「なるほどね、それじゃあ一応鐘ちゃんも納得してくれたんだ」  
「一応じゃない、一応は余計だ美紀。明鐘はそんな中途半端な気持ちで納得したわけじゃなくてだな・・・・」  
「あーはいはい、分かったから。朝からあんたと鐘ちゃんの仲良し兄弟ドラマ聞いてるほど私も暇じゃないのよ」  
「あのな・・・俺はお前にちゃんと説明を・・・・」  
俺の言葉はまたも美紀によってさえぎられる  
「次!本題に入るわよ涼。余計なおしゃべりは終わり!西守歌ちゃんの所には行ったの?」  
「え?あ、いやまだ行ってないんだよ・・・何かタイミング掴めなくてさ・・・」  
「タイミング〜〜??そんなもん待ってたらラチがあかないじゃない!今のあんたの場合、待たずに攻めなきゃ駄目なのよ。  
まったく、情けない奴ねあんたは・・・」  
「ごもっともで・・・。けどまだ心の準備っていうか・・・気持ちに整理がついてないっていうか・・・」  
「まだそんな事言ってるの?はぁ・・・ちょっと笑り〜んこっち来てくれな〜い?」  
美紀の言葉に答えお嬢が俺と美紀の会話の輪に入ってくる。美紀の応援部隊ってとこだな・・・  
「何だ守屋、私に何か用か??」  
「そうなのよ、ちょっと笑りんにも涼に言ってくれない?キツイ一言を・・・」  
そう言うと美紀は今まで話していたことをお嬢に把握させていった。  
今度はお嬢に説教されるようだ・・・  
「成る程。水原、相変わらず優柔不断なようだな。お前は女心・・・いや男女問わずに人の気持ちを理解出来てないようだな。」  
「人の気持ち・・・?な、何でそんな事が言えるんだよ。根拠でもあるのかよ・・・?」  
「はぁ・・・水原、普通に考えてみろ、どんなに芯の強い人間でもちょっとした事で折れてしまうんだ・・・西守歌の場合  
お前との口論でお前に言われた一言で芯が折れてしまったんだ。恐らくかなり傷付いたのだと私は思う。そしてそれはもう一週間も前の話・・・  
彼女の傷はお前にしか癒す事が出来ないんだ水原。それなのにお前は自分の都合が悪いのを理由に彼女の所へ行くのをためらっていた。彼女とて女の子、  
しっかりしていて強気な性格だが、まだお前より年が一つ下の幼い女の子なんだ。手遅れになる前に行ってやれ、じゃないと・・・彼女の傷はもう一生  
癒す事が出来なくなってしまうかもしれない・・・言い方が少々きつくなるが・・・水原、お前の優柔不断な性格が彼女を苦しめているんだ。  
そういう事をしっかりと理解出来ないのであれば・・・お前が彼女に会う資格は無いと私は思う。  
・・・・・・自分勝手な事ばかり言ってすまなかったな。」  
「笑りん・・・・」  
お嬢は自分の席に戻っていった。お嬢に言われた言葉、それは当然な事であるのは必然・・・今まで気付かなかった自分に苛立ちを覚えた・・。  
結局俺は、自分の気持ちばかり主張してあいつの気持ちを理解しようとなんてしてなかったんだ・・・!  
自然と拳に力が入る。俺は・・・バカだ・・・・  
「きっつい事言われたわね〜涼。泣きそう?」  
「バカ言え、お嬢のいう事は正論だ。返す言葉もない」  
「そう・・・。ま、うだうだとしてないでスパっと決めろって事でしょ。私も笑りんにさんせ〜い!  
後は・・・後はあんた次第よ涼?」  
「・・・俺、ちょっと行って来る。サンキュー、お嬢!美紀!」  
そう言うと俺は教室を勢い良く飛び出した。不思議にもう迷いは無く、なぜかスッキリしたというような感覚さえある。  
「ちょ、ちょっと涼!?行くって急に何を・・・」  
「守屋、水原が決めた事だ。私たちが口出しする事じゃない。」  
「はぁ・・・まったくあのバカいつもいきなりなんだから・・・・」  
「それも水原の特徴だ、そうだろう?」  
「・・・うん、それもそうね!ちゃんと決めてこなかったらとっちめてやるんだから!」  
「ああ、勿論だ。  
・・・・・さぁ見せ場だぞ、水原・・・・」  
「西守歌・・・・!!」  
俺はがむしゃらに西守歌の元へ走っていく。もう頭にはあいつのことしか・・・無い。  
 
