うっすらと目を開けると、あたりはまっくらだった。  
…あれ?  
手のひらには硬いベッドのスプリングが軋んで跳ね返る感触、膝には毛布がかけられている暖かさ。  
いつの間に宿屋に泊まったんだっけ?  
わたしたち、クエストに挑戦してなかったっけ?  
えええ…全然記憶がない。どうしちゃったんだろう、わたし。  
それにしてもほんとになんにも見えない!どっちを向いても、月明かりさえないなんて。  
…明かり。カンテラかなにか、ないかな。  
こわごわとベッドから降りようと動いた瞬間、足がなにかにひっかかってしまった!  
お、落ちる…!!  
 
ふわっ、と。  
肩と背中を支えられる感触。  
「パステル、大丈夫か?」  
え?  
この声。  
落ちる一瞬、閉じてしまった目を開けても暗闇はそのままだったけど、わたしは聞き覚えのあるその声の主を探した。  
「ギ、ギア?!」  
 
 
「すみません、パステル、わたしが事前にしっかり調査をしておかなかったから…」  
すっかり落ち込んだ声のキットン。  
わたしはその声が聞こえる方向に向かって笑ってみせた。  
「気にしないで、キットン。どうせ2、3日で治るものなんでしょ」  
 
 
今回のクエスト。  
ある町の町長とキットンがキノコの話題で盛り上がったのがきっかけで頼まれたものだったの。  
それは近くにある洞窟から町長の指定した何種類かのキノコを採ってくる、というもので、洞窟まで近いし、かかっても1泊、たぶん日帰りですむだろうと、わたしたちはピクニック気分で出かけていったのだ。  
そして、そのキノコ自体はすぐに見つかったんだけど…そのキノコを発見してまっさきに駆け出したルーミィに、キノコの陰から大きな蛾が飛び出してきたのだそう。  
「覚えてないか?パステルはルーミィを追いかけて、蛾からかばったんだよ」  
「ああー…うん、なんだか、思い出してきた」  
チョコレートをあげてすぐだったからルーミィがはしゃいでて、とくに敵にも遭遇しなかったから、気が緩んでたんだ。  
大きな、人間の顔ほどもある毒々しい色の蛾がいきなり出てきて、とっさにルーミィを抱きしめて…  
そこからなんにも覚えてない。  
「あの蛾のりんぷんには、マヒの効果があるようなんだ。最近出現するようになったとかで、俺は別の村から依頼を受けててね。退治しに行っていたんだが、まさかパステルたちに会うとは思わなかったよ」  
わっ。  
いきなりしゃべらないでほしい…  
そう。  
そうなの。  
わたしを助けてくれたのは、ギア・リンゼイだったの!  
わたしがりんぷんを浴びて倒れてしまったあと、ギアが反対側の道からやってきて、蛾を一撃で倒し、目覚めないわたしを心配してついてきてくれたんだって。  
それにしても、ギアのひくーい声が、いきなり隣から聞こえるのって心臓によくない…  
いちおうルーミィ以外の(彼女は泣き疲れて眠ってしまったそう…あとで、会いに行こう)他のみんなも部屋に集まってくれているようで、声とその位置で座っている位置をなんとなく把握できるようになってきた。  
「パステル、ほかの場所で違和感のあるところとかはないのか?」  
これはクレイ。優しいなぁ。  
「けっ、未熟なんだよ。油断したてめーが悪い」  
…考えるまでもなくトラップ。  
「パステルしゃん、ボクの血使うデシか?」  
このけなげなのはもちろんシロちゃん!ううう、ありがとう。  
「…なにかあったら、すぐ言って」  
ノル。短い言葉からも優しさが伝わってくるよ。  
 
みんなそれぞれに(まあ、約一名そうでもないような感じのひとがいたけど)心配してくれて、3日間宿屋でわたしの回復を待つことになった。  
そのぶんの宿代は、申し訳なく思った例の町長がただにしてくれたので、経理担当としてはかなり大助かり。  
いい機会だしのびのびと休ませてもらおうっと。  
 
うーん…  
目が見えないってこんなに不便なんだ!!  
とにかく、壁にぶつかる、足がもつれる、怖くて階段なんて近づけない!  
トイレの場所は聞いたけど、どうやっていけばいいのかな?  
手探りでドアノブを探して、開けて、外に出て、締める。  
これがもうすでに重労働。のびのびどころじゃないよ!えーん。  
「困ったら隣の向かいの部屋にいるから、いつでも呼んでくれよ」  
と、クレイは言ってくれたけど…  
正直、そんな位置を正確に移動できる自信がない…  
 
立ち往生していると、左肩をぽん、と叩かれた。  
「きゃあ!」  
「どうしたんだい、パステル」  
「…ギア?」  
わわわ、またびっくりした…  
というか、ギアの声って、耳がぞわぞわする。  
「あ、あの…トイレに行きたくって」  
「ああ、そうか。じゃあ連れて行ってあげるよ」  
彼はさりげなくわたしの肩を抱いて(!!)エスコートしてくれた。  
目が見えないからとはいっても、背中に腕を回されるのはドキドキしちゃうよ〜。  
わたしのあせりなんて知らずに、ギアは足を止めた。ドアを開ける音。  
「ここだよ。パステルが中に入ったらドアを閉めるから、用が済んだら声をかけて」  
「ありがとう!」  
ううう。ギアにトイレの面倒をみてもらっちゃうなんて…!!  
ごめんなさい、ギア、ほんとにありがとう。  
 
ギアは部屋まで送ってくれた。  
「目が見えないのは相当不便だろう。早く見えるようになるといいな」  
「自分でもここまでとは思わなかったわ。ありがとう、ギア」  
ギアのいる方向に向かってお礼を言うと、耳を何かがふっとかすめた。  
「?」  
手を伸ばすと…髪の毛?  
ちょっときしんだ硬い髪。  
ギアの髪の毛だ。  
と気付いた瞬間、耳に生暖かいざらっとした感触!  
「…!!」  
ギ、ギア?!  
 
