「大丈夫かい?」 
「んー。ふらふらする……」 
わたしはクレイ・ジュダに支えられて部屋に戻ってきた。 
「なんでそんなに飲んだんだ?」 
「うー」 
「これから酒は禁止だよ」 
「ごめんねぇークレイー」 
体がぐらりとして、わたしはクレイ・ジュダに抱きとめられた。 
「ひゃあ!」 
「こら、パステル……」 
ドキドキドキドキ。 
すごく密着してる。 
薄いドレスの生地を通して、クレイ・ジュダの体温が伝わってきた。 
わたしを支える大きな手。 
ああ、もうなんか……。 
「こんなになるまで飲んで……」 
わたしの体を抱きとめた腕に力が入って。そのままクレイ・ジュダにぎゅっと抱き締められた。 
「ク、クレイ?」 
「パステル……」 
憂いをおびた眼差しでわたしを見つめるクレイ・ジュダ。 
どうしてそんな目で見てくるの? 
「すごく目が潤んでる。これも酒のせいかな?」 
そう言うと、クレイ・ジュダはわたしの髪の毛を結い上げていた髪飾りを外した。ふわりと髪の毛が広がる。 
「今夜のパステル、すごく綺麗だよ」 
「……クレイに見て欲しかったの」 
「ありがとう、パステル。かわいいね」 
「クレイ……」 
優しく頬をなでる手が顎をくっと持ち上げてきた。 
あれれ? 
こ、これって? 
クレイ・ジュダの端正な顔が近づいてくる。 
そして、ゆっくりと合わさる唇。 
わたしはわけがわからなくて、しばらく目を閉じるのも忘れてた。 
う、うそ。 
わたしのことなんて、相手にしてないと思ったのに。どうして? 
ふらつくわたしを支えながら、クレイ・ジュダは唇を奪い続ける。 
え……? 
クレイ・ジュダに押し倒されて、体がベッドに沈む。 
ま、まさか? 
「動きにくい」 
ふっと笑うと、華やかに装飾されたジャケットを脱ぎ捨てるクレイ・ジュダ。 
身軽になった彼はわたしにおおいかぶさると、耳たぶをかぷりと噛んだ。そして、そのまま下に滑っていく唇。首筋を這う舌がくすぐったい。 
「ぁ……」 
思わず声を漏らした唇をクレイ・ジュダの唇がそっと塞ぐ。 
薄着になったせいか、触れ合う感触が熱い。 
「抱いてもいいかい?」 
酔っ払ってぼんやりした頭に響く、甘い囁き。 
こんなに素敵な人に誘われて断れる人なんているんだろうか? 
「クレイ……」 
少し頬にかかってる長い黒髪はクレイ・ジュダの端正な顔立ちをより強調する。 
わたしは、まるで魅了されたかのように彼の顔を見上げたまま、コクリと頷いた。 
「優しくするよ」 
わたしの胸元を飾っているゴージャスなネックレスが器用に外された。 
「ん……」 
羽のようにふわりと何度も唇をなでるようなキス。 
時々、クレイ・ジュダは舌を出してきてわたしの唇をぺろっと舐める。 
クレイ・ジュダの唇が、上下の唇をはむっと甘く挟むようにしたかと思うと、今度は唇を押しつけるようにキスをした。 
唇を割り、侵入してきたクレイ・ジュダの舌が、わたしの舌を舐め取る。 
ああ。キスは初めてじゃないのに。 
わたしが知ってるキスとはまったく違う。 
「ぅん……」 
唇を合わせたままなのに、声が漏れる。呼吸もどんどん早くなって息も苦しい。胸がドキドキする。 
「んん……ぁっ……」 
絡み合う舌はとろけていく。 
クレイ・ジュダの大きな手になぞられる体がくすぐったい。 
「すごくセクシーだね」 
「ぁん……っ」 
わたしの唇を味わい尽くしたクレイ・ジュダは、がんばって作った胸の谷間に顔をうずめた。 
恥ずかしいよ……! 
クレイ・ジュダは胸の谷間を尖らせた舌でなぞり、胸のふくらみを吸う。 
「はぁ……ぅ……」 
太ももをなで上げながら、ドレスの長いスカートが捲り上げられていく。 
クレイ・ジュダの指先は、わたしの足の間に伸ばされて……まだ誰にも触れられたことがない部分を下着の上からさすった。 
「ひぁ……っ」 
き、気持ちいい……。 
円を描くように動く人差し指は確実にわたしを快楽に導いていた。 
「あ…っ、ゃあぁっ、あ…ぁんっ」 
「感じやすいんだね」 
「ゃぁんっ、ぁっ、ぁあっ、クレイ、ダメぇっ」 
わたしの静止を無視して剥ぎ取られる下着。 
「もう濡れてるよ」 
「はぅ……っ」 
クレイ・ジュダの指が動くたびに、快感が全身を貫いて……濡れた音がする。 
「俺のこと欲しがってる」 
「やぁ……っ、クレイっ、だめダメぇ!そんなとこ…やだょうっ」 
少しひんやりして、ザラッとして、尖った感触。 
クレイ・ジュダの薄く整った唇が、濡れた場所に下りていって……彼の舌はわたしを攻め立てるように這い回ってる。 
「ぃやぁん」 
わたしの中に侵入した指は快楽を探る。 
折り曲げられた指がわたしを探り回し、たどり着いた場所をこすった。 
「あっ、あぁんっ、やぁあぁ───っ、はぁ……っ、はぁ、はぁ」 
「ものすごく感度がいいんだね」 
「はぁ…はぁ…」 
もぉ、わけがわかんない。 
突然、頭が真っ白になって……わたしはめちゃめちゃに感じてしまった。 
「少しドレスに垂れちゃったよ」 
「やぁ……」 
わたしを見ながら微笑むクレイ・ジュダ。 
「脱いだ方がいいね」 
「ひゃあっ」 
慣れた手つきでどんどんドレスを脱がせていく。 
「綺麗だ……」 
「クレイ、恥ずかしいよ……」 
「どうして?」 
「だって……」 
「大丈夫だよ。俺も脱ぐから」 
そ、そういうことじゃないってば! 
