俺は水原 涼、鹿角高校3年に進級したばかり。進路は最初は就職しようと思っていたのだが、保護者のアド
バイスという名を借りた脅迫と、恋人の『学ぶことをおろそかにするつもりはないが、一緒の時間を過ごしたい』
というお願いにより、あっさり方向転換してしまい、現在では進学に向けて追い込み中。
よし、俺は冷静だ……うん、冷静だよな……。
で……。
「み、水原……ど、どうだ?」
「いや、どうって言われても……」
正直なんと反応していいのか、困る……褒めれば褒めたで問題あるような気がするし、当然怒ってるわけでは
ないから怒るわけにもいかない。
いや、確かに言ったよ……『してくれそうだな』って。
うん、本音で言えばめちゃめちゃ嬉しい。その格好も嬉しいけど、絶対お嬢がするはずがないだろうことをし
てくれているという気持ちが嬉しい。いや、嬉しいよ、ほんと……だけど……。
「似合わない……か?」
いや、そんな悲しそうな顔されても……ええい、しょうがない!
「バカ言うな、すごく喜んでるに決まってるだろ。似合ってるって言っていいのかわからんが……」
「……変態」
いや、そこで変態って言われても、数学の問題でわからないところがあるので教えて欲しいところがあると俺
の家に来て、ちょっとお手洗いを貸してくれと言われて戻ってきた格好が『裸エプロン』という常軌を逸した格
好のあなたに言われたくありませんよ、陸奥 笑穂さん。
「で、なんでその格好を?」
「り、涼が……してくれそうだって言うから、して欲しいのかと思って……」
「いや、まぁ……」
「そ、それに、妹さん……いなかったし……」
ああ、靴がなかったから出かけてるって気づいたんだな……それで着替えて……なんつうか、可愛いさ、可愛
いよ、ちくしょー。笑穂の最初のイメージがクールビューティーだっただけに、このギャップは衝撃が大きすぎ
る。
まぁ、それはそれとして……確かに言ったさ。言ったけどな……俺の言うことをすべて本気で受け取るなよ。
この調子だと、俺の要求することはなんでも応えてくれそうで、受験生としてはかなりまずい状況というか……
。
大体、それ持参で来たってことは……もしかしてわからないところがあるというのは言い訳で、本当の目的は
『裸エプロン』を見せるためじゃないのか?
ん?そうか、さっきから何にひっかかってたのかと思ったら、これか……。
「笑穂、ちょっとそこに座って」
「……」
俺は口調を意識して落ち着けてから、笑穂を俺の目の前に正座で座らせた。
ぐっ、しまった……着替えさせてからにすればよかった。裸エプロンで目の前に座られたら、かえってポイン
トが高い……じゃない!
とにかく、ここは俺がしっかりしておかないと……。
「そのな、すげぇ嬉しいよ。笑穂が俺のためにそんな格好までしてくれて」
そう言うと恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに微笑む。今から言うことを考えれば、少し罪悪感がわきあが
ってくるが……。
「でもな、お嬢……今日はわからないところがあるから教えて欲しいって話しだったろ?」
「それは……」
あえて呼び方を普段の『お嬢』に戻したことに気づいたのか、笑穂の顔が少し強張る。
「俺はお嬢を抱きたいって思ったときはちゃんと言ったし、お嬢もそうだったよな?」
「ああ……」
「それに、俺たちは一応受験生だけど、お互い一度も断ったことないよな」
受験だから男女交際を我慢するとか、そういう考えは俺にも笑穂にもなかった。確かに元々お互い成績が良い
こともあったが、今俺たちは二人でいること、触れ合うことが何よりも力になっている。
お互いが求めているとき、それも数週間に一度くらいのペースでセックスをするだけで成績が落ちるなんてこ
とはありえない。かえって気持ちは落ち着くし、二人でがんばろうという気にもなってくる。
だから、こういうことをしてくれるのは嬉しいが……嘘をついてまでというのは納得ができなかった。
「すまない……ちょっと、浮かれすぎてた」
それだけを言うとわかってくれたのか、うなだれた笑穂は素直に謝ってきた。ただ、俺としてはわかってくれ
ればそれでいいというだけなので、笑穂を落ち込ませたままにする気はまったくない。
「わかってくれればいいよ……でさ、それはそれとして」
「なんだ、あっ!」
ああ、我慢できねーよ。ちくしょー、さっきの説教が説得力ねーじゃんかよ!説教しておいて、襲いかかるな
んて、思いきりダメ男だな……。
「み、水原っ!」
「すまん、我慢できない……」
その一言で笑穂は俺に押し倒されたまま、きょとんとした表情になる。そして、その表情が笑みに変わって、
その笑みに少しだけ意地の悪いものが混じってくる。
「さっきの説教、説得力がないぞ」
「うるさい」
「ほぉ、都合が悪くなるとそういうことを言うのか?」