ねじ込まれてくる熱いものが、わたしの唇と舌を絡めとるようにして吸い上げてる。  
思いもよらないくらいやわらかいそれ…  
「んっ…んんん…っむっ…」  
ギアの腕がわたしの身体をしっかりと抱きしめて離してくれなかった。  
それが、どんなにちからいっぱい押し返してもびくともしない。  
大きな手が背中を這うように撫でていて、それだけでちからが抜けそうだった。  
すると。  
パチン。  
あ、あ、あ…  
し、下着の、ホック…はずれちゃったっ…!  
わたしの動揺を掻い潜って、その間にギアの左手がわたしの右腰でちいさく動いて、スカートのジップをさっとおろし、腰のホックもはずしてしまってた。  
するっ…  
パサリ、と、乾いた布が落ちる音が聞こえた。  
 
す、すかする。足がすかすかする…!!!  
もう駄目。  
頭のなかが混乱しすぎて、怖くて、どうしたらいいのかわかんない…  
手探りでギアの服を握り締めると、彼はキスをやめて、ふわりとわたしの身体をつつんでくれた。  
…抱きしめ、られてる、のかな。  
これって。  
背中に回された腕があったかい…  
すると、耳のすぐそばで、小さくギアが囁いた。  
「嫌だったら、言って」  
ぐるん、と世界が揺れるような感覚。  
「え?」  
柔らかな場所に下ろされる。  
ベッド?  
確かめる時間もなく、スプリングが大きく軋む音がして、またギアの唇がわたしに合わせられたのがわかった。  
 
「ん、ん、う、むむっ」  
ギア、ギア、キスされてたら、なんにも言えないよー!!  
息するのもむずかしいくらいキスをされながら、彼の手に身体中をまさぐられてる…!  
や、やだ、そんな場所に触らないでっ。  
そんな、そんなにこすらないで、こすらないで、こすら…  
「…んっ」  
「パステル…」  
「ん、や、あ、あああっ、ギア、ん、んっ…やあっ…!!」  
や、やだやだ、わたしいま、なんて声出してた?!  
その声を合図にしたみたいに、ギアの手が、下着にかけられて、  
「指、入れるよ」  
「え…あ…ああん、んっ、やっ、あっ、はっ…んんっ」  
身体中を電流が走るみたいにびりびりする…!  
それが出たり入ったりをくりかえすたびに、わたしは恥ずかしい声をたくさんあげてしまってた。  
そのたびにぴちゃぴちゃ、ぐちゃぐちゃ、という音…  
と。  
鼻先に、なにかが触れた。  
すごくすごく熱い…なに、これ?  
手を伸ばしてそれに触ってみる。熱い。…硬い。え、これって…  
「いい子だ、パステル…それを、舐めてごらん」  
身体の下の方から声がする。  
そして、さっきまで触られていた場所から、さらに大きな音が立てられ始めた。  
 
舐めてって言った?  
ギア、無理、そんなの、無理っ。  
「やん、やあああっ、あん、はぁん、ギ、ギア、あん、あああっ」  
口に押し付けられてる大きな硬い熱いモノがなにか、わたしにだって想像、つくけど!  
こんな風にされたら、なんにもできないよ…っ!  
足をギアの手が捕まえていて、わたしは逃げられないし。  
しばらくわたしの口の前にそれがあったけれども、なんにもできなかった。  
ギアが立てるぴちゃぴちゃ、という音がやんで、わたしが息を整えてると、こんどは頭の上のほうからギアの声。  
「パステル…」  
「ギア…」  
「…」  
「ずるいよ…いきなりだし…怖かった、のに、嫌じゃないの」  
「…パステル」  
「やめ、ないで…」  
わたしがいうと、やさしいキスが降ってきた。  
「ずるいのは、パステルだよ」  
「…?」  
「視線の定まってないパステル、すごく可愛い」  
「…!!!」  
 
ぐい、という熱い感触と鈍い痛みと…快感が、身体のなかに入ってきた。  
 
唇だけじゃなくて耳からうなじにも、唇が触れてる。  
上唇と下唇が別のものだということに嫌でも気付く。  
…いつのまにか指が、絡まされてた。  
思い出したようにわたしの指を、彼の指が愛しそうに組みなおしてる。  
揺らされるたびに、こわばってた身体が緩んでくる…  
どうして?  
どうしてなの?  
きゅ、と彼の手を握り返してみると、彼はびっくりしたように動きを止めた。  
なにか言おうと思うのに、なにも言葉が出てこないよ。  
すぐそばにあるだろうと思って首を伸ばすと、すぐに彼の唇をみつけることができた。  
パステル、とわたしの名前を呼ぼうとしたのを、邪魔してみた。  
 

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