ここはガイナ。
わたしは冒険者を辞めてガイナに帰ってきたんだ。
しかも旦那さま付きで!
そうわたしはギアと結婚してしまったのだ。
ギアも冒険者を辞めて今はガイナで剣の先生や村の用心棒みたいなことをしている。
慌ただしかった冒険者の頃とは違い、今はのんびりとした穏やかな日々を過ごしているんだ。
最近はお菓子作りに凝ってるの。
冒険者の頃はあまりできなかったもんね。
これがなかなか楽しいのだ。
今日作っているのは苺のケーキ。
さっき焼き上げたスポンジを生クリームと苺で飾れば完成だ。
わたしは生クリームを泡立ている。少しトロトロしてきたかな。
うーん。なかなか時間がかかるかも。
「何か手伝うか?」
ギアがキッチンに入ってきた。
「大丈夫。ギアは休んでて」
わたしは生クリームを泡立てながら、ギアに答える。
「そうか」
「うん。待っててね」
と、その時、ぎゅっ。
背後からギアに抱き締められた。
「ひゃっ」
生クリームに夢中だったわたしはびっくり。
「ギア?」
「いいから。パステルは続けて」
「う、うん」
ドキドキ。
落ち着かないなぁ。もう。
嬉しいけど。
「それ、あとどれくらいでできるんだい?」
「もう少しかなぁ」
ちょっと緩めだけど、生クリームに角が立ち始めてきた。
「意外と大変なんだな」
「うん」
「言ってくれたらやったのに」
「あはは。ギアがケーキ作り?」
わたしはギアが生クリームを泡立てる姿を想像して思わず笑ってしまった。
だってそうでしょう?
似合わないだもん!
「たまにはいいさ」
背後から、チュッとほっぺにキスしてくるギア。
わわわ。そんなことされると本格的にドキドキするぞ。
わたしは動揺を抑えながら生クリームを泡立てる。
「そろそろいいんじゃないか?」
ギアにドキドキしながら泡立ててたら、いつの間にか生クリームがツンと角が立つ状態になっていた。
「うん。いいかも」
「次は何をするんだい?」
「このスポンジケーキに生クリームを塗って、飾って、苺を乗せたら完成だよ」
「俺もやってみようかな」
「うそ。ほんとにー?」
「本気だよ」
あはは。ほんとにそのつもりかも。
食事の支度なんかはたまに手伝ってもらうけど。
ふふっ。ギアとケーキって変なの!
わたしがそんなことを考えていると、ギアの手がスッと苺に伸びる。
「ギア、苺は最後だよ?」
「俺は苺がいいな」
ちょっと、ギアったら、つまみ食いするつもりじゃないでしょうね。
なんてわたしが思っていると。
「むぐ……?」
わたしの口に苺が押し込まれた。
「パステル、落とすなよ?」
えー!?なになになに?
「食べるのもダメだからな」
もー。ギアー。なにをしたいの?
なんてわたしが考えてる間にも、ギアのいたずらは始まっていた。
背後から伸びた手が唐突に胸を弄り始める。
カプッ。
突然の刺激にびっくりしたわたしは思わず、くわえていた苺をかじってしまった。
これは食べちゃうしかないよね。
もぐもぐ。
「食べるなって言ったのに」
またわたしの口に苺を押し込むギア。
うー。こんな状態でいたずらされたらまた食べちゃうよ。
首筋にキスされて、胸を弄られ続けてる。
くすぐったいなぁ。
「ひゃんっ」
敏感なとこを強く刺激されて思わず声を上げてしまう。
もちろん苺はまた食べてしまった。
「ダメだろ?」
ギアはまたわたしの口に苺を押し込む。
そして、背後からわたしの手を取ると、わたしの指先を生クリームの中にぬぷりと沈めた。
今度は何する気!?
生クリームまみれのわたしの指。
「ほら、トッピングできたよ」
ギアはそういうとわたしの指を舐め始めた。
「パステルの味、甘くて美味しいな」
ぺろぺろ。
ギアはわたしの指を口に含んで舐め回す。じっくり味わうように。
ちょ、ちょっと。ギア──。
こ、このままじゃ、わたしがケーキにされちゃう!
ギアならやりかねないもん!
あわわ。わたしは自分がすごく過激なことを想像しているのに気付いてしまった。
わたしは慌てて、くわえさせられていた苺をぱくりと食べる。
「ギアってば!もうダメ──!」
わたしが振り返るとギアは満足そうに微笑んでいた。
「はは。すまないな」
「ギアってば、えっちなんだから」
「パステルもね」
くくっと意味ありげに笑うギア。
「えぇっ!?」
わたしの過激な想像が、ギアには見透かされているんじゃないかと動揺していると、
「パステル、もう一個だけ」
ギアはまたわたしの口に、今度は浅めに、苺をくわえさせる。
そのままギアはキスしてきて、わたしの唇から苺を奪い取っていった。
「ごちそうさま」
その苺を食べながらキッチンから出ていくギア。
いろいろとつまみ食いしたギアは、とてもとても満足そうだった。
そんなドキドキもありつつ、苺のケーキは完成した。
もちろん少し苺が足りないケーキになってしまったのは言うまでもない。
おわり