窓から四角く見える空には星が白く瞬いていた。
小さな夜空をギアと二人、ぼんやり眺める。
月明かりだけが、ぼんやりと差し込み、うっすらと二人を照らしていた。
ここはストロベリーハウスの牢屋。
キットンの借金返済のために、スワンソンを騙し返してやろうって作戦だったんだけど、そこは抜け目のないスワンソン。
一度は取引に応じたように見せかけておきながら、なんとキスキンにも連絡をしていた!
それで、どっちに転んでもいいようにわたしを監禁したのだ。
なぁーんかね。
スワンソンの頭の中はほんとに損得勘定だけなんだ。
はぁぁぁー。嫌なやつ!
今日1日を振り返ってみる。
あとはお金を受け取るだけ!王女役ともサヨナラかと思ったらスワンソンの使者が来て。
最近ギクシャクしっぱなしのトラップとまた喧嘩したわたしは、クレイと二人でストロベリーハウスに向かうことになったんだ。
スワンソンの企みなんて何も知らずに出発したわたしとクレイ。その途中でわたしは誘拐されてここに連れてこられたの。
夜になって、見張りがギアになって。
いきなり抱き締められてドキドキ。
そして、なんと!わたしは初めて人間の男性から好きだと言われたのだ。
しかも、しかも。ギアみたいな素敵な人に。
感動!
それから、ギアの昔のパーティーの話、好きだった人の話を聞いたんだ。
こういう話をするのは、わたしが初めてなんだって。
心を許してくれてるの?
ギアはあまり自分のことを話さない感じがしていたから意外だった。
そして、わたしたちは手をつなぐと、何も話さずに、ぼんやりと月を見てたんだ。
実は……、手をつないだのは、わたしからなんだよね。
わたしはギアの胸の痛みを思うと、どうすればいいかわからなくなって……、思わず彼の手を取ってしまった。
一瞬ギアは驚いた顔をしたけど……すぐにその手を強く握り返してきたんだ。
それから、ずっと二人でこうしている。
「パステル……ありがとう」
長い沈黙の後、先に口を開いたのはギアだった。
「あんたには救われてばっかりだな」
ギアはふっと優しい笑顔を浮かべて、空いてる方の手で優しくわたしの頬を撫でてきた。
さも愛おしそうにわたしを見つめるんだけど、そんな目で見つめられたら……。
わたし、どうしていいかわかんない。
ドキドキドキドキ。
しかもギアかっこいいし。
わたしが目のやりどころに困っていると、「パステル……」
ギアは私の名前を囁くと、そっと顔を近づけてきて……!?
唇にむにっと柔らかな感触……。
何、何、何!?
こ、こ、これって?え───?キ、キ、キスだよね?
えぇ───!?
色っぽい話とは全く無縁だった私でしょ。
こんないきなり展開……って。
あ、ああ──!
柔らかい唇の感触と対象的に体が硬直する。
ギアはそんなわたしの肩をぐっと抱き寄せて……より私たちは密着した。
うう、胸のドキドキが伝わってしまいそう。
そんなわたしの気持ちを知ってか知らずか、私の唇を割って……ギアの舌が私の舌を絡めとる。
なにこれ!?
と、とろけちゃう……。
頭がぼんやりしてきた。
「んっ……んんっ!?」
体がビクッとする。さっきまでわたしの肩にあったギアの手が胸に……。
ギアは、わたしの胸を手のひらに収めてさわさわと撫で回した。唇は首筋を這う。
こ、こ、これはまさか!?
無理、無理!心の準備ができてないってば!それに、それに、ここ牢屋だし!
「ちょ、ちょっと、ギア!これ以上は……んんっ」
わたしが言い終わらないうちに再び唇を塞がれる。
ギア───!?
パチン、パチン。
胸元のボタンを手慣れた感じで、素早く外されて……ギアの骨ばった大きな手がわたしの胸に直に触れてきた。
さっきよりダイレクトに刺激されて……わたしは、感じて、しまっていた。
合わさったままの唇から息とも声ともつかない甘い音が漏れる。
それはどんどん激しくなって、わたしがギアの愛撫に感じてることを示していた。
だけど、こんな時だし、牢屋だし!
そりゃあ、わたしだって初めての人がギアなら、……嬉しい、かも。
でも、でも、今はダメ───!
