今日一日だけ明鐘は家にいない、学校の修学旅行で京都に行ったからだ。  
すると必然的に俺はこのバカと二人で過ごす事になる。  
「冗談じゃない、何で俺があいつと・・・・・・はぁ・・・愚痴言っても仕方ないか・・・  
よし、今日はなるべく早く寝て一日を終わらそう!」  
そう決心し俺は自宅へと戻った。西守歌はまだ帰っていない、今のうちに今日一日だけ行方をくらましちまうか?  
いや・・・そんな事をしてもどうせすぐ見つかるな、あいつの権力をフルに駆使すれば一時間ぐらいで俺なんか見つけてしまうだろうな・・・  
「あー、やめだやめ!考えただけで疲れる。第一何で俺があいつの事で疲れなきゃならねーんだ?  
そこから話がおかしくなってる気がする、いやおかしくなってる!変わらず・・・そう、いつもと変わらず過ごせばいいんだ  
それが一番の得策のはず」  
上手くやれよ涼・・・!俺は自分に強く言い聞かせる  
「ただいま帰りました〜!」  
来た・・よし、いつもと変わらずだぞ涼  
「涼様〜!!」  
西守歌が飛びついてくる、しかしこんな事で動揺するわけにはいかない  
「な、なんだよ西守歌・・?離れろって」  
さりげなく回避しようとする俺  
「涼様、お帰りのキスをしてください」  
目の前では目を瞑ってるバカが一人いる、相変わらずのバカだなこいつ・・・  
俺ははぁ・・とため息をつく  
「バカな事ばかり言ってないで飯作れ、今日はお前の当番だろが」  
西守歌の額にデコピンを一発おみまいしその場を離れる  
「痛〜い!痛いですわ涼様!可愛い許嫁に何をするんですか!」  
西守歌が俺の背中をポカポカと叩いてくる、そんな西守歌を適当にあしらわい俺は自分の部屋に戻った  
 
「よし!なんとか回避出来そうだな、へっへっ案外チョロいもんだな」  
なぜか俺は勝ち誇っり上機嫌だった。何言ってんだ俺・・・これが当たり前じゃないか  
無性に恥ずかしくなってきた、年上の男が年下の女をリード出来なくてどうする・・・!  
けどあいつが相手だしな・・・い、いやそんなの関係無い!あいつだって年下には変わりないんだ、特別扱いする必要はない!  
明らかに涼は西守歌に踊らされていた。西守歌の存在だけでこれだ、多分涼の決心した事を上手く遂行するのは無理な話だろう・・・。  
コンコン!  
「涼様、お食事の準備が出来ました」  
「分かった、今行く」  
よし、もう余計な事は考えないようにしよう。リードするとかそんな事は考えないようにしろよ、涼。  
そう自分に言い聞かせ台所へ向かう、部屋を出たところから香ばしい香りがしてきた。  
「今日はハンバーグか・・・」  
そう呟きながら台所に行くと予想通りテーブルにはハンバーグが二人分乗せられていた。  
ビンゴ。心の中で呟きいつもの席着く。  
「今日はわたくしのの愛情がた〜っぷり詰った西守歌特性ハンバーグです!」  
「西守歌特性ハンバーグって、普通のハンバーグと何が違うんだよ?」  
「それはもう、わたくしの涼様に対する愛が誰よりもたくさん詰ってるところです。もちろん味も天下一品ですよ?」  
微笑む西守歌に軽く相槌しハンバーグを口に運ぶ。確かに旨い、料理の腕は明鐘と同じ・・・いやそれ以上かもしれない  
他は全部明鐘の圧勝だけどな  
早いペースで食べ終わり自分の食器を持ち立ち上がろうとする  
「あ、涼様ちょっと待ってくださいまし。」  
それを西守歌に止められる、今度は一体なんだ・・?  
「な、何だよ?お皿さげよとしてるだけだぞ」  
「違います、あの・・一言でいいんで『ご馳走様西守歌』って言ってください・・!!」  
「え?別にそれくらいいいよ、作ってもらった身分だし」  
俺は一息つき  
「ご馳走様西守歌」  
「あ・・ありがとうございます涼様!」  
とびきりの笑顔で本当に嬉しがっている様子だ、これくらいで嬉しいのか・・?  
「そんなに喜ぶ事か?ご馳走様って言っただけだぞ?」  
「わたくしにとってはそれだけでもすごく嬉しいんです。だって涼様いつも言ってくれませんでしょう?」  
「い、言ってるよちゃんと。ご馳走様って」  
「名前をつけてくれないじゃないですか。今日は名前を付けて言ってくれたのでとーっても嬉しかったんです!」  
こいつにとっては名前を付けてだけで嬉しいらしい、やっぱり変わってる奴だ。  
いや・・でも明鐘の時もそれで喜んでたなそういえば・・・。こいつだけってことじゃないような気もするな。  
駄目だ女心ってやつはさーっぱり分からん  
「涼様?さきほどから何をブツブツ言ってらっしゃるんです?」  
「ん?あ、ああいや何でもないぞ」  
適当にごまかし自分の食器をキッチンにさげてリビングを後にした  
 