胸、寄せて上げたのがバレちゃう……。 
「ご、ごめん。クレイ」 
「パステル?」 
「胸……。がっかりしたわよね?」 
クレイ・ジュダは青い目をパチクリさせて、 
「心配しなくていい。パステルは十分魅力的だよ」 
おかしそうに笑うと、頭をなでて、キスをしてくれた。 
ああ。やっぱり、この人が大好きだ。 
クレイ・ジュダがドレスシャツを脱ぐと、引き締まった体があらわになる。 
ほどよく筋肉がついたしなやかな体。 
思わず見とれてしまうほど完璧に美しい人。 
ベルトを外し、ズボンを下ろす。 
ひゃあ……。 
わたしは恥ずかしくなって顔を背けてしまった。 
だって、だって。 
話には聞いていたけど、あんな風になっちゃうものなんだ……。 
チラッと目線を戻してみる。 
おっきい……。 
それに、すごく形が……。 
クレイ・ジュダには、まるで似つかわしくない発情したモノ。 
恥ずかしいのに凝視してしまう。 
「パステルのこと、隅々まで愛してあげるから」 
「ひゃん……」 
「おれのここも……愛してくれるかい?」 
耳元で囁きながら、わたしにそれを握らせた。 
そして、 
「舐めて?」 
それがいけない行為だというかのように、短い言葉をひそひそ話のように小声で吐息混じりに呟く。 
「ど、どうすればいいの?」 
舐めてあげたいけどよくわかんないよ。 
「おれが教えてあげるから」 
クレイ・ジュダはわたしの手首を両手で包むように掴むと唇に寄せる。 
「よく見てるんだよ」 
「ひゃ……っ」 
クレイ・ジュダは形のいい唇から舌を突き出し、わたしの人差し指を根元から舐め上げる。 
もちろんわたしから目を離さない。 
何度か上下に舌を這わせると、今度は唇で人差し指を挟むようにくわえる。ペロペロと舌を動かしながら、唇を上下に滑らせる。 
わたしたちの目は合ったままだ……。 
それでも、美しくも、いやらしい行為が続いていく。 
そして、クレイ・ジュダは指先を尖らせた舌で刺激すると、舌を回すように指先の周りを舐め取り、人差し指を根元まで口に含んだ。 
「ぁ……」 
なんか感じてきた……。 
クレイ・ジュダの口内にあるわたしの指は彼の舌に絡み取られ、舐め回されている。 
見えないところで、どれだけ激しく舐め回されているか、感じているわたしの指が教えてくれた。 
「ぁん」 
舌の動かし続けながら、ときどき吸ったりしながら、くわえた指を上下に動かす。 
その間も、クレイ・ジュダの口内では指がざらざらと舐め回されている。 
「クレイの……舐めさせて」 
我慢できなかった。 
舐めてみたい。 
クレイ・ジュダのモノをああやっていやらしく舐め回してみたい。 
恥ずかしくて、恥ずかしくて、たまらないけど。 
「パステル、かわいいね」 
わたしは、クレイ・ジュダに導かれるまま、彼のモノに顔を寄せた。 
まずは……。 
な、舐めればいいのよね? 
さっき、クレイ・ジュダが見せてくれたことを思い出して、舐め上げてみる。 
すごく愛おしい気持ちになる。何でだろう? 
「はむ……っ」 
手を使い、唇を使い、舌を使い、そして口を使って、クレイ・ジュダのモノを愛してあげる行為。 
舐めれば舐めるほど、愛しさが溢れてくる。 
「ぁむ…ぅ…」 
くわえこみながら声が漏れる。 
わたしの体も火照っていく。 
クレイ・ジュダを味わい尽くしてるこの行為がどうして? 
おっきいモノをくわえこんで、一生懸命舌を動かして、顎も舌も疲れてるのに。 
どんどんしてあげたくなる。 
「パステル……、ひとつになろう」 
クレイ・ジュダの言葉にわたしの心臓は飛び上がった。 
「……うん」 
「入れるよ?」 
「クレイ……」 
優しくわたしの唇を塞ぐキス。 
それから、クレイ・ジュダはわたしがさっきまで口の中で膨らませたモノをグッと押し込んだ。 
「ぃ……っ、ひゃあぁぁんっ、んぐ……っ」 
悲鳴にも近い、わたしの声を飲み込むかのように唇を塞ぐキス。 
汚れなさを貫かれた痛みをすべて絡みとるような舌使いに腰が砕けそう。 
そのまま、ズンッとさらに深く突き入れられる。 
「ひぁ……っ」 
「痛い?」 
「ちょっと……」 
「ゆっくり動かすよ」 
おでこに、まぶたに、ほっぺに、唇に、わたしを安心させるように降り注ぐキスの雨。 
わたしはクレイ・ジュダにぎゅっとしがみつく。 
ひとつになった体は少し痛いけど……嬉しい。 
ゆっくり引いては、押し込まれるたびにクレイ・ジュダがわたしの中にいるんだなって思った。 
「はぁ……っ、ぁんっ、あっ」 
な、何だろう? 
