「パステル、入るぞ」
ガチャ。ドアを開ける。
ああ、そうか。パステルは今いないんだよな。
今、俺たちのパーティーは休暇中。
パステルは恋人のギアに会いにエベリンに行ってるんだ。
別に大した用事もなかったけど少し寂しい。たわいもない話をふっとしたくなるんだよな。
「?」
パステルのベッドの上に小さな赤いノート。
見てはいけないとわかっているのに、好奇心がむくむくと湧いてくる。
マッピングの練習か、小説のネタ帳か、それとも日記帳なのか。
今日パステルが戻ってくることはないよな……。
俺は好奇心に導かれるまま、そのノートを開いてみた。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりのことに絶句する。
こ、これは!
一言で言うなら、教科書、だ。
一見ノートにカモフラージュしてるという親切設計から内容は察してもらえるだろうか。
パ、パステル……!
あいつ何でこんな本を読んでるんだよ!?
俺だって知らないことがいっぱい書いてあるぞ?
かぁぁぁっ、と頬が熱くなる。
俺は恥ずかしいと思いつつも……熟読してしまった。
パステルがもう初体験を済ませてることくらい俺だって知ってるさ。
ギアは大人だし、何度も泊まりで二人は会っているのに何もないわけがないだろう。
もちろんそれは幸せなことだから祝福している。
でもこうしてリアルにパステルが大人になってしまったんだというのを目撃してしまったのは複雑な気分だよな……。
ぱらりとページをめくる。
どこを読んでも過激だ。
今ごろギアとこういう行為に耽っているのだろうか?
挿し絵のようなギアとパステルが頭に浮かぶ。
ああ。何を想像してるんだ俺は……。
パステルは妹みたいなものだと思ってる。
守ってあげたい、とも思う。
色気もないし、冒険中にたまに見える毛糸のパンツも微笑ましいんだよな。
恋愛感情とは縁がない場所にいる大切な妹分。
だけど、パステルが女の子、しかもいろいろなことを知っている、ということを改めて意識させられ……俺はドキドキしている。
「!!!!!」
しおりがぱらりと落ちる。
パステル、今ごろこれをギアにやってあげてるんだろうか……過激すぎないか?
そっとしおりを戻して、ため息をつく。
すっかり反応してしまっている体に我ながら自己嫌悪だ。
はぁぁぁー。
こんなことをわざわざ勉強するなんて、パステルはかわいいやつだよな。
ギアのことが大好きなんだろう。
俺は秘密を覗き見た罪悪感を抱えつつ、愛する妹分の幸せを願った。
おわり