「しまった・・・風呂に入らなきゃならないんだった・・・」  
部屋に向かおうとする足がピタリと止まる、最大の難所の登場だ。  
マズイな・・・こいつは今日最大の難所かもしれない。ここで風呂に入ったら・・・涼様、お背中お流ししますわ!  
てな感じになるに決まってる!これはなんとしても回避しなければ・・・  
どうする・・?銭湯に行くか?いや金がもったいないし・・・・  
そういやあい飯の片付けしてたな・・・・これはチャンスなんじゃないのか?  
あいつが後片付けしてる間に速攻で風呂に入る、完璧だ・・  
「よし!ちゃっちゃっと入って出ちまおう!」  
物凄い勢いで服を脱ぎ風呂に入る  
「これなら大丈夫そうだな・・・」  
「涼様〜!お背中お流しいたしますわ!」  
な、何!?なんで??いくらなんでも早すぎるだろ!  
「お、おい待て西守歌!ここ狭いんだ二人も入れるわけないだろう!」  
必死に説得するが西守歌はもう服を脱いでしまってるようだ、シルエットで分かる  
「失礼します涼様」  
「でー!!?ちょ、バカ!」  
慌てて下半身のアレをタオルで隠す、西守歌は体にバスタオルを巻いて入ってきた  
「そんなに照れなくてもいいじゃありませんか、私たちは許嫁なんですから」  
「許嫁じゃない!それにそういう問題じゃない!いいから出ろって!」  
俺は闇雲に西守歌を追い出そうとした、すると手に柔らかい感触がする・・・  
「え?何だ?」  
俺の手は西守歌の大きな胸を捉えていた  
「いやーん!涼様のエッチー!!」  
西守歌は両腕で胸を隠ししゃがみ込むんでいる  
「ブッ!!ご、ごめんわ、わ、わざとじゃないんだ!!その、これは・・・」  
あわわわと焦りまくる涼。  
や、やっちまったー!!さ、さすがにヤバイよなこれ・・・チクショー!何てミスを俺は・・・!  
「涼様・・・・」  
「は、はい・・!」  
「・・・もう!そういう事がしたいのであれば先に言ってください!」  
「ち、違う!別にそういうのが目的なわけじゃ・・・!って、怒ってないのか・・・??」  
予想外の西守歌の反応に戸惑いを隠せない、殺されるのかと思った・・・  
「怒ってなどいませんわ、わたくしのすべては許嫁である涼様のものです。なので体を触られたくらい、どうってことないです。なんなら、もう少し触ってみます?」  
笑顔で自分の胸を持ち上げる西守歌、俺は我慢出来ずに西守歌の胸を揉みしだく・・・  
って!何くだらない妄想してんだ俺!しっかりしろ!そんな事したら大変な事になるぞ  
「いや、あの結構です・・じゃあ俺はこれで」  
圧倒され敬語になりつつも俺は風呂場から出ようとした、しかしそれを西守歌は許してくれなかった  
「涼様、まだお背中をお流しさせてもらっていません」  
西守歌が俺の腕を掴み引っ張ってくる  
「いや、俺もう自分で洗ったから。後はお前が一人でゆっくり入ってろよ」  
「いいじゃありませんか、もう一度洗いましょうよ。ね?」  
「嫌だ、俺はもう出る。いいから手を離せ」  
俺は西守歌の手を振るい払おうとする  
「涼様・・・さっきの事、明鐘さんに言ってもよろしいんですよ?」  
俺は西守歌の言葉に体が硬直するのを覚えた  
 
「なッ・・!き、汚いぞ西守歌!」  
「汚くなんかありませんわ、事実ではありませんか。わたくし、涼様の言うとおり腹黒なので」  
勝ち誇ったように西守歌は微笑んでいる。クソッ・・・開き直りやがったな  
俺は無言で風呂場を後にしようとする  
「涼様、この事を明鐘さんに言ってもよろしいのですか?」  
「勝手にしろ・・・。お前と俺、どっちが明鐘の信頼を持っていると思う?・・・勿論俺だ。  
お前の話なんて証拠でもない限りあいつは信じやしねーよ」  
今度は俺が勝ち誇ったように笑ってやった。明鐘との信頼関係には自信があったからだ。  
「んじゃあそういう事だから」  
俺は再び風呂場を出て行こうとする  
「証拠ならありましてよ?」  
「何?」  
俺は立ち止まり西守歌の方に体を向ける。西守歌は腕を組んでいる。  
「黒服のみなさーん!!」  
「はっ!」  
西守歌は指をパチンと鳴らすとどこからともなく例の黒服の連中がやってきて風呂場を埋め尽くす。  
「な、何だ!?なんなんだよあんた達!」  
「例のアレを・・」  
「かしこまりました・・」  
「おい聞いてるのか!」  
黒服の連中は風呂の電気を消し壁に小さなスクリーンを設置している。映画でも見る気なのか?  
「おい西守歌、一体何やって・・・」  
「しっ!始まりますわよ。証拠が」  
微笑む西守歌の横でスクリーンに何かが映し出されている。  
「おい、これ何の・・・・・・・!?おまッ・・これさっきの・・・!」  
そこには先程のハプニングの映像が流されていた。いつ撮ったのだろう・・・  
「・・・お前これいつ撮った・・・?」  
「これですか?これは益田家の衛星で捉えた映像を送ってきてもらってるんですの」  
「え、衛星・・・そこまでやるか・・・?」  
「もちろん!権力は有効に使わなければ勿体無いでしょう?」  
微笑む西守歌を他所に俺は呆然としている。こいつの権力の大きさををまたもや思い知らされる事になったのだった・・・  
 
