宵闇に梟の鳴き声が聞こえる。  
部屋のなかにはちらちらと朱い炎がランプの中で踊っている。  
依頼を済ませて部屋を後にしようとナーサディアに別れの挨拶を  
して背中を向ける。  
するりと背中から腕がまわって引き留められる。  
「もう、行っちゃうの?」  
「次の勇者の所へも訪問しなくてはなりませんから」  
甘い匂いが鼻腔をくすぐる。  
「せっかちね」  
「…だってナーサディア、酔ってるんですもの」  
たしなめるような口調とは裏腹に響きは甘さ含んでいる。  
抱きしめる腕が優しく天使の身体をまさぐる。  
天使は吐息を零して身をよじる。  
「んっ」  
身体の向きを変えさせて口付けあう。  
脇腹をなで上げられて息が乱れる。  
「んぅ……ちゅ……ふぅっ…ん…」  
重ねた口のお互いの舌を探り絡ませあう  
甘い吐息と唾液の絡みあう音が部屋を満たす。  
 
ナーサディアの脳裏にいつかの夜のことがよぎる  
初めて天使と抱きあった夜  
天使が涙で顔を濡らし彼女のもとへやってきた。  
勇者に愛を告げられたと言いひどく動揺していた  
 
「…は」  
先に天使の腰が砕ける。  
ぺたりと天使はその場にへたりこむ。  
顔を少しだけあげ熱に潤んだ瞳をナーサディアへ向ける。  
「……やっぱり、酔ってます。…お酒臭い。」  
顔を赤く染めながらそういって睨み上げてくる。  
しかしそれが返って艶っぽくナーサディアには見えた。  
「…だめよ、天使様。こんな床の上に座ったら」  
苦笑しながら天使の立ち上がるのを助ける。  
酒のせいだろうか自分の身体が熱っぽいのを自覚する。  
寝台に天使を仰向けに寝せる。  
「羽根、苦しくない?」  
優しくたずねると天使は首を横にふって応える。  
ナーサディアは瞳を細めて微笑する。  
 
愛を告げた勇者は天使が密かに愛していた者だった  
なのに地上に残ってほしいと言われた天使はその申し出を  
拒んでしまったという  
天使は天使として生きる道を選んだのだ  
 
人として生きる道を切り捨てて  
 
鎖骨に唇を落とし首筋へと舌を昇らせる。  
天使は息を呑んでびくっと翼を根本から揺らす。  
「ずるいです…ナーサディア」  
「天使様、ここが弱いのよね」  
面白そうに言って唇を首筋から耳へ移動する  
「じゃあ、天使様も私に触って?」  
悪戯っぽく耳元にささやく。  
眼に映る耳がわずかに色づく。  
おずおずと天使はナーサディアの身体の上に手を這わせる。  
天使の白い手は少しひんやりとしていて心地よい。  
どこかもどかしいような手つきは彼女のひたむきさを  
伝えてきて愛おしい。  
「…はぁ…」  
ナーサディアは天使に悩ましげな息を吐く。  
 
心は千々に乱れて張り裂けそうだと、  
他に話せる相手は思いつかなかったと  
そう言って泣く彼女をなぜ抱いたのか自身もわからなかった。  
白い翼がラスエルを思わせたのか、  
ただ彼女の心を慰めたかっただけなのか  
 
天使の服に手をかけて胸元を露わにさせる。  
「はぅ…あん…ひゃ…っ」  
顔を寄せて唇や手でそのやわらかさを堪能する。  
天使はそのたびに敏感に反応を返す。  
「ナーサ、ディ…ああ…」  
呼び声も喘ぎに変わってしまう。  
「天使様…好きよ…」  
そう言うとナーサディアは天使の白い手を取って  
自分の感じやすい箇所を教えた。  
彼女の衣服はいつのまにかすでに寝台の脇に寄せてしまってある。  
ナーサディアの身体を天使の指先が探し物をするように  
たどっていく。  
 
抱き合って気づいた自身の心  
ナーサディアはこの天使を愛している  
もうこんなことをするのは何度目か  
一種の倒錯的な愛なのかもしてない  
でも抱き合うたびにこの想う気持ちも高まっていった  
 
ナーサディアも天使の身体に愛撫を再開させる。  
「…あぁ…ん…ああ…は……」  
天使は快楽に耐えながらもナーサディアに応えようとする。  
自らも切ない息を零しながらナーサディアは天使の胸の淡い色をした  
乳首を唇に含み舌で転がして吸う。  
「ひゃうっぅ」  
思わず天使がナーサディアの頭を胸に抱え込む。  
「やぁん…もう、おかしくなりそう…です…」  
くすっと笑ってナーサディアは上体を起こす。  
「そうね…」  
天使の足首を掴みわずかに開かせる。  
そっと腿の内側に手を滑らせる。  
そこに触れるとそこは十分に濡れそぼっているようだった。  
「ちゃんと最後まで…イカせてあげるわ」  
天使の咽がこくんと動く。  
それを確認して指を動かす。  
「ひゃっ、あっ、はぅ、ああぅん、んっぅ」  
ナーサディアの指は天使の内側でくちゅくちゅと淫靡な音を奏でる。  
もう一方の空いた腕で天使の頭をかき寄せる。  
「はぁん…、ナーサぁ…ああん、ああ…んっ」  
腕の中の天使の泣き声は次第に大きくなっていく。  
ナーサディアは喘ぐ唇を唇で塞いでしまう。  
「ふぅっ…、んんっ、…んくぅっ」  
天使の愛液でたっぷり濡れた指はスムーズに秘所で蠢かせる。  
様々な動きをみせる指に天使はいっそ狂ってしまいそうでナーサディアにすがりつく。  
「はっ…あっ…もう、だめぇっ…もうっっ!」  
頭の中が真っ白になっていく。  
汗を空中に散らせてとうとう天使は絶頂を向かえる。  
「あ…ぁあ……あはぁあああああ!!」  
身をそらせて痙攣させる。  
やがて、恍惚としてくったりと汗ばんだ身体を寝台の上にのばす。  
「はぁ…はぁ…ナーサディア…」  
汗と涙に濡れた顔にナーサディアは口づけを落とす。  
とろとろと天使は目蓋をおろしてゆく。  
 
情事の後だというのに白い翼はどこまでも清純で  
それが返って相反する身体を際立たせているように思う  
ナーサディアは汗に濡れた天使を優しく抱きしめる  
いつか天上に還る天使。  
それでも地上にいる間はこうして温もりを感じることができる  
それまでは…  
 
「おやすみなさい…」  
身体をぴったりと天使に寄せてナーサディアは眠りにつく  
少しでも長く二人でいることを願いながら。  
 
end  
 

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