ここはストロベリーハウスの牢屋。 
わたしはスワンソンの罠でここに監禁されているんだ。 
しかも、見張りのヒルと二人きり。 
だぁぁぁー。 
もう最悪。 
「入るぞ」 
聞き慣れた低い声。ギア! 
良かった、ギアが来てくれた! 
ギアの端正な顔を見てわたしはほっと胸をなで下ろす。 
「ボスの指示だ。あとはおれに任せろ」 
「そんじゃ、飯でも食いに行ってくっか。愛しのルイザちゃんが待ってるからな」 
デレデレした様子のヒルは軽い足どりで牢屋を後にした。 
ヒルが足音が遠ざかるのを確認すると、わたしは、 
「ギア!」 
と駆け寄った。ギアも駆け寄る。牢屋の鉄格子越しに手と手を取り合うわたしたち。 
そしてお互いを呼び合った。 
「ギア!」 
「パステル!」 
 
心細くて仕方なかったけど、見張りがギアなら安心だよね。 
あんまりうれしくって涙が出てきそうになった。 
「パステル。実は部屋を移動することになったんだ」 
「え!?牢屋から出れるの?」 
「ああ。スワンソンの指示だ。今、鍵を開けるから」 
ギアは牢屋の鍵を開けて入ってきた。 
そして、 
「パステル、すまない」 
そう言って、わたしを抱きしめた。 
「ギ、ギア?なんで謝るの?」 
別にギアのせいじゃないもの。というか、この状況!!! 
「いや……」 
すっと体を離したギアの表情が曇っている。 
一体どうしたんだろう? 
でも、わたしはそんなに深くギアの表情の意味することを考えなかったんだ。 
それはすぐにわかることになるんだけど……。 
 
「ここだ」 
案内された先はなんともスワンソンらしい毒々しいピンク一色の部屋。 
外観と同じく所々にイチゴが装飾されていて。 
客間のようで大きなベッドがある。 
そのベッドもキツい緑の枕、シーツはイチゴを模した模様。 
どれも趣味がいいとは言えない。 
それでも、牢屋よりはましだけど。 
「それで、どうなったの?マリーナやアンドラスは?キスキン国から来てるって使者は?それに何で牢屋から出してくれたの?」 
わたしはギアにものすごい勢いで質問する。 
「パステル……。単刀直入に言った方がいいかな」 
なんだか悪い予感。 
ギアの顔も曇っている。 
「バレてしまったんだよ」 
「え……っ!?」 
「エレキテルコンコルドって知ってるか?超特急便なんだが。それで知らせを受けたキスキンの使者が今日さっそく来たんだ」 
「……!」 
「さらに運が悪いことに、スワンソンが彼らと一緒にランチでも、って外に出かけたときに本物の王女を見つけて……王女はその場で取り押さえられたんだ」 
「そんな……みんなは!?」 
「それが……。おれが行ったときにはみんな無事に逃げたようだが、どこへ逃げたのか……。あんたを見捨てることはないと思うけど」 
「……」 
もうショック。わたしは言葉を失う。 
だってだって。わたしは監禁されてるし、みんなは行方不明なんて。 
どうすればいいの? 
それにわたしは?ニセモノってバレたなら監禁する意味もないよね!? 
「スワンソンは彼らが逃げ出したことでパステルに借金を肩代わりさせるつもりだ」 
「そんなぁー!?」 
さらに追い討ちをかけられる。 
こんなことって……。 
「だけど無理だろ?おれはスワンソンに言ったんだ」 
「ギア……!」 
「もともと存在しない借金だし。それで借金の代わりに……」 
ギアが言い淀んで目を伏せる。 
「スワンソンはあんたたちが騙そうとしてきたことに、ひどく腹を立てているんだ。それで……、おれは命令されている」 
「な、なにを?」 
「あんたを無理矢理犯せって」 
「う、うそ……!?」 
「そうだな。うそならどんなにいいか……すまない」 
「ギア……?」 
じりじりと距離が縮む。 
「ひゃぁっ!」 
わたしはベッドに押し倒されると、ギアのすごい力で押さえ込まれた。 
「パステル……、こんなことになって、本当にすまない。だけど命令なんだ」 
「そ、そんなぁ!?ギア!?」 
「大声を出しても無駄だ……みんな知っている。連中が喜ぶだけだよ。おとなしくしてくれ」 
ギアの眼はどこか切なそうだったけど。やめてくれそうな雰囲気はなかった。 
「むぐ……っ!?」 
突然、荒々しくキスされる。 
ギアの舌がわたしの口の中をかき回して。それは唾液が混じり合うようなキスだ。 
抵抗してみせるけど、力でかなうわけがない。 
「やめてっ!お願いよ……ギア」 
「おれはあんたたちの味方である以前にここの用心棒なんだ。パステル、ごめんな」 
ギアの指がボタンを素早く外す。 
下着もずらされ、ギアはわたしの胸にしゃぶりついてきた。 
右手は乳房を激しく揉んでいる。 
「やめて……!やめてよぉ……」 
ポロポロと涙がこぼれ落ちる。 
それなのに、わたしは感じてしまっていた……。 
「やだぁー!やだよぉー!」 
すがってもやめてくれない。 
仕事らしく淡々と続けるギア。 
どうして、ギアが……。わたしはそのこともショックだった。 
優しかったギア。いつだって、わたしを助けてくれたのに。 
「助けて……」 
そんな声、誰にも届かない。わかってる。それでも、期待してしまう。 
ガチャッ。 
ドアノブが回される音。 
まさか……!? 
だけど、わたしの期待なんて一瞬で砕かれ、さらなる絶望を感じただけだった。 
「なんだ?もう始めていたのか。せっかちなやつめ」 
スワンソンだ……。回りに用心棒といった風貌の男たちを引き連れ、ニヤニヤとこっちを見ている。 
「よくわれわれをだまそうとしてくれたものだな」 
わたしをなめるように見ながらスワンソンは言った。 
「楽しいショーを見せてもらうよ?」 
圧倒的な絶望の前に、わたしはもう抵抗する力もなかった。 
涙だけが乾かず流れ続けた。 
 