「涼様、もうお諦めになられてはどうですか?証拠もありますし、明鐘さんはきっとこの話を信じると思いますよ?」  
「・・・・分かったよ、もう勝手にしてくれ・・・」  
「あら、今日は珍しく諦めが早いのですね。もう少し粘ると思いましたが」  
諦めた方が身の為だと今回の件では感じていた、こんな事で明鐘との信頼関係を崩したくは無かったから。  
怒り無い、呆れてるだけだ。こいつ・・・分かってはいたが手強い奴だ・・・。  
「その代り、明鐘にはさっきの話の事を一切言うなよ?あと見せるなよ?それは分かってるだろうな?」  
「分かっていますわ。わたくし、約束は破らない主義ですから」  
微笑む西守歌。どーだか・・・ま、とりあえず明鐘に伝わるのが回避出来て良かった。今回はこいつに従うしか無いか・・・  
「ほら、さっさと済ませてくれ。俺もう上がりたいんだからな」  
「はい!ではここにお座りください」  
そーいえばいつのまにか黒服の連中が消えている、なんて手際の良い連中なのであろう。  
俺は指示された場所に座る、心臓が高鳴ってる。クソッ!何こいつ相手に緊張なんかしてるんだよ・・・!!  
とは言うものの、こいつも一応女の子だからな・・・ルックスもプロポーションも抜群だそれは認めよう。  
ただその代り性格が最悪だけどな。  
「んしょ、んしょ」  
そんな事を考えていると西守歌が俺の背中をタオルで洗い始めた。  
「かゆいところはありませんか涼様?」  
「あのな、背中洗ってる時に使う台詞じゃないぞそれ。普通頭洗ってる時に言うだろ」  
「いいじゃありませんか細かいところは。それでかゆい所は?」  
「別に無い、てかいつになったら終わるんだ?もういいだろう」  
もう10分は経ってる、もうそろそろ終わりだろう。  
「じゃあ俺出るから」  
そそくさと出て行こうとするがまたもやこいつはそれを許してくれなかった。  
「何だよ、もう用件は済んだはずだろ?手を離せ」  
「いいえ、まだわたくしの背中を涼様に流してもらっていません」  
「・・・はい?」  
その言葉に俺は唖然とする、何を言っているんだこいつは・・・?  
「ですから、わたくしの背中を涼様に流してもらっていません。流してくださいまし涼様」  
西守歌はバスタオルを取り俺に背中を向けて座り始めた。  
「お、おい!お前何やって・・・!」  
「後ろ向いていれば大丈夫でしょう?涼様だけ流してもらうなんてずるいです」  
「いや、そういう問題じゃ・・・ずるいって言われても・・・」  
「駄目ですか・・・?」  
うるうるした目で西守歌が見つめてくる。・・・・正直凄い可愛い。  
「だ、駄目だ!それは条件に無かったはずだ」  
「涼様・・・・どうしても・・どうしても駄目ですか・・・?」  
うるうる泣きそうな目で俺を見つめてくる。駄目だ・・・断れない・・・  
「わ、分かったよ・・・だから泣くなって・・・」  
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます涼様!」  
西守歌が俺に抱きついてきた、胸がやらなにやら色々なものが俺の肌に直接触れる。  
「でー!!ば、バカ!こ、こ、こっち向くなって!いいから後ろ向け後ろ!」  
「は〜い!」  
嬉しそうに後ろに向く西守歌。・・・こいつ・・・油断も隙も無い。  
それにしてもー・・・柔らかかったな〜・・・・・・  
・・・・はッ!何考えてるんだ俺、男の欲望丸出しじゃないか!!  
落ち着け、落ち着け涼。さっさと終わらせてここから出るんだ!  
俺は一呼吸置いて前を向いた  
「・・・・見えてる・・・」  
「へ?何が見えてるんですか涼様?」  
「え?あーいや何でもない!何でもない!」  
・・・後ろからでも微妙に見えてるんだよお前の・・・その・・・む、胸が!  
「涼様、先程からどうしたんですか?様子がおかしいですよさっきからブツブツと独り言ばかり言って。  
もしかして・・・・のぼせてしまったのですか!?」  
西守歌が再び体を俺の方に向けようとする  
「何でもない!何でもないからこっち向くな!いいな、絶対にこっちを向くな!」  
「・・・分かりました。体の調子が悪くなったらいつでも言ってくださいね?」  
「そんなになるまで長時間入る予定は無い!」  
ため息をつき西守歌の背中をタオルで洗い始める。結局その後西守歌のわがままを聞き10分程度背中を洗わされた。  
風呂に入って疲れる・・・・こんな事が普通ではありえる事なのか・・・・  
まったく・・・  
 
