当初の想像を超えて俺たちの野球拳は三回戦まで進んでいた。
本当だったら、ショール引っぺがして終わりだったはずなのになぁ…
まぁ、それというのも明鐘が並外れてジャンケンに弱いせいと、俺の理性の融点が著しく低いせいなのだが。
「…今度こそ…今度こそ勝つからね、兄さんっ!」
気勢を上げて、指先をびしっと俺に突きつける明鐘。
もっとも、その片手の勢いとは裏腹に、もう片方は下着をモジモジと隠している。
明鐘の気合がジャンケンの勝敗に直結してないのは、彼女の格好と俺の格好を見比べてみれば明らかだった。
てゆーか、明鐘がジャンケンに弱い原因。俺もうすうす気づいている。
「んじゃま、いくぞ」
「うんっ!」
「「ヨヨイのヨイッ!!」」
チョキ>パー。
「うそぉぉ!なんでぇぇ!!」
俺の3連勝。
てゆーか、このままいけば、きっと俺は何連勝でも重ねることができると思う。
「何で、何でこんなに私ジャンケン弱いのぉ?うぅ〜…」
恨みがましい目で俺を見つめる明鐘。
3分の1の確率論で、なぜこれほどに惨憺たる結果になるのか分からず、明鐘は世の理不尽さに憤っているのだろう。
ま、アイコもなしに3連敗食らっちゃ拗ねたくもなるか。単純計算で27回やって1回しか出ない確率だもんな。
しかし残念ながら、このままだと明鐘の連敗はいくらでも膨らんでいく。
なんと明鐘は手を出す前の「ヨヨイのっ」の段階で、すでに手をグーチョキパーの形にしてしまっているのだ。
こんな分かりやすい癖を持っているのは、せいぜい明鐘とテリーマンくらいだろう。
「明鐘…ノーブラだっけ?」
「う、うん」
俺たちの間に微妙な沈黙が落ちる。
つまり、今、明鐘がパジャマを脱げば、その下に明鐘の胸を覆い隠すものは何もないということだ。
その事実が俺に葛藤を生む。
果たして妹のおっぱいを見てしまっていいものなのか?
何も考えずに本能に身をゆだねられるとしたらこれほど楽な選択はない。
しかし、正直もうこれ以上いったら二度と帰って来れない気がする…
俺は人として止めるべきなのだろうか?それとも、この心地よい興奮に身をゆだねてしまっても許されるのだろうか?
答えの出ないこの葛藤は、しかし、明鐘によって強制的に解決された。
明鐘はふうっと口から大きく息をはくと、ボタンに手をかけた。
「じゃ…ぬ、脱ぐ…ね?」
「お、おう。だ、大丈夫か?」
さっきと比べて意外なほどさっぱりと脱ぐことを告げた明鐘に、正直俺のほうがうろたえてしまった。
何が大丈夫なのか自分でも質問の意図が分からなかったが、明鐘ははにかんだように笑ってくれた。
「だ、大丈夫…恥ずかしいのはさっきだって一緒だったから…それに、相手が兄さんだから…」
「そ、そうか…」
相手が俺だと、いったいどうして大丈夫なのか?