クレイ・ジュダの腰の動きに合わせるみたいに声が出ちゃう。 
徐々にそのスピードが上がっていく。 
わたしの快感もそれを追うように、どんどん加速されていく。 
「ぁはんっ、ぁあんっ、あぁっ」 
「パステル……っ」 
わたしの甘い声に応えるようにクレイ・ジュダは腰を振る。 
ひとつに合わさった性器はこすれ合うたびにすさまじい快感を生み出した。 
「あぁあっ、クレイ……っ」 
気持ちが高まりすぎて、瞳が熱いよ。 
「泣きそうな目……パステルはかわいいね」 
クレイ・ジュダは愛おしそうに微笑み、わたしの両方の瞳にキスをした。 
「ゃあぁんっ、あ…っ、あんっ、クレイ…っ、クレイ…っ」 
とめどない快楽の渦にどんどん巻き込まれていく。 
激しさを増して、力強く、深く深く、突き動かされ、わたしは淫らになっていく。 
「パステル、好きだよ」 
「ぁあんっ、クレイ……っ、クレイ……!好き…っ、好きだょぉ、わたしも好きっ」 
感無量だった。 
体をつなげることは、想像以上に気持ち良くて。その上、一番欲しかった言葉をもらった。 
「んむ…っ」 
むさぼりつくようなキス。 
かき回すように舌を絡ませ、唾液が混ざっていく。 
ぐちゅぐちゅと濡れた音をたてながら、つながる下半身はもう耐えきれない。 
「くっ、ぱ、パステル…っ、イクよ、イク……っ、うぅ……っ!」 
「クレイ…っ、クレイ…っ、あっあっあぁぁぁ───ん」 
背中に爪をたてるほどに、わたしはクレイ・ジュダにしがみついた。 
ドクンっとはじけた欲望は、トロトロした白濁の液体を放出して、わたしを汚した。 
出し切るまで、こすりつける動きは二人の体液を混ぜてるみたい。 
ただでさえ、溢れていた場所は、クレイ・ジュダのモノを突き立てられたまま、淫らに二人の体液をこぼしていた。 
 
 
「ん……」 
窓から柔らかな日差しが差し込む。小鳥のさえずる声が聞こえる。 
もう朝かな。 
「うーん」 
わたしを腕の中にすっぽり収めて、すやすやと眠っているクレイ・ジュダ。 
彼の顔を見た途端、昨日の夜、二人で夢中になった行為を思い出して、ほっぺが熱くなる。 
酔っていたとはいえ、あっさりとクレイ・ジュダを受け入れて、抱かれてしまった。 
好き、って言ってくれた。 
本心なのかな? 
気持ちが高ぶってただけなのかな? 
早く。 
もう一度、愛の言葉を囁いて欲しい。 
夢から覚めた今だからこそ、聞きたい。 
わたしはぎゅっとクレイ・ジュダに、しがみついた。 
もう何回目だろう。 
「クレイ……」 
「ん……?パステル……」 
眠そうにまぶたを開くクレイ・ジュダ。 
「あ……。ごめん。起こしちゃった」 
「いや、いいよ。おはよう、パステル」 
「ひゃっ」 
抱きしめられて、おでこにキスをされて、わたしは、おはよう、って言うのを忘れてしまった。 
キスの雨は唇に降りてきて、合わさる唇は昨夜の熱を思い出す。 
「むぅ……」 
クレイ・ジュダの舌が、わたしの舌をかき出すように絡みつく。 
体が徐々に移動してる。 
抱き締めた腕はほどかれ、クレイ・ジュダはわたしにおおいかぶさってきた。 
「ん……」 
絡み合う舌の音が生々しく頭に響く。 
こんなキスされたら、とろけちゃう……! 
コンコン。 
あれれ?ドアをノックされてる気がする。 
コンコン。 
やっぱり、誰か来てる。 
コンコン。 
ク、クレイ!? 
明らかに誰かが部屋に訪ねて来たのに、クレイ・ジュダは止める気配がない。 
聞こえてないのかなぁ!? 
ん!?鍵……閉めたっけ!? 
「起きてるか?」 
ドアが開く音と一緒に聞こえてきたのは、ランドの声だった……! 
ひゃあ。ど、どうしよう……! 
やっと、クレイ・ジュダの唇が離れる。 
「おわっ!」 
「どうした?」 
むむむ。クレイ・ジュダはいつも通り涼やか。こんなとこ見られても、たいして気にしてない感じ。 
「い、いや。パステルに用があって来たんだけどよ……わりい」 
「もう起きるとこだから、もう少し待ってくれ」 
あれれ?さっきの続き……しないのかな?ちょっと、残念、かも。 
「おう。わーったよ」 
ちらっとドアのほうを見ると、ランドとばっちり目が合ってしまった。 
ランドは困ったようにふっと笑うと、 
「あとでな」 
と言ってドアを閉めた。 
「うー。気まずい」 
「そう?」 
「だって……」 
「好きな女の子と寝るのは普通のことだろう?」 
「へ?」 
「別に見られても困ることはないよ」 
「……」 
「あのさ、パステル。おれは遊びで抱いたわけじゃないからね?」 
「……」 
「パステルは……どうなの?」 
「……昨日、言ったわよ」 
「今、聞きたい」 
「す、好きよ。クレイのこと」 
「おれもだよ、好きだ……」 
飽きることない、わたしたちの唇はまた合わさった。 
 
「ランド、いる?」 
わたしがノックすると、ドアが開いて、 
「よお」 
いつも通りのランドだ。 
さっきのちょっと困ったような笑顔を意識してたから、ほっとする。 
「どうしたの?」 
「これ、おめぇにやろうかと思って」 
と、ランドが差し出したのは、紙くず、いや失礼、冒険者試験の案内書だった。 
「荷物の底に入っててよ。だから、ぐちゃぐちゃなんだけど。おいらがこないだ受けたときの案内書だから、ご利益があるぜ」 
「はは。そうかも。ありがとう、ランド」 
こういうの嬉しいなぁ! 
