「うっひょー、ひさびさの海だ!」  
「うーん、潮の香りがしますねぇ」  
 
馬車の窓にかじりついて、仲良く外を見ているのはトラップとキットン。  
珍しいおでかけのせいかなぁ、珍しく喧嘩してない・・・  
 
「おめぇまさか、あの趣味のわりぃ水着、本気で着る気か?」  
「なななんと失礼な!  
 黄色と紫のボーダー柄のどこが趣味が悪いんですか!」  
「・・・最悪だっての」  
 
・・わけでもなかった。いつもと変わんないや。  
 
「くりぇー見て!これ、ルーミィのうきあ!」  
「ルーミィ、うきあじゃなくって、浮き輪だよ」  
「うきあぁ?」  
「・・・ま、どっちでもいいか」  
 
早くも本領発揮して、引率保護者モードに突入したのはクレイ。  
ルーミィは、慣れない手つきで浮き輪を膨らませようとしている。  
あの浮き輪、使ってないからってんで、みすず旅館のおかみさんが下さったんだよね。  
 
「貸してごらん」  
 
その手から浮き輪を取ったノルは、一気に息を吹き込んだ。  
おぉ、すごいすごい。  
さすがノル、一息で浮き輪はパンパンに膨らんじゃった。  
 
「パステルおねーしゃん、どうしたデシか?」  
 
ちょこんとわたしのひざの上に飛び乗ってきたシロちゃん。  
その小さな頭をなでてあげる。  
 
「ううん、どうもしないよ。なんか嬉しくって」  
「そうデシね。ボクも楽しみデシ!」  
 
そんなわたしたちを乗せた乗合馬車は、軽やかなひづめの音を響かせながら、海沿いの街道を走っていた。  
今回はなんと、クエストでもなくおつかいでもないんだよ!  
純粋に海水浴に行こう!ということに相成ったのです。  
なんて珍しいんだろう。いや、珍しいどころじゃない。  
我が貧困パーティじゃ、今まで有り得なかったんだけど。  
珍しく懐が多少潤ってるし、シルバーリーブは山間のせいかうだる暑さだし、たまにはね。  
 
そして馬車を降り立ったのは、ほどよくにぎわった海水浴場。  
見渡す限りの白い砂浜に、透明度の高い綺麗な海。  
一面の青空に入道雲!これぞ夏!これぞ海!って感じだよねぇ。  
逸る競走馬みたいになっちゃった一同は、どやどやと砂浜に進んで陣取った。  
手回しよく服の下に水着を着込んでいたクレイとトラップは、もどかしそうに服を脱ぎ捨てると、一直線に海に突進して行っちゃった。  
ノルは上半身だけ裸になりズボンを膝までまくると、ルーミィの浮き輪を持って水際へ歩いていった。  
きっと、ルーミィと遊んでくれるつもりなんだろうな。  
後を追っかけていったのはシロちゃん。  
あらら、長い毛が砂まみれ。後で洗ってあげなきゃね。  
 
荷物の整理をしていて出遅れたわたしは、ルーミィを連れて簡易更衣室を探す。  
あ、あったあった。  
そこから戻ってくるのは・・・前述の、紫と黄色の囚人柄水着のキットン。  
しかも女性用のワンピースみたいなのに、半そで半ズボン状態というか・・・なんかものすごく見慣れない格好だよね、それ・・・  
 
「どうですか、パステル?このハイセンスなデザイン!」  
「あ、あぁそうだね・・・似合ってるんじゃない・・・かな?」  
 
キットンは、これ以上ないってくらいに微妙なわたしの返事に満足したようで、コキコキと首をならしつつ、さっき立てたパラソルの方へ歩いていった。  
 
今の怪しげな物体はあえて見なかったことにして、まずルーミィを着替えさせる。  
うーん、かわいい。安く手に入れた、子供用のビキニがぴったんこ。  
そしてわたし、なんだけど。  
まずは、いつも後ろでしばっている髪をほどき、高い位置でポニーテールにする。  
毛先はあみあげてくるっとまとめた。  
ただでさえ髪の多いわたしですからね。  
適当なことして濡らしちゃった日にゃ、間違いなくゴーゴン状態。  
眼が合った相手を石にしかねないわ。  
 
