天使から魔物討伐の依頼を受けた勇者シーヴァス。
ここは、やっと辿り着いた何日かぶりの宿屋である。
野宿を含む強行軍に耐えた彼の体は、今や酷く消耗していた。
寝台でゆっくりと休めるのは、本当に久しぶりのことだった。
寝床に潜り、浅い眠りについた頃、彼を控えめに揺り動かす手があった。
「こんばんは、シーヴァス。起きて下さい」
まだ覚醒しきっていない意識の中に、鈴を転がすような女の声が響く。
シーヴァスは眠たげに低く唸った後、寝起きの掠れた声で返事をした。
「何だ、また君か。……今何時だと思っている?」
「いつもごめんなさい」
声の主、インフォスの守護天使ラビエルは、申し訳なさそうに苦笑いした。
愛嬌のあるその笑顔を見せられると、ついつい無体を許す気になってしまう。
天界の住人である彼女は、時間という概念が薄く、また地上界の一般常識にも疎い。
深夜にも関わらず、平気で訪問することもしばしばだった。
多忙なラビエルが、暇を見付けて会いに来てくれるのは嬉しい。
しかし夜の訪問が連続すると、さすがに辟易とさせられる。
突然の来訪者のために、部屋の燭台に火が灯された。
それまで闇に包まれていた室内が、弱々しい明かりに照らされる。
シーヴァスは、寝台の上に足を組んで座ると、気怠げに金髪を掻き上げた。
いつもは一つに結っている髪を、今は背に流している。
「用件は?」
天使に素っ気なく問いかける。
「はい。新しい武具をお渡ししようと思って」
にこやかに答えると、彼女は手にしていた刀剣をシーヴァスに差し出した。
一方彼は、短く礼を述べて刀剣を受け取ると、それきり黙り込んでしまう。
……彼は今、極めて不機嫌だった。
安眠を妨害されたことにも腹が立っていたが、何より、目の前にいるこの天使の存在に困り果てていた。
ラビエルは、男の部屋に夜遅く訪ねることの危険性を、全く理解していない。
旅に出てからこのかた、久しく女を抱いていない彼は、ただでさえ性欲が溜まっていると言うのに。
都市部であれば容易だが、こんな辺鄙な土地では商売女を買うことも適わない。
当然手淫だけでは物足りず、若いシーヴァスの性欲は、処理出来ないまま残っていた。
そんな状態の時に、見目麗しい女に来られては堪らない。
しかも、それが好意を寄せている相手ともなれば、尚更だ。
「……では、私はこれで」
重苦しい沈黙に気まずくなったのだろうか。
もう用件は済んだとばかりに、ラビエルはこの場を立ち去ろうとする。
「ラビエル。頼むから、当分の間は私の目の前に姿を現さないでくれ」
窓から飛び立とうと翼を広げかけた彼女は、突き放すような物言いに驚き、動きを止めた。
シーヴァスの元に戻ってくると、心配そうに顔を覗き込む。
近寄る彼女からは、女の甘い体臭が漂ってきた。
「一体どうしたのですか? 最近、元気がないように見えましたが……。悩みがあるのなら話して下さい」
ラビエルが前屈みになると、その豊満な胸が衣装から零れ落ちそうになる。
シーヴァスは目の遣り場に困ってしまった。
……ムラムラきてしょうがない。
意中の異性に、無防備な薄着で周りをフラフラされるのは、悩ましいことこの上なかった。
彼女は余りにも魅力的過ぎる体を持っている。
素っ裸に剥き、思うままに組み敷いてみたい。
長旅の疲れと相まって、欲求不満の限界に達している自分は、何をするか分からない。
劣情をどこまで抑えられるのだろうか。
「だから、それを止めろと言っているんだ。これ以上近付くな」
気難しい表情で、シーヴァスは吐き捨てる。
ラビエルにしてみれば、何故彼がこんな冷たい態度をとるのか、訳が分からない。
