星明かりの下で、おれはパステルに何度目かのキスをした。  
「パステルのくちびるって、柔らかいな」  
「そ…そうかな。クレイも、柔らかいよ?」  
「パステルには敵わないよ」  
言いながら、うす青く染まっているパステルの首筋にくちびるを寄せると、彼女は少し身体を固くした。  
恐る恐る見上げてくる瞳。  
「ク、クレイ…」  
訴えかけるようなパステルの視線。  
「パステル…」  
この瞳が、ずっと前から欲しかったんだ…!  
身体の奥の方から突き上げてくる衝動に堪え切れなくなって、パステルを抱きしめて、おれは言った。  
「部屋に行っても…いいかい?」  
腕の中で、小さな頭がこくり、とうなずいた。  
 
「ここよ」  
パステルが枕元のランプに火を入れた。  
部屋がうすぼんやりと明るくなって、ほのかな灯りがパステルを照らした。  
いつも通りのパジャマではなくて、どうやら借りたらしいズボン付きの水色のネグリジェの上に、ベー 
ジュのカーディガンを羽織っている。  
「借りたの?それ」  
「え?…ああ、寝巻き?洗い替えが無いって言ったら、マリーナのお古だけど、って出してくれたの」  
「そうなんだ。よく似合ってるよ。…可愛い」  
パステルの顔が真っ赤に染まる。  
正直に言っただけなのにな。  
柔らかい髪の毛に触れてみる。しなやかな手触り。ふわっとせっけんの香りがした。  
「可愛い…パステルは、可愛いよ」  
おれは着ていたブルゾンを脱ぎ、椅子にかけた。  
 
そっと身体をベッドに横たえて、おれはパステルの唇を吸った。  
唇を舌先でつついてこじ開けると、とまどったようにパステルも舌を絡ませてくれる。  
…えーと。  
ここからどうすればいいんだろう?  
とりあえず服を脱がせるべきなんだよな。  
けれど、パステルの着ているネグリジェは、リボンとフリルで襟元が飾ってあって、正直構造がよくわ 
からない…  
おれはそんなに考え込んだつもりはなかったんだけど、パステルがあきれたようにくすくすと笑った。  
「ちょっと待ってて?」  
そう言うと、パステルは上半身を起こして、するするとネグリジェのリボンを解き始めた。  
上の方をほどいて、下のスナップをぱちぱちぱちっと外すと、ちょうど長いブラウスを着ているような 
スタイルになる。  
へぇ。こうなってたんだ。  
その長いブラウスの前を掻き合わせて、恥らいながら微笑む。  
「あ、あのさ…灯り、消さない?恥ずかしい…」  
その姿を見ながらおれは、理性がだんだん消えていくのを自覚していた。  
手首を掴んで、力ずくで腕を引き開けてしまう。  
「やっ…あ、灯り…」  
「見せて」  
「恥ずかしいよぉ…」  
パステルは下着を着けていなかったらしく、小振りのふたつの胸があらわになった。  
風でちらちら揺れる灯りに照らされて、ピンク色に染まったその先端を舌先でからめとる。  
すると、パステルが短く息を吐いた。  
抵抗しなくなった手首を離すと、そのままおれの背中に腕がまわされた。  
 
女の子って柔らかい。  
昔、初体験を済ませたやつから皆で聞きだした感想が、いましみじみと理解できる。  
けっして太ってはいないのだけれども、どこを触れても柔らかく、さわり心地がいいんだ。  
徐々に降りていって、おへその周りにキスをしてみる。  
と、非難の声があがった。  
「くすぐったいよ、クレイ」  
あはは、ごめんごめん。  
 
ズボンからゆっくりと足を引き抜く。  
ちらっとパステルを見ると、目をぎゅっと閉じてしまっている。  
ズボンを脚にひっかけたまま下着に手をかけると、閉じられた目にさらに力がこもった。  
 
「クレイは、服、脱がないの…?」  
パステルの服を全部脱がしてしまって、言われて気づいたら…おれは服を着たままだった。  
「そ…そうか」  
ブルゾンは脱いだけど、ニットとか着たままだった…忘れてた。脱がないと。  
おれがベッドからいったん降りると、パステルはすばやく毛布にくるまってしまう。  
可愛いなぁ。  
パステルの仕草の一つ一つがとても愛しい。  
 