「ギ、ギアっ…待って、待って」
わたしは必死に訴えかける。
「……俺じゃダメか?」
ううっ。そんな寂しそうな目をしないで。
「そうじゃなくて……、今こんなときだし」
そんなわたしの言葉にかぶせるようにギアは、
「こんなときだから」
ギアがわたしの肩に手をかける。
「受け入れて欲しいんだ……」
あ……。
ギアの目を見て気づいた。
すごく悲しい目……。
その瞳からギアの抱えた痛みが伝わってきた気がしたんだ。
まだ自分を取り戻せたとは言えない、辛そうに呟いたギアの言葉が、表情が、頭をよぎる。
「パステル……」
ギュッと力をこめて、わたしの手を取るギア。
少し冷たくて大きな手。
「ギア……」
わたしはギアの悲しげな目を見つめていると、切なさが溢れてきて。
なんとわたしは自分からギアにキスをしてしまったんだ。
同情かもしれない。それでも、ギアが愛おしくて、彼の痛みをすべて受け止めてあげたかった。
ギアはわたしを冷たく固い牢屋の床に押し倒すと、はだけた胸元を指先で唇で舌で弄んだ。
「あっ……あっ……ん」
虜になりそうな快感。
王女に変装しているわたしが着ているロング丈のローブの裾をたくし上げて、ギアの手が侵入してくる。
太ももを撫で上げ、一番敏感な場所を探り当てた。
するりと下着を取り去り、指を滑らせる。
「すごいよ、パステル」
ぐちゅっと指を沈めながらギアは言った。
「ゃあっ…ん…」
溢れ出しているのが自分でもわかった。
ギアはぬるぬるになった指先でわたしのすごく敏感な部分をこすりはじめた。
「だ、だめぇ……はぁっ……ん」
くちゅくちゅ。
ギアが器用な指先のタッチでそこを刺激するたびに快感が生まれる。
「パステル……、まだ子供だと思ってたのに」
さらに速度を上げてそこをこすり続けるギア。
わたしはギアに操られるかのように声を上げる。
「やだやだゃだ……っ、あっあっ、あ──っ」
一気に全身の力が抜ける。
何かがはじける感じがした。
なんなの?
わけのわからないそれは……、すごく気持ちよかった。
「やっぱりパステルはいいな」
ギアはそんなわたしを見下ろして満足そうに微笑みながら言った。
「こんなに溢れ出してるよ?」
ぐちゅぐゅぐちゅ……。
淫らな音がする。
明らかにさっきよりも……濡れている。
「もっともっと気持ちいいことを教えてやろう」
そう言ってギアはベルトを外して、熱く堅くなったアレを露出させてみせた。
初めてみるアレの大きさに息をのむ。
だってそれは細いギアの体には不釣り合いなほどで。
わたしだって、これからする行為はもちろん知っている。
だけど、こんなに大きなモノを!?そう考えると怖くて……。
まだ男の人に抱かれたことがないわたしは不安でしかなかったんだけど。
「パステル、好きだよ……」
「ギア……」
ギアとならきっと大丈夫。
優しく微笑むギアにわたしは安心して身を委ねようって思えたんだ。
わたしに覆い被さるギアは愛おしそうに愛おしそうにキスをした。
ギアの長い黒髪がわたしの首筋をくすぐる。
「ん……」
くすぐったいってば。
唇が離れると、わたしはギアの顔を見上げた。
わぁー。頬にかかる髪の毛のせいかな。
いつものギアより色っぽくて。ただでさえ、かっこいいのに。このアングルは素敵すぎるかも。
そして……。ギアが熱っぽい瞳でわたしを見つめながら、
「もらうよ……?」
わたしはギアの言葉にコクリと頷いた。
もう一度キスをするわたしたち。
ギアは入り口に大きくなったものをあてがうと、前後にこすりつけて挿入しやすいようによく濡らした。
そして、ゆっくりと、ギアはわたしの中に入ってきたんだ……。
ズブズブズブズブ。
「ああぁあぁあぁっ…ん」
たまらず声が出る。
よく濡れたせいか初めてにしては、スムーズに挿入できたんだと思う。
ギアってば慣れてる……、なんて考えるとくやしくなるからやめた。
「痛くないか?」
言葉の代わりに目線を返し、小さく頷く。
根元まで入りきると、ギアはわたしの腰に手を当て、わたしを抱き起こし、わたしがギアにまたがって座るような格好にさせた。
「静かに……。声は我慢してくれよ」
そして、ゆっくりと下から突き上げた。
「ゃん…っ」
初めては痛いって聞いてたけど、痛かったのは挿入時のほんの一瞬。
ギアが腰を動かし始めてからはスイッチが入ったように快感が加速していく。
男の人に抱かれるのって、こんなに気持ちいいんだ。
しがみつくわたしの唇をギアの唇が絡めとる。
指に絡むギアの無造作に伸びた長い髪の毛にすら感じてしまいそう。
わたしどうしちゃったの?