「ここが山葉女子学園・・・西守歌の通ってる学校か・・・」  
あまりの大きさに圧倒されつつも入るのに躊躇していた。けど・・・俺に躊躇してる暇なんてない・・・!  
「行くぞ・・・!」  
校舎内に足を踏み入れようとしたその時、不意に誰かに声を掛けられた。  
「あの・・・どちら様でして・・・?」  
この学園の生徒のようだ。年は俺よりも上のように思える。  
「や、えっと俺は・・・その・・・」  
不意の事に動揺し言葉が詰る。口調を整え彼女に自分が何者なのかを説明し始める。  
「俺は・・・西守歌に・・・この学園の女子生徒の益田西守歌さんに用があって来たんです」  
「西守歌ちゃんに・・・?・・・!あなたまさか・・・西守歌ちゃんが言ってた許嫁の・・・!?」  
「知ってるんですか・・・?俺を」  
「もちろんよ。あなたの事はよく西守歌ちゃんに聞かされたわ、優しくて格好よくて、それに料理も出来て私の理想の男性  
ですわ、ってね。見た感じ西守歌ちゃんの言ってた事に共感出来るわ。・・・それで、用っていうのは?」  
「や、ちょっと話さなきゃいけない事があって・・・」  
「喧嘩した時のの事謝りに来たの?」  
ドキっと心に衝動が伝わる。同時にあの時の自分を思い返し、情けなく、また自分への怒りが込みあがってきた。  
「ええ・・・西守歌に聞いたんですか・・・?」  
「そう。西守歌ちゃんが急に学園に戻ってきたからビックリしちゃってね、それになんだか元気なさそうだったから  
何かあったの?って聞いてみたのよ。けど西守歌ちゃん、教えてくれなくてね。けど、この前話してくれてね。  
君との口論の事とか全部・・・全部話してくれたの。あなたに言われた言葉、相当ショックだったらしくて話してる最中に  
泣いちゃったのよ。それだけあなたの事を思ってたのね・・・・・。」  
「そう・・だったんですか・・・」  
心が酷く痛む。西守歌を傷つけてしまった自分が許せなかった。なぜあの時俺は・・・・!  
「俺が悪いんです・・・俺が・・・」  
「けど・・・西守歌ちゃん、あなたの悪口何も言ってなかったわ。自分があなたに迷惑掛けちゃったから、だから怒るのも当然。  
不甲斐ない自分が情けないです。けど、一杯思い出を残してもらいましたってね。満面の笑みで言うから、偽りじゃ無いと思うの・・・。」  
「・・・・・西守歌は、今どこに・・・?」  
「実はね・・・その一軒以来学園に来てないのよ。今日も欠席なの・・・」  
「そう、ですか・・・・」  
心の痛みが止まらない・・・もう、駄目なのか・・・・  
「西守歌ちゃんにどうしても会いたいの?」  
「ええ・・・会って謝りたいんです。後、ケジメもつけたいんです・・・・」  
「なるほど・・・・」  
すると彼女は自分の鞄をあさり始めた。  
「えーっとどこに閉まったっけなー・・・・あった、これこれ・・・はい、これ受け取って」  
地図のようなものが渡される。この周辺の地図のようだ。  
「これは・・・?」  
「それはね、西守歌ちゃんの家までの地図よ。あなたの気持ち、充分伝わってきたわ・・・・だから、私はあなたを手伝う・・・。  
好きなんでしょ?西守歌ちゃんの事・・・・」  
「・・・・はい・・・・」  
「うん。その気持ちに嘘はないわね?後は・・・あなた次第。私が手伝えるのはこれくらい・・・」  
「あの・・・なぜ俺に手助けを・・・?今さっき会ったばかりなのに・・・」  
「そんなの簡単よ。私も西守歌ちゃんが大好き。あの子には笑顔でいてほしいから・・・・」  
「俺、行って来ます・・・!色々とありがとうございました・・・・」  
「うん。あ、もう傷つけちゃ駄目よ?」  
「当然ですよ」  
俺は地図を頼りに歩み始める。西守歌はすぐそこだ・・・  
空模様が怪しくなって来た・・・やがて、大粒の雨が降り始める・・・  
それは、悲しそうに・・・誰かが流している涙のようにも思えた・・・・  
悲しみは突然やってくる・・・・それはまるで、夏の夕立のように・・・・  
 
 
 
「西守歌お嬢様、そろそろお時間です」  
「・・・分かりました・・・すぐ、向かいます・・・」  
「涼様・・・・」  
 
 
「西守歌・・・・!」  
 
 
 