ギアはスカートをたくし上げると下着を取り去った。 
服は脱がさないんだ……。 
そんなことに、ほっとしてしまうくらいにわたしは追い詰められていた。 
ギアがベルトを外し、欲情しきったモノをさらけ出すと、誰かが口笛を吹く。下品な笑い声。卑猥な言葉。 
わたしはすでにギアだけではなく、この部屋にいる全員からいろいろな方法で犯されているようなものだ。 
悔しくて、悲しい。それに怖い。 
これからされるであろうことは知識として知ってる。 
だけど、まさかあんなに大きいなんて……! 
怖いよ……!助けて……! 
わたしが壊れちゃうよ。 
そんなに大きいの……入れないで……! 
だけど、そんな願いも空しく、いきり立ったギアのモノがわたしのアソコにあてがわれる。 
入んないよ。無理だよ。 
わたしは恐怖のあまり抵抗できなかった。 
「ゃあぁぁぁぁぁ……っ!」 
声だけは我慢したかったのに。 
突然、大きなモノがわたしの中にズブリと挿入された衝撃でわたしは声を上げてしまった。 
「痛いよぉ……」 
わたしはもう泣きじゃくるばかりだ。 
ギアはそんなわたしを抱きしめて、耳元で囁いた。 
「パステル……、すまない。すぐに終わらせるから……」 
ギアの優しい声と対照的な乱暴な行為。 
未だに信じられない。 
下世話な言葉や笑い声がたくさん聞こえてきた。 
スワンソンはショーって言ってたっけ。 
さぞ楽しんで見ているんだろう。 
くやしい……。 
それなのに感じてしまってる自分もいる。 
なんで? 
本当はもっとロマンティックな初体験を望んでいたのに。 
ギアは悲しそうにわたしを見ながら腰を振っている。 
すごく事務的にわたしを抱いている。 
「ぁん……っ」 
抑えているのに声が漏れる。 
突然、スイッチが入ったように早くなるギアの動き。 
「ぁっ、ぁんっ、ぁんっ」 
声を抑えようにも抑えきれない。 
「お嬢ちゃん感じてるぜ?」 
下品な笑い声が響き渡る。 
もう、やだよ……。 
「く……っ、イク……っ」 
わたしの中で大きくドクンと脈打つとギアは欲望を解放して果てた。  
 
