「明鐘・二人の願いは」  
 
 
「―――兄さんは、私を一人にはしないよね?」  
 
暗い部屋の中、明鐘は俺に向かって呟き出す。  
部屋の照明は消され、隅で膝を抱える少女。  
明鐘……俺の妹。誰よりも、そして何よりも大切といえる存在。  
俺を見つめている……暗い部屋でもはっきりわかる。  
その表情――まるで捨てられた子犬のようなそれ。  
昏い表情……交差する視線。  
一つ呼吸を置いてはっきりと答えようとする。  
「俺は――――」  
その刹那、明鐘の口が動き出す。機先を制された俺。  
「松浦先輩も……西守歌ちゃんもいなくなっちゃった」  
「……」  
「兄さんも……いなくなっちゃうの……?」  
「……」  
―――何を、いったい何を言っているのだろう?  
疑問に思う暇など与えられず、矢継ぎ早に告げられるその心中。  
「私は、兄さんが好きなの。―――兄さんじゃなきゃ、ダメなの」  
「あか…ね。―――ンッ!?」  
一瞬の躊躇を突かれる。明鐘が俺に…キスを。  
 
―――なぜかそれを受け入れてしまう。その時の俺には拒否する力も意志も存在していなかった。  
 

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