ギアはたくさんのオーナリの実を持って戻ってきた。  
逃げ遅れたんじゃないか、って心配してたわたしに対してトラップがひどい言い方をしたもんだから、思わずかっとなって言い返してしまった。  
 
だって『いなくなってラッキーだな』とか言うんだもん!  
彼の口の悪さは天下一品だけど、言っていいことと悪いことがある。  
さっきまではトラップの態度に対して落ち込んでたけど、今は何でそんな言い方するんだろ!って少し腹ただしかった。  
 
んもー。  
 
よってまた、わたし達はすごーく気まずい雰囲気に。  
 
はぁぁ。  
 
 
わたし達はグリムラの店を後にし、森の中を歩いていた。  
オーナリもここで初めて食べたベルルもおいしかったんだけど、さっきの言い合いがあってからなのか、何となく胸がつっかえてる感じがした。  
 
「ぱぁーるぅ!おーなぃ、もっとたべうー!」  
わたしのすぐ横を歩いていたルーミィが急に騒ぎだした。  
「ほら、ルーミィ。ベルルの実ならここにいっぱいありますよ」  
キットンがベルルの房を持ってルーミィを呼んだ。  
「べううちがうのー。おーなぃ、もっとたべうのー!」  
彼女、こう言い出すと聞かないんだよね。  
「じゃ、ルーミィ。わたしさっきのお店に取りに行ってくるからここで待っててくれる?」  
「わぁーったお」  
わたしはなんとなくほっとしていた。  
ダンジョンの中とはいえ、少しでもこの場を離れたいと思ってたからだ。  
ここにいると、なんとなくトラップと気まずいし…  
 
「パステル一人じゃ心配だ。おれも一緒に行くよ」  
クレイが声を掛けてくれた。  
うう、確かに。  
もう一度さっきの店に戻れる自信はなかったし、やっぱりいつモンスターが出るかもしれないダンジョンで1人で歩くのは危ないもんね。  
 
「いや、おれが行くよ」  
遮るようにギアが口を開いた。  
「石に目印つけたのはおれだし、おれが行った方が早いと思う」  
うーん、確かになぁ。  
ちらっとトラップを見ると彼はさも面白くないといった様子でこっちを見た後ぷいっと後ろを向いてしまった。  
ったくー。   
何がそんなに面白くないんだか。  
 
「クレイ、ごめんね。やっぱギアと行ってくる」  
クレイには悪いけど、わたしはそう答えていた。  
トラップもそれを聞いてこっちを向いて一瞬戸惑った目をしたけど、また後ろを向いてしまった。  
 
さっきの当てつけ?  
そんなんじゃない。  
わたしはトラップに妬いて欲しかったのだろうか。  
 
 
「…………かな」  
ん?  
気付けばわたし達は石の前にいた。  
「あっ…」  
やだやだ!  
わたしったらボーッとしてたんだ!  
「えーっと、えーっと…」わたしがあたふたしていると、そんな様子を見て、ギアはクックッと笑った。  
ふえーん。  
気まず−い…  
 
「…もう!何がそんなにおかしいんですか!」  
わたしは強気に言うと、ギアはわたしの頭を撫でた。「あんた、かわいいよな」そういってニヤッと笑った。  
からかってるんだ、この人!  
ちょっと大人だからって…  
わたしは顔が怒りで沸々と赤くなっていった。  
 
「んもー!からかわないでくださ…」  
そう言った時だった。  
わたしは何かに口を塞がれた。  
あまりに突然のことで一瞬何がなんだかわからない。ちょっと冷たくてしっとりしたものが唇を塞いでいた。  
えーっ!!  
ちょっと、ちょっと、ちょっと!  
これって……………  
 
もう頭がパニック。  
ギアはわたしの唇から離すと、わたしを正面からぎゅっと抱きしめた。  
ちょっとごつごつした腕と肩。  
決して広くはない胸板。  
でもわたしをしっかりと包んでいた。  
 
「パステル…」  
急に名前を呼ばれ、わたしは我にかえった。  
思わずギアを突き飛ばす。  
 
「…なんでこんなことするんですか!」  
ギアは笑った。  
しかし、さっきのようなちょっと意地悪っぽいのとは違う。  
わたしの目をしっかりと見てこう言った。  
「好きになったんだ」  
えっ…  
えっ、えっ、えっ  
ちょっと待って!!  
好き?  
好き?  
 