仲間、って感じがするじゃない? 
「筆記試験くらいなら教えてやるぜ?実技はあいつもいるしさ。ま、一発合格間違いねぇな」 
「うん!」 
ははは。まさか、落ちないわよね? 
本当は冒険者歴二年だし。 
頼もしい先生もいるからね。 
あー。ランドって、お兄ちゃんって感じ。面倒見がいいし、優しいし。 
そういえば、トラップもそうよね。 
口が悪すぎるから、ついつい忘れがちだけど。 
「そーいや。悪かったな」 
「え?ああ……」 
「ま、良かったよな。あいつ、何だって?」 
「ん……。好き、って、言ってくれた」 
「そうかそうか。そりゃ良かったな」 
なんて言いながら、ランドは何とも言えない複雑な表情をしてる、ような? 
気のせいかな。 
「パステル」 
「ひゃあ!」 
ちょ、ちょ、ちょっと! 
突然、わたしを抱き締めるランド。 
な、な、何なのよ!? 
「足りねえな」 
「へ?」 
「胸」 
「はぁ?」 
「昨日はいい体してるって思ったのによぉ」 
「ランド!」 
「へへ。やっぱおれはグラマーなタイプが好きだわ」 
前言撤回! 
やっぱり、ランドも口が悪かった。 
それにしても、トラップとも似たようなこと、あったよーな。 
もぉー、胸がなくて悪かったわね! 
 
 
夕食をすませたわたしはクレイ・ジュダと一緒に部屋に戻った。 
そうそう、お城に滞在してる間は、いろいろと着るものを貸してくれるんだって。 
嬉しいなぁ。 
クレイ・ジュダの前でかわいい服を着れるし、彼のいろいろな装いを見るのも楽しみだ。 
冒険に出ちゃうとなかなかそうはいかないもんね。 
今日のクレイ・ジュダはシンプルなシャツにスカーフを巻き、ジャケットという装い。それは彼の気品ある雰囲気によく似合っている。 
わたしはパフスリーブ風のブラウス。スカートのウエスト部分にはリボンがついててかわいい。 
お風呂にも毎日入れるし、びっくりするくらいありがたい日々だ。 
それだけ、クレイ・ジュダとランドの功績は大きかったんだろうなぁ。 
二人共すごいなぁって改めて思った。 
「はい。パステルはオレンジジュースだよ」 
「ありがとう。クレイは何を飲んでるの?」 
「おれのは果実酒だよ。こないだの晩餐会でも振る舞われてたやつでね。ここらへんの特産品なんだってさ」 
「あ……、それ飲んだかも」 
「はは。そうだったのかぁ」 
「うん。大人の味だったなぁ」 
「別に無理することはないよ。そのうちわかるようになるから」 
「あのときはね、わたしも大人になりたいって思って、無理しちゃったのよね」 
「パステルは本当にかわいいね」 
クレイ・ジュダはニコニコしてわたしの話を聞いてる。 
「そ、そう?」 
「ああ。かわいくて仕方がないよ。そういうとこが好きなんだけど」 
「クレイ……」 
はぁぁぁー。照れちゃうぞ。 
「それにね、パステルのことはおれが大人にしてあげたろう?無理する必要なんかないんだよ」 
「……!」 
こ、この人は……!天使みたいな顔で何てことを言うんだろ……! 
「パステル、どうかした?」 
「だ、だって、クレイってば」 
「まさかパステルまで、おれはこういうこと言わないと思ってるのかい?」 
「クレイって、天使みたいなんだもの」 
「よしてくれよ。だいたい、もっと過激なこと言ったり、やったりしてると思うけど?」 
あのー。それは、あの行為の最中だから平気っていうか。 
「日常会話でそういうこと言わなそうだもの」 
「おれは俗物だからね」 
クレイ・ジュダはそう言うと困ったように笑った。 
「わたしはクレイのそういうとこが好き」 
「そうか?」 
「うん。クレイって、すごく魅力的で人を惹きつけるのに、いつも自然体っていうか、気取らないっていうか。だからって、謙虚すぎるわけじゃないし」 
「パステルはおれのことよく見てくれてるんだね。初めて会った日のこと覚えてるかい?」 
「えーっと?何か言ったかなぁ?」 
「クレイはクレイのままでいいって。おれ、何かと特別視されがちだから。パステルみたいに言ってくれる人いなかったんだよ」 
「そうだったんだ」 
伝説になるような人って、実はどこかで孤独だったりするのかな。 
きっとクレイ・ジュダはいつも期待されて頼られて、彼も断れない性格だから、それを引き受けて。 
何だかなぁ。 
これからも、クレイ・ジュダのそばにいて、わたしは彼を支えていきたいな。 
わたしの胸の中でだけは、クレイ・ジュダもただの男の人、でいれるように。 
「パステル?」 
「好きよ」 
「ああ、おれもだよ」 
合わさった唇からは、果実酒の大人の味がした。 
 
ソファーで長いキスを交わしたわたしたちはベッドに移動することにした。 
そこで、クレイ・ジュダは繊細で美しい顔に、とびっきりの微笑みを浮かべて、 
「パステルが服を脱ぐとこ、見たいな」 
「えぇ!?」 
そんな……!自分で脱ぐなんて恥ずかしいわよ! 