もう日が沈んでいた。  
「あれがあいつの・・・・」  
遠く離れたこの場所からも大きなお屋敷が目に入る。大きな門の前にSPの連中が門番として立っているのもうかがえる。  
「簡単には入れそうもないな・・・・・お嬢の時よりキツそうだ。  さて、どうするかな・・・・」  
あの見張りの目を盗んでここに入るのは難しい。かと言って入らせてくださいと言っても俺とあいつとのいざこざを知ってるからきっと追い返されてしまう・・・・  
「・・・・ん?あれは・・・」  
屋敷は大きな塀で囲まれているがその一部に小さな長方形の穴が空いているのに気付いた。なぜ空いてるのかは分からないがチャンスだ、あそこを通ればバレずに入れそうだ。  
「よし、行くぞ」  
俺はさっそく行動に移した。穴はホフクすればなんとか通れそうだ。  
「こんなとこ、ハルに見られたら殺されるだろうな」  
などとくだらない事を考えつつもようやく穴を通り屋敷内に入る事が出来た。  
「さてと、これからどうするかな・・・そういやさっきもらった地図に屋敷の地図もあったな。」  
ポケットから地図を取り出す。どうやらこの建物は5階立てらしい。その5階に西守歌の部屋があると記されている。  
「5階か、前のお嬢みたく塀を登ってくのは無理だな・・・。屋敷に入って行くしかないか」  
納得したように軽く頷き地図をポケットにしまう。どうやって屋敷に入るか、それが一番の難所だった。  
「さてどうするか・・・・・あれ?この窓、鍵が開いてるじゃないか!」  
俺は複数ある窓の一つに鍵が掛かってない窓があるのに気付いた。それにしても無用心なとこだ・・・まあ今の俺にとっちゃ好都合だが。  
「今日は運が良いな、神様サンキュー!」  
神様などという空想の存在に感謝しつつ窓から屋敷内に入る事に成功した。どうやら物置きのようだ。後は見つからずに5階に行くだけ、こういうのは意外と得意分野だ。  
こんなのが得意だなんて、怪しい人にしか思えないが・・・。  
「誰いないな・・・よし」  
物置きのドアをゆっくりと開け誰もいない事を確認すると隠れながら階段に向かう。  
SPの連中の目を盗みながら西守歌の部屋に向かう。  
何度も見つかりそうになりつつもバレずに5階に到達した。  
「よし・・・後は西守歌の部屋に行くだけ・・・」  
「おい!貴様何をしている!!」  
後ろから大声で叫ぶ声がする。SPにバレてしまったようだ。  
「しまった・・!!くそッ!!」  
俺は全力で走り追っ手をまこうとする。しかし振り切れない。  
「チックショ!さすがあいつんとこの護衛だぜ!」  
「不審者を発見した!不審者は今3階を逃走中、至急応援を頼む!お嬢様の部屋の前を固めろ!!」  
「これじゃ捕まっちまう!どうする・・・考えろ、考えろ・・・」  
突き当りを曲がった所でふと部屋の扉が目に入る。  
「あれだ!」  
俺は勢い良く部屋の扉を開け中に入る。突き当りで死角になったおかげで連中も俺を見失ったらしい。  
「クソッ!どこに行った!探せ!必ず探し出すんだ!」  
「ふぅ・・・って、安心してる場合じゃないな・・・じきにここに誰か来るはず、それまでに逃げないと・・・」  
部屋を見渡す。しかし逃げられそうにないようだ。唯一逃げられそうなところは・・・  
「これしかないか・・・」  
窓を見つめ小さく呟いた。  
「やるしかないな・・・よし」  
窓を開け下を見下ろす。ここは5階、高さは充分にある。  
「こりゃお嬢の時より怖そうだ・・・」  
そう呟くと窓に足をかけ外に出た。外壁をつたって進んでいく。下では慌しいSPの連中がうかがえる。  
「頼むからこっち見ないでくれよ・・・!」  
心の中で祈り壁伝いに進んでいく。数メートル先に窓が見える。今回は鍵が開いていない様子だ。  
「とりあえずあそこまで行くしかないな・・・後はそれから考よう・・・」  
風が吹き荒れる中、足を踏み外さないように進んでいく。  
ようやく窓にたどり着き、そっと窓から室内を覗いてみる。  
「あれは・・・!」  
室内には西守歌の姿があった。こちらに背を向け座っているのがうかがえる。  
「西守歌・・・!やっと、やっと見つけたぞ・・・!」  
俺は心の底から嬉しさがこみ上げてきた。西守歌がすぐそばにいる・・・!  
「よし・・・落ち着け、一旦落ち着くんだ涼・・・」  
感情を抑え一度冷静なる。そして窓をコンコンと軽くノックする。しかし気付かなかったようだ。  
「あれ・・・よしもう一回」  
再び窓をコンコンとノックする。さっきよりも強めに何回も。  
「ん?今何か・・・」  
音のする方に向いてみる。そこに・・・そこには笑顔で笑っている涼の姿があった。  
「やっと気付いたか・・・」  
「涼様・・・!涼様!」  
西守歌がこちらへ走ってくる。口の動きで俺の名前を呼んだのが分かる。  
「涼さ・・うむッ!」  
「シー、静かに。バレたらマズイんだよ」  
西守歌の口を塞ぎ声を遮断させる。  
「とりあえず中に入れてくれ。それから話すから」  
コクコクと頷く西守歌。俺は西守歌の手を借りて室内へと入っていく。  
「ふぅ〜、侵入成功っと」  
 