わわわわわわわわ……  
 
あまりのことにまたまたわたしはパニック状態。  
カーっと顔が真っ赤になっていくのがわかった。  
 
「あの盗賊があんたの彼氏?」  
わたしは思いがけない一言に思わずブッと吹き出した。  
「違う!違います!なんであいつが……」  
トラップの顔が思い浮かんだ。  
「そりゃ、トラップはやたらギアにつっかかるけど…そんなんじゃないです」  
「素直じゃないな、あいつ」  
そう言って再びわたしを抱きしめた。  
全身が脈打つ。  
わたしは初めてのキスで心がどこかに置いてけぼりになっていた。  
ギアはわたしの背中が石にもたれるように押し付け、目を閉じた。  
 
わたしはギアのことを特に異性として意識はしていなかった。  
出会ってすぐということもあるし。  
でも、初めての甘い雰囲気にわたしは酔ってしまったのだ。  
思わず目を閉じる。  
 
冷たくてちょっと固いギアの唇がわたしの唇と重なる。  
むにっとした柔らかく弾力のある感触。  
全身の感覚が唇に集中しているかのようだ。  
 
するとわたしの口の中に粘り気のある何かが入り込んできた。  
「……んふっ」  
我慢してとめていた息が漏れる。  
唇よりももっと滑らかでとろけそうなのはギアの舌だった。  
「あふっ…」  
声が漏れる。  
彼は自分の舌でわたしの口の中をまさぐって、わたしの舌と絡め合わせてきた。わたしの唾液とギアの唾液が混ざり合う。  
なんともいえない甘い恍惚にわたしは身を委ねていた。  
時折ギアは舌先でわたしの上あごをなぞるように舐めたり、唾液を含んで唇をくちゅっと吸った。  
 
あ…  
ちょっと…もらしちゃった…。  
わたしは自分の下半身がじわーっとあったかくなるのを感じた。  
 
「ん……ギア…」  
口を塞がれながら呼ぶとギアはわたしから顔を離した。  
口の周りはどちらのものとも分からない唾液でビショビショになっていた。  
 
「はぁ……、なに?」  
ギアは荒い息をつくと、わたしの目をじっと見た。  
「ごめん、ごめんね…ちょっと、トイレ行きたいなって……」  
わたしが彼の腕から抜けだそうとすると、逆にがっちりと押さえ付けられてしまった。  
 
「やっ…」  
「だめだ」  
そう言うとギアは左手をわたしのスカートの中に入れた。  
「やっ…だめ……」  
おもらししているかもしれないという羞恥心で彼を制止したかった。  
彼の指が毛糸のパンツ越しからわたしの敏感なところをなぞる。  
「…あっ…」  
じわっと濡れるわたしの下半身。  
やだやだ、これ以上触られるともっと出ちゃう…  
「…ギア…や、めて…」  
わたしは彼を見つめて懇願した。  
「すごいな、パステル。こんなところまで濡れてるよ」  
あーあ…  
もらしちゃったのギアにわかっちゃった……  
あっ…そういえば毛糸のパンツ履いてたんだった。  
おもらししたりつくづく子供だなぁって思われてるんだろうな。  
 