ニットを脱いで、ベルトを外す。  
…なんだか…ズボンを脱いでる姿って、恥ずかしいな。  
後ろからパステルに見られてると思うと、照れてしまう。  
もっと堂々と脱ぐべきなんだろうか?  
う〜ん。…とりあえず、下着だけは脱がずにいよう。  
 
「ごめん、待たせて」  
「ううん、いいよ。なんか、どきどきしちゃった」  
「なんで?」  
「クレイの背中、かっこいい」  
「そう?べつに普通だよ?」  
「かっこよかったの!」  
「そうか?…あのさ、そろそろおれも布団に入らないと、寒いかも」  
「えっ。あっ、そうか。ごめん。どうぞ」  
パステルを抱きしめると、それまで冷えていた身体がじんわりと温まっていった。  
細い肩。華奢な身体。回された手が背中を撫でる。  
その指先にいちいち反応してしまう。柔らかい身体。せっけんの香り。  
 
「ごめん、もうおれ…パステルの中に入りたい」  
正直にそういうと、パステルは不安げにうなずいた。  
 
下着を外すと、ひとりでするときとは比べ物にならないほど膨らんだものがそこにあった。  
おれは、最初からパステルの身体に触れるたびに反応していたんだ。  
ちゃんと入るだろうか?  
「い…いくよ?」  
「うん…」  
不安に思いながらも、あてがって、ぐっと挿し込むと、ぬる…っという感覚とともに、おれはパステル 
の中に入って行ってしまった。  
 
「ああぁっ!」  
「だ、大丈夫…?」  
「へ…平気…あっ、でも、動かないでっ…!」  
パステルの中はぎゅうっと締まって、とても暖かかった。ぐっ、と深く押し込むと、俺を抱きしめるパ 
ステルの腕に力がこもる。  
「ごめん…無理、かも」  
 
「やっ!あぁ!はぁ…あん!あぁ…や、く、クレ…もっと…ゆっく…あぁん!」  
おれの動きに合わせて、パステルが身体をくねらせる。  
声を一生懸命抑えているんだけど、どうしても出てしまうらしく、とうとう口を自分で押さえだしてし 
まった。  
動かしながらその手をどかして、唇を絡ませあう。  
「隠さないで、パステル…可愛いよ」  
キスの合間に囁くと、パステルの瞳から涙がひとしずくこぼれた。  
その涙を舐めとる。しょっぱい。…可愛い。  
「クレイ…クレイ…っ。おかしくなっちゃいそうだよ…!」  
「いいよ、おかしくなって…全部見せて。おれも…もういきそう…」  
からだの中で、何かがものすごい大きさに膨らんでいくような感覚。  
気付くと、その感覚に従って、おれは動かすスピードを上げていた。  
「クレイ…クレイ、や、あっ、ああぁっ!」  
深く突き上げた快感に、おれは全身の力が抜けていくのを感じた…  
 
荒れていた呼吸が落ち着いていく。  
パステルの汗ばんで張り付いた前髪を撫で付けると、小さいおでこにくちづけた。  
すると大きな瞳がくるりとおれを見つめ、ほころぶように微笑んだ。  
「クレイとこんなふうになるなんて、思ってなかった」  
「うん、おれも…思ってなかった」  
キス。  
「そういえばクレイって、いままで女の子と付き合ったことないの?」  
「…う〜ん。ないなぁ。…キスはされたことがあったけど」  
「うそ?!いつ?」  
「7歳くらいだったかな?近所にませた子がいて…びっくりしたよ」  
「そうなんだ…すごいねぇ、その子」  
 
「パステルは?」  
「へ?」  
「今まで、付き合った人とか…」  
「いないよー!いるわけがないじゃない」  
「あはは、そうか。よかった。じゃあ、おれが初めてなんだ」  
「…」  
「…違うの?」  
「じ、実は…キスはあるの」  
「…いつ?」  
「キスキンのときに、ギアに…」  
「…」  
「あっ、でも、それだけ。あとは何もなかったのよ?」  
 
「消毒」  
「んっ…」  
また、キスを貪る。  
上気した身体を、おれはもう一度抱きたくなってしまった。  
 
 

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