「ギア・リンゼイ。裏切り者という噂があったが……実にいい仕事をする」 
満足げなスワンソン。 
「約束は守るんだろうな?」 
約束? 
「もちろん、ここにいる皆も満足させたらな」 
うそ……っ!こんなにたくさんいるのに!?いやぁっ! 
だって、だって、何人いるの!? 
「な……っ!?話が違うぞ?」 
厳しい口調のギア。 
どういうこと? 
「我々を甘く見てもらっては困るな……」 
「く……っ」 
「やはり裏切り者という噂は本当なのか?ギア・リンゼイ?だいぶその小娘にご執心なようだが?」 
「そもそも彼女たちの借金自体でっち上げだろう?おれは彼女を傷つけた。それで十分じゃないのか?もういいだろう?」 
「だから言っている。この場の全員を満足させたら解放してやると。わたしはこんな小娘に興味はないが……たまにはおもしろいか?」 
「スワンソン!」 
ギアは床に置いたロングソードを拾い上げた。 
「おっと。やめたほうがいい。いくら高レベルのファイターでも多勢に無勢ではな」 
「くそっ」 
「や……っ!?」 
ギアとスワンソンがそんなやり取りをしているうちに、誰かがわたしを背後から押し倒した。 
うそでしょ!? 
「ぃやぁ……っ!!!」 
抵抗する間もなく……。誰かのモノがわたしに押し込まれた。 
「パステル!」 
「ギア!助けて……!」 
ズンズンと後ろから激しく突かれる。 
いやだってば! 
ギアは助けようとしてくれてるけど、他の用心棒も手練のようで、攻撃をかわすのにいっぱいいっぱいだ。 
「うぅ……っ」 
ドクンっと大きく脈打ち、男が呻く。 
そして、わたしを突き刺してたモノが引き抜かれたけど、またすぐに違う誰かのモノが押し込まれた。 
「惨めなものだな。高利貸しにナメた真似をしたらどうなるか……思い知ったか?」 
わたしの目の前で、ニヤニヤしているスワンソン。 
彼はファスナーを下ろすと、いきり立ったものをわたしの口に押し込んだ。 
「む……っ」 
スワンソンと用心棒の男に、わたしは上下の口を同時に犯される。 
「おっと。歯はたてないでくれよ?もっともそんなことしたらどうなるか……わかってるだろうが。ほら、どうした?くわえてるだけじゃ気持ちよくないぞ?早くしゃぶれ」 
高圧的なスワンソン。くやしい。 
「なるほど。従う気はないわけだ?じゃあ、こうするしかないな」 
スワンソンはわたしの髪の毛を掴んで腰を前後に振り始めた。 
「んーっ、んーっっ」 
く、苦しい……。喉の奥に押し込まれるたびに呼吸が止まる。吐きそう。 
だけど、わたしがどんなにえづいても、スワンソンは腰を深く動かすのを止めてくれる気配はない。 
くやしさと苦しさで涙がぽろぽろこぼれる。 
もちろん、その間にも、わたしは次々と犯されていた。 
解放されては、すぐに欲望を突き立てられる。 
「おまえみたいな女には、もったいないが……。最高級の白ワインを飲ませてやろう。ははははは」 
スワンソンの腰の動きが激しくなって、わたしの喉の奥に生暖かい精液が大量に放出された。 
こんなもの飲みたくないのに……! 
条件反射で飲んでしまった。吐きそうな味に嫌悪感でいっぱいになる。 