「やらしいな。きっと下のパンツはビショビショだね」  
 
彼はそう言って屈むと私のスカートの中に顔を突っ込んだ。  
「…いやっ…」  
そうしてわたしの毛糸のパンツを膝まで下ろした。  
急にすっとした風が太股をなぞる。  
「パステル、こんなに濡れてて気持ち悪いだろ。グチョグチョになってる」  
そう言ってわたしの太股の間に手を伸ばした。  
「だめ……そこは…」  
彼の指がわたしの下着から直に一番敏感なところに触れる。  
「ひゃあん…」  
濡れた下着がわたしの秘部をこすった。  
「だめぇ……オシッコ…」じょわっとした熱い感触がした。  
「気持ち良くなっちゃったんだね。大丈夫だよ、オシッコじゃないから」  
そういって彼はわたしの下着の隙間から直にわたしの熱くなったあそこに触れた。  
ヒダヒダの間からから粘っこい愛液を指にからめとり、わたしの蕾をなぞった瞬間、身体が自然にびくんとなった。  
「ぁ…ん」  
わたしがのけ反って思わず喘ぐと、ギアはスカートから顔を出し、愛液が絡み付いた指をわたしの目を見たままべろんと舐めた。  
やだ……恥ずかしい…。  
「おいしいよ、パステル。」  
恥ずかしくて目をそらすしてしまった。  
「中はもっとグチョグチョかな?」  
そう言って再びわたしのあそこに指をいれようとしたその時。  
 
「パステル−!」  
恍惚を切り裂くわたしを呼ぶ声に、その場に凍り付いてしまった。  
 
「パステル−!てめぇどこ行きやがったんだ」  
なんとトラップがわたしを探しに来ていたのだ。  
ぎゃーーーー!  
トラップからはちょうど影になって見えないところにいたんだけど。  
この状態を見られたりなんかしたら…  
ぎゃーーーー。  
最悪なんてもんじゃない。  
わたしは急に快楽の坩堝から現実に引き戻された。  
そしてなんだか申し訳ないような気がしてきた。  
トラップに当てつけのようにギアと二人で来てしまったこと。  
ルーミィにオーナリを持ってくることを口実にするかのように、ギアと快楽に溺れていたこと。  
 
「ちっ…」  
ギアは立ち上がるときに下ろしていた毛糸のパンツを上まで上げて舌打ちした。  
「ねぇ、ギア。ここではやっぱりまずいと思うの。みんなだって心配してると思うし」  
わたしが必死に彼に懇願すると、ギアは  
「…じゃあパステル。今度は2人っきりの時に」  
そう言ってわたしをぎゅっと抱きしめた。  
そのとき、ギアの下半身がわたしの太股に触れた。  
ズボンの上からではあったけど、なんだか暖かくて固かった。  
 
「パステル−!」  
トラップがだんだん近くに来ている。  
「ギア、もう行かないと」「パステル、今度はもっと気持ち良くしてあげるから」  
ギアはわたしの耳元でささやくとぱっとわたしから離れた。  
わたしは思わず走って「トラップ−!」と呼び声に応えた。  
それを聞き付けトラップが走ってきた。  
「パステル!あにやってんだ!てめぇどこまで行ってたんだよ」  
「ごめぇん……」  
「ったく…あんた、こいつをどこまで連れてくんだよ」  
そう言って、ギアをジロッとにらんだ。  
「勘弁してくれよ、ったく…」  
そう言って彼は今来た道を引き返した。  
 
ごめんね、トラップ。  
わたしは初めて感じたこの快楽をしばらく忘れることが出来そうにもない。  
わたしがギアを見上げると彼はいつの間に持ってきたのだろう、オーナリの実をわたしに見せた。  
「あーっ!」  
すーっかり忘れてた!  
「あんだよ」  
先に歩いてたトラップが振り返ってわたしを見た。  
「んーん、なんでもない!」  
わたしは首を横に振った。今日のこと、それからこれからのことは、わたしと彼との秘密………  
 
わたしはギアの手をぎゅっと握った。  
 
 
END  
 

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