おれは、迷っていた。
目の前の誘惑に乗るべきか乗らざるべきか…
おれの前には、タオル一枚を申し訳程度に巻いたパステルが…寝そべっていた。
待て、焦るな俺。落ち着いて考えよう。
まずだな。何でパステルはこんな格好で寝てるんだ?
結論:風呂でのぼせたから。
まあ一目瞭然という奴だ。
それは俺がカジノから帰ってきたときのことだった。
冷えた体をあっためるべく風呂場に行くと、脱衣所にパステルが寝そべっていた。
タオル一枚申し訳程度に巻いた姿で……
多分長風呂しすぎて、はいあがってきたところで力尽きたってことだろう。あいつらしい。
いやいやいや原因なんざどうでもいいんだ。
で、この後俺はどうすべきだ?
1、理性を保ち部屋までパステルを送る
2、見なかった振りをして風呂を堪能する
3、理性をかなぐり捨てて……
な、何考えてんだ俺はー!!
と…とりあえず、ここに寝たままというのは良くない。
大変良くない。風邪を引いちまう。
というわけで、おれはバスタオルから除く脚や胸元のふくらみを
なるべく見ないようにしながらパステルの身体を起こした。
…と。
胸で合わさっていたバスタオルがぱらり、と落ちそうになり、おれは慌ててそれを押さえようとした…
が…間に合わない。
!!!!!!
ぴとん、という音とともに…
おれはパステルの胸に手を触れてしまっていた。
…うおおおおおお!!
おれは声無き声をあげてしまう。
ま、待て待て待て!
焦ってはいかん、意識してはいかん!
何でもないことだ。そう……そこに寝ているのは、出るところがひっこみひっこむところが出ている、色気も素っ気も味気も無い人形なのだ。そう思え。
そう自分に言い聞かせながら、俺はそろそろと床に落ちたバスタオルを拾おうとした。
が、しかし。
悲しいかな。本能には逆らえないというか。
床に落ちたバスタオルを拾うつもりでのばした手は、パステルの胸を、つかんでいた。
触れたのではなく、つかんでいた。
むにっ
俺達男の体ではぜってーありえないような柔らかい感触。
どぐんっ!!
心臓がはねた。
ついでに理性がいくつかとんだ。
かたくとじていた目をそっと開く。
目にとびこんできたのは……一糸まとわぬパステルの姿。
…お…
思ったより…あるな、胸…
何だか変なことを考えてしまう。
一度触れて、もう止めろ!と叫ぶ理性と。
もう触っちまったんだから、あとはどれ位触っても同じだよ、と誘う欲望。
おれの中で天使と悪魔の囁きが交錯した。
…触るだけならいいじゃねぇか
―駄目だ!パステルに対しての裏切りだぞ!
…関係ねぇよ。どうせこいつは寝てるんだ。今がチャンスだぜ…
そのときだ。
パステルが、聞きたくも無いうめき声をあげた。
「うう…ん」
頭の中がパニック状態になってしまう。
酒呑んで帰ってきた頭に、冷静な判断を強要するんじゃねぇ!
この…ボケパステル!
…もうしらねぇ。
おれの中の悪魔が勝利し、掴んだ胸をゆっくりと揉みしだいた。
いつもいつも、出るとこひっこんで〜とバカにしてきたが。
どうしてどうして、こうしてもんでみると……
意外と、しっかりした手ごたえが返って来る。
ちなみに言っておくが、俺とてこういったことに慣れているわけでは……断じて、ない。
っつーか初めてだ。うまいのか下手なのか、それもよくわかんねえ。
そんな俺の愛撫に、パステルは
「ん……あっ……あんっ……」
わずかに身じろぎしながら、それはそれは悩ましげな声を上げはじめた。
か……感じてる、んか?
っつーかそれならさっさと目を覚ませよ!? 鈍いにもほどがあるぞ!?
いやいや、目え覚まされたら困るだろ、俺。言い逃れできんぞ、この状況。
頭の中でパニックな俺と冷静な俺の会話が広がる。
が、しかし。そんな理性と本能の会話など関係なく、手は動きを止めようとはせず。
やがて……
つつつつつっ
胸から、徐々に下へ、下へと、指を動かしていく。
……待て。さすがにそれは洒落にならんだろう、俺。
理性九割、本能一割な状態の脳が告げる。だが……
「やあっ……」
パステルのうめき声に、実にあっさり理性一割、本能九割くらいまで比率がうつりかわる。
これまでよく持った方じゃないかとは思うが、俺自身も、その……きっちりと18歳健康な青少年らしい反応を示し始めて……
そのときだった。
「ん……ん?」
ぱちっ
何の前触れもなく、パステルの目が……開いた。
いや、ここまでよく持った方と言うべきかもしれないが。
パステルの目がまん丸に開いて、じーっと俺を凝視する。
その口が、悲鳴の形に開いて……
やばいっ!!