すっかり立場が逆転してしまった。ああ、もう俺の負けでいいよ……。
「……お嬢、今すごくお嬢を抱きたい。いいか?」
「ふふ、さっきおまえが言ったばかりじゃないか……お互い断ったことがないって」
そう言うと、お嬢は俺に押し倒された仰向けの体制から、身体を回転させてうつぶせになる。背中はもちろん、
お尻まで何も隠されていない身体が俺の下にある。
今まで後ろからしたことは一度もない。別に笑穂が嫌がっているとかそういうことではなく、俺も笑穂もお互
いの顔を見つめて抱き合うのが何より好きだったからというだけの理由なのだが。
「笑穂?」
「あれから、は、裸エプロンというものをだな、その、調べたんだ……その、ネットとかで」
「はい?」
「それで、な……は、裸エプロンのときはその、後ろから……その……」
どういうものかは知ってはいたが、細かく調べたということなのだろう……まぁ確かに裸エプロンだと流し台
に押しつけて後ろからとか、そういうシチュエーションが多いだろう……見れば背中というか、全身が真っ赤に
染まっている。そりゃまぁそんなことを女の子が言うのは恥ずかしいだろうなぁ……。
だけど、顔を見ずに俺に身体を任せるということは、俺を信頼してくれていると思って良さそうだし……ちょ
っとした変化でも俺のために変わってくれたのだと思うと素直に嬉しい。
「……ほんと、エッチになったよなぁ、笑穂は」
「み、水原のせいだ……バカ」
「ああ、ほんと俺のせいだな……」
俺は言いながら、笑穂の背中に覆い被さるようにしてエプロンの隙間から両手を差し入れる。柔らかい胸が俺
の手の動きにあわせて形を変える。
背中に舌を這わせると、その度に身体がびくびくと震える。片手で内股を撫でれば、もっと触ってほしいとば
かりに真っ白なお尻が揺れる。
そろそろいいかと思った瞬間、ふと思いついてしまった。
「なぁ、笑穂……キッチン、行かないか?」
「ふ……ぇ?」
「せっかく裸エプロンしてくれてるんだし……」
笑穂は赤く頬を染めたまま小さく頷く。俺は笑穂を抱き上げて、俺の部屋からキッチンへと連れていく。その
短い間にも、笑穂は俺の首筋に顔を埋めて熱い吐息を吹きかけてくる。
おかげで興奮がおさまらない……俺は笑穂をキッチンに運ぶと流し台の前で下ろして、そのまま背中から抱き
ついた。
「あ、んっ……もうっ!」
「ぐっ!」
異常な状況にお互い興奮しきっていたのかもしれない。挿入すると同時に、笑穂は身体を小さく震わせた。ど
んどん感じやすくなっていく笑穂が可愛い。
最近は、笑穂に対して美人だと感じる以前に可愛いと感じることが多い。言えば照れるので、あまり言うこと
はないが。
エプロンは大きく乱れて、すでに胸を隠していない。俺はその胸を揉みながら、腰を動かす。どんどん笑穂の
呼吸の間隔が短くなっていく。俺も何も考えられなくなっていく。それでも俺はその瞬間を間違わないように意
識を集中する。
「くっ、イクぞ!」
「う、うぁ、んっ!」
俺は一気に笑穂の中から抜くと、お尻に向かって精液を吐き出す。いつになく勢いよく出た精液は、お尻だけ
でなく、背中まで飛んでしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
二人の荒い呼吸が重なる。俺はぐったりと力の抜けた笑穂を自分に向けさせ頭を撫でながらキスをする。こう
して笑穂を抱くことも好きだが、それ以上にこうして想いを確かめながらするキスも好きだ。
俺はキスを終えると、笑穂をじっと見つめて……。
「今度は……メイドさんをリクエストしていいか?」
「バカ……」
きっとしてくれるだろうなと思いつつ、もう一度キスをして……腰の力が抜けてしまった笑穂を風呂場へと運
んだ。当然、一緒に入って、それから言い訳程度に少しだけ勉強をした。
俺と笑穂はきっと卒業までこうして変化無く毎日を過ごすんだろうと思う。大きな変化はないが、飽きない毎
日……そんな毎日を大切に想う人と過ごして行こうと思う。
ちなみにこれから数週間後、笑穂に自宅に招待された俺が部屋に入るとメイド服に身を包んだ笑穂に『おかえ
りなさいませ、ご主人様』と迎えられたのは言うまでもない。
ちくしょう、予想以上に可愛いじゃないか。
《おわり》
おまけ。
翌日の朝……。
「ん、明鐘。食欲ないのか?」
俯いたままの明鐘に体調が優れないのかと思った俺は心配そうに声をかけた。すると……明鐘は勢いよく真っ
赤な顔を上げて……。
「に、兄さん、わ、私も……はっ、はっ、はっ!」
「は?」
「は、裸エプロンも、それに、メ、メイドさんだってできますっ!」
そう言い残すとダッシュで一人リビングを飛び出して、学校へと向かった。
明鐘、帰ってきてたんだな……それも、最中に……。
しかし、妹に『裸エプロンもメイドもできます』って言われて、俺にどうしろと?
こうして俺の頭痛の種が増えていく……。
《おわり?》