「きゃっ!」  
背後からいきなりばふっ、と抱きしめられた。振り返らなくても相手が誰かってすぐにわかるんだけどね。  
「もー、やめてよ、クレイってば」  
「……あ゛?」  
あえて冗談で言ったつもりだったけど…はは、この状況じゃ冗談にならないよね。後ろから何やらいやーな空気が流れてくるのがわかった。  
「もー、トラップ!冗談だってば」  
わたしはすぐ後ろで腕を回している相手に振り返らずに言った。  
「…おめぇ、それ冗談になんねぇから」  
あ、まずい。ちょっと声が怒ってるかも。  
押し殺したように小さな声だったけど、彼の場合すごーくわかりやすいんだよね。  
「へへっ…びっくりした?」  
振り返ると、トラップは鋭い目つきでわたしを睨んでいた。  
「ったく……冗談じゃねぇぜ」  
そう言い残すと、くるっと振り返ってすたすた歩き出す。  
ま、まずい!本当に怒っちゃったのかな。  
「わわわ…ちょ、待って!」  
慌ててトラップの腕を掴むと、一瞬彼の目が光った気がした。  
えっ?  
そう思ったのもつかの間。  
「きゃあ!」  
両肩を掴まれて壁に押し付けられる。そしてそのままトラップの顔が近づいてきて…。  
「ん…っ」  
強引に唇を奪われた。  
そのままたっぷり30秒間、わたしは身体と同時に唇の自由までも奪われてしまった。  
「…ぷはっ!」  
やっと唇が離され、我慢していた酸素を吐き出す。  
「はぁ…っ…は、っ…強引だよ…」  
息を整えながらトラップに抗議した。  
「けっ!おめぇが余計な冗談言った罰だ。つーか、おめぇ、嫌なんて思ってねえだろ」  
「え、えーと…」  
まあ、実を言うとこういうのも悪くないよね、なーんて思ってたんだ。あはは!  
「ん、じゃあもっとしてもいいってことだよなぁ?」ずい、と思いっきり顔を近づけたトラップ。  
え?ええーっと…。もっとっていうと…。まぁ、そういうことなんだろうけど。この場合、『うん』って言っていいもの!?  
「え、えと…」  
返事に困ってると、トラップはわたしの頭を掴んで無理矢理縦に振った。  
「きゃっ!なにすんの」  
「へへ、これがおめぇの答えっつー事で間違いねえよな?」  
そう言うと再び私の頭を掴んで縦に振った。  
「やっ」  
思わずトラップの手を払いのけると、ちょっと怒ったようなすねたような顔をした。  
「……んだよ、嫌かぁ?」  
そう言った顔が叱られた子供みたいにかわいくって。今度はわたしの方から唇を突き出し、そのまま無防備な唇を奪う。  
それから、ちゅぅっという音を立てて唇を軽く吸うと、それに応えるようにわたしの唇をこじ開けるようにして舌をねじ込ませた。  
「んんぅ……っ」  
舌同士がとろけそう、ううん、なんだか……身体までとろけちゃいそう。全身が甘く痺れるようなキスの最中に、トラップとふっと目が合った。  
それを合図に唇が離れる。  
「っ……はぁ、おめぇ、こんだけキスしといて嫌とは言わせねぇかんな…」  
壁に身体を押し付けられて、そのままトラップが覆いかぶさる。  
「……んっ」  
あ、また…。  
唇の先にトラップが触れた瞬間、からめとられるように舌がまとわりつく。それと同時に、膝にトラップのあったかい手の感触。  
「んぅ……」  
なんか身体がぞわぁってする…!でも…いやじゃないかも。き、きもちいい…?のかな…?  
「……あ?」  
トラップの手が太股に差し掛かったとき、ふとその手が止まった。  
 