「疲れた・・・すっごい疲れた・・・」  
重い体を引きずって部屋へ戻る、風呂から出た俺はもうクタクタになっていた。西守歌のわがままを聞かされたのが原因だ。  
けど・・『涼様・・・・どうしても・・どうしても駄目ですか・・・?』あいつも・・・ああいう顔するんだな・・・・・  
さっきの西守歌のあの顔が頭から離れない。・・・可愛かったな、正直言って・・・・  
・・・はッ!ま、待て落ち着け涼!相手はあいつ、偽りの顔を作る事など造作も無い事・・・・きっとあの時のあの顔も偽りなんだ  
そうに決まってる!俺は・・・  
「俺は騙されないぞ!!」  
「何に騙されないんですか涼様?」  
「そりゃあ西ず・・・うわぁぁー!!し、西守歌!?お、お前いつからそこに・・・?」  
「いつからって、俺は騙されないぞーって言っていた頃からですわ」  
いつの間にかに西守歌が俺の部屋に来ている。余計な事ばかり考えていたから全然気づかなかった・・・  
「涼様涼様、何に騙されないのですか?」  
西守歌が俺の袖を引っ張ってくる、どうしても知りたいらしい。ったく・・教えられるわけないってのに  
「え?あのーあれだ、最近詐欺とか多いから騙されないようにしなきゃならんな〜なんて思ってたりしたわけで・・・・」  
「・・・・・・」  
じーっと俺の事を無言で見ている。バレてる・・絶対バレてるよこれ・・・  
「あの・・聞いてます・・?」  
「・・・・・まぁ、そういう事にしておいてあげますわ」  
んだとこの腹黒バカ女・・!!お前が理由聞いてきたから説明(嘘の)してやったのにノーリアクションかよ!  
やっぱりこいつは駄目だ・・・さっき言ってた事はやはり合ってたな。  
俺は握りこぶしを作りイライラを押さえていた。いくらなんでも男が女に手を出すわけにはいかない。  
それに手を出したらハルにも殺される・・・『いいな涼、男が女に手を出したらそれは恥だ。  
もしお前がそんな事をしてみろ。どうなるか・・・分かるよな?』なーんて事も言っていたし・・・  
「・・・様、・・・ょう様、涼様!」  
「え?あ、ああ何だ西守歌??」  
「もう、何だ?じゃありませんわ涼様。先程から呼びかけていますのに何の反応もないんですもの。」  
「いや・・・ちょっと考え事しててな」  
「考え事・・・ですか?涼様が考え事を・・・」  
驚いた様子でこちらを見ている。俺が考え事したらおかしいのかよ・・ったく  
「おい、俺だって考え事くらいする。そんなに驚く事ないだろう」  
「そんなお姿見たことがありませんでしたから・・・少し驚いてしまいましたわ・・・」  
「あーそうかい、もう用事が済んだか?済んだなら早く出てけ」  
しっしっと西守歌に手払いをする。とにかく一人になりたかったからだ  
「終わっていませんわ、これからが本当の用事です」  
「何だよまだあるのか?さっさと済ませてくれよ・・・」  
あくびをしながら頭を掻く、相当体が眠いと訴えているようだ。  
「で、何だよ用事って?俺に関係する事なのか?」  
「あ、はい。用事っていうのはその・・これです!」  
西守歌は何か本のようなものを俺の目の前で開いて見せてきた。いきなりだったのでそれとピントが合わない。  
ようやくピントが合いその書物が俺の目に映る。  
「1年数学問題集・・・・・何だこれ?」  
「そのまんまですわ。数学の問題集です」  
「いや、だからこれと俺に何の関係があるんだよ?俺はもう2年だぞ?」  
「それでいいんですわ涼様。2年生っていうことは当然ここの単元は終わっていますわよね?」  
「ああそりゃあ終わってるけど・・・だからそれがどうしたんだよ?」  
プルルルル一本の電話が鳴り響く  
「あ、しばしお待ちを涼様」  
ドタバタと電話に出にいく西守歌、誰だこんな時間に・・・?  
「涼様、明鐘さんからですわ」  
「明鐘から?」  
俺は電話を西守歌から受け取った。  
 
