お嬢はよく甘えてくるようになった。
事実、今……放課後の教室に二人きりというこれ以上ない素晴らしい状況で、お嬢にどう触れようかと思案を
巡らせていたわけなのだが……お嬢は自分の席に座っている俺に近寄ってくると、俺の意志など聞きもせずに俺
の膝の上に座ってきた。
「なぁ、お嬢……」
「ん、なんだ水原」
「これは、どういう状況なんだ?」
「簡単だ。お前に触れていると安心する。だからこうしているんだが……迷惑か?」
「いや、迷惑ではないんだがな……なんつうか、別の意味で困る」
そう、別の意味……お嬢の身体の柔らかさがあまりに心地よすぎる。俺の足を通して感じるお嬢の太ももとお
尻の感触は欲情を抱くのに充分だったし、わざと俺に身体を預けるようにしているせいでその胸を俺の顔に押し
つけるような体制になっている。
「別の意味……ああ、そういうことか?」
「ああ、そういうことだ」
「それならかまわない、そういうつもりも一応あったからな」
「あのな、お嬢っ……んっ!」
苦笑を返しつつ、今すぐ無理矢理押し倒しそうになるほど可愛いことを言う恋人をたしなめようとした俺だっ
たが、その言葉はお嬢の口で塞がれていた。
「んっ、は……んぁ、ちゅ……」
「む……ん、んっ……」
ちょっと待てと一瞬思った俺だったが、本当に一瞬だった。次の瞬間には、ぎこちなく舌を伸ばしてくるお嬢
に応えていた。遠慮するつもりは全然起きなかった。ここが教室だという意識も無かった。
ただひたすらお嬢が可愛い、愛おしい……お嬢が全てを諦めて、それでも俺がお嬢を説得したときに、ここで
お嬢を引き留めることができたとしても将来どうなるかはわからないと言ったものの、今では本当にそうだろう
かという気がしている。それぐらい、日々の生活でお嬢のことを考えている時間が増えている。
「ん……お嬢……」
「ふ……水原、違う……」
頬を赤く染めたお嬢は、少しだけ拗ねた口調で抗議してきた。ああ、そうだった……お嬢にしては可愛いお願
いだったなと、そのお願いをされたときのお嬢の照れた顔を思い出す。
「ごめん、笑穂」
「ん、涼」
俺がお嬢に告白をしたとき、名前で呼び合ってみるかと言ってはみたものの、お互いそのときは似合わないと
いうことで笑ったことがあった。しかし、本気で付き合うようになってから、少しずつ意識が変わってきたのか
もしれない。
特にお嬢は俺に名前で呼んで欲しくなってきたらしい……付き合い始めてからわかったがどうやらお嬢は普段
見せる態度や雰囲気で感じていた以上に甘えたがりだったようだ。さすがに他の人がいる前でとは言わなかった
ものの、二人きりでいるときはキスをねだったり、ただひたすらくっついていたりと、正直照れてしまう。
そして先日、俺の腕の中からじっと見上げてきて、二人きりのときは名前で呼んで欲しいとお願いしてきたの
だが……正直言うとかなり可愛かった。
まぁ、俺にはまったく異存はなかったものの、まだ慣れないのかついつい『お嬢』と呼んでしまう。まぁ、お
嬢も俺のことを『水原』と呼び間違えるのだからそこはお互い様だ。
「ところで……ここで?」
「ああ、そのつもりだが……イヤなのか?」
「イヤってわけじゃないけどな……ま、いいか」
躊躇無く返事を返してくる笑穂に、俺は驚きつつも制服の上から形の良い胸をやさしく撫でるように触れる。
「あ……っ!」
膝に座ったままのお嬢を逃がさないように左腕を腰に廻し、右手は笑穂の胸を揉みしだく。そのとき、すぐに
違和感に気づいたのだが、最初は何に違和感を感じたのか気づかなかった。しかし、あえぐ笑穂の様子に俺は唐
突にその違和感の正体に気がついた。
「なぁ、笑穂……聞いていいか?」
「あんっ、な、なに、をっ」
「なんでブラジャーをしてないんだ?」
言いつつ、胸を揉むのをやめない……当然、笑穂のあえぎ声は止まらない。笑穂は目を潤ませて俺を見つめつ