「え、どうしたの?」  
そんな問いにも答えず、トラップはただ神妙な顔で太股を触っている。  
「ちょっ、くすぐったいってばぁ!」  
両手で太股を撫でまわしたあと、今度はわたしのウエストに手をかけて抱き寄せた。  
「な、なに?」  
すると今度は腰周りを両手で撫で回した。  
「ひゃっ!ちょ、ちょっとくすぐったい!ひゃ、ははっ、やめ、やめてってばぁ…ぎゃははは…」  
わたしが一人ヒーヒー笑ってるというのに、トラップは一人冷静で。  
何かを確かめるようにひとしきり触った後、ぽつりと言った。  
 
「なぁ、パステル…おめぇ太ったんじゃねえか?」  
「な……っ!」  
突然何を言い出すかと思えば!  
「違うってかぁ?」  
今度はお腹の肉をつまむ。  
「きゃっ!」  
「へへっ、やっぱそうだよな!おめぇ、このところよく食ってたもんな」  
「う…」  
勝ち誇ったような顔のトラップに、返す言葉がない。  
確かに最近、なんだかご飯がおいしくって。  
我がパーティの食欲魔神、ルーミィがびっくりするくらい食べちゃってたんだもん。  
『あ、クレイ、もういらないの?』とか言って人のお皿から勝手に食べてたくらいだし……。  
「うう…そうかも」  
突然トラップは落ち込むわたしの両頬を軽くつねった。  
「…ひょ、ひょっほぉー…はに、ふんほぉ!?」  
「そーいや、顔に肉ついたみてぇだな」  
「はなひへひょー!」  
「わぁーったわぁーった」  
やーっとわたしのほっぺから手を離してくれた。んもー、おもちゃじゃないんだからぁー。  
そう思ってむくれてると、ニヤニヤ笑いながらトラップの手が伸びてきた。  
「顔じゃなくて…この辺につけばよかったのになぁ」ってそこ!  
わたしの胸じゃないのよぉー!  
「もぉー、トラップのえっち!」  
「いて、いてて!もー、パステルちゃん、怒っちゃやーよ!」  
わたしがぽかぽか叩くのを、へらへらしながら避けるトラップ。  
「うるさい!もぉー、一言余分なんだからぁ…」  
「でもまぁ、今の方が触り心地はいいぜぇ?なんつーか、こう…やらけぇモチ抱いてるみてーでさ」  
も、モチってあんた!  
…にしても。  
くぅぅぅぅ…。くやしぃぃぃ―――…。  
でも、今の体型じゃなーんにも言い返せない。  
所詮モチなんだもんね、はぁぁ。でも、このままってのも何か悔しい。  
「……決めた」  
わたしがつぶやくと、トラップはぽかんとなった。  
「あ?」  
「わたし、ダイエットする」  
「はぁ?」  
「痩せればいいんでしょ?痩せられるもん」  
わたしの強気な発言に、トラップはため息混じりに言った。  
「やめとけ、やめとけ。どーせ『明日から痩せるもーん』とか言って今日の晩飯たっぷり食うんだろ」  
「いらないもん。ご飯、食べなかったら…痩せるでしょ?」  
「あまい、あまい、あまーい!おめぇそんな簡単に痩せられたらなぁ、世の中の太ってる奴ぁ苦労しねぇんだよ」  
「無理かどうかなんて、やってみなきゃわかんないじゃないのよう。とにかく、今日からご飯、いらないから」  
そんな決意を固めたわたしを見て、一瞬だけ驚いたみたい。  
ふふ、わたしだってやるときはやるんだから。  
 
「…つーか、おれは別に今のまんまでもいいんだぜぇ?」  
「ふんだ。おモチなんか抱きたくないでしょ」  
「いや、そこが癒されるっつーか…だから、な?」  
そう言いながら再びわたしの脚に手をかけてきたんだけど、  
「だーめ!痩せてから!」とキッパリ断った。  
すると、トラップは明らかに不機嫌そうな顔をした。  
「けっ!じゃ、やってみろってんだ。ま、おめぇじゃ無理だろーけど」  
なーんて憎まれ口まで叩く始末。  
ふんだ。  
悔しいから絶対痩せてみせるもん!  
 
