ドスッ、ドスッ、ドスッ! 
「きゃあー!いたいっ!もーっ!」 
「わぁぁぁー」 
「いてっ!いててっ!」 
「だぁぁぁー!」 
ごろん、ごろん、ドスッ。 
ヒポちゃんの背中のかごの中で、転げ回り、上下にゆさゆさと揺らされるわたしたち。 
さっきまで順調に走ってくれてたじゃないのよー!? 
うう。やっぱり老朽化が進んで野生を取り戻してるみたい。 
ヒポちゃんが暴走するときは、そう、水辺が近いとき。 
悪ーい予感。 
「こら、ヒポ……うわっ」 
ヒポちゃんに声をかけたクレイが派手に転がり、ゴツンっと大きな音を立てて床に頭をぶつけた。 
うわっ、痛そう! 
つくづくクレイって不幸だ。 
「ヒポ!やめろ!やめろってば!」 
ザバザバザバッ。 
やっぱり、この展開。 
わたしたちは気が付けば湖の真ん中にいた。 
「こうなる予感がしたのよね……」 
とほほほ。 
しばらく動いてくれないわよね。 
わたしがひょいと身を乗り出して周りを見渡すと見事に湖の真ん中。 
このまま日が暮れて、モンスターでも出たらどうしよう! 
わたしは湖面を見下ろしながら、ブルッと震えた。 
と、その時、ヒポちゃんが突如として暴れ出したのだ! 
ま、ま、まさかモンスター!?ちょっとー。やめてよー。 
なーんて……そんなこと考えてる場合じゃなかった。 
「え?」 
わたしの体は宙に投げ出され、次の瞬間、ドボンっと派手な水音を立てて湖に落下。 
もーっ!最悪! 
なんて思ったのも束の間。 
「きゃあああー!」 
わたしの足がなんと深みにはまってしまったのだ。 
「助けて!助けてよ!」 
怖い!溺れちゃう! 
「待ってろ!パステル!」 
と、湖に飛び込んだのはクレイ。 
さすが、リーダー。わたしにはクレイが眩しく見えた。 
「大丈夫か?」 
「うん……!」 
わたしはクレイにしがみつく。助かったぁー。 
「うわぁぁぁー」 
「なに!?なによ!?」 
「深みに…!溺れる!」 
「きゃああー!うそでしょ!?」 
こういうのをミイラ取りがミイラって言うんだろうか?はたまたこれも不幸のクレイがなせる技……?なんて言ってる場合じゃない! 
ゴボッ。 
うわっ。水、飲んじゃった! 
思わずクレイにしがみつく腕に力が入るけど、事態は悪い方に、悪い方にといってるらしい。 
だって、息はできないし、前は見えないし、頭はボーっとしてきて、意識が遠のいていく……もう、ダメ……。 
 
