夏の夜。
今夜はいい風が吹いてる。
昼間の暑さを忘れるような心地よい風。
カランコロン。
なにやら涼やかな音。
癒されるなぁ。
って、まてよ?
こ、この音は!
おれは、バッと立ち上がり、窓の外を見る。
庭に日干しされたままの、竹アーマー+1が気持ち良さそうに夜風に揺られていた。
はぁぁぁ。パステルのやつ、そのままにしてたんだな。
仕方ない……。
おれは、竹アーマー+1をとりこむことにした。
「ちょっとー、クレイってば!」
二階の窓からパステルがおれを呼んでいる。
「なんだよ?」
「せっかく風鈴代わりに竹アーマーの音、聞いてたのに!」
「おまえなぁ……」
「いいじゃない。いい音だし。わたしは好きよ」
最後の一言になぜかドキッとしたけど。
だまされちゃいけない!
おれじゃないぞ。竹アーマー+1のことなんだからな?
しっかりしろよ、おれ。
「ダーメ!夜露で湿気るだろ?」
「クレイって、何だかんだ言っても、竹アーマー大事にしてるのね」
パステルがクスクス笑う。そういう顔がかわいいんだよな。
「仕方ないだろ。兄さんたちが+1にしちゃったし。そのうち、立派なプレートアーマーにするんだからな!」
「わたしは竹アーマーのクレイが好きなのになぁ」
「まったく、おまえは」
屈託のない笑顔でそういうこと言うなよ。
「なぁ、パステル」
「なぁに、クレイ?」
「夜風が気持ちいいぞ。散歩でもしないか?」
「うん!行く行く」
ああ。かわいいなぁ。おれはこの笑顔にいつも癒されるんだ。
「お待たせ」
「じゃあ、行こうか」
カランコロン。
手に持った竹アーマー+1が涼やかな音を鳴らす。
なぜか、その音が夏の夜を風流に演出してくれてるのが複雑だ……。
「ね、クレイ」
「ん?」
「夏の夜と竹アーマーって似合うわよね」
「ははは……」
おれも同じことを考えていたのは秘密。
嬉しいやら、悲しいやら。またもや複雑な気分になるが……。
それよりも、竹アーマーが作ってくれたいい感じの雰囲気に便乗して、パステルと手をつないでみる。
「……なんかいいね」
「だろ?」
カランコロン。
左手にぶら下げた竹アーマー+1は、夏の夜に涼やかな音を鳴らし続けた。
どんなときも頼りになる、おれの相棒。
これからもよろしくな。
おわり