明鐘の発言の真意を確かめようかとも思ったが、結局聞くことはできなかった。
いや、本当のことを言えば、俺はうすうす気づいていたのだ。明鐘の本当の気持ちに。
明鐘は、丁寧に…それこそ緩慢とも言える動きで一つ一つパジャマのボタンをはずしていく。
その動作を見ているだけで、俺の中に切なさとじれったさと興奮とが入り混じったような不思議な感情が形成されていく。
「ボタン、外したよ…兄さん?」
明鐘はそういって顔を上げる。
ボタンをはずし終わったが、明鐘の胸はいまだパジャマの中に隠れていた。
「じゃあ、次は脱いで?」
「ん…」
明鐘は、片腕をゴソゴソと袖の中に引っ込めて胸を隠し、もう片方の腕をパジャマから引き抜いた。
重力にしたがって、パジャマがリビングにパサリと落ちる。
「あ、明鐘…」
「兄さん…そ、そんなに見ないで」
明鐘は恥らって顔を横に背けてしまう。
しかし、見るなといわれてもこればっかりは不可能な注文である。
パジャマが落ちた瞬間に現れた、輝くような肢体を俺は生涯忘れることはないだろう。
パンティ以外のすべての衣服が取り払われ、両腕で胸を隠したまま、恥ずかしそうに微笑む明鐘。
今、俺は明鐘のすべてに夢中になっていた。
明鐘の瞳に。首筋に。肩口に。おへそに。太ももに。しっとりと濡れたパンティに。
そして…腕で隠していても、はっきりと分かるその胸のふくらみにも。
「明鐘…腕、どけて?」
「…」
明鐘は困惑したように俺を見つめる。
「せっかく勝ったんだからさ…全部見せるってのが、ルール…だろ?」
そんなルールあったかどうか知らないけど…でも、勝者の権利としてこの程度の要求は許されるはずだ。
「…一つだけ…一つだけ、お願いがあるの」
「ん?」
明鐘は両腕で自分自身をかき抱きながら、俺を不安そうに見つめる。
身長も骨格もそれほど大きくない明鐘だが、今はさらにちっちゃく見えた。
「その…私、もしかしたらちっちゃいかも知れないから…だから、笑わないでね?」
「…見た感じ、そんな小さくないだろ?」
腕の隙間からのぞく明鐘の胸は決して小ぶりとは言いがたいサイズに思える。
むしろ、これで小さかったら、美紀とかどうなんだ?クレーターか?
しかし、それでも明鐘は不安らしい。
「わかった。笑わないよ」
俺の返事を聞いて、ようやく明鐘は安堵の微笑を浮かべた。
そして…
「あ…あんまり見ないでね」
明鐘の両手がゆっくりゆっくりと胸から下ろされ、そしておへその前で両指が組まれる。
「…あ」
白くて柔らかそうで、思ってたよりもはるかに大きなおっぱいだった。
そして、先端には可愛らしい桜色の乳首。
まさに夢に出てきそうなくらいの極上のおっぱいだった。
「…ど、どうかな?兄さん」
「ど、どうって…」
明鐘はぎこちなく笑って尋ねる。
しかし、どう答えようとも、この感動が彼女に伝わるとは到底思えなかった。
「…お、おっきいし、柔らかそうだし…すごい、可愛いおっぱいだと思う」
「ほ、本当?私の胸…兄さんの好みかな?」
「当たり前だろ!」
むしろ、このおっぱいを好みじゃないなんていう男がいたら、一体どれだけマニアックな趣味なんだろう?
おそらくボリュームといった点で言えば西守歌に劣るのだろうが、明鐘は西守歌以上に骨格が細い分、遜色ないスタイルに思えた。
西守歌もそうだが、典型的な脱いだらすごいというスタイルだ。
「明鐘って…着やせするタイプなんだな…」
「…そ、そうかな?」
「触っていい?」
「う、うん…」
俺は、まさに恐る恐るといった感じでそこに触れてみる。心臓が爆発しそうだ。
明鐘も顔といわず、全身を真っ赤に染めて、俺の手を今か今かと待ち受ける。
そして…
ふにゅっ。
「「あ…」」
俺の指先が明鐘の胸にもぐりこんだ瞬間、俺と明鐘は同時に吐息を漏らした。
てゆーか、何だこのとてつもないやわらかさは?