「もしもし、明鐘か?」  
「あ、兄さん?良かった・・・ちゃんと出てくれて・・・」  
「あのな、その言い方じゃ俺が死んじゃったみたいじゃないか」  
「だって西守歌ちゃんと二人きりだったから、もしもの事があってもおかしくはないでしょう?」  
確かに・・・納得できる  
「兄さん?」  
「ん?あ、ああそうだよな」  
「うん。あ、それより時間が無いからよく聞いてね」  
「え?何だ明鐘?」  
「明日燃えるゴミの日だからゴミ出しておいてね。それとご飯はちゃんと西守歌ちゃんと交代交代でやるんだよ?  
それと食材は買いだめしてるからそれ使ってね。それから明日新聞の集金が・・・・・」  
マシンガンのように多くの伝達が明鐘の口から俺の耳へ放たれる。もう何を言っていたか忘れてしまった・・・・・  
「それじゃあ兄さんよろしくね。あ、あと西守歌ちゃんと喧嘩ばかりしてじゃ駄目だよ?それじゃあ」  
「あ、おい明か・・・・切れた・・・」  
マイシスター・・・もう少し俺の話(愚痴)を聞いてくれても・・・・・  
今日の明鐘は少し冷たい気がした。  
俺は電話を置き部屋へ戻った。  
「明鐘さん、何て?」  
「俺にたくさんの伝達を伝えてきたよ。その後はそのまま切られちまった」  
「相当忙しいのですね明鐘さん。涼様への電話をすぐお切りになられるなんて・・・」  
修学旅行ってそんなに忙しいものだったか?・・・・まぁいいか、帰ってきたら明鐘が思い出話を沢山聞かせてくれるだろう・・・  
「涼様、さっきのお話の続きなのですが・・・」  
「え?あ、ああそうだったな。で、その単元が終わってないから何だって?」  
「はい。実はわたくしここの単元理解する事が出来なくて・・・・涼様に教えていただこうと思いまして」  
「・・・・ほんとに分からないのか?お前の言ってた高校って頭メチャクチャ良いお嬢様学校なんだろ?  
それくらい分かるだろ?」  
「さすがに独学では無理がありますわ。ですから涼様にお教えしてもらおうと・・・」  
「断る。今日は色々あって疲れたからもう寝る」  
冗談じゃない、こいつのわがままをそう何度も聞いていられるかよ  
「寝るって・・・まだ11時ですわよ?涼様いつも1時とか2時まで起きてらっしゃるではありませんか」  
「うるさいな、今日はもう寝たいんだよ。お前ももう寝ろ、寝る子は育つって言うだろ?」  
「ズルイですわよ涼様!それに・・・わたくしもう充分育っていますわ」  
「甘いな、それくらいまだまだ」  
ニヤっとし首を振る俺。まだまだと言っているが内心もう充分すぎるとか思ってたりする  
「むーッ!涼様だってまだまだじゃありませんか!」  
そう言うと西守歌は俺のアレを強く握ってきた。アレに電流が走る。  
「ぎゃッ・・!ば、バカ西守歌!おま、お前いきなり何を・・・!!」  
「さっき涼様もわたくしの胸を触られたではありませんか。これでアイコです」  
微笑む西守歌に俺はただ呆然とするばかりであった。コイツ・・・・  
「ば、バカ野郎!そういう問題じゃないだろうが!」  
「ではどういう問題です?あ、もしかして図星ですか・・?」  
「違う!お前の行為に文句を言ってるんだ!それに俺のはこれでも結構・・・・・」  
「そんなに怒らなくても、許嫁なのですからいいではありませんか。将来わたくしと涼様は体を重ねる事になるのですから  
そんな緊張しなくても。それに意外と小さいんですね」  
クスクス笑う西守歌、こいつに見下されてる感じがする・・・イライラを押さえられない  
「このッ・・・!」  
俺は西守歌を押し倒す。小さな声を上げる西守歌  
 
