やっと、手に入れた。
ほくそ笑むのをとめられねえ。おれの手の中にはパステルのシャツが握られていた。
お揃いになった、とむくれるアイツにまあ多少イラついたが、目的は果たせたんだ。よしとしようじゃねえか。
ちなみにのん気なパステルは、自分のシャツを洗っているつもりでおれのシャツをただ今洗濯中だ。
鈍感な奴で助かったぜホント。
つうか気づけよな。大きさとか細部とかだいぶちげえだろ。
それともあれか。おれのシャツ洗いたかったんか?ん?
などとバカなことを考えて気をそらしていたが、限界だ。
誰もいないことと近づく気配がないことを再度確認。よし誰もいねえ。
おれは握り締めてしわくちゃになったパステルのシャツを抱きしめた。
船に乗る前からきていた、相当のお宝だぜ。
すーはーと深呼吸してシャツについた匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
磯くさい香りに混じって、確かにパステルの匂いがする。
野郎と違って、なんでだろな、こう、どっかしら甘え匂いがすんのは。
すれ違った時にかすかに感じる、首筋の匂いと同じだ。
それに気付いて、一気に固く張り詰めた。
ああくそ。こんなんで感じてんなよバカ野郎!
「パステル・・・っ」
我ながら欲情しまくった声で名前を呼んだ。
こんなん聞いたら、確実にアイツは俺を見限って逃げるな。
でも仕方ねえだろう?何の因果か、おめえに、惚れちまったんだからよ。
欲しがることをやめられねえ。きっと手に入らないのに。
張りつめたものを握りしめて、ただパステルのことを考える。
こんなもんで、するなんて、バカみてえ。
「パステ、ル・・・っ!」
吐きだしたものを手で受け止めた。
大事にしてえなんてらしくないことを考えてんのに。
それと同じくらい、汚してえ、と思う。
「つかまんなよ、パステル」
きっと、ぐちゃぐちゃに、しちまうから。