ザバンッ。 
「ぷはっ」 
わたしは水面にすくい上げられた。 
「大丈夫かい?」 
「へっ!?」 
だ、誰っ!? 
わたしを助けてくれたのは、まさに絶世の美男子とは彼のためにある言葉なのであろうと言わんばかりの、美しい人。 
こ、こんなかっこいい人見たことないわよ! 
かぁぁぁ。 
水に濡れて顔に張り付いた黒髪が彼の繊細な顔に色気を漂わせてる。 
暖かみがあって優しい青い瞳には吸い込まれそう。 
「大丈夫?」 
彼が改めてわたしに聞いてくる。 
「は、はい。なんとか……」 
「そうか。よかった。突然、湖から音がしてね。びっくりしたよ」 
そう言って微笑む彼は天使みたい。 
あはは。本当に天使だったりして。 
わたし、生きてる?それに、なにか大事なことを忘れてるような? 
「ああ。安心して。おれは、クレイ・ジュダ・アンダーソン。冒険者だよ」 
「えっ!?」 
クレイ・ジュダ・アンダーソンですって!? 
うそうそ!でも確かに、彼の顔はクレイのロケットの中に入ってる肖像画のクレイ・ジュダじゃない!? 
いや、むしろ目の前の彼の方が美しいけど。 
やっぱり……わたし、死んだんだ……。 
ああ。人生って、あっけないなぁ。 
でも、青の聖騎士クレイ・ジュダが迎えにきてくれたなら……悪くもない、の? 
「顔色が悪いね。おいで、焚き火もあるからさ」 
天国にも焚き火はあるのね。 
それにしても寒い。死んでも寒さは感じるんだなぁ。 
これから、どうしよう? 
死んでからって、何をして生きればいいの?いや、生きればっていうのも変だけどね。なんだか死ぬ前と変わらないんだもの。まるで生きてるみたいに。 
なんて、わたしが考えていると、突然大きな水しぶきを上げて、緑色のドロッとした……モンスター!? 
なんで、天国にモンスターがいるのよ! 
「きゃーっ!来ないで!来ないで!」 
わたしが暴れ出すと、緑色のモンスターはあえなく水の中に沈んでいった。 
弱い……。 
「君……ちょっと待ってて」 
「え?」 
クレイ・ジュダは今まさに緑色のモンスターが沈んでいった場所に潜ってしまった。 
とどめを刺しにいったのかな? 
天国もなかなか大変だなぁ。 
「ぷはっ」 
水面に顔を出したクレイ・ジュダが抱きかかえていたのは、緑色の藻にまみれたクレイだった! 
「うそ」 
どうしよう!わたしってば、クレイを沈めちゃったんじゃない! 
「彼、息をしてない。早く岸に戻ろう」 
「えぇぇぇー!?」 
もうわけがわからない。わたし、死んだの?生きてるの?なんでクレイ・ジュダがいるの?クレイ……どうなっちゃうの? 
わたしは泣きながらクレイ・ジュダに腕を引かれて岸へと戻った。 
 