などと言っていると西守歌が抱きついてきた。  
「涼様・・・!涼様・・・!!」  
目に涙を溜めているのが分かる。その姿に何とも言えない感情が込み上げてきて、西守歌をぎゅっと優しく抱きしめる。  
「ごめん・・・本当にごめんな・・・。」  
「うっ・・・うっ・・・涼・様・・・」  
俺の胸で泣きじゃくる西守歌。それから俺たちはしばらくの間無言で抱きしめ合う。  
しばらく西守歌が落ち着くのを待った。  
「グスッ・・・・ごめんなさい、もう・・大丈夫です」  
ニコっと微笑んで見せる西守歌。  
「あ、あのさ・・・その・・・ごめん!!俺、お前の気持ちとか全然考えてなくてさ。都合良いかもしれないけど・・・どうしても謝っておきたくて・・・」  
「謝らなくていけないのは私の方ですわ涼様・・・。勝手な事ばかり言って、迷惑一杯掛けて・・・・涼様が怒るのも無理はありませんわ・・・ごめんなさい・・・」  
「そんな事無い!俺はお前に迷惑掛けられたなんて思っちゃいない。お前が・・・西守歌が謝る必要は無い」  
「涼様・・・初めて、初めて頼まずとも名前で呼んでくれましたね・・・・」  
「え?あ、ああまあな。結構恥ずかしいんだぞ実は」  
顔を赤くし顔をそらす涼。それを見て西守歌は笑みが止まらなかった。  
「久しぶりにこんなに笑った気がしますわ、やっぱり笑うっていいものですわね・・・」  
「お嬢様」  
「・・・!」  
「しっ!静かに!  はい、何でしょう?」  
「そろそろお時間です、お相手の方もお見えになってるのでお急ぎを。それから、不審人物がこの屋敷にもぐりこんでるので部屋を出る時は必ず言ってください。  
お一人では危険ですので」  
「分かりました。すぐ向かいますわ」  
「お、おい西守歌、相手って・・・一体何の話だ・・・?」  
「・・・・・・」  
「西守歌・・・?」  
「・・・実はわたくし、お父様にお見合いをしろと言われまして・・・今日がそのお見合いの日なんでわ・・・」  
頭の中が真っ白になるくらい驚いた。突然の事に言葉が詰る。  
「なっ・・・そんな・・・」  
「けど、最後に涼様とこうやってお話できて・・・会えてとても、とても嬉しかったですわ・・・これからも・・・」  
「最後なんかじゃない!!」  
「涼様・・・?」  
「それは・・お前が望んだお見合いじゃないんだろ・・・?政略結婚ってやつなんだろ・・・?」  
「それは・・・」  
「なら、なら行くぞ西守歌」  
「え・・?行くって、どこに・・・?」  
「決まってんだろ?逃げるんだよ」  
西守歌の手をぎゅっと握り得意げに笑ってみせた。もう、この手を離さない・・・  
「無理ですわ逃げるなんて!こんなに見張りや黒服の方々いたら・・・あのお父様から逃げるなんて無理です!それに・・・涼様にはもう迷惑は掛けれません・・・」  
「迷惑・・・?」  
「笑穂様の時のように私を助けるために、政略結婚を止めさせるためなんですわよね・・・?」  
「バーカ」  
俺は西守歌に軽く口付けをする。不意の出来事に西守歌も驚いた様子だ。  
「りょ、涼様!?何を・・・」  
「お前が好きだから言ってるんだよ、逃げようってな。好きじゃなきゃ俺のファーストキスはやらなかったぜ?  
逃げて、逃げて・・・捕まりそうになっても、どんな事があっても俺はお前を離さない。それが、今の俺の本当の・・・嘘偽り無い純粋な気持ちだ・・・」  
「涼様・・・ありがとう・・・ございます・・・!」  
涙を流す西守歌、俺は優しく抱きしめてやる。  
「泣くな、らしくないぞ?」  
「うっ・・・うっ・・・・」  
「西守歌、時間が無い。行くぞ」  
「待ってください!」  
「どうした・・・?」  
「その・・・もう一回・・もう一回だけしていただけませんか・・・・?」  
「西守歌・・・・」  
再び俺と西守歌は唇を重ね合う。さっきよりも長く、激しく・・・・  
「・・・・・」  
「・・・・・」  
「行くぞ!」  
「はい!」  
俺と西守歌の愛の逃亡作戦が始まりを告げた。  
 