「知り合いの娼館に売り飛ばしてやるから、借金の25万Gを返済できるように働けよ?利息はおまえを売り飛ばした金で帳消しにしてやろう。悪い話ではないだろ?」 
そ、そんな!?そこまで悪い話、他にないわよ!? 
「明日からは、毎日いろんな男に犯されて金がもらえるぞ?楽しみだな?まったく、おまえのような女がわたし相手に詐欺をしようとしてたとはな。片腹痛い。おい、おまえたち。あとは好きにしろ。気が済むまで犯してやって構わない」 
薄く色の付いたサングラスの奥のスワンソンの瞳が残酷な色を帯びる。 
しかも、それは楽しそうで。わたしは深い絶望へと突き落とされた。 
「さあさあ、まだ終わらないぜ?」 
わたしは体を仰向けにされる。 
「泣いてる顔を見ながら犯してやるよ」 
「やだっ」 
わたしは両手で顔を隠したけど、他の男たちにその手を押さえつけられた。 
そのうちの一人はわたしの手に自らの勃起したモノを握らせ、わたしの手に自分の手を重ねこすらせる。 
周りで見ていた男たちは思い思いにわたしの体を弄んだ。 
左右の胸は吸われ、もう片方の手にも誰かのモノを握らされた。 
唇には唾液を流し込むようなキスをされたり、傍観しながら自らのモノをこすり、達した瞬間にわたしの口の中に出す男もいた。 
そして、 
「ほら、よーく見ろよ?今からこれをハメてやる」 
目の前に堅く充血した塊を突き出される。 
「や、やめて……」 
もちろん、さっきまでも嫌だったけど。こんなに顔が見える状態なんて……! 
「ゃぁ……っ」 
誰かに乱暴に差し込まれていた指が引き抜かれ、代わりに熱い疼きが突き刺さる。 
「こりゃいい」 
男は気持ちよさそうな声をもらしながら腰を振る。 
もうこれ以上泣くもんかと思ったのに、わたしはいつの間にか涙をこぼしていた。 
「その顔たまんねーぜ」 
さらに興奮した男は激しく腰を打ちつけ、果てた。 
それからも何回も何回も相手が変わり発情の塊を突き入れられる。 
何度も口に精液を出され、気持ち悪くてついに吐いてしまったわたしを男はぶった。 
「次は顔にかけてやる」 
回りから歓声が上がる。 
この人たちはどこまでやれば気が済むのだろう。どこまで汚せば気が済むのだろう。 
だから、王女役なんて、嫌だったのに。 
どうして、みんな逃げたの?わたしを助けてくれないの? 
「はぁはぁ…っ、イクっ」 
生暖かく白濁とした生臭い液体がわたしの頬を、唇を、首筋を濡らした。 
くやしくて、くやしくて涙が止まらない。 
「くそっ」 
ギアの声が聞こえた直後、 
「ぎゃあああー」 
男の悲鳴が響き渡った。 
「逃げるぞ、パステル!」 
わたしの体を素早くシーツでくるみ、ギアはわたしを抱き上げた。 
そして、見てしまった。 
男たちの一人が大量の血を流し、倒れているのを。 
うそ……。 
ギアがやったの? 
どうして? 
冒険者が人を斬ることは、事情があっても罪に問われてしまう。 
それなのに……。 
怖くなったわたしはギアの首筋にぎゅっとしがみついて、何も見えないようにした。 
「しっかり掴まってろよ?」 
ガシャンっ! 
これは窓が割れる音? 
次の瞬間、体がふわりとした後、ドンっとした強い衝撃。 
どうやらギアは窓から飛び降りたらしい。 
そして、ギアはわたしを抱いたまま、ひたすら走りつづけたのだ。 
 