クレイ・ジュダは焚き火の横にクレイを横たえた。 
唇も顔色も真っ青……。どうしよう。わたしが突き飛ばしたせいで……。 
クレイに何かあったらわたし……涙は溢れる一方だ。 
「心臓は動いてるから……大丈夫だよ」 
クレイ・ジュダは泣きじゃくるわたしにそう言うと、すうっと息を大きく吸って唇をクレイの唇に重ねた。 
ひゃあああ。キ、キス?ドキドキ……なんてわけはない。 
冒険者試験を受けるとき、予備校で習ったっけ。溺れたときの応急処置だ。 
いったん離れて、また息を吸い、クレイ・ジュダはクレイにおおいかぶさり、唇を合わせる。 
うう。わかっちゃいるけど、目のやり場に困る……! 
なんていうか、絶世の美男子のクレイ・ジュダとハンサムボーイのクレイの唇が合わさってるわけで。 
なんとも美しいキスシーンにしか見えないのである。 
うー。直視できない……と言いつつ、見ちゃってるけど。恥ずかしい……。 
わたしの胸のドキドキは収まらない。 
綺麗な横顔だなぁとか、綺麗な唇だなぁとか気になるのはそんなことばっかり。 
わわわ。またクレイ・ジュダとクレイの唇が重なってる……。 
そりゃあ、わたしだってキスはしたことあるけど。誰かのキスシーンを見るのは初めてなわけで(いやいや、だからキスではないんだけどね)。 
わたしは頭の中でそんなくだらないことを考えてしまってた……。クレイ、ごめんね! 
クレイ・ジュダが何度かそれを繰り返してると、 
「がはっ、がはっ」 
クレイが横を向いて、水を吐き出した。 
「ヒールしてあげるから……もう少しがんばるんだ」 
クレイ・ジュダがぶつぶつと何かを呟くと、ふわぁっとクレイを暖かな光が包む。 
ちょっと顔色もよくなったんじゃない!? 
「もう呼吸も大丈夫だよ」 
「ありがとう……!」 
感無量になったわたしはまたワーッと泣き出してしまった。 
「泣きたいのは、おれのほうだよ」 
クレイがぽつりと力なく呟いた。 
「ご、ごめんね!わたし、モンスターと勘違いしちゃって」 
うなだれるクレイ。 
わたしが何とも気まずい気持ちになっていると、 
「もう大丈夫そうだね。顔色もよくなってきたし」 
クレイ・ジュダがクレイの顔を覗き込んだ。 
あ、クレイが固まってる……。 
クレイは気づいたのかな?ううん。気づくわよね。 
だって、ロケットに肖像画を入れてるくらいだもの。 
気づかない方が無理だという話だ。 
ま、気づいたところで信じられない状況なんだけど。 
「あ、ありがとうございます」 
「当然のことをしたまでだよ、ところで、」 
と、わたしのほうを振り返るクレイ・ジュダ。 
「君たちは二人で旅をしているのかい?」 
「えっと。ホントは仲間がいるんですけど……はぐれてしまって」 
「気楽に話してくれて構わないよ。そうだ、改めて自己紹介したほうがいいね。さっきはあんな状況だったし。おれは、クレイ・ジュダ・アンダーソンだ」 
わわわ。やっぱり、クレイってば、びっくりしてる。わたしもだけど。 
「はい。これが冒険者カードだよ」 
クレイ・ジュダ・アンダーソン、レベル16、魔法戦士、本籍地ドーマ、ジグレス358年生まれ……そして、今はジグレス383年、だった。 
まさに、デュアンサークや青の聖騎士伝説の時代である。 
クラクラしそう……。 
わたしはクレイに冒険者カードを渡す。 
クレイは無言でそれに見入っていた。 
「君たちの名前は?」 
「わたしは、パステル・G・キングで……、」 
あれれ?クレイが自己紹介したら名前が……どうするんだろう? 
変な感じよね。自分によく似た名前の人なんて。 
「おれは……ステア・ブーツ」 
はぁ!?トラップの本名じゃない!? 
クレイもわたしと同じことを考えたのかな。 
「パステルにステアか。よろしく。それにしても、偶然だなぁ」 
「偶然って?」 
「おれが一緒に旅してるやつもブーツって言うんだよ。今、食料探しに行ってるんだけど。ランド・ブーツって名前なんだ」 
「ランド・ブーツ……」 
って、トラップのひいおじいさまよね!? 
クレイってば、どうするんだろ? 
名前が話題になったらすぐにうそがバレそう。だって、クレイってうそつけないし。 
「うわさをすれば……だな」 
クレイ・ジュダがニコニコと微笑む。 
「なんだぁー?おめぇら?」 
両手に獲物をぶら下げて、そこに現れたのは……人をちょっと小馬鹿にしたような顔立ちの赤毛の盗賊。ランドだった。  
 
「パステルとステアだよ。さっき知り合った」 
「湖の中でか?」 
「へ?どうして?」 
わたしが思わず、質問すると、 
「おめぇらはびしょびしょだし、そいつ……なんか緑だし」 
「あ……」 
わたしはクレイ・ジュダと顔を見合わせた。 
そう、クレイったら、藻にまみれていたのだ。忘れてた! 
クレイは自分の手足や頭を手で触って、がっくりしてる。 
とほほ。 
なんでクレイってこんな目に合うんだろって、今回はわたしのせいか。 
うう。ごめんね! 
「とにかく、だ。おめぇら全員体を洗ってきたほうがいいぜ?服もな」 
確かに、わたしもクレイ・ジュダも綺麗とは言いがたい。 
「着替え、ないかも……」 
どうしよう!服に入った泥とか気持ち悪いのに! 
「おお!だったら裸でいいぜ!」 
「ちょ、ちょっと!」 
な、な、なんてことを! 
「ランド!すまないな、パステル」 
「冗談だっつーの」 
「もしよかったらだけど……おれのマントを貸すから。タオルもあるよ」 
「わー。助かります。ありがとう、えっと」 
「本当に気を使わなくていいから。普通に話して。おれのこともクレイでいいよ」 
「じゃあ、クレイ。ありがとう!」 
「ステア、行くぞ」 
「は、はい」 
うなだれたままのクレイにクレイ・ジュダが声をかける(ややこしい!) 
うーん。クレイってば元気なさそうだなぁ。 
ま、でもあれだけ藻に埋もれたら気も滅入るわよね。 
とりあえず、わたしもすっきりしたい! 
 