「脱いでごらん?」 
「や、ちょ、ちょっと、それは」 
「早く、パステルの綺麗な裸、見せて」 
わたしの戸惑いなんて無視して、クレイ・ジュダのおねだりは続く。 
「もぉ、クレイったら。しょうがないなぁ」 
天使みたいな顔してるのに、えっちな人。わたしの体はそれをよく知っている。 
「ね、恥ずかしいから、あんまり見ちゃやだよ?」 
わたしはブラウスのボタンを外していく。 
見ないでって言ったのに。クレイ・ジュダはそんなわたしをじっと見つめてる。 
ブラウスが肩をすべり床に落ちる。 
ファスナーを下ろしたスカートは足にそってパサリと床に落ちる。 
「下着はゆっくり外して」 
「うん……」 
なんだか、すごくえっちなことをしてるような。 
わたしはクレイ・ジュダと目線が絡ませたまま、ゆっくりと下着を外した。 
「綺麗だね」 
ベッドに腰かけたまま、わたしのウエストに手を回して、ぐっと抱き寄せるクレイ・ジュダ。 
そのまま、わたしの胸のふくらみに吸い付いて、あいた方の手は、わたしの股の間を探り始めた。 
「あぁん……っ」 
一気に体温が上がってく。 
「ぁあぁ……っ、ぁん……っ」 
わたしが指先をクレイ・ジュダのスカーフに引っかけると、するりとほどけて、わたしの指を滑って落ちていった。 
「おれのことも気持ちよくして」 
ぐっと腕を引っ張られて、わたしはクレイ・ジュダの足の間にひざまずかせられた。 
「くわえてごらん」 
「ん……」 
ファスナーを下ろし、取り出した彼はもう固くなっていた。 
クレイ・ジュダに教えこまれた通りにわたしは彼を口に含んだ。 
ん……。おっきい。 
わたしの唇と彼が擦れ合うたびに、じゅぶじゅぶといらやしい音が出てしまう。 
「パステル……おれに顔を見せながらしゃぶるんだ」 
こんな顔見られたくないと思う反面、なぜだか、こんなわたしを見て欲しい、と思う。 
わたしは、彼をくわえこんだまま、目線を上げる。 
クレイ・ジュダはそんなわたしを見下ろしながら、ジャケットを脱いだ。 
「いやらしい顔してる」 
うっとりするような熱っぽい眼差しから逃げるように、目を伏せようとしたわたしの顎を、クレイ・ジュダは持ち上げる。 
どうやらまだ許してはくれないらしい。 
「大丈夫だよ。そんな顔も好きだから」 
絡み合う目線。こんなことをしてる自分を見られてる。恥ずかしい。それなのに、体の奥が熱い。 
クレイ・ジュダは彼をくわえてるわたしを眺めながら、シャツのボタンを外しはじめた。 
その何ともいえず淫らな光景がさらにわたしの体を熱くしていく。 
あらわになっていく肉体が美しい。 
ファイターとしては、華奢な均整の取れた体は、クレイ・ジュダの繊細な顔立ちによく似合っていた。 
この人はどこまで完璧に美しいんだろう。 
ボタンを外し終えたシャツを床に脱ぎ捨てる。 
「パステル、ズボンを脱がせてくれないか?」 
わたしは目線でクレイ・ジュダに返事をすると、彼のズボンに両手をかけ脱がせ始めた。 
でも、彼を口に入れたままのわたしには脱がせきることができなくて、 
「もういいよ」 
クレイ・ジュダは苦笑いして、わたしの口を解放し、ズボンを脱いだ。 
そして、わたしにおおいかぶさり、全身にキスの雨を降らせる。 
「あぁ……っ、ぁはぁ…ん、あぁん……っ」 
甘い感覚に身をよじらせ、わたしは恥ずかしげもなく淫らな声を上げる。 
「酒なんか飲めなくても、パステルは大人だよ、ほら」 
「ゃあ…っ」 
クレイ・ジュダの指先がぬぷぬぷとわたしの甘い場所をかき回す。 
「おれを誘ってるの?」 
「ひゃ……」 
わたしの首筋をクレイ・ジュダの尖らせた舌先がツーッとなぞっていく。 
「入れて欲しいんだろう?」 
耳元で息を吹きかけながら囁く声。甘い誘惑にあがなえない。 
わたしはコクリと頷いた。 
「おねだりしてみて」 
両手をわたしの肩の上について、見下ろしながらクレイ・ジュダは要求する。 
薄く浮かべた笑みがいじわるだ。 
まるで天使の顔をした悪魔みたい。 
「クレイの……入れて?」 
「泣きそうな顔でそんなこと言われたら、たまらないよ」 
そして、愛してるよ、と囁きながら、クレイ・ジュダはわたしの中に入ってきた。 
クレイ・ジュダに揺らされ、わたしは快楽の虜になる。 
決して綺麗だとは言いがたい行為なのに溺れてしまうのはなぜだろう? 