「いい加減にしろよ西守歌・・・人を馬鹿にするのもそれくらいにしたらどうなんだ・・?」  
「・・・・馬鹿になどしていませんわ、わたくしは涼様のそういうところも好きだと言っているだけでして・・・」  
「黙れ!お前にそんな風に言われても迷惑なだけなんだよ!毎日毎日俺につきまとわりやがって・・・  
そういう無駄な事をしてるから勉強も遅れるんだろ!」  
知っていた、西守歌が陰で勉強や色々な事に対して努力している事。それも含め俺はコイツの事が・・・  
けど・・・俺はそれをこいつへの批難の言葉として使ってしまった。  
「・・・わたくし、ここに来た時から涼様に嫌われていましたわよね・・・。知っていました、涼様に迷惑掛かけている事は・・。  
けど・・・けど!しつこいくらい涼様にしがみついていないと、振り落とされてしまう・・・!  
わたくしは!わたくしは涼様の事が大好きです!だから・・・涼様にわたくしの存在を・・・認めてもらうために・・・」  
「うるさい!お前の言い訳なんか聞きたくない・・・。出てけ!」  
「わ、わたくしは言い訳などで使ったわけじゃ・・・・」  
「出てけ!!」  
「・・・言い訳だと言われても仕方ないかもしれません・・・  
・・・・わたくしだって、こんな出会い方・・・したくなかった・・・。迷惑をかけたくなかった・・・。  
けど、そんな事を言ってもこうなってしまったから・・・もう仕方の無い事・・・だから、もうこうするしかなかった・・・!!  
そんなに・・・わたくしとの出会い方が気に入りませんか・・?  
そんなに・・・そんなにわたくしの言動や行為が気に入りませんか・・・・・?確かに迷惑はかけました・・・  
笑穂様や明鐘さん、美紀さん・・・涼様・・・多くの人に迷惑をかけた事は謝ります・・・・・。けど・・・  
こうでもしないと涼様はわたくしを相手にしてはくれなかった・・・!振り向いてくれなかった・・・!  
教えてください涼様!!どうすれば・・どうすれば振り向いてくれますか・・・?  
どうすれば好きだって言ってくれますか・・・?どうすればこれで終わりじゃないって言ってくれますか・・!!  
教えてください・・・教えてください!」  
俺にしがみついて泣きじゃくる西守歌・・・その涙は偽りではない・・分かった・・・  
けれど・・・分かっていたけれど・・・・  
「・・・出ていけよ・・・」  
「そんなにわたくしの事がお嫌いですか・・・!?そんなに・・・・そんなに・・・」  
「・・・・・・」  
そうだ、とはっきり言えなかった。言えばこいつとも終われる、けど・・・俺はこいつの事が・・・  
「・・・この、意地っ張り!!分からず屋!!バカ・・・バカ!!大嫌い!大嫌い!!」  
「くッ・・・調子に乗るな西守歌!好き勝手言いやがって!そんなに俺が嫌いなら出てけよ!  
この家から出てけよ!そうすりゃ何もかも終わってスッキリすんだろ!?」  
あれ?何言ってるんだよ俺・・・そうじゃないだろ・・・俺は・・・俺は西守歌の事が・・・  
バチンッ!!  
平手打ち・・・こいつが俺を・・・・?  
「バカ!大っ嫌い!!」  
走って出ていく西守歌。止めたかった・・・けど俺は・・・・俺は止める事が出来なかった  
心無しに罵倒してしまった・・・あいつは自分の気持ちを素直に出していた・・・  
俺はどうだ?これが俺の気持ちか・・・?違う・・・こんなの俺の気持ちじゃない・・・  
いつの間にか、俺もあいつの事ばかり考えてた・・・想っていた・・・押さえきれないほど好きになっていた・・・!  
俺は・・・バカだ・・・偽っていたのは俺のほうじゃないか・・・  
変わらなきゃ、素直に・・ならなきゃ・・・自分の気持ちに・・・  
「西守歌・・・西守歌!」  
俺は勢いよく家を飛び出した  
 
「くそっ・・・・どこ行ったんだよ西守歌のやつ・・・!!」  
すぐに西守歌を追って外に出たがもう姿は無かった。外は暗闇につつまれ、数メートル先すらかすれて見える。  
その後俺はあても無く西守歌を探し続けた。がむしゃらに走り西守歌を追いかけた。  
けど、結局あいつを見つけ出す事は出来なかった・・・  
 
「ん・・・朝か・・・・」  
朝日が俺の顔を照らす、そのまぶしさに耐えられず俺は起き上がり部屋を出た。顔を洗いリビングに行き朝食を作る。  
いつもと同じ日常・・・けど、どこか寂しい・・。分かってるけど口には出したくなかった・・・・  
「そういや・・・今日は明鐘が帰ってくるんだったな・・・」  
ふとそんな事を思い出し思わずため息をする。なんて説明しよう・・・・  
結局明鐘への説明のしかたも思いつかずいつものように学校へ向かう。  
「涼〜!!」  
「・・・・・」  
「ちょっと、聞いてるの涼!」  
「え?あ、ああよう美紀・・・」  
「よう美紀、じゃないわよ。どしたの?元気ないじゃない、それに西守歌ちゃんは?」  
「いや、実は昨日さ・・・・」  
俺は美紀に昨日のあった事をすべて話した。  
「そっか・・・西守歌ちゃん出ていっちゃったんだ。それで今日は一緒じゃなかったのね、なるほどなるほど・・・  
で、あんたはどうするわけ?」  
「どうするって・・・?」  
「西守歌ちゃんよ、追うの?追わないの??」  
「べ、別に俺はあいつの事なんかなんとも・・・・」  
「素直じゃないわね〜あんたも。こういうときくらい素直になったらどうなの?西守歌ちゃんの事  
好きなんでしょ?」  
「俺は別に・・・」  
「好きなんでしょ!」  
「は、はい・・・・!」  
美紀に圧倒されとうとう俺は本音を吐いてしまった。けど・・・本音を吐いたおかげで楽になった気がする  
「分かった、協力してあげるわ」  
「悪いな、こんな事手伝ってもらっちゃって」  
「いいのいいの、幼馴染でしょ?あ、その代り・・・」  
「その代り?何だ?」  
「お昼2週間おごりね♪」  
微笑む美紀、まったくこいつは・・・・  
「1週間にしてくれ」  
「駄ー目、2週間」  
「・・・分かった、2週間でいい・・・」  
「さっすが涼君!話が早い♪これで交渉成立ね♪」  
「はぁ・・・そりゃどうも」  
結局俺は美紀の要求を呑み、西守歌探しを手伝ってもらう事になった。  
 