「開けてくれ!おれだ!」 
ギアが乱暴にドアをノックしてる。 
ドアが開く音。 
「おまえこんな夜中に……早く入れ」 
ただ事ではないのを察したのか、声の主はわたしたちを招き入れてくれた。 
 
ここはギアの知り合いのアクセサリーショップなんだって。 
自宅兼お店になっていて、わたしはお風呂を借りた。 
汚れは落ちても心に受けた傷や汚れは落ちそうにない。 
これからどうなるのかな。 
わたしが王女役なんか断れば……今さらな後悔がいつまでも心を締めつけた。 
 
わたしは服をもらって、軽い食事をごちそうしてもらった。 
こんな時でも、お腹って減るんだなぁ。 
何故か、ルーミィを思い出して悲しくなる……。 
「パステル?」 
心配そうに、わたしを覗き込むギア。 
優しい瞳だなぁと思った。 
ひどいことをされたけど……。 
「なんでも……ない」 
「そうか……」 
ギアの手が頬に触れて、わたしは思わず体をこわばらせた。 
「怖がらないでくれ。頼むから。顔、あざになってるから、ヒールしたいんだよ」 
そういえば、途中ぶたれたりもしたっけ。胸の奥が鈍く重く疼く。怖い……。 
「怪我、治すだけだから」 
ギアは悲しい目をしていた。 
わたしは返事はしないで、コクンと頷いた。 
「ありがとな……」 
ギアの呪文の詠唱が始まり、優しい緑色の光がふんわりと現れる。 
暖かくて気持ちいいなぁ。 
つらい気持ちも治ればいいのに。 
「パステル……。おれを軽蔑してくれて構わない。おれは自分の欲望を満たすために命令に従った。あんたを解放できて自分も満たされるならそれでいいと思ってた。すまない」 
「ギア……」 
それはひどいと思う。 
だけど、ギアはわたしを助けてくれた。 
方法は間違ってるけど、最初からわたしを助けようとしてくれてた。 
そして、ギアは人を斬った。 
事情があれば罪は軽くなるけど、詐欺に失敗したわたしを助けるために剣を人間に向けたギア。 
例え罪に問われなかったとしても、冒険者カードの永久剥奪は免れないだろう。 
スワンソンが娼館に売ろうとしたわたしと逃げたことでスワンソンからの恨みも買ってしまっただろう。 
わたしのためにギアは……。 
「パステル」 
ギアがわたしを抱きしめた。 
「い…や…」 
思わず抵抗するわたしにギアは、 
「もう……あんなことはしないから。信じてくれ。おれはパステルの味方だよ?力を抜いて、体を預けてごらん」 
優しい声。優しい言葉。優しく抱きしめてくれる腕。 
わたしは恐る恐るギアに体を預けてみる。 
暖かい……。 
それは胸の痛みすら包み込んでくれそうな優しいぬくもり。 
まるで、ギアの体全部がヒールの魔法みたい。 
「逃げよう、二人なら怖くない」 
「……うん。だけど、一度みんなが戻ってきてないか確かめたいの。いい?」 
「わかった」 
夜が明ける前、一応わたしたちがアジトとしていた家を覗きに行った。 
そこで、見つけたのは一枚のメモ。 
『パステルには悪いけど、ここから逃げます。どうか元気で。さよなら。今までありがとう。クレイ』 
クレイの字……。 
あーあ。わたしってば、見捨てられちゃったんだ。 
王女役があんなに嫌だったのは、悪い予感がしてたからなのかも。 
ははは……。 
だけど、わたしにはギアがいる。 
わたしはギアと二人、この町から逃げることにした。 
 
次の日、エベリンの銀行にあるギアの預金をすべて引き出して、わたしたちはエドニーに向かった。 
連絡船に乗るためだ。 
そして、無事にコーベニアにたどり着いたわたしたちは、セラファム大陸の奥の小さな村にたどり着いた。 
 
ここに来るまで、ギアは毎晩わたしを抱きしめて眠った。 
ギアは抱きしめるだけで何もしなかった。 
だけど、わたしはギアの体がわたしと行為を行いたがっていることに気付いていた……わたしのために、ずっと我慢してくれてるギアを思うと、胸が苦しかった。 
わたしのために全てをなくした上に、わたしに償うためにありとあらゆることをしてくれるギア。 
いつの間にか、わたしはそんなギアが好きでたまらなくなっていた。 
 