本能のままに、突き入れられ、膨らんだ欲望に揺さぶられ、わたしたちは乱れに乱れた。 
彼の発情は、わたしの胸のふくらみに、生暖かくトロっとした白い液体をたっぷりとかけて、果てた。 
わたしはその生暖かい感触になんだか恥ずかしくなってしまった。 
 
行為が終わって、クレイ・ジュダの腕に抱かれてる時間。 
幸せだなぁー。 
もうね、ふにゃーっとしちゃうの。 
キスしたり、とりとめのない話をしながら時間が流れていく。 
「そういえば、ランドは何だって?」 
「冒険者試験の案内書をくれたの」 
「そっかぁ。懐かしいなぁ。おれは14歳の頃から冒険生活を始めたんだよ」 
「へぇー。じゃあ、もう10年目なのね」 
「ああ。長いこと実家には帰ってないんだ。妹は20歳なんだが、もう結婚してるかもしれないなぁ」 
「帰らないの?」 
「うーん。うちは代々騎士の家系で帰ったらきっと無理矢理、騎士団に入れられてしまうからね。今はまだ何かやらなきゃいけないことがある気がするんだ」 
「そっかぁ」 
「ま、いずれは帰ると思うけどね。パステルも来るかい?ドーマっていう小都市なんだけど。いい町だよ」 
「うんうん!行きたい!」 
この時代のドーマってどんな町なんだろう。行ってみたいなぁ。しかも、クレイ・ジュダと一緒になんて素敵! 
「はは。まったく君は」 
クレイ・ジュダは、何故か苦笑いしてる。何で? 
わたしが、クエスチョンマークでいっぱいになっていると、 
「そこが、パステルらしくて、かわいくもあるんだけどね」 
クレイ・ジュダは困ったように優しく微笑んだ。 
 
 
わたしたちがお城に滞在させてもらうことになってから数日目。 
一仕事終わったばかりの、クレイ・ジュダたちにとっては、久しぶりのゆっくしりた休暇になってるみたい。 
今日は、三人で街に繰り出すことになった。 
旅の準備もしたいからね。 
「パステル」 
にっこりと優しい微笑みを浮かべるクレイ・ジュダ。 
ははは。やっぱり、素敵だなぁ。 
わたしはクレイ・ジュダの笑顔が好き。 
少し遅れて、ランドもやって来た。 
「よお。待たせたな」 
そうそう。今日も三人共、服を借りてるのよね。 
わたしは柔らかでさらっとした生地できたワンピース。 
クレイ・ジュダとランドは二人とも上質なシャツに、ジャケットにズボンという、品がある服装。 
みんな、今日はシンプルな装いなんだけど、クレイ・ジュダはそれでも貴族みたい。 
わたしたちは、特に目的もなく街を探索する。 
それでも、見るものすべて目新しくて楽しかった。 
もちろん、クレイ・ジュダと一緒だから楽しいっていうのもあるけど。 
わたしがこの時代に来て、五日目かぁ。 
すっかり馴染んじゃってるわたし。 
二人と会えて良かったなぁ。 
「こら。おめぇ、ぼんやりして迷うなよ」 
「もぉ。街で迷うわけないでしょ。方向音痴だけど」 
なーんて、言ってるけど。 
エベリンで迷ったことがあるんだよね。 
トラップに見つけてもらったっんだっけ。 
「おいおい。おめぇは方向音痴なくせにマッパーになろうとしてるのか!?」 
「そ、そうよ?」 
「勘弁してくれよー。ダンジョンで遭難とか嫌だぜ?」 
「ずいぶん信用ないわね。大丈夫よ、たぶん」 
「そのたぶんってやつが怖えーよ!」 
わたしとランドの話を聞きながら、クレイ・ジュダがぷっと吹き出す。 
「ランドもあんまりいじめるなよ。ダンジョンで迷ってもパステルのことはおれが守るよ」 
「おいおい。ジュダちゃん、おいらはどうするんだい?」 
「おまえは自分で何とかしろよ」 
「ちぇ。おめぇはホント顔に似合わず、いじわるだよなぁ」 
わたしたちの会話には笑顔が途切れない。 
二人となら、きっと大事な家族みたいなパーティーになれるって思ってた。 
このときまでは。 
 
「待て」 
しゃがれた声。 
だけど、わたしたちは誰も気にもとめなかった。 
「待て、そこの魔法戦士」 
クレイ・ジュダがぴくっと反応する。 
わたしとランドも思わず、立ち止まる。 
だって、今日は何の装備も身に付けてないんだもの。 
それなのに、魔法戦士って。 
「おぬし……死相が出ておるな」 
「はぁ?」 
わたしとランドが同時に叫ぶ。 
クレイ・ジュダは表情を変えない。 
そこにいたのは、フードを深くかぶったおじいさんのような、おばあさんのような? 
「ったくよぉ。このジュダちゃんには神の加護が付いてるんだぜぇ?あんた何わけのわからねぇこと言ってんだよ」 
「ふん。信じぬというなら勝手だがな。娘。おぬしならわかるだろう」 
「へ?」 
まったくわからないんですけど! 
「あなたがどういうつもりかわからないが。いきなり人を捕まえておいて、説明もなくそんな言い分っていうのは失礼でしょう?」 
と、クレイ・ジュダ。 
「そ、そうよ。しかも、わたし、わかんないわよ?」 
「おまえは歪みだ」 
「歪み?」 
「ここに存在してはならぬ者ということじゃ。そう言えば、わかるか?」 
「……!」 
な、なによ。わたしがこの時代の人間じゃないってバレてるの!? 