さーて水着は、っと。  
実はリタからのプレゼント。  
昔買って、全然着る機会がないからあげる!ともらってはきたんだけども。  
猪鹿亭マークの袋から出てきたのは・・・ビキニ、だった。  
しかも、黒。はい、超セクシーです。  
・・・り、リっタぁぁぁ〜〜〜〜!!  
わたし、脱力。  
道理で、海水浴場についてから開けろ、ってしつこく言うわけだ。  
 
リタさん。  
これを、わたしに、着ろと!?  
ていうかあなた、マジでこれを着る気で買ったんですかっ。  
 
文句を言いたいのは山々だが、その相手はここにいない。  
代わりの水着も、ない。  
ここまで来て泳がないなんて、嫌すぎる。  
と、なりますとね。  
3段スライド式に自分で自分を追い詰めたわたしは、すごすごと服を脱ぎ、黒ビキニに着替えた。  
あぁ、着替えましたともっ。着替えはしたけど・・・  
トラップの言い草じゃないけど、出るとこ引っ込んで引っ込むとこ出てるような体型のわたしがビキニなんて、これはもう神に対する冒涜じゃないんだろか。  
もうこのまま、ここに穴掘って埋まってしまいたいっ!  
 
「ねぇねぇぱーるぅ!早くいこぉー」  
 
待ちくたびれたルーミィにぐいぐいと腕を引っ張られる。  
・・・仕方ないかあ。もう着ちゃったんだしね・・・。  
もはや開き直るしかない。  
深呼吸と共にカーテンを開け、まぶしい日差しの中に出る。  
ルーミィはそのまま、ノルのいる所へとてとてと走っていってしまった。  
わたしが目指すのは、見覚えのある・・・いや別に覚えたくないけど、囚人柄水着男のいるパラソル。  
 
「ぱ、パステル?その格好は・・・」  
 
手に持っていたイカ焼きを落っことしたのは、そのキットン。  
 
「・・・リタからもらったの」  
「そ、そうですか。いやぁ、パステルのそんな姿は珍しい。  
 うん、大丈夫です。女性に見えますよ、女性に!」  
 
大丈夫って、何がよ?  
女性に見えるって力説されても、なんのフォローにもなってませんけど?  
 
ため息と共に彼を残し、浮き輪を抱えると水辺へ向かう。  
波打ち際には、ルーミィとシロちゃん相手に、遊んでいたノル。  
こっちを向いたかと思うと、びっくりしたように小さな目をくりくりさせた。  
うっ・・・無口な人の素直な反応って、嘘がなさそうなだけに、つらい。  
 
「これ、リタからもらったの。やっぱり似合わないかなあ?」  
「そんなことない。パステル、似合うと思う」  
 
いつもと変わらず言葉少ななノルは、にっこり笑ってくれた。  
 
「ほんと?ありがとう」  
 
なんだかやさしくフォローされているような気もするけど、この際気にしないでおこう。  
小さなスコップで、砂浜に一生懸命穴を掘っているルーミィの傍らに座る。  
 
「しおちゃん、ここに入るんだぉ!」  
「ボク、埋められちゃうデシか?」  
「え?シロちゃんを埋めちゃだめじゃない・・・って、あぁ」  
 
そっか、首だけ出して砂に埋まってる人を見たんだね。  
 
「でもね、ルーミィ、  
 そんなに大きな穴掘ったら、シロちゃんすっぽり入っちゃうよ?」  
「そうなのかぁ?」  
 
ノルがさらさらの濡れた砂をかき寄せて、穴を少し埋めてやっていると、背後から遠慮のない声がした。  
 
「おめえら、何してんだよー。泳がねぇのか?」  
 
振り向くと案の定。  
そこにいたのはトラップだった。  
オレンジ地に黒の細い縦ストライプの入ったトランクス型の水着。  
どこまで行っても派手なのね、この人。  
ざばざばと水を蹴散らしながらこっちへ来たトラップは、わたしに目を留めると、目を丸くした。  
 