いつものように、わたしを抱きしめて眠ろうとするギア。 
「ねぇ、ギア」 
「どうした?」 
「もう……我慢しなくていいんだよ?」 
「パステル?」 
「ギアがしたいこと、して?」 
「本当にいいのか?途中で止められないぞ?」 
「いいよ。止めないで」 
「パステル……!」 
その時、ギアがしてくれたキスはすごく情熱的で、わたしは唇から伝わるギアの愛情に泣いてしまいそうだった。 
ストロベリーハウスのあの夜のキスとは全く違うキス……。 
「涙……。今なら止めるよ?」 
「違う……嬉しいの」 
「おれもだよ、すごく嬉しい……パステル」 
再び唇が合わさった瞬間、さらに胸がキュンとした。 
「ん…っ」 
ギアはまるで、その手をわたしの体になじませるように、服の上からゆっくりと撫で回す。 
ひと通り体を撫でてから、ギアは一枚一枚わたしが身に付けているものを脱がせた。 
「パステル、綺麗だよ」 
ギアの視線が恥ずかしいけど、嬉しくもあったりする。 
なんでかな? 
「ギアも脱いで?」 
「ああ」 
華奢だけど引き締まったギアの肉体があらわになる。 
ドキドキする……。 
ギアがズボンを下ろすと、彼はもうおっきくなってた。だけど、あの時みたいに怖くなくて……行為を求めてる彼をかわいく思えた。 
「パステル、好きだ……」 
裸で抱き合ってるだけで、こんなに気持ちよくなれるんだ。 
わたしには、直に伝わるギアのぬくもりが幸せだった。 
ゆっくりと行為を進めるのは、わたしをいたわってるんだと思う。 
じっくり、裸で抱き合って、キスをして、お互いの肌を触れ合わせてから、ギアはわたしの体に指を滑らせた。 
「あん…っ」 
ギアは耳たぶを甘噛みすると、首筋から胸元にかけて、何度もキスをする。 
そして、ギアの両手は胸の輪郭をなぞり、なだらかなふくらみの上に指を滑らせ、たどり着いた場所を軽くつまみながら、指先でこすった。 
「ひゃあんっ」 
強烈な快感に体がビクンとなる。 
「まだ……怖いか?」 
「ギアは怖くないよ……気持ち、よかったの」 
「よかった……」 
切なそうなギアの声に胸が痛んだ。 
「大好きよ、ギア」 
「おれもだ」 
優しく優しく唇が重なる。 
幸せ……。 
わたしはギアが大好き。 
「あん…っ、あぁんっ、あ…っ」 
ギアの唇がわたしの胸の先端に吸いつく。口の中では舌をチロチロ動かされてわたしは快楽の波に呑まれていく。 
もうそこに怖さはない。 
「あぁ…っ、あ…っ、あん…っ」 
指先で弾くようにされると、胸の先端が堅くなっているのがよくわかる。 
「気持ちいいか?」 
「うん……気持ちいいよぉ」 
「もっと気持ちよくしてあげるよ」 
「やぁん…っ」 
ギアの指先がわたしの敏感な場所を捉える。 
絶妙で巧みな指使いで、こすられて、わたしは甘くよがった。 
「すごい濡れてる……」 
「あぁんっ、き、気持ち…いいよぉ……ギア…っ、ひゃぁんっ」 
チュッとギアの唇がわたしの突起に吸い付いた。 
ペロペロと動く舌がわたしに快感を与える。 
「あっ、あぁっ、いい…っ」 
もっともっとして欲しい。 
ギアの唾液とわたしの体内から溢れてきた液体で、わたしのアソコはヌルヌルになってしまった。 
そこをギアの指先がくちゅくちゅと、こすり続けて……、 
「あぁーっ」 
昇りつめた快感が、ぱっとはじけた。 
「はぁ…、はぁ…、すごい……」 
「気持ちよかった?」 
「うん……気持ち、いい……」 
わたしもギアに触れたい……そんな想いがとめどなく湧き上がった。 
「ギア、口で……させて?」 
「いいのか?」 
「うん……してあげたいの」 
わたしはおっきな彼を口に含んだ。 
スワンソンのモノを無理矢理押し込まれた時とは全然違う。愛おしくてたまらない。 
一生懸命、舐めてみるんだけど……これでいいのかなぁ? 
「ねぇ、ギア。どうやったら気持ちいいか教えて?」 
「パステル……かわいいな」 
「だって……」 
「じゃあ……まずはこうして……手を動かすんだ……そう……力は入れなくていい」 
「……これくらい、かな?」 
「ああ、いいよ。そして、ここを……舐め上げてごらん」 
「んん……」 
「そうだ。上手にできたね。次にここを舐め回すんだ。くわえながらの方がいいかな……うん……いいよ」 
「んっっ」 