「だぁぁぁー。失礼な野郎だぜ。歪みだぁ?おまえはこいつの何を知ってるんだよ。わけわかんねぇぜ」 
「まったく。信じぬというなら、そうすればよい。ただ、その魔法戦士の運命は変えられんぞ。もし助けて欲しいなら、わしを呼ぶがいい。おぬしらの求めに応じて姿を見せてやろう」 
「うるせぇな。そんなもん必要ねぇぜ」 
「……待って!」 
「パステル?」 
「あの、わたしのことわかってるの?」 
「ああ。存在せざるものは歴史を歪める。本人の意思とは関係なくな。すでに歪みは始まっておる。おぬしには自覚はないだろうがな。過去と未来は交わってはならぬのだよ」 
「……!」 
「決心がついたら会いに来い。南の森じゃ。なに。心配はいらぬよ。歪みが戻ればすべては元の形に収まる。歪みの時間の記憶も忘却の彼方じゃ。おぬしもおぬしに関わった人間すべてな。悲しいことなどない」 
「おいおい。パステル。こんな意味わかんねぇ話まともに聞くなって。ほら、おまえも。行こうぜ」 
ランドはわたしとクレイ・ジュダの背中を抱いて無理矢理歩かせた。 
どうしよう……。 
あの人のいうことはきっと本当だ。 
一気に血の気が引いていく。 
「パステル、大丈夫か?」 
クレイ・ジュダがわたしの肩を抱き、心配そうに顔を覗きこんできた。 
「おめぇ絶対気にすんなよ?大丈夫だからな?」 
「……クレイ、ランド。あのね、わたし、二人に話さなきゃいけないことがあるの」 
「わかった。とにかく、いったん城に戻ろう。立ち話で言えるようなことじゃないんだろう?」 
わたしは、もう話す力がなくて、コクリと頷いた。 
 
 
「これ、わたしの冒険者カードなの」 
「パステル・G・キング、ジグレス450年生まれ、ロンザ出身、詩人兼マッパー、レベル5、冒険者カード交付はジグレス466年。って……何だよこのカード。間違いだらけじゃねぇかよ。今は何年だと思ってんだ?383年だぜ?ははは」 
ランドはいつものように冗談っぽく言うけど、普段のキレがない。 
クレイ・ジュダは黙ったまま、何か考えこんでた。 
「間違いじゃないの。わたしは……この時代の人間じゃないの」 
「おめぇも、もっとましな冗談言えよ。なぁ?」 
「……パステルが嘘をついてるように見えるか?」 
「見えねぇ。こいつ、わかりやすいからな。だけど、信じたくねぇよ。そうだろ?」 
「ああ」 
二人共わかっちゃったんだなって、思った。さっき言われたことの意味。そして、クレイ・ジュダが死んでしまうというのが、きっと嘘ではないと。 
重苦しい沈黙だけが、その場を支配した。 
「クレイ、初めてわたしと会ったときに実体力がないって言ってたわよね?たぶん、わたしがこの時代の人間じゃないから……そう感じちゃったんだと思う。今も感じる?」 
「……」 
クレイ・ジュダは何も言わず、切なそうにわたしを見つめた。 
「そっかぁ」 
やっぱり、この時代に存在すべきじゃないんだなぁ。 
そりゃそうだけど。 
気が付いたら、涙がこぼれ落ちてた。 
クレイ・ジュダがわたしの肩を抱いて、優しく涙を拭ってくれる。 
ランドはポンポンと頭をなでてくれる。 
ここにいたいよ。 
「なぁ。どうにかならねぇのか?」 
ランドの言葉に誰も返事ができなかった。 
 
ランドは部屋に戻り、わたしたちは二人きりになった。 
泣きはらしたわたしの目元をクレイ・ジュダの指先が優しくなぞり、そっと口づける。 
「パステル……。ひとりで抱え込むなよ?おれがいるから」 
クレイ・ジュダはわたしを柔らかく抱き締めた。 
「でも」 
「もしかしたら、何か手だてはあるかもしれないじゃないか。おれが必ずパステルを守るから」 
「クレイになにかあったらわたし……!」 
また涙がこぼれてきた。 
だって、だって。わたしがここにとどまることはそういうことだもの。 
「おれはいなくならないよ。大丈夫だ」 
その言葉は嬉しい。 
だけど、わたしはクレイ・ジュダを幸せにはできないんだ。 
クレイ・ジュダが好きだから……わたしは……。 
ああ。もう。どうして。 
わたしはこんなにもクレイ・ジュダを愛しているのに。 
「クレイ……抱いて?」 
「パステル……」 
合わさる唇はわたしたちが交わる合図。 
始めは軽く軽く、そして、深くなっていく。 
唇が離れて目と目が合う。 
愛おしそうに、だけど切なそうにクレイ・ジュダはわたしを見つめる。 
優しく頬をなで、また軽く唇を合わせる。 
何度も繰り返される動作がわたしを愛してるって言ってくれてるみたい。 
クレイ・ジュダの体がわたしにのしかかり、わたしの体はベッドに沈んだ。 
抱き合うだけでわかる固い感触がわたしの感じやすい部分に当たってる。恥ずかしさから、逃れようと体をよじるけど、ますます強くコリコリと押し当てられて、わたしは感じてしまった。 
「ゃだ……」 
「そうだね、服ごしじゃ物足りないね……」 
「あぁんっ」 
さらに数回強く押しつけてから体を離すと、クレイ・ジュダはわたしが身につけているものをどんどん脱がせた。クレイ・ジュダも服を脱ぎ捨てていく。 
「はぁん……っ、クレイ……」 
唇が優しく触れて、なまめかしく動く舌が感じる場所を探り当て舐め上げる。 
リズミカルな指先が体をくすぐり這い回る。 
「んむぅ……」 
クレイ・ジュダがわたしを味わって、わたしも彼を味わう。 
感じるほどに、彼の味がした。 