その感触は俺の17年の人生の中でも、まさに未知のやわらかさだった。
「あ、ああ…兄さんの手、大きい…」
明鐘はうっとりとつぶやき、俺の手と形をゆがめられたおっぱいを見つめる。
その瞳は興奮に潤んでいた。
俺は、できるだけ自分の興奮を押し殺し、慎重に両手で明鐘のおっぱいを揉みこむ。
力の加減が分からないので、ゆっくりゆっくりと、できるだけやさしく丁寧に手の開閉を繰り返す。
それに応じて、明鐘は浅く息を吐き出した。
「んふぅ…」
「き、気持ちいいのか?」
「う、うん…兄さんの手、優しいから…うっとりしちゃう」
「そうか…」
「あ…それ…ああ…優しくて…気持ちいい…」
明鐘は目をつぶり、うっとりと俺の手の感触に身をゆだねていた。
しばらくの間やわやわと揉みしだいてみる。と、明鐘の緊張もほぐれてきたようだ。
心なしか、明鐘が俺の手に体重をかけてきているような気がする。
明鐘の反応に俺は勢いを得、少し強めに胸を握ってみた。
「あぅっ!」
明鐘の鋭い反応に俺は手を引っ込め、あわてて謝る。
「わ、悪い!痛かったか?」
「そ、そんなことないよ…今のは、そういう反応じゃなくて…」
「あ…そ、そうなのか?て、てゆーか…痛かったらちゃんと言えよ?俺、初めてだし、加減が分からないんだ…」
言ってて、正直情けなくなるが、いまさら経験のないことを恥じてもしょうがない。
それよりも明鐘の体が大事だ。
すると、明鐘はクスリと笑い、俺の手をとって自分の胸に押し当てた。
「あ、明鐘!?」
「ここ…兄さんの好きにしていいんだよ?ここはもう…兄さんのものなんだから…」
教えた覚えのないルールをうっとりとつぶやく明鐘に俺は少しうろたえた。
「ば、馬鹿…痛くするわけにはいかないだろ?」
「兄さんって…ホント優しいよね」
「そんなことねーよ…」
「ううん、そんなことないよ。私にとってね、兄さんはすごくかっこよくて、頼りになって、優しくてね、世界で一番大好きな兄さん…ううん、男の人なの」
頬を染めてそう告白する明鐘こそ俺の理想の女の子だと…俺は素直にそう思った。
そして、明鐘はそのつぶらな瞳をまっすぐ俺に向け、言葉を継ぐ。
「だからね…私は…兄さんがすることなら何でも信じてるの…私はね、兄さんのためなら何でもしてあげられるの」
「あ、明鐘…」
「だって、私は兄さんのものだから…ずっと、ずっと前から兄さんのものにしてほしいって思ってたから…」
「……」
「だから、兄さんが気持ちいいなら…満足してくれるなら、ちょっと位痛くてもぜんぜん平気…ううん、むしろすごく嬉しいの。兄さんが満足してくれるなら。本当だよ?」
「明鐘っ!」
もう我慢の限界だった。
俺は明鐘の細い身体を力いっぱい抱きしめると、ぶつけるように自分の唇を明鐘のそれに押し当てた。
「んぅっ…に、兄さんっ…!」
「あ、明鐘!んっ!」
「に、兄さん…う、嬉しいよぉ…んっ!も、もっとキスして!んぅっ!」
俺たちはお互いの唇の感触に夢中になった。
少しの間も許さないとばかりに必死になって唇を押し当てあい、舌を絡めあう。
お互いの唾液が混ざり合い、クチュクチュと卑猥な音を立てた。
そうして、俺は明鐘と激しくキスしながら、明鐘の胸をまさぐる。
指先で乳首のコリコリとした感触を確認し、つまみあげた。
「んっ!に、兄さんっ!んうっ!あぁんっ!」
舌を絡めとられ、胸をまさぐられ、明鐘は俺の胸の中で激しくもだえる。
「兄さん…兄さん…そ、そんなに激しくいじられたら…ああっ!」
俺は明鐘の唇を解放すると、そのまま明鐘をリビングの床に押し倒した。そして、明鐘の胸に顔をうずめ、激しく乳首を攻め立てる。
「ああんっ!に、兄さん…そ、そこ…気持ちよすぎるよ…」
「じゃ、もっと気持ちよくさせてやるな?」
「ああっ!に、兄さん!は、はげしいよ…私…あはぁっ!も、もう力が…あぁんっ!」
「嫌か?」