 
と決意したわたしだったのだが。  
なんと、その夜挫折してしまったのだった。  
だって……こんなに残酷なことって他にある?  
猪鹿亭に行っても、みんなが美味しそうに食べてる横で水だけ。  
「パステル、どこか気分でも悪いの?」  
そう言って心配してくれるリタ。  
「う、うん。ちょっとね…」  
全っっ然!悪いところなんてない。でも、ダイエットしてるから食べたくない…なんて…言えないよね。  
ううう、ごめんね、リタ。  
「ぱーるぅ、こえ、たべないんかぁ?」  
わたしの横でルーミィがミケドリアの串焼きを口いっぱいに頬張っている。  
うう……おいしそう。  
たっぷり脂ののったミケドリアをこんがり炭火で焼いて、猪鹿亭秘伝の甘辛いタレをつけて…。  
あああ、なんかめまいがする。  
「パステル、何も食べないなんて逆に身体に悪いぞ。ちょっとだけでも食えよ」  
そう言ってクレイはわたしに一本串焼きを差し出した。  
ごっくん!  
思わず生唾を飲み込む。  
そ、そうだよね。一本くらい食べたところで太ったりしないよね?  
「そ、そうだね。じゃあ…」  
そう言って手を延ばそうとした。  
うっ…。  
わたしの視界にトラップの「だから、おれの言った通りだったろ?」って勝ち誇った笑顔が入ってきた。  
くぅぅぅぅ。  
「やっぱり…いい…」  
泣く泣く手を引っ込めた。  
そんなわたしの反応に、みんなはちょっと変な顔をした。  
「パステル、もしかしてダイエットですか?」  
ずばり言われたキットンの言葉。  
「えと…」  
「だーえっと、ってなんらぁ?」  
ルーミィの無邪気な声に、再びリタも近寄ってきた。  
「パステル、そういうことだったの?そんな必要ないじゃないの」  
そんなことないんだってばぁ。  
わたしが必死に首を横に降ると、リタはトラップに詰め寄った。  
「トラップ!あんたパステルに何か言ったんじゃないの?」  
「はぁ?こいつが勝手に一人でやってんだよ」  
ったく、あんたでしょ、あんた!にしても、なーにむくれてんのかね。  
「残念ですが…パステル、断食は痩せませんよ」  
「ええー!?どういうこと?キットン」  
「食事を抜くことで逆に身体が飢餓状態になって、余計に太りやすい身体になってしまうんですから」  
「パステル、食べないと、身体こわす」  
ノルもキットンに同意する。  
えぇ――…そんなこと言われたら…。  
 
すると、お皿の上のミケドリアが視界に入る。  
ごくっ。  
ちょっとだけ……いやいや、だめだってば!  
頭の中で食べる、食べないの争いが起こっている。  
「ぱぁーるぅ、ルーミィ、もうおなかいっぱいらおぅ…」  
わたしが食べない分、余計に食べちゃったんだろうね。ルーミィのお皿の上には1本だけ串焼きが残っている。  
 
思わずそれを掴むと、思いっきりかぶりついた。  
んんー…。  
肉汁が口の中いっぱいに広がって…。  
 
 
 
