「…ったくよ」
窓の外、青空の下に伸びる道を歩いて行くのは
まるで仲の良い親子連れのような3人と一匹。
今朝は自分には珍しく早朝に目が覚めてしまい
それから一睡もできず中途半端な睡眠になってしまった。
それもこれもあの二人のせいだ。
まあ、キットンはずっと大いびきで爆睡していたから
盗賊である自分にしかわからなかったのだろう。
いや、「盗賊だから」じゃなくて…
どんなに声を殺しても、気配までは消せはしない。
壁の向こう、小さなささやき声からはじまった二人の行為。
聞きたくなんか、なかった。
布団と枕を頭にかぶっても
キットンのいびきに意識を向けようとしても。
壁越しに伝わってくる
押し殺した息遣いや、密やかな衣擦れや、ベッドの軋む気配は
無視することができずにびしびしと背中に突き刺さってきた。
「…やってらんねぇぜ」
手を取って走り出す二人の後ろ姿を見ながら
でもほんとお似合いだ、としみじみ思う。
自分が入り込む隙はない。
チクチクと痛む胸をさすりながら
カーテンを閉めてベッドに倒れこんだ。