さすがに、上澄みの水は綺麗。 
さんざん暴れたり、沈んだりしたから、さっきはすごかったんだろうなぁ。 
ちょうどよさそうな大きな岩があったから、その影で、わたしは服を脱いだ。 
とぷん、と水に入る。 
冷たーい! 
辺りはもう暗いからから、さっと泥を落として湖から上がらなきゃ。 
服も洗ってっと。 
やっぱり、体が綺麗になるとすっきり。 
わたしはタオルをぐるっと体に巻き付けて、その上からクレイ・ジュダから借りた黒いマントを羽織る。 
ま、これなら恥ずかしくないかも。 
わたしはもう一度服をぎゅーっと絞って焚き火のところに戻った。 
 
焚き火の前にはすっかり見違えたクレイがタオルを腰に巻いて焚き火に当たっている。 
その隣りには、黒い下着一枚のクレイ・ジュダ。 
オールバックって言うのかな。濡れた黒い髪を後ろにかきあげてて、さっきとはずいぶん雰囲気が違う。 
か、かっこいい……! 
それに、しなやかでほどよく筋肉が付いてて、綺麗な体だなぁ。 
はぁぁぁー。 
なんだか、すべてが美しい人だ。 
わたしは思わず、見とれてしまった。 
「こらー!おめぇはぁ、人のこと言えねーじゃねぇか」 
「え?ああ、その、うーん?」 
わわわ。そうよね。さっきランドにあんな態度をとっておいて、わたしってば、ほぼ全裸のクレイ・ジュダに見とれてるんだもん! 
ひゃあああ。 
「ランド、やめないか」 
「へへ」 
「パステル、うるさいやつは放っておくに限るよ。そしたらじきに相手も飽きるってもんだ」 
ああ。なんて優しい微笑みなんだろう! 
素敵! 
わたしはすっかり目がハートマークになってしまった。 
「ちぇ、もう惚れられてやんの」 
「えぇぇぇー!」 
もうわたしってば真っ赤。全身真っ赤。 
「ランド!」 
「へいへい。てゆーか、ステアだっけか?おめぇはそれでいいのかぁ?」 
「そ、そ、そんな!違いますよ!おれはパステルのことなんて、なんとも思ってないし!」 
急に話を振られたクレイはびっくり顔で全力否定。 
「ちょっとー。そこまで否定するのは失礼よ?」 
「だな。おめぇはまだまだ青いな」 
そう言って、ランドはおかしそうに笑って、クレイの背中をトントンとする。 
「おれは魅力的だと思うけどな。パステルのこと」 
「えぇぇぇー!」 
クレイ・ジュダが突然そんなことを言い出すもんだから、またわたしってば真っ赤。全身真っ赤。さっきよりも真っ赤。顔が熱いってば! 
わたしはすっかりへたりこんでしまった。 
「だぁぁぁー。おめぇはそうやっておいしいところを持っていきやがる」 
「そんなことはないよ」 
「いや、あるね。いちいちかっこよすぎるんだよな、だろ?」 
また突然話を振られたクレイ。でも、クレイが返事するより早くランドが、 
「おお、そういえば、おめぇらのこと詳しく聞いてねぇな」 
「彼女は、パステル・G・キング、彼はステア・ブーツだよ。二人は一緒に冒険をしてるんだけど仲間からはぐれたんだって」 
「ブーツだぁ?おめぇ、まさか親戚だったりしてな!」 
楽しそうに笑うランドにクレイは、あははと乾いた笑い。やっぱり、うそはつけないんじゃないの? 
でも、クレイ・ジュダにあなたの子孫です!って言うのもねぇ……。 
実際そうだから仕方ないけど、こんな突拍子もないこと言いにくいわよね。 
せめて、キットンとかノルにすればよかったのに。 
あー。すっかり忘れてたけど、みんなどうしてるんだろ?わたしとクレイがいなくなって心配してるだろうなぁ。 
「パステル?どうかした?」 
クレイ・ジュダは心配そうに、わたしを見つめてきた。 
「ん。これからどうしようかなぁと思って」 
「そうだなぁ。二人は仲間とはぐれたんだよね」 
「なぁ、だったら、おいらたちと一緒に来ればいいじゃねーか。ステアのこと他人とは思えねぇし、野郎旅に慣れちまったおいらとしてはかわいこちゃんは歓迎だぜ?」 
「ランド……!」 
これには感動したね。ランドってば優しいじゃありませんか! 
「おれもそうしようかと思ってたよ。このまま放ってはおけないし」 
「ひょおー。ジュダちゃんってば。おめぇはパステルを放っておけねぇんじゃないのか?」 
「そうだなぁ」 
クレイ・ジュダはクスクスと楽しそうに笑う。 
「えぇぇぇー!」 
何回目だろう。わたしはまた真っ赤になった。 
「へへ。ステアも勉強したほうがいいぜ」 
ランドの言葉に、はにかむクレイ。 
ホント大人しいなぁ。どうしちゃったの? 
「そろそろ食事にするか?」 
「おうよ。おめぇらも遠慮なく食えよ?たまたま大漁の日で良かったな」 
ああ。いい匂い!我慢できないわたしのお腹はぐうと鳴った。 
お腹ぺこぺこだおう! 
 