結局。  
追加で2人前は食べてしまったのだ。  
はぁぁぁ。自己嫌悪。  
肩を落とすわたしにキットンが声をかけてくれた。  
「パステル、そんなに痩せたいんでしたら、いいもの持ってますよ」  
「本当?キットン」  
いつもはあやしいと思うわたしだけど、もう溺れるものはナントカだわ。  
キットンの話しに食いつくと、彼は嬉しそうに話し出した。  
「ぐふ、エベリンに行ったときに手に入れたんですがね、脂肪分を吸収してくれるキノコが…」  
「あまい、あまい、あまーい!」  
それまで黙っていたトラップが急に怒鳴った。  
「おめぇなぁ、そんな胡散くせぇキノコなんかやめとけ。そんなんで痩せれたら苦労しねぇんだ」  
「な、なんですか!トラップは人聞きの悪い!」  
「るせぇ!大体なぁ、そんなに痩せたきゃ運動しろっつーの」  
それまで静かにわたし達の様子を見ていたクレイ。  
トラップがそう言うと、急に何かひらめいたように膝を叩いた。  
「そうだ、パステル。こいつ昔ダイエットしたことがあったんだ」  
…トラップが?えーと…ああー!確かにそんなこと言ってたよね。小さい時太ってたーって話。  
「け!だぁら、なんだってんだ」  
「え?いやぁ、お前一応ダイエット経験者だろ?パステルにいいダイエット方法教えてやれるかなって思ってさ」  
てっきり『やなこった』と返ってくるかと思ったら、意外や、意外。あっさり引き受けてくれた。  
これには提案したクレイも…だけじゃなくてその場にいた全員がびっくりしたんだけど。  
「へへっ、でも今からはちーっとばかし早すぎっから…夜中だな」  
「え?そんな遅く?」  
思わず聞き返すと、トラップはニヤッと笑った。  
「つー訳で…後でおれの部屋こいよ」  
??  
なんだかよくわかんないけど、痩せろって言い出したのはトラップだもんね!  
 
 
 
という訳で。  
みんなが寝静まったあと、わたしはトラップの部屋をノックした。  
「おう、入れ」  
そう言われてドアを開けると、上半身裸で、下は下着だけのトラップが立っていた。  
「なっ、なんでそんな格好してんのよ!」  
その問いには答えず、わたしを強引に中に引っ張るとドアを閉めた。  
カチリ。  
鍵の閉まる金属音が部屋に響く。  
「な、なによぉ。ダイエットに協力してくれるんでしょ?」  
「そーだよ、なんか文句あっか」  
「ひ、昼間の続きがしたかっただけじゃないのぉ?」  
 
「ん?何かしたっけ?」  
「…!」  
すっとぼける赤毛頭をぽかっと殴る。  
「けけ、冗談に決まってんだろ。つーか、なに?おめぇ、そんなにエッチしたかったのか?ん?」  
なんて意地悪そうに言ってきた。  
「………!!」  
え、エッチって…  
トラップがそんな格好してるから、そう思っただけじゃないのよぉ!  
だから、別にしたい、とかそんなんじゃなくて!  
「パステル、おめぇの気持ちはよーくわかった!」  
あーあ、だめだ。  
この赤毛頭にはわたしの言い分なんて通りっこない。  
「もー、それは置いといて…結局何するの?」  
そう言うと、トラップはわたしをベッドに座らせ、ちょっともったいぶって話し出した。  
「まーそう焦らせんなって…」  
「教えなさいよぉ」  
「へへっ、今巷で話題になってんだろ?朝バナナダイエットっちゅー…」  
「ああ!」  
すぐにピンときた。  
確か冒険時代のコラムに載ってた気がするもん。確か、朝ご飯をバナナに代えてやるダイエット方法だった気がするけど。  
「え?じゃあ何で今なの?」  
そう聞くとトラップはわざと胸を張って答えた。  
「まぁ、せかすなって。おれ様のダイエット方は、その……いわゆる、夜バナナっちゅーやつだ」  
「へ?朝じゃないの?」  
そう言うとトラップはちょっとため息をついた。  
「おめぇ、今までの会話でわかんねぇわけ?」  
なんて言われても。  
「うーん…とりあえず、バナナ食べればいいんだよね?あれ?そういえば、どこにあるの?」  
そういえば、ほの暗い部屋の中にはバナナなんて見当たらなかった。  
すると突然、トラップは自分の履いていた下着を降ろした。  
「きゃっ…」  
「ぶぁーか。バナナって言ったらすぐにピンとくるもんだろ」  
そう言われて、初めてトラップの言っていた意味がわかった。  
目の前で重力に逆らうように反り返った彼自身は…そりゃあもう、バナナといえばバナナなわけで。  
いやー、実に的確な表現だよね!  
なーんて、ムードもなく、そんなことを考えてしまった。  
「なんだ、結局トラップも…なんていうか、その、そういうこと、したかった…んでしょ?」  
付き合ってからたった一度だけ、トラップとしたことはあるんだけど、まだハッキリと言うのに抵抗はあった。  
それに、まだ裸にも慣れていない。  
この前は…夢中だった…って言うと変かもしれないけど、とにかく、いっぱいいっぱいだったんだよね。  
「いちいちうるせぇな。とにかく、ほれ」  
そう言うと、わたしにずい、と自分のモノを突き付けてきた。  
「な、なに?」  
おそるおそる見上げると、トラップの目はギラギラした獣のように見えた。  
「夜バナナっつたら…これを口でしごくんだよ」  
ええっ!?  
く、口でって…。  
「顔の肉も、これでちったぁ引き締まるかもしんねぇぜ」  
なーんて言われてもなぁ…。  
わたし、トラップの…その、アソコって…こんなにじっくり見たことないんだもん。  
赤黒いバナナ(っていうのも何か変な話だけど)の先っぽからは、チラチラとヨダレがにじみ出している。  
「ほら、垂れてきちまう」  
ちょ、ちょっと待ってよぉ。まだ心の準備ってもんが…。  
わたしが一人アタフタしていると、トラップは  
「ま、おめぇにはダイエットなんて出来ねぇつぅこったな」  
なーんて憎まれ口を叩いてきた。  
 