悲しげに眉根を寄せている。
幼い天使には、男女の機微をまだ理解出来ないのだ。
「私に何か出来ることはありませんか?」
彼女は小首を傾げて聞いてくる。
何か力になってやりたいと、本心から思っているのだろう。
その可愛らしい仕草は酷く扇情的だった。
彼女の一言に、遂にシーヴァスの理性の『たが』が外れてしまった。
「分からないのか、目の前をうろちょろするなと言っているだろうが! もう我慢ならない」
言い返す間も与えず、彼女のくびれた腰を強引に引き寄せる。
素肌に纏うドレスを勢いよく引き下ろすと、中には何も身に付けておらず、ぷるん、と大きな乳房が飛び出した。
華奢ながら肉感的な肢体が露わになる。
「きゃぁ! あっ……いけません」
ラビエルは悲鳴混じりに訴える。
「私の力になってくれるのだろう? なら協力して貰おうか」
抗議を一蹴すると、シーヴァスは柔らかな乳房にしゃぶりついた。
大きな手で乳肉を揉みしだき、ピンクの乳頭を指で弄びながら、わざとちゅぱちゅぱと音を立てて吸い付く。
必死に抵抗している彼女の唇から、かすかに嬌声が漏れ始めた。
弄られていた乳首もぷっくりと勃ち上がる。
シーヴァスは彼女を横抱きにすると、寝台に乱暴に放り込んだ。
寝台が軋むと同時に、彼女の背に生えた翼から、羽が数枚飛び散る。
顔を真っ赤にして体を隠そうとするラビエルは、両手首を掴まれ、そのまま押さえ付けられてしまう。
シーヴァスは彼女の耳元に顔を寄せ、低く囁いた。
「君が悪い。私の忠告を無視するからだ」
彼は天使の裸身に覆い被さる。
噛み付くように口付けをすると、長い舌を割り込ませ、暫くの間、好きなだけ彼女の口内を貪った。
満足して唇を離すと、つ、と唾液の糸が引いた。
「はぁっ……」
解放されたラビエルが、苦しそうに息を吐く。
彼女はシーヴァスの暴挙に困惑し、怯えきっていた。
肩は小刻みに震え、頬は上気し、目にいっぱいの涙を溜めながら、恐る恐る彼を見上げてくる。
「ラビエル」
愛おしそうに天使の名前を呼ぶ。
美しい髪を優しく撫でながら、彼女の汗ばんだ額に幾つか口付けを落とした。
「……貴方の好きにしていい」
少し躊躇う様子を見せた後、ラビエルは弱々しくそう言った。
諦めたように嘆息する。
彼を止めることは、今更もう出来ないと悟ったのか、観念したようだ。
それは渋々抵抗を諦めたという風だったが、彼女が本気でこの行為を嫌がっているようには、シーヴァスには見えなかった。
ひょっとして、ラビエルも自分と同じ気持ちだったのではないか……。
そう都合良く考えてしまう。
しかし今は、そんなことはどうでもいい。
ラビエル自身が、シーヴァスの求めに応じたのは事実なのだから。
弾力のある豊かな胸を愛撫しながら、白い首筋に舌を這わせていく。
「あぁんっ」
大分体がほぐれてきたらしい。
ラビエルは高い声を上げて反応した。
そろそろ下半身の様子も確かめてみようと、彼女の陰部に手を伸ばす。
指でなぞると、既にそこは濡れそぼっていた。
「天使のくせに、いやらしい体をしているな。もっと喜ばせてやろう」
片頬を歪め、シーヴァスは好色な笑みを浮かべた。
不意に太股に手をかけられ、反射的に身を固くするラビエルだったが、無理矢理足を開かされる。
びしょびしょになった女の秘部に顔を埋めると、陰毛が鼻先に当たり、甘ったるい愛液の香りが鼻孔を刺激する。
彼はぱんぱんに膨張したクリトリスを丹念に舐め、次々に溢れ出す愛液もいやらしく啜った。
過敏な箇所を攻められたラビエルは、びくっと身を跳ねさせ、なまめかしく喘ぎ始めた。