「涼様急ぎましょう、また黒服の方々がここに様子を見に来るはずでからそれまでにはここを出ないと」  
「そうだな、急ごう。しかし、どうやってこの警戒網を潜り抜けるか・・・・・やっぱり窓からロープか何かで下に降りるしか方法は・・・」  
「そんな危ない方法を使わなくても大丈夫ですわ涼様」  
「何?何か方法があるのか?」  
「一つだけ方法がありますわ、ちょっと待っていてください」  
すると西守歌は本棚の本を一冊傾けてみせた。すると驚いた事に一部の壁が反転し、奥に進めるようになっている。まるでカラクリ屋敷だ。  
「これは・・・・」  
「これは私が自分で取り付けた隠し通路ですわ。もちろん私が自分で取り付けましたので黒服の方々はもちろんお父様ですら  
こんな隠し通路がある事は知りませんわ」  
得意げに微笑んでくる西守歌。まったく、ぬかりのない奴だ  
「しかし、どっかで見たことある光景だな・・・・」  
「えへへ、某映画を真似て作ってみましたの」  
「なるほど、どうりで見たことある訳だ・・・・・って、んな事言ってる場合じゃないな。よし、此処を使って脱出しかないな」  
「こんな事もあろうかと作っておいて正解でしたわ」  
「はいはい、初めてお前のくだらない物が役に立ったな」  
「あー!酷いですわ涼様!わたくしが一生懸命作ったのに・・・・」  
「分かった分かった、分かったから行くぞ西守歌」  
「ムー!最近それで流されてばっかりな気がしますわ!」  
などとぶつくさ文句を言っている西守歌、いつのまにか俺とこいつは打ち解けていたのだった。  
「狭いな・・・仕方ない一人ずつ行くしかないか。西守歌、先に行ってくれ、俺は道が分からないからな」  
「了解ですわ!」  
ビシっと敬礼をし四つん這いになって小さな入り口の隠し通路に入っていく。その後に続き俺も隠し通路に入っていった。  
しかし一つ問題が起きた。西守歌はお見合い用の服を着替える前だったのでスカートを身に着けている状態だったのだ。  
そのため俺の視界一杯に西守歌の下着がどアップで映し出されてしまっていた。  
「西守歌、ちょいストップ。一旦出てくれないか?」  
「え?なぜですの涼様?後戻りしている時間はありません!一刻を争う状況なんですから!」  
「・・・・いや、しかしだな・・・」  
「行きますわよ涼様!」  
西守歌は俺の言葉にまったく耳を貸そうとせずどんどん先に進んでいく。・・・仕方ない、なるべく前を向かないように進むしかないか・・・  
「・・・分かった、お前の言う通りだ。先を急ごう」  
俺は下を向きながら西守歌の後についていった。時折俺たちの上を人が通りミシミシと今にも崩れ落ちそうな嫌な音がする。  
「・・・なあ、ここ崩れたりしないよな・・・?」  
「う〜ん・・・多分大丈夫だとは思うんですけど・・・・なんせわたくしが一人で作ったものなので、そこまで入念なチェックはしていませんから  
なんとも言えませんわ」  
「ははは・・・そう・・なんだ・・・」  
面白可笑しそうに返答してきた西守歌に気落ちした。ここの安全性はもう信用できそうに無い。もしかしたらここが崩れて生き埋めになって死んでしまうかもしれん。  
ああ・・・そうしたらどうしよう・・・明鐘にお嬢に美紀、それから百合佳さんにハル・・・・は悲しんでくれなさそうだな・・・・・ああ・・みんな〜・・・  
などとくだらない妄想を膨らませていると俺の顔に何やら柔らかい感触が伝わってきた。  
「あ〜、柔らか〜いな〜・・・・・じゃなくて、何だこ・・・・・げッ!」  
「いや〜ん涼様!こんなところで・・・わたくしまだ心の準備が・・・・」  
「ち、違・・イテッ!!」  
ゴツン!!と勢い良く頭部を天井にぶつけてしまった。強烈な痛みが俺の頭部を襲ってきたため思わず声を上げ痛がる俺。  
「おい、今何か声がしなかったか?それに大きな音もしたぞ」「ああ、俺も聞こえた。まさかこの下に・・・・?」  
「何してるんですか涼様!お静かに!気付かれてしまいますわ!」  
「イテテテ・・・・わ、悪い・・・」  
頭がフラフラする。相当強くぶつけたらしい。  
「今ので気付かれてしまったかもしれませんわ。急ぎましょう涼様」  
「お、おお・・・・」  
頭がフラフラしつつも俺は西守歌に着いていった。フラフラガ治ってきた時、ようやく出口にたどり着いたようだ。  
 