「下の口では食えたのに、上の口では食えないですか、そーですか」  
ううっ。  
付き合っているとはいえ、トラップの毒舌は相変わらずなんだから。  
でも、やっぱりここまで言われたら悔しい。えーい、なんとでもなれってんだ!  
わたしは意を決して目の前に突き出された棒をパクッとくわえてみた。  
「ん……ぅ」  
むっとむせかえるような体臭。  
な、なんか思ってたよりおっきい…。それに、すっごい熱いし。  
思い切って吸ってみると、びくん、とトラップが軽く痙攣した。  
「うっ……く、パステル、もっと、舐め…ろ」  
トラップが苦しそうにわたしに言った。  
え、えと……こんな、感じ?  
先っぽをちゅぅっと吸うと、トラップの雫が口の中に広がっていく。甘いような味が、わたしの頭まで突き抜けていって、痺れちゃう。  
も、もっと……もっとトラップが…欲しい、欲しいよ…。  
刺激するたびにトラップから露がとろりとにじむ。それがなんだか嬉しくって、思いっきり吸い込んだ。  
「…ってぇ…。パステル、もちっと、軽く…」  
「ほ、ほひぇん…」  
「強く吸えばいいってもんじゃねぇ…こう、もうちっと……緩急を…つけて」  
ええー?よくわかんないんだけど…。  
「も、もっと…奥まで…」  
そう言うとトラップはわたしの頭を持ってぐっと棒を押し込んだ。  
「んっく!」  
ちょ、苦しい!苦しいってば!  
手をバタバタさせて抵抗すると、やっと離してくれた。  
「げほっ……今、喉まで入ったんだからぁ…」  
「へへ……わりぃ」  
そう言うと再びわたしの頭を持った。  
もぉー、強引だなぁ。  
でも、何だか不思議なんだけど。この行為が嫌じゃなくなってきたんだよね…。  
最初はトラップが頭を動かしてくれたんだけど、次第に慣れてきたのか、自分から動かせるようになってきた。  
舌を竿の裏に軽くあてて顔を前に突き出せば、自然に喉の奥の方まで入ってくる。そうやって出し入れするたびに、トラップは小刻みにびくん!びくん!と反応した。  
んー…でもちょっと顎が疲れてきたかも。結構おっきくて口いっぱいに入ってるからきついんだよね。  
「……疲れたか?」  
わたしの髪を撫でながら優しくトラップは聞いた。  
彼のモノをくわえた状態で見上げると、なんだか恥ずかしくなってきちゃった。  
口から出すと、びよん、とトラップ自身がしなる。  
あれ、こんなにおっきかったっけ…?  
思わず見入ってると、「あんまり見んじゃねえ」とぺしっと頭を叩かれてしまった。  
「ん…ちょっと…」  
そう言うと、トラップは満足そうに笑った。  
「な、効きそうだろ?夜バナナ」  
「…うん」  
そう言うのは恥ずかしかったけど、ほんとに顎がだるくて仕方ないんだもん。  
「でも…もちろんこれだけじゃ終わんねぇからな」  
そう言うとトラップはベッドの上に座った。  
え……てことは…?  
トラップを見つめていると、彼はわたしを両手で抱き寄せた。  
「座れよ」  
え?座るって…。ここかな?  
トラップに跨がると、トラップは自分自身を片手で支えながらわたしをその上に座らせた。  
「んひゃぁ…んっ」  
固くなったトラップ自身が腰を沈めるとぐぐぐっと入ってくる。  
「ぁあ…んっ、ぁ、ぁん、ぁぁ」  
おっきい、トラップが、トラップが…入ってる!  
 
