わたしにプロポーズするだなんて半魚人だけだと思ってた。 
それなのに、まさかまさかギアにプロポーズされるなんて……! 
ストロベリーハウスの夜に告白された熱もまだ冷めやらぬままなのよ? 
もぉー、ドキドキしすぎてどうかなっちゃいそうだよぉ。 
「パステル……大丈夫かい?」 
そんなわたしを心配そうに見つめるのはギア。 
うう。わたしを大丈夫じゃなくしてるのはギアなんだからね? 
ドキドキして、胸が苦しくて……だけど、心はぽーっと暖かい。 
あぁー。わたしってば、どうしちゃったのよ!? 
「う、うん。大丈夫……かな?」 
そんなわたしにギアはにっこり微笑んだ。 
「あんまり大丈夫そうじゃないけど?」 
「えぇー!?うーん?あの、その……」 
ギアの言葉でさらにドキドキするわたし。 
だってだって、ギアってば少しいじわるそうに言うんだもの。 
優しそうな目をしながら、からかわないでよ? 
「そうだ、ペンダント。付けてみてくれよ?」 
「あっ、そうよね」 
わたしが早速ペンダントを付けようとするとギアは、 
「おれが付けてやろう」 
そう言って、ギアはペンダントのわたしの手から取り上げた。 
「うん……」 
一瞬、触れた指先にわたしの心臓はまた早鐘のようになってしまう。 
はぁぁぁ。一生分ドキドキしてるかも……。 
後ろでまとめた髪の毛の結び目の下をギアの骨ばった手が通る。 
まるでギアの両手に包まれてるようなこの状態……あぁ、もぉー!心臓が飛び出しちゃいそう。 
ギアの視線はペンダントに向いてるんだけど、一点を見つめる彼の表情にわたしはときめいた。 
男の人が何かに集中してる表情って、こんなにかっこいいんだぁ。 
ま、ギアは何もしなくてもかっこいいんだけどね。 
首筋にシャラっとひんやりした感触がして、 
「はい、できたよ」 
「ありがとう、ギア」 
「……よく似合うよ」 
「えへへ。後で鏡で見てみるわね」 
「ああ。そうするといい」 
ギアってば、何て愛おしそうな目で、わたしを見るんだろう。 
そんな目で見つめられたら溶けちゃうよぉ。 
ん?あれれ? 
そういえば、ギアのアーマーの肩の飾りも、赤い石なんだぁ!? 
プレゼントされたペンダントも銀色の天使が赤い宝石を持ってるデザインなのよね。 
こ、これは……! 
一気にほっぺが熱くなる。 
「どうした?」 
「えーっとぉ。もしかして、この赤い石ってギアとお揃いなの?」 
「……うん。嫌かい?」 
「ううん、すごく嬉しいの」 
あぁ、声が震えちゃってるよぉ。 
目も泣いてるときのように熱い。 
だってだって、ギアってばそんなにわたしのこと好きなのかな? 
そりゃ、プロポーズしてくれてるくらいだもの。 
すごく好きなのよね。 
ギアとのこと、いろいろ思い出してみる。 
知り合ってまだまだ短いけど、ギアがわたしにしてくれることはどれも優しく暖かい。 
ギアはわたしを包み込んでくれる人。 
大好きな両親を一度になくして、どこか心に穴が空いてるわたしには、愛されてるって実感がすごくすごーく幸せだった。 
ギアも家族同然のパーティーのみんなを一度になくしてるんだよね。 
……同じ傷を持ってるから、わたしの愛し方をよく知っているのかもしれない。 
「パステル……」 
胸がいっぱいになって、またわーっと泣き出したわたしをギアは抱きしめてくれた。 
たぶん、たぶんね。わたしもギアのこと幸せにできると思うんだ。 
ううん。わたし以上にギアを幸せにできる人なんて……いないよ? 
まだ自分を取り戻せたとは言えない、なんてもう言わせないからね? 
わたしがきっと他の誰よりもギアのことをわかってあげるから。 
「ギア」 
「何だい?」 
「……わたしでいいの?」 
「パステルがいい」 
そう言って、ギアはわたしにキスをした。 
わわわ。 
ちょっと冷たくて、やわらかな……キスってこんなに優しい感じなんだぁ。 
わたしはギアにされるがまま、とろーんとしてしまう。 
気持ちいい、なぁ……。 
長いキスが終わると、わたしとギアは見つめ合った。 
「ねぇ、ギア」 
「どうした?」 
「……早くガイナに帰りたいな」 
「そうだな。キスキンのお家騒動が終わったら、な?」 
「うん。そうね。早く王女さま役も辞めたいし」 
「それは、きっと辞められないんじゃないか?」 
「えぇぇぇー!?どうしてよぉ!?」 
「……おれにとってパステルは本物のお姫さまだから、一生な」 
特上の笑顔でそう言うと、ギアはまた、わたしの唇を塞いだ。 
 
おわり 
 

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