「お待たせ。これ、夜食代わりにどうぞ、だって」 
「わー。ありがとう、クレイ」 
クレイ・ジュダが持っているのは、香ばしい香りのするクッキー。 
「焼きたてだってさ。食べよう」 
クレイ・ジュダはテーブルにクッキーを置いて、わたしが座ってるソファーの隣りに座ってきた。 
ひゃあ。 
ずいぶんぴったりと座るなぁ。腕から体温が伝わってきて、ドキドキするってば。 
横顔も……ああ、素敵だなぁ。 
クレイ・ジュダはわたしのそんな視線に気付くと、首をかしげて、それから微笑んだ。 
はぁぁぁ。もし天使がいるなら、きっとクレイ・ジュダみたいな顔をしてるんじゃないだろうか、と改めて思う。 
「どうかした?」 
「え?」 
「そんなに見つめられたら緊張するよ」 
「ご、ごめん」 
はは。緊張するようには見えないけど。 
「謝るようなことじゃないさ」 
そう言うと、クレイ・ジュダはおかしそうに笑った。 
「クレイが飲んでるのは……お酒?」 
「ああ。そうだよ」 
「まだ飲み足りないのに帰ってきたの?」 
「約束しただろ?遅くならないようにするって」 
「クレイ……!」 
嬉しいなぁ。わたしはふにゃーっとなってしまう。 
クレイ・ジュダもニコニコしてわたしを見てる。 
ああ、なんだか幸せ! 
「食べよっか」 
「うん」 
わたしがクッキーに手を伸ばすと、クレイ・ジュダはその手をそっと押さえた。 
ええ!?なんで!? 
「食べさせてあげるよ」 
「え!?」 
クレイ・ジュダはクッキーを手に取ると、わたしの口元に運ぶ。 
なんとも優しい眼差しがまぶしい。 
かぷっと、わたしがクッキーをかじると、クレイ・ジュダは嬉しそうにニコニコしてる。 
「おいしい?」 
「ん……」 
わたし、絶対、赤くなってる。 
だ、だって……!い、いきなりこんなこと……! 
こんな風に食べさせてもらうなんて、恥ずかしいってば! 
嬉しいけど。 
「はい、口を開けてごらん?」 
またクレイ・ジュダは、わたしにクッキーを食べさせようとする。 
かぁぁぁー。もぉー、顔が熱い。 
「パステルはかわいいね」 
口に運ばれるクッキーをぱくりとしながら、わたしってばドキドキ。 
「おれにも食べさせてよ」 
「う、うん」 
わたしは震える指先でクッキーを手に取ると、クレイ・ジュダの口元に運んだ。 
わわわ。指先にほんのり息がかかって……ドキドキがさらに激しくなる。 
「もっと食べたいな」 
クレイ・ジュダがまたクッキーを手に取った。 
なぁんだ、自分で食べるんだ。 
ほっとしたような、残念なような。 
「……!」 
なんとクレイ・ジュダはわたしの唇にクッキーを挟んで、 
「パステルは食べちゃダメだよ?」 
そう言うと、突然クレイ・ジュダの端正な顔が近づいてきて、彼の形の綺麗な唇はわたしの唇からクッキーを奪っていった。 
もう少しでキスしそうなほど、唇が近づいて……気絶しそうなくらいにドキドキしてる! 
ひゃあぁぁぁ。 
「こうやって食べるとおいしいな、いい?」 
クレイ・ジュダは、またわたしにクッキーをくわえさせて奪っていく。 
ああ……!心臓に悪いぞ……! 
「パテルもまだ食べるかい?」 
そう言うと、わたしの返事を待たずに、クレイ・ジュダはクッキーをくわえた。 
た、食べろってことよね? 
わたしはきっと耳まで赤くなりながら、クレイ・ジュダの唇からクッキーを奪った。 
なんだかすごく甘くて、ドキドキする味……。 
「甘くておいしいね」 
「うん……」 
その声もすごく甘くて……ああ、もぉー。クレイ・ジュダってば酔ってるのかなぁ!? 
「最後の一枚は……二人で分けよっか」 
「へ?」 
クレイ・ジュダはまたわたしにクッキーをくわえさせて、 
「一緒に食べるんだよ」 
今までで一番唇が近づいて……少しだけ触れたような、触れてないような。 
はぁぁぁ。もう甘すぎて溶けちゃいそう。 
クレイ・ジュダってば、どうしちゃったの? 
「……クレイ、酔ってるの?」 
「ん、少しね」 
「はは。やっぱり」 
「少し、じゃないかもなぁ」 
「だ、大丈夫?」 
「お酒じゃないから……」 
「へ?」 
クレイ・ジュダは、ジーッと、わたしを見つめてる。 
ど、ど、どうしたのよ? 
そんなに見つめられるのは困るってば! 
