「や…っ」
小さくうめく声。その声はまだ、壁一枚隔てた場所にいるほかの仲間達を気遣うように、抑えられている。
もちろんオレとしてもこんな場所でこんな声を聞いていたくなんて、ない。
だが。
だが!
耳が、いや全身が、壁の向こうから聞こえる音を聞き漏らすまいと緊張してしまっている。
壁の向こうで聞いたこともない響きで吐き出される、…聞き違えようもないパステルの声を。
「あ…、やっ…だめ、声、でちゃ…」
「…我慢して、パステル」
「や、だめ…それなら、やめてよぅ…」
相手は、わかってる。
ときおりひそめるような低い声でパステルの名を囁いているのは、これも間違いようもねぇ、クレイだ。
…くそ、あいつら、いつの間にそういう関係になってんだよ!
クレイは、普段のぼやっとしたあいつからは想像もつかないほどサディスティックにパステルを責めている。
まあ、あいつの兄ちゃんたち…アルテアやイムサイたちのプレイボーイぶりを見れば、もしかしたらクレイにも素質あるんじゃねぇか…なんて思わないでもなかったが、それを思いついてすぐにオレはそれを否定したね。
あのクレイに限って…と。
「胸も感じるの?パステル」
「んっ…」
「こう、揉まれるのと…こうするの、…どっちが好きなんだい?」
「あぁ…んぁ…」
こうするの、というセリフのときに、何をしたかなんて想像しなくたってわかる。
オレはどうしようもなく想像しちまっていた。…柔らかく、暖かいパステルの胸。
それをこの隣にいるヤツは、手のひらのなかで弄び、唇で味わっているんだ。
胃の中がひりつくような気分とは裏腹に、そう考えたときにはもう、オレの手は下半身に伸びていた。
…この部屋にはキットンもいるってのに。
だが冷静に欲望を押しとどめるには、隣室からの声はあまりにも扇情的過ぎた。
「そろそろ、…パステル」
「ん…」
ひんやりとした外気に、衣擦れの音もなるべく立てないように俺自身をゆっくりと服の外に出した。
「来て…クレイ…」
…呼ばれたのがオレだったらよかったのに。
きっと終わったら苦しいのはわかりきっていたが、オレはその欲望に身を任せた。