  
 

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