「涼様、着きましたわよ」  
「よ、よし!早速ここから出よう」  
西守歌に続き俺が外へと出る。無事に出れて何よりだった。  
「死ななくて良かった・・・・もうこれで安心・・・・」  
「ん?」  
「え?」  
「ああ!!い、いたぞ!不審人物を発見した!!」  
「え?え!?ええーーー!?何で!?え、ちょ・・・何でー!?」  
俺達が出てきた場所はなんと門のまん前。当然すぐに黒服の連中に気付かれてしまった。  
「うわあああ!!!」  
俺は西守歌をお姫様抱っこして全力で走り出した。  
「あ!待て貴様!こちらチームアルファ、不審人物を発見した!現在屋敷外を逃走中、お嬢様が人質として連れ去られた!至急応援を頼む!!」  
「何でー!?何であんな近くに!?」  
「ごめんなさい涼様、実はもっと遠くに出口を作る予定だったのですが・・・・面倒になってしまったので途中でやめてしまったんでした。今思い出しましたわ」  
てへっとし自分の額をコツンとする西守歌  
「てへ・・・じゃないだろうが!!どうすんだ、折角ここまで順調に来てたのに〜!!ああいうのは最後までちゃんと作らないと意味無いだろうが!」  
「だって〜、疲れてしまったんですもの。女の子一人じゃあれが限界ですわ。それにしても、いいですね〜お姫様ダッコ♪」  
「言ってる場合か!!」  
「止まれそこの誘拐犯!」  
後ろを振り向くとヘリが数十機に車が数十台、さらには黒服の連中が数百人こちらに向かって走ってきている。  
「でー!!?な、何だありゃ!?これじゃあすぐ捕まっちまう!」  
前を向くと一台ワゴン車が停車しているのに気付いた。  
「あれは・・・・・」  
目を細めてよーく見てみると車の近くで誰かが手を振っている。お嬢と美紀だ!  
「涼ー!!西守歌ちゃ〜ん!やっほ〜!!こっちこっち!」  
「水原ーこっちだ!!急げ!!」  
「お、お嬢!!美紀!!」  
「笑穂様ー!美紀様ー!」  
満面の笑みで手を振る西守歌。俺はダッシュにさらに加速をつけ二人のもとへと急ぐ。やっとの思いで美紀達のところへたどり着き車に乗り込む。  
車に乗り込むと同時に車が発進した。  
「やっほー西守歌ちゃん!お帰りー!」  
「西守歌、心配したんだぞ?」  
「笑穂様・・・美紀様・・・!!」  
「御機嫌ようお嬢さん、また会いましたね」  
「は、春希様!」  
運転席には驚いた事にハルが座っている。  
「ハ、ハル!?何で!?」  
「話はお嬢様方から聞いた。お前がそんなに一生懸命な奴だとは知らなかったよ」  
「すまない水原、どうしても教えろとせがまれるもんだからつい・・・・」  
「そうそう!春希さんにせがまれて・・・教えるしかなかったのよ」  
「いや・・・それはいいんだがなぜここに?」  
「いやな、恐らく水原一人じゃ西守歌を連れて帰ってくるのは無理だと思ってな。先回りして待機していたんだ。待機していて正解だったな」  
「正解正解ー!!どう涼?私たちもたまには役に立つでしょ?」  
「守屋、たまには、は余計だ」  
「えへへ〜ごめ〜ん」  
「何はともあれ助かったサンキューな!・・・と言いたい所なんだが・・・何でハルをドライバーに選択したんだ・・・?」  
「何でって、春希さんしか免許持ってないからよ」  
俺はその言葉に気落ちする。  
「お前ら・・・ハルの運転技術知ってるか・・・?」  
「そんなの知るわけないじゃない」  
「私も知らないが・・・問題でもあるのか?」  
「問題なんてレベルじゃない・・・・・ハル、今まで何回事故起こしたっけ・・・?」  
「147回だ。それがどうかしたか?」  
 
「・・・・・・」  
「・・・・・・」  
「春希様、運転苦手なんですね」  
西守歌だけが微笑みながらそんな事を言っている。お嬢と美紀は真っ青な顔を見合わせている。  
「・・・・ハルの近所でのあだ名知ってるか?・・・爆走の貴公子・・武笠春希・・・・」  
そう言葉に出した瞬間車体が大きく揺れる。  
「捕まってろ!!」  
「だから言わんこっちゃない!」  
「す、すまない水原!まさかこんなにも運転技術が低いとは・・・・」  
「ご、ごめん涼・・・・」  
「わーい!なんだか遊園地のアトラクションみたいですね〜!!」  
「「「言ってる場合か!!!」」」  
全員の言葉が一致する。  
「ハル!頼むから安全運転で・・・おわっと!!飛ばしすぎだって!」  
「これくらい出さなければ追いつかれる、捕まっていろ!もう少し飛ばすぞ!」  
「これ誰の車・・・?」  
「私の家のだ・・・」  
「お嬢・・・先に謝っとく・・・」  
さらに車の速度が上がる。スピードメーターを見るとメーターが振り切れていた。  
「ハルーー!!俺はまだ死にたくないーー!!」  
「俺を信じろ!涼!」  
「147回も事故ってるやつの運転なんて信用できるわけないだろうが!ってうわーー!!」  
今度は車体が左右に大きく揺れる。こんな状況でも西守歌だけ満面の笑みでこの地獄のドライブを楽しんでいる。  
「み、水原ー!死ぬ前に言っておく!」  
「縁起でも無い事言うなー!」  
「いいから聞いてくれ水原!お前の大事にしてたマフラーが無くなっただろう?あれ私のせいなんだ。ちょっと見るつもりでさわってたら糸を引っ掛けてしまってな、  
全部ほどけて糸だけになってしまったんだ!後で直そう直そうと思ってたんだがなかなかこれが難しくてな、諦めてやめてしまったんだ」  
「あー!あれお嬢だったのか!すげー探したんだぞあのマフラー!どうりであの時のお嬢の様子が変だったわけだ・・・」  
「すまない・・・」  
「いいよ、許す許す。って!そんな呑気な事言ってる場合じゃないだろう!」  
「いや〜、ずーっと気になってたもんだから」  
苦笑しごまかすお嬢、それに続けというばかりに美紀までもがこんな事を言ってきた。  
「涼ー!私もあんたに謝っておきたい事があるのー!」  
「お、お前もか美紀!?」  
「小学生の頃あんたが大事に使ってたゲームソフトが原因不明で壊れた事があったじゃない?」  
「えーっと・・・・あああれか!あの半分に折れたゲームソフト!まさか美紀、お前が・・・」  
走馬灯のように頭の中で記憶が蘇った。  
「ごめーん!そのまさかなのよ。あの時使い方分からなくてさ〜、イラっとしてつい真っ二つにしちゃったのよね〜・・・ごめん涼!悪気は無かったの!」  
「もういい、気にするなよ・・・・この状況だとどんな事でもどうでもいいと思っちまう・・・・」  
「まあまあ涼様、もっと明るく楽しそうに」  
「出来るか!」  
「なッ・・!全員捕まれ!!」  
急ブレーキをかけるハル。それと同時に悲鳴が上がる。  
「あ、危ないじゃないかハル!」  
「涼、あれを見ろ・・・・」  
「え?」  
ハルの指差す方向を見ると全員同じ顔をした連中が数百人「HAHAHA!!」などと笑いながら立っている。その中心には見覚えのある違う顔をした人物が腰に手を  
当て立っているのが見える。  
「あれは・・・!」  
「いようMY.BROTHER水原涼君!」  
「あんたは!」  
「兄さん!?」  
そう、それはお嬢の兄にあたる人物であったのだ。  
 