覚えた快感を確認するようにわたしはギアの髪の毛に何度も指を通した。
牢屋で見張りのギアと王女ってことになってるわたしがこんなことしてるのがバレたら……どうなってしまうんだろう。
罪悪感に似た気持ちが更にわたしを快楽へと溺れさせる。
何度も突き上げられながらそんなことを考えて体は熱くなるばかりだった。
「パステル、ここを握ってごらん」
ギアはわたしを立ち上がらせると、わたしに牢屋の鉄格子を握らせた。
熱くなっている指先が無機質な鉄の冷たさでひんやりする。
そして、ギアはわたしのウエストを掴むと、今度は後ろから挿入し、激しく突いてきた。
さっきまでとはまた違う部分に強い刺激を与えられる。
ギアに突かれるたび、鉄格子に振動が伝わってきた。
乱れた衣服は脱がされないまま、犯され続ける。
お互い服は着たまま、必要な部分だけを出して交わり合ってる。
わたしの、はだけた胸を揉みながら、何度も何度もギアは堅くなった自分自身を出し入れした。
「はぁっ…んっ…ぁんっ…」
突き上げられるたびに鉄格子を握る手に力が入る。
ギアの腰の動きに合わせて、鉄格子が小さくカチャカチャ鳴る。
その音がわたしたちをより興奮させた。
そして、さらに牢屋に監禁されてる。その事実が間違いなくわたしたちの不謹慎な行為を熱くさせていた。
「王女さまが借金取りの用心棒に犯されて……こんなに喜んでる……」
ギアまでそんなことを言う。
なんだか本当にそんな場面に思えて更にわたしの体は火照ってきた。
完全にギアに征服されている……。
「あんたの感じてる顔を見せてくれよ」
ギアは鉄格子から、わたしの手を剥がして、今度は正面を向かせた。
わたしの中にずっといたせいで、ぬらぬらといやらしく光るギア自身。
それを再びわたしの中にぐちゅりと沈めると、ギアはわたしの両足を抱えるようにして抱き上げた。
わたしはギアの首にしがみつく。
その体勢で激しく突き上げるギア。
粘膜がこすり合わされる快感に二人して息を切らす。
「はぁっ、はぁっ…、かわいいよ、パステル…かわいい…」
唇が合わさると、よりギアとの一体感を感じた。
「んっ……んっ……」
舐め合うような激しいキスを交わす。
もっともっとギアが欲しい。
快感をむさぼりあうように交じり合う。
「ギア…っ、ギ…ぁっ」
もっともっとつながりたい。ギアの首に回した手に力が入る。
夢中になって激しく唇を合わせる。
「くぅ…っ、出そうだ…」
ギアの動きが一気に早くなる。
呼吸が乱れる!
「ぁっ…あっ…あぁっ──ギア──っ」
「はぁはぁ……、イクよ……っ、パ、パステル──、うぅっ」
そして、わたしの中でドクっと脈打つと、ギアは私の中に痛みも欲望も思いも全て吐き出して……そのまま、わたしたちは果てたんだ。
「情けない、女々しい男だって思ったろう?」
わたしの髪を優しく撫でながら、ギアは、ばつが悪そうに言う。
「んー。かわいかったかも」
思わず苦笑いするギア。
だって、だって。いつも大人で強い人だって思ってたギア。
でも、そんなのは一面にしかすぎなくて。
母性本能、なのかな?
なんて考えながら、わたしがクスリと笑うと、ギアは何?って目でちょっとふてくされてこっちを見る。
「かわいいー」
「まいったな……」
再び苦笑いするギア。照れてる!気が付けば、空が明るくなり始めていた。
わたしたちは鉄格子ごしに手をつないで眠りに落ちたんだ。
おわり