「唇で吸いながら、顔を上下に動かしてくれたら……もっと……いい……気持ちいいよ……パステル……っん……あぁ……」 
ギアが言うとおりに、舌を動かして舐めると、彼は時々ビクンっとなる。何だか……かわいい。 
わたしは、それが嬉しくて、さらに速度を上げて、ギアを攻め立てた。 
「っあ……、こら…っ、もう…ダメだよっ」 
「気持ちよくないの?」 
がんばったつもりなんだけどなぁ。 
「……出そう」 
「へ?」 
「パステルが上手だから……これ以上されたら入れられなくなるよ」 
苦笑いするギア。 
「そ、そうなの?ごめん」 
ひゃあぁぁ。そこまで、気持ちよくなってくれるなんて思わなかったから、びっくり。 
そんなわたしをギアは優しい瞳で見つめてる。 
そして……、 
「パステルの中に……入ってもいいか?」 
「うん……いいよ、ギア」 
「いくよ……」 
「あぁぁっ」 
先端のふくらみがズブリと沈む。 
「怖くない?」 
そう言うギアの瞳は少し怯えて見えた。 
きっと、あの夜のことをまだ気に病んでるんだね……。 
だけど、お互いそれは……もう終わりにしよう? 
「怖がってるのは、ギアじゃない?わたしは大丈夫よ?」 
わたしは手を伸ばして、ギアがいつもわたしにしてくれるみたいに、頬を撫で、長くて黒い髪の毛を撫でてあげた。 
「パステル……」 
「わたしはギアが好きなのよ?」 
ギアの首筋に腕を回し、抱き寄せると、わたしはギアの頬に唇にキスをした。 
安心、してくれたかな……。 
「ありがとう……、パステル。大好きだよ」 
「わたしもギアが大好き」 
「奥まで入れるからな?」 
「あぁ──っ」 
ギアの先っぽに、こじ開けられたわたしのアソコは一気に奥まで貫かれた。 
わたしに侵入してきたギアは荒々しく、情熱的に何度も何度も突き上げる。 
「あっ、あんっ、ギアっ、気持ちいいよぉ…っ」 
「パステル、おれも……」 
まるで、ギアと初めて行為を行ったような気分。 
突き上げられるたびに、ギアがわたしを好きって気持ちがはじけて、わたしは満たされていく。 
「ギア…っ、ギア…っ、大好きだよぉ…っ」 
「ああ。大好きだよ、パステル……!」 
男の人に抱かれることって、本当はこんなに素敵でロマンティックで幸せなことなんだね。 
ギアがわたしに教えてくれた。 
過ちのような初体験も相手がギアだったのは、せめてもの救いかもしれない。 
だって、今のわたしはギアが好きで好きでたまらないんだもの。 
「あっ、あっ、あぁんっ、ギアっ、ギアぁぁ──っ」 
「っ……!イクよ……っ、パ、パステル、パステル、好きだ……!あぁっ!……はぁ……、はぁ……」 
あの時のそれは、やっと解放されるっていう安心感だった。 
だけど、今は幸せで暖かな感情がわたしを満たしてくれる。 
ギアがわたしの中で気持ちよくなってくれたことに喜びを覚えて……そして、果ててもまだつながってる体にわたしは幸せを感じた。 
「好きだ……」 
「わたしも……好きよ」 
ギアは脱力してわたしにのしかかるとキスをした。 
大好きよ、ギア。 
いっぱい愛してくれて、ありがとう。 
これからは、わたしもいっぱい愛してあげるからね? 
幸せになろうね。 
 
 
そして、半年後。 
わたしたちはその村で小さな家を借りて暮らしていた。 
普通だけど、満ち足りた生活。 
全てをなくして、この村にきたわたしたちだけど。 
今は、そんなことも忘れて笑って暮らしている。 
「ねぇ、ギア」 
「なんだい?」 
「もし子供ができたら、男の子と女の子、どっちがいい?」 
「うーん。女の子かな。パステルに似たかわいい子がいいよ」 
「そっかぁ。じゃあ、あなたは女の子だからね?」 
わたしは自分のお腹をさすりながら、そう言った。 
「パステル……もしかして?」 
「うん!わたしたち……パパとママになるみたい」 
「そうか。じゃあ、結婚しよう?順番逆になっちゃったけど」 
照れくさそうに笑うギア。 
「うん。わたしたち家族になるのね」 
「そうだな」 
「ねぇ、ギア。わたし、幸せよ?」 
「おれもだよ」 
ふるさとから遠く離れたこの町で、わたしは幸せになった。 
つらいことを思い出すことはもうない。 
見えているのは、笑顔が溢れた未来だけだ。 
 
おわり 

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