「話はMY.SISTERから聞いたぞ涼君!どうやらお困りのようだな」  
「お嬢、あの人にも言ったのか?」  
「いや・・・言った覚えはないんだが・・・・」  
「何あの人たち!みーんな同じ顔してる」  
「・・・・・そうか盗聴器だ・・・」  
「そう来たか・・・・」  
思わずため息をついてしまう。この人もやる事がメチャクチャなようだ。  
「すまない・・・」  
「いや、むしろ好都合だ。どうやらお嬢のお兄さんは俺たちを助けてくれるらしい」  
「その通ーーり!!可愛い妹の恋人の頼みならお安い御用!」  
「なあ・・・あの人・・・」  
「誤解は後で私が解いておくよ・・・」  
「よ、よし!とにかく車を降りよう!」  
俺たちは急いで車を降りる。当然すぐに黒服の連中がやってきた。するとヘリから誰かが降下してきた。  
「誰だ・・・?」  
「お父様・・・・!」  
「何・・?」  
そう言うと西守歌は俺の身体の後ろに身を隠す。小さな手でぎゅっと俺の服を掴んでいるのが服越しに伝わってくる。  
「水原涼君だね・・・?」  
「ええ、ご存知の通りで」  
「私の娘を返してもらおうか、君のやっている事はれっきとした犯罪だぞ?」  
「・・・・・」  
「図星かね?とうぜ・・・・」  
「違います!」  
「西守歌・・・?」  
「何だ西守歌?私は今そこの青年と話をしているんだが?」  
「お父様の言ってる事は間違ってます!涼様は・・・涼様はわたくしを助けにきてくれたんです!」  
「助けに?何寝ぼけた事言っている?私にはただの誘拐犯にしか見えないんだが?」  
「それは誤解ですお父様!涼様は・・涼様はそんなお方じゃありません!」  
「黙りなさい!誰に向かってそんな口をきいてるんだ!」  
「・・・・・!」  
「ちょ、ちょっと!何もそんなに大声出さなくてもいいじゃないですか!あんた自分の娘に何を・・・」  
「何だ貴様、誰に向かってそんな口をきいてる?私は益田グループの現代表の益田誠一郎だぞ!!」  
「そんな事・・・そんな事知るか!自分の娘に罵声を飛ばして・・・嫌がってるのに政略結婚させようとして・・・あんた・・・あんたそれでも父親かよ!  
あんた西守歌の事を何も分かっちゃいない!」  
「涼様・・・・・」  
「涼・・・・」  
「水原・・・・」  
「黙れ!たった数ヶ月しか西守歌と一緒にいなかったお前に何が分かる!」  
「分かる!たった数ヶ月だったかもしれないけど・・・少なくともあんたよりは西守歌を知ってる!!何でも簡単にこなしてるけど、陰で努力を怠らない・・・  
誰に対しても偽り無く接している真面目さ・・・優しさ・・・強さ・・・あんたは知ってるのかよ・・・そんな西守歌の姿を知ってるのかよ!」  
「貴様誰に向かって・・・」  
「趣味、好きな食べ物、嫌いな食べ物、色、星座、誕生日、得意な教科、苦手な教科・・・・些細な事だけど・・・あんたは、あんたは知ってるのかよ!!」  
「涼様・・・!」  
西守歌の瞳から雫が流れ出し頬を伝う。俺はそんな西守歌を優しく抱きしめる。  
「一つ聞こう・・・何でそこまで西守歌をかばう・・・?」  
「決まってるじゃないですか・・・こいつのことを・・・西守歌の事を心から好きだからです!・・・・確かに一度俺は西守歌を裏切りました・・・・  
だけど・・・無くして初めて気付いたこの気持ち!俺はもう、西守歌を離さない・・・どんな事があっても、たとえあんた達を敵に回しても・・・俺は、俺は絶対西守歌を離さない!!  
もう一度言うけど・・・こいつが、好きだから・・・」  
「わたくしも!わたくしも涼様が大好きです!!RTP推進委員会とか・・・そんなの関係ありません!純粋に・・・心から涼様を愛しているんです!  
どうして分かってくれないんですか・・・?どうして許してくれないんですか・・・?たった一度だけ・・・たった一度だけでも、わたくしのわがままを聞いてはくれないのですか!?  
お父様!」  
「西守歌・・・・」  
「そ、そうよそうよ!西守歌ちゃんの言う通りよ!」  
「美紀様・・・・!」  
「私も守屋と同じ考えです。少なくとも、彼女にも選ぶ権利があるのでは・・・?」  
「笑穂様・・・・!」  
「よかろう・・・なら、わたしも容赦はしない!」  
パンッ!!と多きな音とともに強い光が俺たちの視界を満たす。それに我慢できず目を瞑ってしまう。そして目を開けると・・・  
 