わたしたちが食事をほおばっていると、クレイ・ジュダがこれまでのいきさつをランドに話す。 
「へぇ。そりゃまたついてねぇなぁ、ステアちゃんよぉ。溺れたパステルを助けようとして自分が溺れて、あげくの果てに、藻まみれなって、息も絶え絶えに水面に上がったら、パステルに水中に沈められて、呼吸が止まってあの世に行きかけるなんてなぁ。ハンパねぇ不幸だな」 
うう。ついに不幸のクレイは時空をこえてしまったのね……! 
過去の世界ですら、この言われようだなんて。 
「う……!もう放っておいてください……」 
「なぁに大丈夫だ。なにせこのジュダちゃんには神のご加護が付いてるんだぜ?おめぇの不幸も吹き飛んじまうさ」 
「おいおい、ランド。よしてくれよ」 
「だぁーら、言ってんだろ。おめぇは特別なんだよ」 
「はは。そう思うのはおまえの勝手だ」 
うんうん。将来は伝説の青の聖騎士になるもんね。ランドって見る目あるなぁ。 
「……おれもそう思いますよ」 
およ?クレイってば、すごく真剣な顔。何だか思い詰めてるみたい。 
「そうかなぁ」 
「あなたは……なんていうか。一緒にいるだけでわかるんですよ。ああ、この人は特別なんだっていうのが。すいません。うまくいえないんですけど」 
「ステア」 
「は、はい?」 
「考えすぎるなよ」 
クレイ・ジュダはクレイに優しく微笑むと、ポンポンとクレイの頭をなでた。 
クレイは目を潤ませたまま何も言わなかった。 
わたしもそんな二人を見て、何だかいいなぁと思ってしまった。 
だって、クレイはクレイ・ジュダの肖像画が入ったロケットを肌身離さないもの。 
きっと、クレイ・ジュダ本人に会って、クレイなりにいろいろ考えてしまってたんだと思う。 
クレイ・ジュダは理由までわからないだろうけど、思い詰めた表情のクレイを見て、それがわかったのかなぁって思った。 
「ちぇ。さすが老若男女モンスターにまで惚れられるジュダちゃんだぜ」 
ランドはやれやれと肩をすくめる。 
「ま、そんなおれもおめぇには惚れ込んでるんだけどよ」 
「まったく。おまえってやつは」 
ランドの言葉に苦笑いしながらも、クレイ・ジュダは嬉しそうだった。 
 
 
 
 
 

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