「うおぉおめぇ、その水着どーしたんだよ?女みてぇだぞ!  
 すっげー、ドラム缶体型のはずがまともに見えるじゃん!」  
 
・・・なんかあちこちひっかかるほめ言葉をありがとう。  
あのね。わたしは女みたいなんじゃなくて、間違いなく女ですから。  
後さあ、さらっと言ってたけど、ドラム缶体型って・・・わたしのこと?  
ドラム缶・・・ドラム缶ねぇ・・・あ、そう・・・  
いや、この際追求するんじゃない、わたし。  
グーで殴りたいのを、ぐっとこらえる。  
 
「ほっといてよ。あれ?クレイは?」  
「あいつなら、あそこ」  
 
少し向こうの波間に、たくましい上半身が見える。  
 
「行ってやりゃあいいじゃん。俺、ちょっと休憩する」  
 
濡れた赤毛をしぼりながらトラップは水からあがり、パラソルのほうへ歩いていってしまった。  
行ってやりゃあって、わたし泳げないんだけどな。  
ま、浮き輪があるからいっか。  
 
「ノル、ちょっと泳いで・・いや、浸かってくるね」  
「気をつけて」  
 
シロちゃんを埋めるのに夢中のルーミィはノルに任せ、浮き輪を持つと水間へ踏み込んだ。  
わたしの姿を認め、こちらへ歩いてきたクレイ。  
濡れた黒髪をかきあげ、オールバックになっている。  
文字通り、水も滴るいい男って、やつですか?  
さんさんと照らす太陽の下にいると、ほんと、クレイって様になるよね。  
 
この人がわたしの恋人だなんて・・・いまいち、信じがたい現実。  
ま、例え恋人と言っても、手のひとつも握ったことないんだけどさ。  
そんなことをつらつらと考えながら、波をかきわけて近づく。  
 
「パステル!?その水着は・・・」  
 
うっ、くると思ったよ。そろそろ。  
本日何度目かになる、黒ビキニ入手経路について、ご説明。  
 
「リタにもらったのよ。おかしい?やっぱり変?」  
「い、いや!そんなことないよ!かわいい!すごく似合ってる!」  
 
顔をほんのり赤くしたクレイは、慌てて否定した。  
 
「そ、それより泳ごう、パステル」  
 
そのままぷいっとあさっての方向を向くと、ざばあっ!とばかりに飛沫をあげて、水に飛び込んでしまった。  
こっちを見ようともしない。  
そっか・・・やっぱり似合わないのかも。  
恋人にまで眼を背けられてしまうとは、やっぱりこのビキニって国辱もんですか?  
・・・  
ずずーんと落ち込みつつ眼をやると、クレイは沖に向かって泳ぎだしていた。  
あわわ、置いてかれちゃう。  
 
慌てて浮き輪をかぶると、バタ足でクレイの背中を追いかける。  
しばらく沖に向かっていたクレイは、途中で進行方向を変えると、海岸線に沿って移動していった。  
それがまた結構なスピードなんだよね。  
せっせと足を動かしてるんだけど、なかなか追いつけない。  
そういえば、クレイって水泳得意って言ってたもんなぁ。  
わたしも今後のことを考えると、いずれ教えてもらった方がいいかもしれない。  
そんなことをぼーっと考えながら、だんだん離れてくクレイを眺めつつ泳ぐ。  
 
ふと泳いできた方を振り向くと、はるか遠くにパラソルが林立しているのが見えた。  
随分遠くまで来たのね・・・クレイ、どこまで泳ぐ気だろう?  
実のところわたし、かなり足がだるかったりして。  
周りにはもう、人の姿はない。  
水中には海草が増え、岬のように海岸から突出した、ごつごつとした岩場が近づいてくる。  
一足先に岩場にたどり着いていたクレイ。  
岩肌に片手で捕まり、立ち泳ぎをしながら待っていてくれた。  
 
うぅ、やっと陸地に上がれる。  
いくら浮き輪とはいえ、疲れるもんは疲れるのだわ。  
クレイまであと少しってところで、緊張がゆるんだ瞬間。  
 
「きゃっ」  
 
浮き輪から体が滑り落ちそうになったわたし。  
伸ばされたクレイの腕にがしっとつかまれ、引っ張りあげてもらって事なきを得る。  
危うく海の藻屑になるところだったよお・・・  
クレイの腕の中で、ほっと一息。  
 
