あたたかいお湯の中にふんわりと浮かんでいるようで、とても心地が良い。  
なんだろう、この安心感。  
お母さんのおなかの中にいる赤ちゃんってこんな感じなのかな…?  
なんてまどろんでいると、おでこにすぅすぅと小さく風が吹いている。  
おでこにだけ風が吹くなんて…?と疑問が浮かぶと  
頭がゆるゆると現実に向かって覚めていく。  
そういえば、私、昨夜は原稿書いてなかったけ…?  
〆切は…!?  
 
ぱちくり、と目が覚める。まだ夜明け前らしく、薄暗い。  
原稿の事を思い出して飛び起きようとした私は、  
何かに邪魔され、それが叶わずちょっとパニックになる。  
え、何?なんだか身動きが取れない…?  
 
「ん…おはよう、パステル」  
頭の上から聞こえてきた声に顔を上げる。  
薄暗いけどわかる。そのやさしい声も間違いない。  
「ほえ?…クレイ?何してるの?」  
「何してるの、て…パステル…」  
クレイは、なんだかガクッとうなだれながらそこまで言うと苦笑を浮かべた。  
「〆切間近でヤバいから、原稿書き終わる前に寝ちゃってないか  
様子見に来てくれ、て言ってたろ。  
案の定、机につっぷして寝てたんだけど、原稿はちゃんと仕上げてあったよ」  
ああ、そうだった、そうだった!頼んでおいたんでした。  
律儀に様子見に来てくれたんだ、クレイ。ありがとう!  
で、机で寝てた私がベッドにいるってことは運んでくれたのね…  
「ごめんね、クレイ。重かったでしょ?」  
「や、鍛えてるからね。」  
…こういう時はお世辞でも「軽いよ」と言ってほしいんだけど、そこがクレイよね。  
 
「寒くなかった?」  
「ううん。クレイ、ずっとこうしてくれてたんだ、暖かかったよ」  
でも、よく考えたらすごい恥ずかしい図じゃない?これって。  
誰かに見られたら…て、こんな時間に誰も起きないよね。  
いつもは一緒のルーミィも、昨夜は私の邪魔をしないようにと  
男部屋で預かってくれている。狭かったろうな、申し訳ない。  
でも、クレイとこうして二人きりで抱き合ってるって状況、ほんと久しぶり。  
「久しぶりに、二人きりだな」  
クレイはポツリと言うと、私を抱く手に少し力を込めた。  
「そうだね…」  
おんなじことを考えてたんだ。なんだか恥ずかしいな。  
赤くなった顔を見られないように、照れ隠しにクレイに抱きついて顔を埋める。  
あ、まだ暗いからバレないかな…なんて考えていると  
ふと、私の太もも何かが当たった。  
「…!」  
ソレが何かに気づいて、一瞬、体が固まってしまう。  
「あ、ゴメン、パステル。違う、これはそうじゃなくて…」  
クレイは私の肩に手を置いて、大慌てで体を離そうとする。  
男の子の体が朝そういうことになるって、私だって知らないわけじゃないんだけど  
あんまりクレイが慌てているから、ちょっと意地悪したくなってしまった。  
「そうじゃないって、じゃあ何?私、そんなに魅力無い?」  
クレイはハッと目を見開いて、何かを言いかけたけど、言葉は出てこなかった。  
「………」  
あれ?黙っちゃった。ちょっと怒らせちゃったかな…?  
 
突然、クレイは、片手を私の頭に添え、唇を塞いできた。  
唇を吸われ、舌を入れられる。優しいけど、激しい。  
「ん…っ!んん…っっっ!」  
頭がじんじんと痺れてくる。空いた片手は体に回される。  
やっと、唇を離してくれたけど、私はもう息が上がってしまっている。  
「パステル、俺だって結構、我慢してるんだぞ…」  
ちょっとだけ怒ったような鳶色の瞳。  
さっき太ももに当たったソレは、さっきよりももっと、熱く堅くなっているのがわかる。  
「クレイ…」  
私はもう、それ以上何もいうことができない。  
頭のしびれは、身体にもうつっている。体が熱い。  
風邪で発熱した時のように、涙目になっているのがわかる。  
そんな私を見て、クレイはまた唇を合わせてきた。  
私は目を閉じて、クレイが与えてくれる熱を逃さないようにするけれど  
浅くて速い息遣いとなって、口から逃げていってしまう。  
…ううん。逃がしていかないと、頭がおかしくなってしまいそうだ。  
小さな熱は、首筋、鎖骨を伝い、下へと下へと下がっていく。  
トレーナーをめくり上げられ、ブラをずらされ…  
クレイの大きく温かい手が、優しく揉み上げる。  
クレイの舌が、胸の先端を吸い、転がす。  
「…っ!っ!…っ!」  
刺激を受ける度、声にならない声が上がる。  
声は出せない。隣の部屋には、みんながまだ寝てるんだから。  
それが苦しくてたまらないのと、熱を逃がしきれない体は、どんどん熱く痺れてくる。  
 
クレイの手は、暖かい生地のスカートをめくり上げ、私の身体の一番熱い部分に触れた。  
「ゃ…っ!」  
すでに濡れてしまっている下着をずらし、直に触れてくる。  
「すごいよ、パステル」  
クレイの指は、その中心になんなく潜り込み、ゆっくりとこすり始め  
別の指がその上にある小さな突起を優しく撫でる。  
舌は、胸の先端を転がし続けている。  
どんどん溢れてくる蜜でクレイの指が濡れていくのがわかる。  
でも、指だけじゃ足りない…  
「クレイ、お願い…もう…」  
「うん…」  
 
私の熱の中心に、更に熱くて堅い、クレイが入ってくる。  
まだ、そんなに経験がない私たちは、その瞬間はまだお互いに遠慮がちだ。  
「パステル、大丈夫…?」  
クレイは気遣ってそう聞いてくれるけど、私には答える余裕がない。  
それでも優しくクレイが動くたび、一段一段階段を登っていく感覚。  
「パステル…っ」  
クレイの動きはだんだん速くなってくる。  
私はもう、熱を逃しきれずに、体の中心に引っ張られ、どんどん高い所に昇り詰めていく。  
「ぁ、ぁ、クレイ…、もう…、…っ、っ、ゃぁ…っ!!!」  
「パステル…、…っ!!!」  
二人で一緒に昇り詰めたところで、ひと際大きな火花が散って、  
お互いの熱が拡散されていく。  
二人とも、身体からはぐったりと力が抜けていたけれど  
それでもクレイは私の体を優しく抱きしめてくれた。  
「このまま、もう少し眠ろうか。夜が明けるまで」  
鳶色の瞳が微笑んでいる。そして、ふんわりと優しい接吻をくれた。  
 
 

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