「ステアとランドもそろそろ帰ってくるかな?」 
胸が早鐘のようで、どうしようにもなくなったわたしは、さりげなく話題を変えた。 
「まだ帰ってこないと思うよ」 
「そうなんだ」 
「気になるのかい?」 
「気になるってほどじゃないけど」 
何か関係ない話でもしないと、わたし、どうにかなっちゃいそうなんだもの。 
ドキドキが収まらない。 
「パステルは……ステアのこと、どう思ってるの?」 
「どうって……。うーん。ちゃんと考えたことないけど。家族、かなぁ」 
いきなり何だろう? 
「そっかぁ」 
「なんで?」 
「確認したほうがいいかと思ってね」 
「か、確認?」 
ええ?クレイ・ジュダってば、何だか熱っぽい目でわたしを見てる。 
そんな目で見られたら、ますますドキドキするじゃない!? 
ひゃあぁぁぁ! 
ど、ど、どうすればいいの!?  
 
「パステル……おれ、酔っちゃった」 
わたしはクレイ・ジュダに、ぎゅっと抱き締められた。 
う、うそ!? 
「クレイ……?」 
「パステルに酔っちゃったよ」 
ええ!? 
何ですって!? 
たぶん耳まで真っ赤になってるであろう、わたしを見つめて、クレイ・ジュダは微笑む。 
「酔いすぎて……困った」 
クレイ・ジュダは優しく髪をなでながら、わたしのおでこにキスをした。 
髪をなでてた手が頬を優しく包む。 
耳からあご先へと、輪郭をなぞった指先がわたしの顔をくっと持ち上げた。 
「かわいいね」 
青い瞳がわたしを見つめる。 
綺麗だなぁ。空や海のようなブルーアイ。吸い込まれそう。 
暖かな微笑みが、クレイ・ジュダの薄く綺麗な唇を柔らかな輪郭にする。 
あ、あの……このシチュエーションってもしかして……!? 
「クレイ……?」 
やっとの思いで声が出たんだけど、クレイ・ジュダは何も答えず、その代わりににっこりと微笑む。 
そして……ゆっくりと瞳を閉じながら、クレイ・ジュダの唇が近づいてきて……わたしの唇にそっと重なった。 
ギアとしたときみたいな一瞬ではない……しっかりと唇が重なったキス。 
「ん……」 
吐息が交わり、唇でクレイ・ジュダの柔らかさを感じとる。 
わたしの唇って、こんなに敏感にいろいろ感じるものなの? 
気持ちが高ぶってきて……泣いちゃいそう。 
クレイ・ジュダの唇がわたしの唇を挟もうとして優しく擦れ合う。 
くすぐったい……。 
少し離れては合わさって、唇だけでわたしを探るように動く。まるで、柔らかく唇同士でじゃれ合ってるみたいに。 
「抱きたい……」 
甘くとろけるように囁く声。 
わたしはクレイ・ジュダにすっかり溶かされていた。 
「パステルのこと、抱きたい……」 
もう一度、さらに甘く、甘く囁かれる。 
クレイ・ジュダのうっとりするような青い瞳にわたしは魔法をかけられたみたい。 
「クレイ……抱いて」 
自分でもびっくりするような、吐息の中にうっすら浮かぶ甘ったるい声。 
胸が締めつけられたように苦しくて、ちゃんと言葉にならない。 
「パステル……かわいいよ」 
うまく息ができないのに唇を塞がれて、クレイ・ジュダの舌が侵入してくる。 
彼の舌が浅く深くわたしの舌を味わって。 
あがなえない脱力感がわたしになっていく。 
「ソファーじゃできないね」 
クレイ・ジュダはふっと笑うと、緊張しすぎて小さくなってるわたしをヒョイと抱き上げる。 
「続きはベッドでしよう」 
「ん……」 
わたしはクレイ・ジュダにぎゅっとしがみついた。これからする行為を想像して、心臓は早鐘のよう。 
クレイ・ジュダはそんなわたしを、まるで何か壊れやすいものを扱うかのように、優しくゆっくりとベッドに下ろした。 
背中がベッドに沈む。 
「パステル……」 
クレイ・ジュダがわたしにおおいかぶさってきた。 
黒い髪が乱れて頬にかかってる。 
わたしを見下ろす、クレイ・ジュダはいつもとまったく違って見えた。 
何でなのかな。 
憂いを帯びた穏やかな眼差しが愛おしい。 
「可愛がってあげる、パステル……」 
「ん……」 
わたしの舌を味わい尽くしたクレイ・ジュダの舌が今度は、わたしの首筋をなぞる。柔らかく尖った感触に濡らされていく。 
「初めて、なの」 
「わかってるよ、優しくするから」 
「あぁ……っ」 
クレイ・ジュダの手がわたしの服の中に侵入し、体を愛し始めると、わたしは自然とそれに甘ったるい声で応える。 
こんなふうに誰かに触れられたことなんてない。体を舐められたことなんてない。 
どんどん気持ちが高ぶってきて、体が熱くなっていく。 
「ひゃあん…っ」 
下着にするりと入りこんだクレイ・ジュダの指先がピチャピチャ音をたててる。 
わたしの体どうしちゃったの? 