「あーびっくりした。ありがと、クレイ」  
「・・・いや」  
 
なんだかはっきりしない返事。  
目の前にあるのはクレイの胸板なもんで、表情がわからないんだけど。  
クレイも疲れてるんだよね、きっと。  
とりあえずわたし、水から上がりたいんですけど・・・クレイが腕を離してくれない。  
同じ水の中にいるはずなのに、やけに熱いクレイの手。  
 
「クレイ?どうしたの?とりあえずあがろうよ」  
「あ・・・そうだな」  
 
やっぱり歯切れの悪い言葉を返しながら、クレイはわたしのウエストに手を回すと、岩の上に押し上げてくれた。  
 
海面からけっこう高さのあるその岩に、両手両足でしがみつきつつよじ登る。  
やっと陸地だわ。陸地ったって、ただの岩なんだけどね。  
はー、疲れた。  
浮き輪から体を抜くと、ぺたんと座り込む。  
太陽の熱であたためられた岩の上にいると、水で冷えた体もじんわりと熱を取り戻してきた。  
 
クレイはわたしが無事上ったのを見届けると、両手を岩についてあっさりと上陸した。  
水をポタポタたらしながら、よいしょとわたしの横に座るクレイ。  
おでこに張り付いた前髪をかきあげると、虹色の水滴が飛び散る。  
わたしなんて、とてもひとりじゃ上がれないというのに、やっぱりファイターだよね。  
体のつくりも鍛え方も違うんだろうなぁ。  
つい、しげしげと体を眺めてしまう。  
 
健康的に日に焼けた肌。  
横から見ると、なおその分厚さがよくわかる胸板。  
太くて筋肉の盛り上がった上腕。  
見事に割れた腹筋に・・・え?  
不自然に盛り上がっているのは・・・腹筋の下の部分。  
濃いブルーの水着の、おへそのすぐ下あたり。  
それって・・・  
 
固まったわたしに、唐突にクレイが聞いた。  
風に濡れた黒髪をなびかせながら、海面に眼をやったまま。  
 
「何見てるの?」  
「えっ・・・あの、えっと」  
 
返答に詰まるわたし。  
ぎこちなく視線と体をクレイからそらす。  
 
「な、なんでもないっ!  
 ・・・あ、クレイ見て見て!これ、フジツボじゃない?」  
 
わたしは、この上なく不自然に会話をつなげながら、クレイに背を向けて岩壁を指差した。  
その時。  
クレイの大きな手が、背後からわたしを抱き締めた。  
思わずびくっと動きがとまる。  
いつの間にか、クレイの両手両足に抱きこまれるような姿勢になったわたし。  
クレイの両手はわたしの胸の前で交差し、両の二の腕をがっちりと掴んで。  
背中に当たるのは、堅い胸の感触。  
そして、腰の辺りに感じる、熱くて張り詰めた、なにか。  
 
「ク・・・レイ?」  
 
蚊の鳴くような問いかけ。  
耳元によせられたのは、クレイの熱い吐息のようなつぶやき。  
 
「少し泳げばおさまるかと思ったんだけど・・・駄目だ。  
 こんなんじゃ、泳ぎにくくて仕方なかった」  
 
熱い唇は、そのまま耳たぶをつたい、首筋をつうっとなぞった。  
 
「・・・ぁんっ」  
「反則だよ、パステル。  
 こんな色っぽい水着着るなんてさ」  
 
クレイはわたしを抱きすくめていた腕をほどくと、ビキニの胸元へ手を差し入れてきた。  
そのまま、簡単に胸をつかみ出されてしまう。  
 
「やっ・・・そんなぁ・・・」  
「大丈夫。ここなら誰も来ないし、あっちからも見えない」  
 
クレイはわたしの胸に柔らかく触れながら、顎をしゃくった。  
その方向には確かに、まばらな点にしか見えないパラソルたち。  
で、でもねでもねっ。  
 
「でも、こんなところでなんて・・・っ」  
「おれさ、さっきパステルの格好見たときから、相当やばかったんだぜ?  
 もう・・・我慢できないよ」  
 
ごつくて筋張った指が、わたしのからだを這い回る。  
夏の日差しに一度は乾きかけた肌が、またしっとりと水気を帯びる。  
わたしの汗なのか、クレイの汗なのか。  
この、脚の間から染み出る潤いはなんなんだろう。  
 
