「あ〜〜今日も疲れたぁぁ」
パチパチと静かな焚火の音に、わたしの小さなため息が合わさる。
わたし達貧乏パーティーは、数日前からまたクエストに出ている。
トラップがオーシから「入りの良いクエスト」ってのを安く買ってきたんだけど…
やっぱりうまい話には裏があるよね、とにかく移動時間が半端じゃない。
今日もざっと9時間は歩いたと思う。
毎日簡単な夕食をとって野宿の支度を始める頃にはもう全員ヘトヘト。
ひとりを除いては…
「パステル」
ほら、寝たと思ったら起きてきた。
我がパーティーのリーダーで、ちょっと前から恋人…のクレイ。
「もー。明日も早いんだから、ちゃんと休める時に休まないと」
よいしょと身を起こすと、毛布にくるまったままわたしの隣に座る。
ちなみに、今日の見張り当番はトラップ・キットン・クレイ・わたし・ノル・の順。
「うん。でもさ、ここんとこずっと移動だったからさ。パステルと二人きりで話す機会もなかったし」
「うー…」
その言葉には素直に嬉しかったよ、でもさ、ファイターなんてパーティーの要じゃない?うちみたいなひよっ子パーティーなら尚更。
だから、あんまり無理はしてほしくないんだよね。
わたしがうんうん唸っていると、クレイは端正な顔を耳元に寄せてきた。
不規則にはぜる炎に照らされて、すごく綺麗。思わず見とれてしまう。
「俺がいいって言ってるんだからいいの。ところでさ、パステル、あれはちゃんと持ってきてくれた?」
「持ってきたけど…まさか今、着るのぉ?」
「今着なかったら、いつ着るんだよ?またこうして当番が前後するとも限らないし」
クレイが言ってるのは、あの水色のナイトドレスのことね。
あれ、すっかり気に入ってくれたみたいで。
そのう……夜、一緒に過ごすとき、って言うんですか?その時は、なるべく着て欲しいってお願いされている。
でも、クエストにまで持ってくるつもりはこれっぽっちも無かったよ。
だから、リタに頼んでクエストの間だけは預かっててもらうことになってた。
その代わり、彼女の超リアルな数々の質問攻めにもあっさり負けたのになー。
「わ、わかったよ。着てくるから、あっち向いててよね」
「あはは。そんな、今更隠すものでもないだろ」
「いーのっ」
もう、その積極性を少しでも実戦で生かせればいいのに。って、本人に言ったら絶対傷つくから言わないけどね。
森の隙間から見える夜空には、満天の星。
ノルと交代するまではあと1時間半弱…くらいかな?
荷物の入ったリュックを抱えてふり返ると、大好きな人が静かに手を振りながら微笑む。
思わずつられて顔が緩む。
明日の心配をしつつ、いそいそと茂みへ向かうわたしだった。