つ、あえぎ声に乗せて応えてくる。
「さっき、んっ……教室覗いたら、涼しか、い、いなかったから」
「ああ」
「しばらく横顔を見てたら、涼と……その、したくなって」
「……」
「トイレで、はずしてきた……」
笑穂、いやここではあえてお嬢と呼ばせてもらうが、お嬢がまさかそんなことをするとは思ってもみなかった
。別にお嬢が変な趣味に目覚めたわけではないだろうし。俺もお嬢にこういうことをしてくれと言ったことも願
ったこともない。ただ、お嬢の中で俺という存在がどんどん大きくなっている証拠かもしれない。
今までであればお嬢の中の常識というブレーキが効いていたのに、俺とこういうことをしたいということがお
嬢の中で優先されてしまい、常識というブレーキが甘くなってしまっている。
俺にとっては、素直に甘えてくることが多くなったことも含めて嬉しい傾向かもしれない。
「変……か?」
「ん、変じゃないよ。俺のこと、それだけ好きだってことなんだろ?」
「……」
笑穂は俺の言葉に赤くなって小さく頷く。
「近いうちに裸エプロンとかしてくれそうだな」
「バカ……」
「なんだしてくれないのか……残念」
冗談のつもりでそんなことを言いながら、続きを始めようと俺が笑穂の胸に手を伸ばそうとすると、なぜか笑
穂は俺の腕をとって中断させ、俺の膝から降りた。
一体どうしたんだろうと思っていると、笑穂は真っ赤だった顔をさらに赤くして……。
「……なぁ、涼……実はな」
そう言うと、笑穂は両手でスカートの裾をゆっくりと持ち上げる。規則で決められた範囲の靴下、そして……
スカートの下には何も着けていなかった。
「……ショーツも、脱いできた」
「は?」
俺はさすがに唖然としてしまう。もしかしたら、学校で俺に抱いて欲しいと意識してしまったせいで変な風に
テンションが上がりすぎてしまったのかもしれない。普段から真面目で落ち着いて冷静な笑穂のことだ……その
可能性がかなり高いような気がする。
と……笑穂に負けず劣らず落ち着いて冷静な俺だったが、正直恋人にここまでされて、気持ちが醒めるなんて
ありえない。俺は笑穂の腕を掴むと、そのまま引っ張って俺の膝の上に笑穂を座らせる。
しかし、今度は向かい合うようにした。要するにイスに座った俺の膝を大きく足を開いて対面するように座ら
せた。当然、スカートはまくれあがり、隠すべき場所をギリギリ隠している程度でしかない。
俺は赤く顔を染めたままの笑穂に微笑むと、何かを言いたそうにしているその唇に人差し指をあてた。
「笑穂、エッチになったなぁ」
「バカ……こうなったのは水原のせいだ」
恨みがましそうな目で睨み付けてくるが、恥ずかしそうに言う態度がいちいち可愛いので怖さはない。
「ああ、悪かったよ。俺のせいだから、責任はとるよ」
「ん、なら……いい、ふぁっ!」
笑穂は今の『責任』という言葉を今、俺が笑穂にこんなエッチな格好をさせたから責任をとってやると言った
と思っているだろう。しかし、俺は別の意味で責任を取ることを決めた。
指先を何も履いていないスカートの中に潜り込ませて、しっとりと湿り気を帯びた笑穂の膣口を突くように刺
激する。
「……はぅ……ん、あっ」
俺が触れる度に甘い吐息を漏らす笑穂の声を聞きながら、近い未来……多分来年の春の卒業式の直後に俺たち
がとるであろう行動を想像する。
いきなり真剣な顔で呼び出した俺に笑穂は戸惑いつつもついてきてくれるだろう。場所は誰もいないだろう校
舎の屋上がいいかもしれない。その途中、ずっと無言でいれば俺から何か深刻な相談があるとか、もしかしたら
別れ話でもされるのかと誤解するかもしれない。
いや、笑穂を驚かせようと思えば、わざとそう思わせたほうが面白いかもしれない。付き合い始める前から笑
穂には一本取られることが多いから、これくらいの仕返しは許されるだろう。