水着からこぼれたわたしの胸。  
うなじにくちづけながら、クレイは大きな手で感触を確かめるように揉みしだく。  
残る片手が、脚の間に伸びてきた。  
 
「・・・っ」  
 
ふいの刺激に脚をぎゅっと閉じたのに、強引な腕に開かされる。  
水着の上からその部分を撫ぜるクレイ。  
そのまま彼の指は、水着の隙間を割り込むように入って来ると、わたしの中心に触れた。  
 
「あぁ・・・んっ」  
「パステル・・・もうびしょびしょだよ?」  
 
クレイの言葉に頬にかっと血が上る。  
 
「・・・すごくかわいい」  
 
喉にからんだような、クレイの囁き。  
染まった頬にそっとキスされる。  
わたしの前に広がるのは、ただひらすらに青い海原。  
誰も見ている人はいないんだけど、大きく開かされた脚がとてつもない恥ずかしい。  
はじめはゆっくりと襞をなぞっていたクレイの指は、ぐちゃぐちゃと卑猥な音をたてながら、わたしのそこを攻め立てる。  
 
「・・・はぁ・・・ぁう・・・ん」  
「気持ち・・・いい?」  
 
膝に力が入らない。  
とろりとしたものがあふれ出し、お尻を伝って岩に染みていくのがわかる。  
クレイはその液体を塗りつけるようにしながら、先端の突起を弄くった。  
背中まで突き抜けるような快感が走り、のけぞる喉元に、クレイの唇が吸い付く。  
伸ばされた腕は、わたしの水着をゆっくりと脱がせた。  
 
お尻にごつごつした岩があたって、少し痛い。  
大きく開いた脚をクレイに抱えられ、ひょいと持ち上げられる。  
子供におしっこをさせるような姿勢にさせられたわたし。  
あまりの恥ずかしさに身をよじると、低い声に甘く制される。  
 
「じっとしてて」  
 
そのまま胡坐をかいたクレイの上に、ゆっくりとおろされて。  
硬く空に向かって立ち上がったクレイのものは、その部分を割り込むように、わたしを貫いた。  
ずぶ、ぬぷっ、といういやらしい音と共に。  
 
「・・やっ・・・あぁっ!」  
 
脚の間にずくん、と鼓動と鈍痛が走り、異様に熱をもっているのがわかる。  
クレイはわたしの髪に顔を埋め、荒い息をこぼしながら腰を動かした。  
 
「・・・パステル・・・っ」  
 
片方の足首にひっかかっているビキニ。  
クレイの腰の動きに合わせ、頼りなくゆれている。  
 
「・・・ぁっ・・んっ・・クレイ、クレイぃ・・・っ」  
 
お腹の奥のほうでなにかが蠢いている感じ。  
はじめは痛みしかなかったのに、擦れてなめらかになるにつれ、ぬめりがじわじわと快感を連れてきた。  
 
恥ずかしい。  
でも、あなたの顔が見たい。  
後ろから抱きしめられたまま、背後のクレイを振り仰ぐ。  
視線がからんだ時、熱いキスが降ってくる。  
むさぼるように唇が深くもつれあい、クレイの声が甘く響いた。  
 
「パステル、好きだよ」  
 
唇から唇へ直につたわる、わたしの耳にだけ届けばいい、というほどの微かな囁き。  
そしてわたしは、体の中で、なにかが爆発するような感触を受け止めた。  
 
じりじりと焦がす太陽。  
強い日差しに焼かれて、岩の上に濃い影をおとす。  
ふたりでひとつの影になったわたしたちの上を、ゆっくりと動いていく。  
 
わたしはクレイとかたく唇をあわせたまま、両手を彼の首に絡めた。  
甘くて熱くて、このまま溶けてしまいそうなくちづけ。  
 
寄せては返す波。  
岩にあたっては細かく砕ける飛沫。  
 
はるか向こうに、水平線が淡く霞んでいる。  
 

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