パンッ!!と多きな音とともに強い光が俺たちの視界を満たす。それに我慢できず目を瞑ってしまう。そして目を開けると・・・  
「おめでとう祝合格・・・君達の愛は充分伝わった・・・by父さん・・・・・・・はあ!?」  
「へ・・?合格・・?」  
「ちょっとこれ・・」  
「これは一体・・・?」  
ヘリにつるされている横断幕。あたり一面に舞い上がっている紙ふぶき。俺達は何が何だか理解出来ずにいた。  
「ごうかーく!!!」  
目の前で大きな声で叫ぶ誠一郎。  
「・・・はい?」  
俺と西守歌、お嬢に美紀、全員が呆然としている。  
「合格だ水原涼君!」  
「いや・・・合格って・・何がです・・・?」  
「お父様これは一体・・・?」  
「悪いが君を試させてもらった。君の西守歌への気持ちがどれほどのものなのか、どれほど西守歌を大切に思っているのか。それを確かめておきたくてな」  
「な・・なな・・・」  
「驚かせて済まなかったな。西守歌、彼はどうやらお前の言っていた通りの男らしい。安心したよ。」  
「お、お見合いは・・・お見合いの話は!?あれなんだったんですの!?」  
「あああれか?あれは全部嘘だ。あれも彼を試す、いわばテストみたいなものだ」  
「嘘・・・だったのかよ・・・」  
俺はヘナヘナと座り込んでしまった。あれが全部嘘だった事に驚きを隠せない。  
「嘘・・・お父様・・・!酷いじゃないですか!」  
「すまんすまん、そう怒るな西守歌」  
わしゃわしゃと西守歌を撫でる誠一郎。  
「おおそうだった、協力ありがとうな陸奥君、それに武笠君」  
「・・・・知ってたのかハル・・・?」  
「まあな、どうも面白そうな話でな。契約金も良いから乗っただけの話だ。」  
「ハル〜!!」  
「兄さん・・・」  
「いや〜実は益田グループはうちのお得意様でね。断る事は出来なかったんだよ笑ほ・・・ぐはッ!」  
「馬鹿兄さん・・・!」  
どうやらお嬢の鉄拳が炸裂したらしい。  
「あのー・・・話についていけないんですけど〜・・・」  
「美紀、心配するな。俺もついていけん・・・・」  
「ちなみに君が簡単に我が屋敷に侵入出来たのもすべて仕組まれていたことだったんだ。そこのところは分かっていてくれ。うちはあんなにセキュリティが手薄なわけじゃないからな?」  
「あれもか・・・上手くいったと喜んでたのが馬鹿みたいだ・・・・」  
「まあまあ涼様、そう落ち込まずに」  
西守歌が気遣って励ましてくるが逆に虚しくなるだけであった。  
「それではわたしは屋敷に帰らせてもらう。西守歌は頼んだぞ水原君!さらばだ!」  
益田グループの連中が全員引き上げていく。  
「さてと、我々も退散しますかね」  
「HAHAHA!!」  
「HEYHEYHEY!!」  
陸奥グループの連中も引き上げていく。両者が引き上げたあと、お嬢と美紀、そして俺と西守歌は未だ呆然としたままであった。  
ハルはこんなところでもパソコンをいじっている。  
「さーて・・・私達も帰ろっか・・・」  
「ああ・・・そうだな・・・」  
「りょ、涼様わたくしたちも行きましょう・・・?」  
「・・・・・・!俺の・・・俺の苦労は何だったんだーーーー!!!!!」  
「ふう・・・お約束だな・・・」  
 
 
こうして俺と西守歌との愛の逃走劇は幕を閉じたのであった・・・。  
 
「もう少し続く!」  
 

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