上下を入れ替わって、口を使って、お互いの体をむさぼるように愛し合う行為。 
表情はうかがえないけれど、気持ちを高ぶらせるには十分だった。 
わたしたちは卑猥な行為に溺れている。 
「パステル、もっと気持ちよくなろう」 
「クレイ……」 
「自分で入れてみて」 
「ど、どうすればいいの?」 
「ここにあてがって……」 
入り口に彼を押し付けられる。 
「う、うん」 
「腰を落とすんだ……。できるね?」 
「ひゃっ、あぁ…っ」 
少し入ったけど……入れにくいし、痛い。 
「痛いか?」 
「ちょっと、痛い……」 
「力抜いて」 
「ん…、あぁ……っ」 
大きく息をつきながら、わたしは彼を中へと導く。 
「ほら……ゆっくり、そうだ」 
「やぁあぁぁんっ!」 
最後は下から一気に押し込まれて、初めての形で体がつながる。わたしはクレイ・ジュダを見下ろしてる。 
「ひぁっ、あぁぁっ、あんっ、クレイ…っ、クレイっ」 
クレイ・ジュダにウエストを掴まれて、前後に腰を揺さぶられて、下から容赦なく突き上げられた。わたしはいつになく激しい彼のなすがままだ。 
「はぁっ、はぁっ、パステル…っ、気持ちいいか…?」 
「ゃあっ、ダメぇっ、ダメっ、クレイっ、ひゃあん」 
なんだか……いつものクレイ・ジュダじゃないみたい。今夜の彼の抱き方は少し乱暴な感じで。たぶん、苛立ってるのかなと思う。穏やかな彼には珍しいことだけど。 
「パステル…っ」 
「あぁんっ、クレイ…っ、壊れちゃう…壊れちゃうよぉ…っ」 
「よし……、じゃあ、壊してしまうか…?」 
脳内に染み込むような刺激的な言葉。 
クレイ・ジュダは体を起こすと、荒々しいキスをして、わたしを奥まで突き上げた。 
「あぁ、あん、あぁん、そんなに、そんなに、動いちゃやだよぅ…っ」 
「はぁっ、はぁ…っ、はぁっ、喜んでるくせに…っ」 
わたしを組み伏せて、腰を振るクレイ・ジュダも、息が絶え絶えになってる。 
「クレイ…っ、気持ち…、いいよぉ…、ひぁあんっ、クレイも、気持ち、いぃ…?」 
「ああ…、すごく、いいよ…」 
「クレイ……っ、クレイっ、ひぁ…っ」 
「うぁ…っ、締まる……っ」 
わたしの粘膜は彼を締め付けて、端正で美しいクレイ・ジュダの顔を淫らに汚していく。 
快楽に崩れたクレイ・ジュダの気品ある顔立ちはより美しさを増していた。 
「クレイっ、あんっ、あん、あぁあぁぁ───っ」 
「く…っ、出す、よ…!」 
彼がはじけたのは、わたしの口内。 
トロリとした彼がたっぷり注ぎ込まれて、わたしは少し苦い彼を飲み干した。 
 
ホントはクレイ・ジュダだってわかってる。なすすべがないことを。 
わたしたちの前に広がる溝は埋まらないってことを。 
どんなに愛し合っても、体をつなげてもそれは埋まらない。 
もどかしさや苛立ちをぶつけるようにわたしを抱いたクレイ・ジュダに胸がせつなくなった。 
彼がシドの剣をたずさえて、立ち向かう戦いをわたしは知っている。 
もしその前にクレイ・ジュダが死んでしまうとしたら……歴史はどうなってしまうんだろう。 
彼に助けられるはずの人々はどうなるんだろう。 
クレイは、わたしの時代のクレイはどうなってしまうんだろう。 
なんだかいろいろなものがバラバラになってく。 
そして、わたしがクレイ・ジュダのそばにいるとしたら……一番大好きな彼の運命すら歪ませてしまう。 
クレイ・ジュダの腕に優しく抱かれながら、わたしは別れることを決心した。 
 
そして、次の日。 
「わたし……帰るから」 
わたしの言葉はあっさりしたものだった。 
「おめぇはそれでいいのか?」 
わたしはコクリと頷く。「……いつ、出発するつもりなんだ?」 
「ん……。一週間後。あのね、わたし、出発の日までは二人と楽しく過ごしたいんだ。どうかな?」 
「おう。わーったよ。おいらは賛成だ」 
「わかった……決心は、変わらないのか?」 
「クレイ……ごめんね」 
このとき、クレイ・ジュダは今まで見たことがないくらい不安げで悲しい顔をした。 
あとから聞いた話だけど、ランドもそんなクレイ・ジュダの様子にびっくりしたんだって。 
あいつがあんな顔するなんてな、って。 
やっぱり、クレイ・ジュダは本人も言うように、特別、ではないんだと思う。 
男の人って意味においては。 
カリスマ性があって、強くて、人を惹きつけてやまない、クレイ・ジュダ。 
いずれは、伝説の青の聖騎士と呼ばれる人。 
わたしはクレイ・ジュダの意外な一面を見つけるたびに、彼に惹かれていく。 
彼を愛おしく思う。 
わたしはもっともっと彼を知りたいと思う。 
まだまだ足りない。 
あと一週間……。 
終わりが見えてる恋だけど。 
わたしはクレイ・ジュダをいっぱい愛したいと思った。 
 
それから、一週間っていうのは、びっくりするくらい、あっという間だった。 
本当はもっと一緒にいたい。だけど、どこかで踏ん切りはつけなきゃいけないんだ。 
別れが信じられないくらいに、わたしたちは残された時間を賑やかに過ごした。 
きっと、心にはいろいろ抱えてたかもしれないけど。 
明日には、この世界とも、ランドとも、そして、クレイ・ジュダともお別れだ。 
なんだか実感がない。 
今日は別れる準備をしなきゃいけないんだ……。 
わたしはまず、ランドに会いに行くことにした。 
 

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