気がついたときには、俺は自分の唇で、パステルの悲鳴を封じていた。
「んんむ!んむんむ!」
混乱してじたばたするパステルの身体を無理矢理押さえつけ、唇を吸う。
くねる脚を自分の足で組み敷き、「静かにしろ!」と小声で怒鳴りつけた。
目にいっぱい涙を溜めて、パステルは状況を理解すべく辺りを見回している。
…そのとき、おれの頭の中では様々な言い訳が飛び交っていた。
でもどんなものも、この状況を説明するには不十分すぎた。
どうみたってこれは…パステルを襲おうとしてる格好だろう。
やっと状況を理解したらしいパステルが、口を開いた。
「と、トラップ……? 何、してるの……」
何してるのって。
見りゃあわかんだろ。おい。
いやいや、わかっちゃいるけど認めたくはねえんだろうな。
そりゃあな。多分こいつにとっちゃ、俺はただのパーティーの仲間。
正直、男として認識されていたかどうかも怪しいもんだ。
その仲間に、突然襲われたなんて……まあ、認めたくはねえだろうなあ。
ぐいっ、と腕に力をこめてパステルの両肩をおさえつける。
膝の間に自分の足を割り込ませて無理やり脚を開かせる。
ここまで来たら……さすがに、もう何を言っても通じねえ……だろうな。
混乱してるパステルに悲鳴をあげさせる暇を与えず、胸に吸い付く。
舌先で転がしてやると、「ひゃんっ!」と小さな悲鳴をあげて、パステルは身をよじらせた。
唇の間で、胸の先端が徐々に硬くなっていくのがわかる。
おれは心のどこかで、(こんなとこで、こんな格好で寝てるこいつが悪いんだ!)
…と考えていた。
風呂あがりで上気した肌、潤んだ瞳、しっとりとした髪の毛…
最初の段階で理性が飛ばなかったのを褒めてほしいくらいだぜ。
おれはパステルの足を掴み、ぐいっと持ち上げた。
「ト・・トラ…あ、あぁっ…」
その場所を、パステルに見えるように舌先でいじる。
風呂上りのそこは赤く充血して、誘うように膨らんでいた。
「あっ、あぁん!ふぅっ、や、やぁ…っ、やめ…」
おれの舌の動きに合わせて、パステルが身体をよじった。
とろっ
実際にんな音が聞こえたわけじゃねえが……効果音をつけるとしたら、それしかあるまい。
パステルのそこから溢れ出した蜜が、俺の舌先に触れる。
わざと音を立てて吸い上げると、パステルの体がびくん、とのけぞった。
「やあっ……! やめ、やめてっ……やだっ、こんなの……」
「……静かに、しろっ」
ぐりっ
赤く充血しているそれを、やや乱暴につまみあげる。
多分痛かったんだろう。パステルの声が涙声になった。
……わりいな。俺、今おめえを思いやってる余裕がねえんだわ。
理性なんか丸ごとふきとんじまって……
乱暴に舌をこじいれると、蜜はますます量を増した。
……いいんじゃねえの? そろそろ
初めてのときは痛えって言うし。愛撫には時間をかけろって言うけど
もう十分じゃねえ?
俺は、十分過ぎるほどに反応しきった自分自身を握り、パステルのそこにあてがった。
パステルの目に恐怖の色が走る。
「やだっ、やめて、お願いやめて、こんなの嫌……い……」
「っせえ、静かにしろって、言ってんだろ!!」
悲鳴をあげられたら面倒だと、パステルの唇を再び塞ぐ。
そのまま……俺は、パステルを貫いていた。
…っくあああ!
入れた瞬間身体に走った快感に、果てそうになってしまう。
まるで体中がパステルの中に入っているような気がする。
それまで抵抗を続けていた唇からは喘ぎ声か泣き声か判断のつかない嗚咽が発せられはじめた。
その泣き顔にすらおれは欲情してしまう。
夢中で突き上げ、かき回す。そのたびにびりびりと震えるパステルの身体。
「…やあぁ…はんっ、うう…ああ、あっ、うっ、あん!」
おれはたまらなくなって、気付かぬうちにスピードを上げていた。
それに合わせてパステルの嗚咽も高まっていく。
そして…こいつが声をだすとき、微かではあるが中がきゅっ、と縮んで、おれを責めた。
パステルの両の乳房を再び揉みしだき、そこに顔を埋めながらスピードを更に上げ、深く刺し貫き…
おれは、パステルの中に放出していた。
はあ、はあ…… 俺とパステル、両方の荒い息が脱衣所に響き渡る。
や、やっちまった…… 欲望が静まると同時、俺の中に激しい後悔の念がわきあがってくる。
何てことしちまったんだ。……どんな顔して、パステルを見ればいいんだよ?
ちらり、と視線を向ける。パステルは……手で顔を覆って、泣いていた。
そりゃ……そうだろうな。こんな風に処女を奪われちまうなんて、ショックだろうな。
どうすりゃいいんだ? 謝るか、開き直るか、冗談でごまかすか…… いやいや、ここは素直に謝るべきだろう。……どう考えても俺が悪い。
「す、すまねえ……」
「…………」
「あの、本っ当に、悪かったと」
「どうして謝るの?」
「は?」
「好きでもないのに、抱いたから……謝ってるの?」
ぽつんとつぶやくパステルの声に、非難の色は……まだ、無い。
「……違う」
「じゃあ?」
「好きだから抱いた。けど、おめえの意思を無視して抱いたから、謝った」
「……じゃあ、許す」
はあ? その答えに、思わず耳を疑う。おいおい、いいのか? いや、俺が文句言う筋合いじゃねえが。
「わたしのこと、好きだから……抱いたんだよね? 誰でもよかったわけじゃないよね?」
「っ……ったりめえだろ。おめえだから……そこに寝てたのがおめえだから抱いたんだよっ」
「……よかった」
パステルは、涙でぐちゃぐちゃになった顔で、それでも笑ってみせた。
「わたしも、トラップのこと、好きだから……今度は、こんな風にじゃなくて……もっと優しくしてくれると、嬉しいけど」
……なあ、今の言葉って、夢じゃねえよな? こんなことがあって……いいのか?
とりあえず。これからは、精一杯優しくしてやろう。それが俺にできる一番の償いのようだから。
俺は、パステルの唇に、この上なく優しいキスをしてからつぶやいた。
――好きだ