そして、そんな誤解をさせておいて、俺が真剣な顔で地味で飾りっ気のないだろう指輪を差し出せば、一体ど
んな顔で俺を見るだろうか……少なくとも喜んでくれると思いたい。その後で、その指輪を右手の薬指にするか
、左手の薬指にするかは笑穂に選ばせよう。それで笑穂が俺の気持ちをどれだけ強く感じてくれているかわかる
だろうし……。
それで、もし笑穂が左手に指輪をしたら、本当の意味で俺も覚悟を決めるということにして……。
「……涼、早く……」
不満そうな笑穂の声。どうやら俺が目の前の笑穂のことを見てなかったことに気づいたらしい。
とりあえず、卒業式まであと1年近くあることだし、今は目の前のすっかり可愛くエッチになった恋人のこと
を考えることにする。
俺は膝に座ってもじもじしている笑穂を抱き上げる。笑穂も俺の意図がわかったようで、俺がズボンを下ろせ
るようにしっかりと腕で抱きついてくる。
そして、笑穂の膣口に合わせられた俺のペニスの先端が、なんの抵抗もなく飲み込まれる。何度もこの瞬間を
経験したが飽きる事なんてありえない。ずるずると飲み込まれていき、笑穂の体重の全てを俺が受け止める。
俺に抱きついて全てをゆだねたせいで、笑穂の子宮を俺のペニスが押し上げるように突き上げている。
「んっ……」
その感覚が少し苦しかったのか、笑穂の眉がしかめられる。俺はその表情の微かな変化に反射的に反応してし
まう。
「笑穂、苦しいか?」
「んっ、いや……そんなことはない……」
そう言うと、笑穂は俺に苦笑を返す。俺がこうして聞くと、本当がどうであれこういう返事しか返してこない
。そのことを不満に思った瞬間、俺の表情からその気持ちを読み取ったのだろう。
「んっ、涼は本当に、心配性だな」
「そうか?」
「ああ、初めての、ときも……んっ、死にそうな顔で、心配してくれたしな……っ!」
アレは一生の不覚と言っていいかもしれない……でも、俺も初めてだったんだからいい加減忘れて欲しい。そ
りゃ、俺にしたらキザっぽい行動だと思うよ。童貞ゆえの悲しさか、笑穂も初めてだったことをすっかり頭の中
から抜け落としてしまった俺は笑穂の身体を気づかうことができず、必死に痛みに耐えていた笑穂の中に出して
しまった後に痛みに必死に耐え、それでも耐えきれずに涙を流していることに気づいた。
その瞬間、達成感を感じていた俺は猛反省と大後悔をしてしまった。俺は笑穂がこぼしていた涙の痕の残る目
尻に慰めるように何度もキスをして、気遣えなかったことを謝って、笑穂が『心配しすぎだ』と苦笑を返すまで
ずっと頭を撫で続け、やさしく包むように抱きしめた。
「あのときのっ、涼の顔は、ん……一生忘れられない、だろう……ひぅっ」
「……恥ずかしいからっ、忘れてくれ」
「ん、イヤだ、ふふっ、初めてを、あげた女の、特権だからな……んっ!」
動きにあわせて会話が途切れ途切れになるが、お互い笑みが自然とこぼれてくる。
その笑みを見ながら思う。いろいろあったけど……今はこうしてお互い心も、そして身体も繋がっている。
この先、どんな困難な障害であっても、笑穂の手は俺が引っ張り上げてやろうと思う。いや、俺以外の男にそ
の役目を譲りたいとも思わない……こんないい女、誰かに渡してたまるか。
とりあえず、笑穂の家族に俺を認めさせなければ……そのための努力を惜しむつもりはまったくない。俺は決
意を込めて笑穂を見つめる。すると、笑穂はその視線に気づいたのか、欲情に染まったままの表情で俺に笑みを
返してくる。
「あ、ん……涼……」
「ん、なんだ?」
「……がんばって」
どうも俺の考えは筒抜けらしい……卒業式に笑穂を驚かせるためには、こういうところも克服しないとな。
「ああ、がんばるよ」
とりあえず、今は笑穂を気持ちよくさせることをがんばるけどな。
《おわり》