クレイ・ジュダの手は、わたしの体中を滑るように動いて、身に付けているものを一枚づつ、脱がせていく。わたしは恥ずかしさから思わず、 
「ダメっ」 
と言ってしまった。 
だけど、クレイ・ジュダはそんなわたしに優しく微笑んで、 
「パステルの裸が見たい」 
「恥ずかしいよ……」 
「心配しなくていい。きっとおれが知ってるパステルの中でも一番綺麗な姿だよ」 
「クレイ……」 
もうわたしの心臓の音まで聞かれてるんじゃないだろうか? 
ついに下着まではぎ取られて、体を隠す物もなくなった。わたしはクレイ・ジュダに何もかも裸にされてしまった気分。 
「やっぱり綺麗だね」 
「や…、そんなに見ちゃやだ」 
わたしが視線から逃れようとすると、 
「そんなに腰をくねらせたらセクシーすぎるよ?」 
クレイ・ジュダは苦笑いした。だけど、すぐに微笑んで、 
「おれも裸なら恥ずかしくないだろ?」 
そう言うと、クレイ・ジュダも服を脱ぎ始めた。 
わわわ。初めて会った日に焚き火の横で下着しか身につけてないクレイ・ジュダは見たけど。あのときとは感じ方が全然違う……。 
ファイターとしては少し細い肩、全体的にしなやかに引き締まった体。 
触れたい……。 
そんな自分の感情にびっくりした。 
欲情っていうのかな。こういうの。 
ひゃあぁぁぁ。ズボン……脱いじゃった。しかも、下着ごと……。 
わたしはすっかり目のやり場に困ってしまった。 
「パステルがかわいいから……もう、こんなになっちゃったよ」 
そう言いながら、クレイ・ジュダが握らせたのは、大きくて、堅くて、太い棒状の先端が膨らんだ……わわわ、男の人のアレよね。 
ど、どうしよう!? 
「怖がらないで。ここもおれだから」 
「うん……」 
何だか胸がキュンとする。そう言われると、おっきくなってる彼が愛おしい。 
「パステル、舐めてごらん」 
「えぇ!?」 
な、な、舐めるの!? 
わたしがびっくりしていると、クレイ・ジュダは寂しそうな顔で、 
「やだ?」 
って言うんだけど。 
うう。その表情はズルい。だって、だって、よくわからないんだもん。 
「えーっと、どうすれば……いいの?」 
「まずは、ペロペロしてみて」 
「う、うん……」 
わたしはクレイ・ジュダのモノに顔を寄せる。 
わわわ。こういうモンスターいたなぁ。触手がニョロニョロしてて……クレイ・ジュダみたいな絶世の美男子にはあまりにも似合わない……だけど、不釣り合いな感じがものすごくいやらしいかも。 
わたしは勇気を出して、ペロリとしてみた。わぁ、ドキドキする……。なんかね、胸がときめく感じのドキドキなんだよね。 
「次は口に入れてみて」 
「ん……」 
クレイ・ジュダがわたしのこと見てる。 
わたしはその視線にほっぺを熱くしながら、彼を口に含んだ。おっきい……。 
「ほおばってる顔を見せてよ」 
えっち……。わたしは真っ赤になりながらチラッとクレイ・ジュダを見る。 
「そういう顔も魅力的だから」 
そ、そうなの?そんなこと言われたら、もっと見て欲しくなっちゃう……って、やだ、わたし、どうしちゃったの? 
「パステルの口の中、おれでいっぱいだね」 
口の中いっぱいに彼をほおばって、舐め回す行為。何でだろう。どんどん彼が愛おしくなっていく。 
あんなに抵抗があったのに今は夢中で息づかいも荒く、舌を動かしてる。 
「おれも舐めたいな……体、こっちに向けて」 
クレイ・ジュダはわたしを反対側に導くんだけど……あれれ?これって!? 
「ひゃっ!?」 
う、うそぉ!?わ、わたし……クレイ・ジュダの顔の上にまたがってる!? 
ひゃあぁぁぁ。 
そんなとこ……やだ、見ないで! 
「ほら、パステルも舐めて?」 
「う、うん。あっ……」 
少しひんやりして柔らかく尖った感触……こ、これは、クレイ・ジュダの舌よね。 
わたし、あんなところを舐められてるの!? 
ちゅぷっ。 
クレイ・ジュダの指が、わたしの中に沈んでいく。何回か出し入れした後、彼の指はわたしの中を探り始めた。 
「んん……っ」 
わたしも彼を口に含んで、一生懸命舐め回そうとしてるんだけど。クレイ・ジュダに舐められて、いじられてるアソコがびくんっびくんってして……あんまり上手にできない。 
「あぁ……っ!」 
わたしたちは何ていやらしい行為に夢中になってるんだろう。こんな体勢で舐め合うなんて。お互いに相手の感じやすい場所に顔をうずめて……口を使って、手を使って、いじりまわしてる。 
「ん…っ、んふ…ぅっ」 
わたしの口元から、体の下の方から、聞こえてくる水音に羞恥心すらかき消されていくみたい。 
「パステル、離してごらん」 
クレイ・ジュダはわたしのウエストをぐっと掴んで押し上げると、上下を入れ替えて、わたしは再び彼に組み伏せられた。 
 
 

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