「い、嫌じゃないっ!嫌なワケないよ!ああんっ!う、嬉しいよぅ!兄さんに抱かれて嬉しいよぉ!」
自分の胸の中で歓喜の嬌声をあげる明鐘に俺はどうしようもない愛しさを覚える。
その愛しさそのままに俺は明鐘に深く口付ける。
「んぅっ…に、にいさ…ん…うれしいよぉ…兄さんにキスされるのずっと夢だったのぉ…」
明鐘の唇を開放すると、明鐘は俺の胸にすがり付いてきた。
その華奢な体を俺は精一杯優しく、そして力強く抱きしめる。
「明鐘…お前は、ずっと俺のもんだからな」
「うんっ!うんっ!ずっと…ずっと…兄さんのものにしてっ!私は兄さんのものなのっ!」
「明鐘っ!」
俺はガバリと起き上がると、一気に服を脱ぎ捨てトランクス一丁になる。
「明鐘…いいな?」
何の確認かは言うまでもない。
もう、すでに俺のムスコは限界まで立ち上がり、いまや遅しと出番を待っているのだ。
明鐘は一瞬、驚いたような表情を見せたが、すぐにとろけるような笑顔を浮かべ、何度もうなずいた。
「うん…うん…お願い。私、兄さんに私の初めてあげたいってずっと…」
感極まった明鐘が、自分のバージンを捧げようとした、まさにその瞬間だった。
ぷるるるるるる。ぷるるるるるる。
リビングに間抜けな音が響いた。俺は、明鐘の表情が凍りつくのをはっきりと見た。
もっとも、それは俺だって一緒だろうけど…
「「…」」
ぷるるるるるる。ぷるるるるるる。
一向に間抜けな音が鳴り止む気配はない。
あれだけ燃え上がった瞬間に水を差され、明鐘は困惑しきった表情で俺を見つめている。
「で、電話…だね?」
「…」
「兄さん?で、出ないの…かなぁ…なんて?アハハ…はぁ〜」
「ふうっ!」
俺は大きく口から息を吐くと、やけくそ気味に立ち上がった。ドタドタと足音も荒く、リビング備え付けの電話に向かう。
「もしもしぃっ!水原っス!」
「やっほ〜!美紀ちゃんっス!涼〜?鐘ちゃんから誘惑されてないかにゃ〜?ガハハ…」
がちゃっ!
俺は有無を言わさず、電話を叩ききった。
「に、兄さん?誰だったの?」
後ろから明鐘の声がした。見ると明鐘は、さっきのパジャマをボタンをはめずに軽く羽織っていた。
「ん。いたずら電話みたいだ。それより、さっきの続き…」
ぷるるるるるる。ぷるるるるるる。
「…」
「に、兄さん?」
明鐘は苦笑いを浮かべて俺を見ている。たぶん、電話の相手に見当がついたんだろう。
俺は額に青筋を浮かべて受話器を引っつかんだ。
「あ、涼?いきなり切るなんてひど…」
「あのなぁ!今、何時だと思ってんだ!もう12時近いんだぞ!かけるなら家電じゃなくて、携帯にしろ!」
「んん?アンタ何をそんなにイライラしてんの?」
「…そ、そりゃあ…ね、寝てるとこ、起こされたからだよっ!文句あるか!?用事があるなら、明日の朝返事するから携帯にメールしろ!じゃあなっ!」
「あ!ちょ、ちょっと涼!?ちょ…」
ガチャン!ツーツー。
俺は受話器をたたきつけるようにして電話を切ると、明鐘に向き直った。
明鐘は相変わらず、困ったような苦笑いを浮かべて俺を見ている。
その様子はいつもの明鐘であり、さっきの艶っぽい明鐘とはまるで別人である。
先ほど、俺たちの間に漂っていた最高の雰囲気はきれいさっぱり霧散してしまったようだ。
「明鐘…その、ごめんな。その…」
「う、ううん。兄さんが悪いわけじゃないから」
「「…」」
俺たちの間に気まずい沈黙が落ちる。
いまさら、さっきの続きができる雰囲気でもなし、かといってこのまま解散というには惜しすぎる…
と、沈黙に耐えかねた明鐘が努めて明るく口を開く。
「と、とりあえず!」
「とりあえず?」
「…続きいこ?」
「…続き?」
「え?だから…野球拳…だけど?」
「ああ…そういえば…」
そういえば、そんな大義名分があったんだっけ?
今まですっかり忘れてたよ。
何はともあれ、俺たちの夜はより危険な方向へ危険な方向へと進んでいくのだった。