「…今日はおめぇに動いてもらうかんな…くっ」  
動いたら、おかしくなっちゃうかも……っ。  
そう思いながらも、本能のままに腰が浮く。  
すっと抜けるような感覚が刺激と同時に余計に欲しくなって、再び腰が沈んだ。  
「ん…くっ、パステル…」  
トラップは苦しそうにわたしの腰を掴んで、呼応するように腰を振った。  
下から突き上げるように刺されて、腰を浮かせると抜かれるような苦しさに溺れそうで。  
息もできないほどなのに、どこまでも求めるように身体は意識とは関係なく動いた。  
「パステル……お、おれ、もう……」  
そう言うが早いか、トラップが中で精を吐き出した。  
「んぁあああぁぁっ……!」  
それと同時に、お風呂に入ったようにじゅわっと身体が熱くなった。  
 
 
 
「パステル、ちょっと痩せたんじゃない?」  
何日か経って、猪鹿亭で食事をしていたわたしにリタが聞いてきた。  
「そ、そうかな?」  
「顔もちょっとシャープになったみたいじゃない?ねぇ、クレイ」  
「え、えーと…そうかもな」  
もぉー…クレイったら、絶対、気付いてないな。  
えへへ、でもリタの言うとおり、確かに最近痩せたかもしんない。  
「でも、パステルはどうやって痩せたんです?最近食事は前よりは減ったみたいですけど」  
キットンがパンを頬張りながら聞いてきた。  
「えと……それは…」  
チラッとトラップの方を向くと、ギロッとわたしを睨んでいた。  
もぉ、言えるわけないでしょー?  
夜バナナダイエット――…なんて言ったら、男の人はすぐにピンときちゃうよね!  
「トラップが運動付き合ってくれてるんだよな?」  
ドキッ!  
クレイの何気ない一言に、思わず身体が硬直する。  
「へぇー、トラップが?珍しー」  
リタも話に食いつく。  
「ま、これ以上見苦しくなったら困んだろ?」  
なーんて、言うんだけど。  
でもね、トラップったら、ちょっと体重が減ったときに「…頑張ったな」って言ってくれたんだよね。  
それがすごいうれしかったんだー!ふふっ。  
「ねぇ、パステル。どうやって痩せたのよ?やり方教えてよ」  
「え…っ、そ、それは」  
「じゃあ、トラップ。パステルと一緒にあたしも教えてよ」  
「ブッ!!」  
リタの言葉に、トラップが飲んでいた水を吹き出した。  
「うわっ、きったねぇな!トラップ!」  
「とりゃっぷ、きっちゃなーい」  
「トラップあんちゃん、大丈夫デシか?」  
 
 
まぁ、リタを含めて…は、やっぱり出来ないけどね。  
でも、痩せてからもしばらくこのダイエットは続きそう。  
え?リバウンド防止?  
まぁ、それもあるんだけど、実は…なんか、病み付きになっちゃったみたいで……へへ。  
 
 
こうして、わたしとトラップは夜な夜な秘密の『夜バナナダイエット』に励むのだった。  
 
 
 
 
END  
 
 

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