俺たちは雑談をしながら学校に向う、内容はもちろんあの事だ。  
そうこうしているうちに学校に着いた。いつもと同じ下駄箱に靴をしまい、いつもと同じ教室に向かい  
いつものと同じ席につく。  
「お早う水原」  
「お、おうお早うお嬢・・・」  
「・・・・どうかしたのか?何だか元気がなさそうだが・・・」  
「笑みりーん!その理由、知りたい・・・?」  
黒い笑みを浮かべる美紀、こいつ人が困ってるのに・・・楽しんでるのか?  
「おい、別に言わなくても・・・」  
「いいじゃない、言っても減るもんじゃないでしょ?♪」  
「いや、そういう問題じゃないだろ」  
「水原、私には教えてくれないのか?守屋には教えて私には教えない、これは私と水原の関係はその程度  
だったという風にとってもいいという事か?」  
「あ、いや・・・そういうわけじゃなくて・・・」  
「なら、どんなわけだ?」  
「どんなわけって言われてもこれはだな・・・その・・・」  
「無いのだろう?」  
「・・・無い」  
「なら教えてくれてもいいだろう?」  
「分かった、分かったよ・・・お嬢には敵わないな・・・」  
俺はお嬢にも美紀と同じように昨日あったことをすべて話した  
「なるほど・・・だから今日はやけに静かだったのか・・・」  
「ああ、そういう事だ・・・」  
「でもまさか水原があの子を好きになるとはな、正直言って予想外だったよ」  
「でしょでしょ!まさかあんだけ嫌がってた涼がね〜」  
「うるせーなくそ・・・!」  
こんな感じでお嬢と美紀に冷やかされた。美紀はともかくお嬢まで・・・さっきの事を怒ってるんだろうか・・・?  
 
学校が終わり早速俺たちは西守歌を探し始めた。だがあてもないため探すのは困難だった。  
「そういえば西守歌ちゃんって前は山葉女子にいたんだよね?」  
「ああ、あの超お嬢様学校出身だったらしい。前に自分で言ってたから確実だ。で、それがどうかしたのかよ?」  
「あんた、そこに行った?」  
「いや・・行ってない・・・」  
「行きなさい、可能性が一番高いのはあそこしかないじゃない」  
「守屋の言う通りだ。いなくなったっていう事はおそらく自分の家へ帰ったのだろう・・・  
元の学校に戻ったというのは可能性が非常に高いと私は思う」  
「確かにそうかもしれないな・・・・・」  
「もちろん行くんでしょ?」  
「・・・まだこの事を明鐘に話してない、話終わってから考えるよ・・・」  
「そっか・・・それが一番かもね・・・行くのあんたなんだから、しっかり考えなさいよ?」  
「私も守屋に賛成だ、しっかりと考えて結論を出せばいい。出た結論に間違いはないはずだからな」  
「ああ、そうするよ。悪いな色々と。」  
俺は二人にお礼を言い家に向かった。  
「西守歌・・・」  
外はもう薄暗くなっており、冷気に包まれていた・・・  
 
