「ねぇ、クレイ。クレイって…経験ある?」  
「ん。何の?」  
ミルクに火をかけながら突然聞いた私に、クレイが不思議そうな顔でこっちを見た。  
「…う、うぅん。やっぱ、何でもない。」  
尋ねてみたものの、何だかか気恥ずかしくなっちゃって。つぃ視線をそらしてしまった。でも、それを見逃すクレイじゃなくて…  
「どした?何か気になる事でもあるんじゃなぃのか?」  
「……。」  
優しく尋ねられて、思わず口ごもる。  
 
ま…マリーナぁ。やっぱし、聞けないよぅ!  
 
 
つい、昨日の事。  
「ねぇパステルさぁ、経験ある?」  
「何の?」  
新築祝いのパジャマパーティーで、いきなりマリーナに聞かれた。「子づくり。」  
ぶっっ!!  
「きっ…たないなぁ。」  
思わずホットオレンジを吹き出した私に、顔をしかめるマリーナ。  
だってだって!そんな、私、無理無理。絶対無理だって!そんな…なんて…。  
「パステルじゃ、ないか。」  
赤くなったり青くなったりしてると、あっさりマリーナに言われてしまった。  
「……。」  
マリーナはある…みたいで。ちょっとくやしい。  
 
それが顔に出たのか  
「心配しなくても。だってあなたのパーティだと、クレイなんかもした事なさそうじゃなぃ?」  
なんて言われてしまった。  
…う〜ん。そうかも。  
「聞いてみたらいいよ。」  
 
…なぁんて、マリーナはあっさり言うけどさ。  
聞けないって!!  
 
…はぁ。  
私がそんな事考えてるなんて、クレイは全然思いもしないんだろう。  
「一緒にたくさんのクエストをこなしてきた仲間じゃないか。」  
「おれじゃ役不足かもしれないけど、相談にのるよ。」  
なんて、屈託なく聞いてくる。だから、つい  
「うん…クレイじゃ役不足、かな。だから、いいよ。」  
なんて、こたえてしまった。  
 
「……。」  
しばし流れる沈黙。パチパチと、火のはぜる音だけが聞こえる。  
言いすぎたかなぁ…。クレイは、私の事心配して言ってくれたんだもんね。  
クレイに謝らなきゃ。と思って振り返ると、クレイはすぐ目の前に立っていた。  
「…!ク、クレイ。びっくりした。」  
手にはなぜか、物置きにしまっていたはずの縄がにぎられている。  
 
「…クレイ?あの…。」  
と謝ろうとしていると…いきなり両手首を縄で縛られ、頭の上にあげられたところを、ショートソードで壁に打ちつけられてしまった。  
「…っなっ?」  
あまりの事に、もぅ何て言っていいのかわからない。  
クレイの顔が近づいてくる。もぅ、鼻と鼻がくっつきそぅな…そんな距離。  
「役不足かどうか、試してみる?」  
耳もとでささやくクレイの声に、思わず背筋がゾクッとした。  
…ク、クレイ?  
 
 

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