無垢な天使は、男から与えられる快楽から逃れようと、必死に腰をくねらせる。
しかしシーヴァスの力強い腕に捕まえられ、逃れようとしてもビクともしない。
もじもじと動く彼女を可愛く思いながら、彼は舌を固く尖らせ、膣に差し込み、ねっとりと口淫を続けた。
感じる部分を突きながら出し入れを繰り返していると、ラビエルから淫らな痴態を引き出した。
「あっ……あ、あ……駄目っ……」
普段の上品な彼女からは、想像もつかない乱れようだった。
絶頂に近付いているのか、気持ちよさそうに尻を浮かせ、仰け反っている。
シーヴァスの唾液と自身の粘液で腿まで濡らし、大洪水を起こしながら、とうとう彼女は果ててしまった。
「はぁ……はぁ……」
肩で息をしながら、焦点の合わない瞳で、ぼうっと虚空を見つめているラビエル。
そんな彼女を眺めながら、シーヴァスは手際よく寝衣を脱ぎ捨てた。
頼りない蝋燭の明かりで浮かび上がる、均整のとれた筋肉質な裸体。
よく鍛えられた見事な体躯は、彼が屈強な騎士であることを物語っている。
そして屹立した陰茎からは、先走りの汁液が止めどなく溢れ、てかてかと光っていた。
「いいな?」
彼が問いかけると、不安げに揺れる、潤んだ大きな瞳が見つめ返してきた。
初めて目にする雄の怒張への恐怖が、彼女からは見て取れた。
しかし、その逞しい一物に釘付けになり、視線を逸らせないでもいるようだった。
彼女は意を決して、シーヴァスに向かってこくん、と頷く。
意思が一致したことを認めると、彼はラビエルの足の間に体を収めた。
一度絶頂に達した、ヒクつく女の入り口に自身をあてがい、何度か往復させた後、ゆっくりと腰を進めていく。
中はぬるぬるとしていて、温かい。
途端に、彼女の表情が痛々しく引きつった。
「シーヴァス……っ!」
強ばった膣内は狭く、侵入するシーヴァスを拒み、押し戻そうとしてくる。
それでも構わず、彼は欲望のままに天使を貫いた。
ラビエルの短い悲鳴が上がる。
真珠のような大粒の涙をぽろぽろと流しながら、手足や、翼までもをばたつかせ、彼女は抵抗した。
肌を撫でる羽がこそばゆい。
「いやぁっ……やめて……」
ラビエルは、子どものように首を横に振りながら哀願する。
しかしシーヴァスは、もう何も考えられなくなっていた。
聖なる天使を犯しているという背徳感が、益々性感を高める。
快楽が、ゾクゾクと背骨にまで這い上がってくる。
彼女の嗚咽を聞きながら、気が付くと夢中で腰を振っていた。
「あぁっ! やっ……あっあっ、はぁ」
何の穢れも知らなかった天使は、されるがままになっていた。
何か支えてくれるものが欲しくなり、シーヴァスの首に腕を回す。
肉付きの良い乳房が、彼の厚い胸板に押し潰された。
「あぁっ……、私のラビエル」
彼は恍惚の吐息を漏らす。
この女を、ずっとこうしたかった。
陰茎を根本まで呑み込んだ彼女の粘膜は、シーヴァスに絡み付き、心地良い締め付けを与えてくる。
額に汗を浮かべ、金髪を振り乱しながら、彼は気が済むまで腰を打ち続けた。
「はぁ……、私以外の勇者と、こんなことは絶対にするんじゃないぞ。私とだけだ……」
天使を突き上げながら、息を弾ませて彼は言った。
『お前は私だけの物だ』と、彼女に言い聞かせる。
彼の下で苦しげに喘ぐラビエルは、泣きながらこくこくと頷いた。
激しく揺さぶられながらも、必死に彼にしがみついている。
「何か頼みたいことがあったら……、真っ先に私の元へ来い。いいな?」
全て言い終えると、ラビエルの中でシーヴァスが脈打った。
彼女の中に自分を焼き付けるかのように射精する。
終わり