居候生活も半月を過ぎ、春達に散々こき使われる日常もいい加減定着してきた今日この頃、俺と明鐘の二人は部屋で唸っていた。
「うー、難しすぎるぞ、この問題は…」
明鐘の宿題を見てやっているのだが、情けないことにさっぱりなのだ。こんな時は春か百合佳さんにでも聞きに行くに限るだろう。日頃俺達をこき使っている以上、このくらいはして貰おうじゃないか、なあ明鐘。
「兄さん、やっぱり自分で…」と言っている妹の言葉を聞き流し、ひとまず1つ上の先輩の部屋へ向かう。
「百合佳さーん」
名を呼びつつ扉を叩くも返事はなく、まだ10時半なのに寝てるとは珍しいな、とは思ったが寝ているのなら仕方ない。どうやら春に聞きに行くしかないようだな。春に聞くと自分で調べろ、とか煩そうなんだけど、まあ仕方ないだろう。
そして俺達は春の部屋まで来ていた。ちなみにこの二人、新婚だというのに部屋は少し離れている。やはり遠慮もあるのだろうか。
で春の部屋だが、これまた何故か扉が半開きくらいになっていて、中の明かりが消えていたので、慎重に中を覗いてみる。寝ているとこを起こしでもしたら明日はないからな。
室内へと目を向けた俺は、その光景を見た。
「あ…んっ、春希君…」
声が聞こえる。
「うっ…ねぇ、まだ涼君たち、起きっ…」
隣では明鐘も固まっているのだろう。
「んんっ!そこぉ…もっと…やっ!」
いわゆる濡れ場だ。言うまでもなくこの声は百合佳さんのもので、もう一人は春で間違いない。
「あぁっ!!」
ひときわ大きな声が上がり、百合佳さんの肢体が痙攣する。その声で我に返った俺は、明鐘の手を引いていそいそと部屋へ戻るほかなかったのであった。
「……」
「……」
気まずい。半端じゃなく気まずい。明日からあの二人にどんな顔して会えばいいのかわからないし、それよりもあんな映像を見てしまって顔を真っ赤にしている明鐘に何と声を掛ければいいんだろう?掛ける言葉が見つからないとは、今まさにこの状況を言うのだろう。
と、明鐘がベッドから立ち上がっていた。
「その…兄さん、おやすみなさい」
「あ、ああ。おやすみ、明鐘」
どうやら朝まで考える時間がもらえたらしい。