「――おやすみ」
私はそう言って電話を切った。子機を台に戻し,ベッドの端に腰掛ける。
「楽しかったな……」
心臓がまだ高鳴っている。
かりそめとはいえ,“恋人”として男子と電話で話したのはこれが初めてだった。
今まで付き合おうと言われたことが,ないわけではない。しかし,これぞと思う人がいなかったのだ。
それが今日,こうして恋人同士として電話で話をした。
それは,本当に唐突な“告白”だった。
私が親の決めた許嫁と結婚させられると聞いて,それを翻意させようと水原が告白してきたのだ。
水原とは知り合って約一年,私の境遇を知っても普通に接してくれる,気の置けない友人になっていた。
親友と呼んでもいいかもしれない。
そして,私はその告白を受けた。
嬉しかったのだ。例えそれが憤りから出たものであっても,私のことを真剣に考えてくれているということが。
そんな風に水原のことを思い出してると,頬が熱くなってきた。
ネグリジェの胸にそっと手を押し当てる。さっきとは違う胸の鼓動があった。
(なんだ,私ったらはしたない)
その昂ぶりに気づいて,私は自分自身を叱咤した。
だが収まるどころか,妖しく波打つように体の内側から起こってくる。
「水原」
彼の名前を呼んでみると,顔が真っ赤になるのがわかった。なんだか恥ずかしい。
後ろに倒れ,ベッドに背をあずける。
ボタンを外して隙間から,胸に右手を差し入れる。
「んっ…」
柔らかな隆起の先端は,既に固くなっていた。
私の胸は他の女子に比べても,なかなか大きい。気にしないそぶりはしているが,時折男子の視線を感じている。
水原は私の胸のこと,どう思ってるんだろう。
そう考えながら,ゆっくりと下から揉んでいく。じんわりとした快感に体を震わせる。
「はぁあん……ふぅ……」
指の先だけを,隆起の裾から先端の近くにすっと滑らせる。裾から先端へ,先端から裾へ。
優しく往復させると,粟立つような快感が広がり,薄桃色の蕾がより固くなってきた。
「ひゃんっ」
蕾が指先に触れると,電流が流れたように体がビクッとなる。
そのまま蕾を嬲りながら,左手でネグリジェの裾を捲り上げた。白い脚が太股から足先まであらわになる。
体育の時間では友人達に羨ましがられる,密かに自慢の脚だ。
「水原…」
もう一度呼ぶと,足先からゾクッと波打つ感覚が押し寄せた。
ショーツの上から大事な部分に触れると,はっきりとわかるぐらい濡れていた。
横から手を入れて,秘裂の上から下になぞり上げる。
「んっ,あっ…あんっ」
恥ずかしいのに,喘ぎ声が漏れるのを抑えきれない。
指先で内側をかき回すと,くちゅっという音が漏れた。
「あっ…やあん…くうっ…んんっ」
指が自然と敏感な部分をなぞり,太股がこすりあわされる。もっとも敏感なところを,円を描くように擦ると
その度に全身がびくんと反応した。
「あうっ…あっ,やあぁん…ああっ」
彼の顔つき,体つき。彼に抱きしめられているところを想像すると,体が甘くとろけそうになった。
水原の名前を呼ぶたびに,熱くなる私の体。私の大事なところは,とめようもないぐらい濡れていた。
意識しないうちに,私の指の動きは早くなる。
体を襲う快感は,もう抑えきれないぐらい大きくなっていた。
「やぁあ…あんっ…あっ…はぁ,あっ…ああああっ」
ひときわ声を上げて悶えると,私は快感の頂点に達した。大きな波が押し寄せ,体が弓なりに反る。
「はあっ…はあっ…」
心臓の鼓動を抑えながら,私は快感のあとのけだるい感覚に身を任せていた。
「ふうっ」
私は大きく息をつくと,ゆるゆると身を起こした。けだるい感覚が,まだ身のうちに残っている。
下着を替えてボタンを嵌める。ベッドを整えて,横になった。
身綺麗にしたら,さっきのことまでが恥ずかしくなってきた。
こんな恥ずかしいところは,水原に見せられない。まったくもう,私ったら。
「ばか」
誰にともなく呟いて,私は枕を抱きしめて丸くなった。
「水原…」
もう一度だけその名を口にすると,今度は心に暖かいものが広がる。
なんとなく幸せな予感がして,私は目をつぶって眠りに入った。
――私と水原は後に結ばれることになる。それを知るのは,もう少し先のことだった。
END