「そっか・・・西守歌ちゃん、出て行っちゃったんだ・・・」  
俺は帰ってきた明鐘にすべてを話した。どういう理由で出て行ったか、それと・・・・今の俺の心境も正直に話した  
「兄さん、西守歌ちゃんの事・・・好きだったんだね・・・・」  
「・・・ああ」  
「いつから好きになったの・・・?西守歌ちゃんの事、あれだけ嫌い嫌いって言ってたのに」  
「俺もよく分からないんだよ、気づいたら・・・あいつを好きになってた・・・」  
そう、自分でもなぜだか分からない。なぜあいつを好きになったのか・・・当然明鐘にも分かるはずが無かった  
「そうだよね・・・そういうのって、自分でも分からないうちになってるんだよね・・・」  
「都合良いよな俺って・・・ずっと嫌いだ嫌いだって言ってたのに、今になって好きですだなんて・・・・  
ほんと都合良いよな・・・」  
「ううん、そんな事ないよ。それも兄さんっぽくて、私は良いと思う・・・」  
「な、なぁ明か・・・」  
「私も好きだったんだ、兄さんの事・・・・」  
「え・・・?ど、どうしたんだよ急に・・?」  
「本当だよ。ずーっと前から・・・西守歌ちゃんや笑穂さん・・・二人とも綺麗で私なんか敵いっこないって分かってた。  
それに、私と兄さんは血は繋がって無いけど兄弟関係・・・。届かない、実らない事は分かってた・・・だけど・・だけど  
諦めたく無かった・・・!私も兄さんの事が好きだったから!私も、兄さんの事が・・・・」  
溢れる水滴が明鐘の頬をつたう・・・俺は、明鐘をそっと抱き寄せた・・・  
「明鐘・・・お前は俺にとって一番大切な存在だ。お嬢や美紀、西守歌・・・どんなやつよりもお前が一番だ。  
いつも明るい笑顔・・・毎日作ってくれたご飯・・・会話・・・全部、全てが俺にとって大切だ。  
こんなにも仲の良い兄弟、絶対他にはいないぜ?周りのやつらはおかしいとか言うけど俺はそんな事思っちゃいない。  
むしろそれは、唯一俺が他人に自慢出来る事だ。それはこれからもずっと変わりはしない、永遠にな・・・」  
明鐘への素直な気持ち、嘘は一つも無い・・・恥ずかしいがどうしても言ってやりたかった。俺が何でも素直に話せるのは・・・  
明鐘だけだったから・・・今も・・・昔も・・・  
「だから、泣くのは止めようぜ。俺は、明鐘の泣き顔より笑顔の方が好きだぞ?な?」  
「無理だよ・・・兄さんにそんな事言われたら・・・笑顔なんて・・・出来ないよ・・・」  
明鐘は一晩中涙を流していた。俺は、そんな明鐘を抱きしめて撫でてやった。泣きじゃくる明鐘に優しく、優しく・・・  
 
結局、明鐘が寝付いたのは夜中の3時頃。俺は涙を流す明鐘を泣き止むまで抱きしめていた。  
「明鐘・・・ごめんな、俺のわがままで・・・」  
俺は寝付いた明鐘の傍でポツリと呟き明鐘の部屋を出て行き、俺も倒れ込むように寝床についたのだった・・・  
 
朝が来たようだ、カーテンの隙間から光が差し込んでいるのが分かる。結局あまり眠れず終い。明鐘、そして西守歌の事をずっと考えていたから・・・・  
重い体を無理矢理起こしていつものようにリビングに向かう。明鐘はもう起きているらしく朝食の用意をしていた。  
「おはよう兄さん」  
「おはよう明鐘、もう飯出来てるのか?」  
明鐘はいつもと変わらず元気な笑顔で俺を迎えてくれた。数時間前までは泣きじゃくっていたとは思えないくらいに  
「な、なぁ明か・・・」  
「私ね、兄さんの事応援してるから♪」  
「え?お、応援・・・?」  
「うん!兄さんが西守歌ちゃんの事を言葉じゃ表せないほど好きだっていう事、とても良く分かったよ。ちょっと悔しいけど・・・けど私は兄さんが好きな人と結ばれて  
幸せになって欲しいの。だから絶対、ぜーったい!西守歌ちゃんを連れ戻してこなきゃ駄目だよ?西守歌ちゃん可愛いからボーっとしてたら他の人に取られちゃうからね?」  
「明鐘・・・・!」  
「それと、兄さんが私の事をすごく大切にしてくれてる事も分かったよ・・・?これからもずっと、私の兄さんでいてくれるよね・・・?」  
「バカ、当たり前だろ」  
俺は思わず明鐘を抱きしめた。抱きしめずにはいられなかった・・・  
「うん・・・ありがとう兄さん・・・」  
俺たちは数十秒だけだが身を寄せ合った。お互い、言葉を交わさずとも分かる気持ち・・・お互いの気持ちが分かるからこそ信頼しあって過ごすことが出来た・・・  
明鐘は、俺にとって最高の、そして一番信頼出来る唯一の存在だという事をもう一度心の中で実感していた・・・  
「・・・そろそろ朝ご飯食べよっか?」  
「ああ、そうだな・・・って明鐘時間!!」  
「へ?・・・あー!!ち、遅刻・・・遅刻しちゃうよ!」  
「急げ!行くぞ明鐘!」  
「で、でも朝ご飯は!?まだ食べてないよ」  
「んな事言ってる場合か!今日の朝は我慢しろ、ダイエットだと思って」  
「もう兄さん失礼だよ!私そんなに太ってないもん!」  
「冗談だよ冗ー談、とにかく行くぞ急げ」  
「うう・・・せっかく作ったのに・・・」  
「心配すんな!帰ってきたら俺が全部食ってやるから」  
「ありがと兄さん♪あわわこんな時間・・・じゃあ兄さんお先に!」  
「え?あ・・お、おい待てよ明鐘ー!!」  
俺たち兄弟の信頼関係はさらに深まる事が出来たようだ。もうこれ以上上は無いくらいに。  
 
 
「・・・西守歌お嬢様、お見合いの準備が整いました」  
「・・・・・・」  
「簡単に相手の概要を・・・」  
「ごめんなさい、今は、一人になりたいの・・・・・」  
「・・・分かりました。では失礼します」  
 
時間が残されていない・・・俺は、まだ気づけずにいた・・・  
 

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