総士の私室。
今、この部屋には総士とその妹である、乙姫がいた。
総士は日頃の疲れからか、ベッドの上で眠っている。
乙姫はそんな兄の横顔を眺めていて、一つの事を思いついた………。
総士は体に、なにかが乗った感触を感じ、目を開けた。
「なんだ……乙姫?」
総士に乗った乙姫はニッコリ笑うと、総士の胸に細い手を置き、序々に体を折り曲げ、体を近づけていく。
「動かないでね、総士。」
穏やかに笑う乙姫、総士はそれを見て微笑み。
「ああ。」
優しく言った。
やはり、島のコアとはいえ。いや、だからこそ、甘えたい年頃なのだろう。総士はそう思った。
人の温もりを知らずに育てられた、乙姫の腰に手を回し、抱き止めてやろうとする総士。
「甘えん坊だな、乙姫は。」
目を瞑り、優しく優しく。
乙姫の顔が段々、総士の顔に近づいていく。
柔らかい何かが、総士の唇に触れた。
(……なんだ?)
頬かとも思ったが、柔らかい何かから、総士の唇へと進入してきて総士の舌に絡みついてくる。
総士は目を開け、事態を確認した。
目の前には、乙姫の黒目がちな大きな瞳がこちらをのぞき込んでいる。目が合うと、ニッコリと微笑んだ。
「ん!んーっ!」
呻く総士、乙姫は唇を離し。
「なあに?総士?」
「なっ、今なにを!!?」
「道生に教えて貰ったの、好きな人とはこうするんだって。」
楽しそうに言う、乙姫。
「でね、この後は……」
「あ、だめだ!……乙姫、やめ、やめてくれ………」
「やめろ!」
総士は乙姫の手を跳ね除ける。
「どうして?私は総士のことが好きだよ。総士は私の事、嫌いだったの。」
乙姫はショックを受けた表情で総士の瞳をじっと見つめた。
カプセルの中で眠る自分を訪ねて、何度もあの暗い部屋へ来てくれたのはただの偽善だったのか。
「違う。嫌いなわけないだろう。好きじゃなかったら、何度も何度も会いに行ったりはしないよ。
ただ、お前の行動は兄と妹という関係で行うには、いささか支障がある、そう言っているんだ。」
総士は乙姫の問いに、慌てて答えた。
乙姫の言う『好きな人とする行為』、これは本来は愛を誓い合った恋人どうしがするものだ。
けして兄と妹のような関係の者がすることじゃない。むしろするな。
それを数分かけて懇々と説明する。
「わかったか?わかったら、今度からむやみやたらにこういうことはしないでくれ。いいね?」
総士は溜息をついて、念を押した。誰彼構わずこんなことをされてしまっては、困ってしまう。
勘違いした野郎どもが乙姫に手をだすのも、兄としては許せない。
一瞬の間の後、「そうなんだ…でも、私気にしないから。」
総士が自分の事を嫌ってはいないのを確認た乙姫はあっけらかんと笑って言った。
「なんでそうなる…!」総士はがくりと脱力し頭を抱える。
そんな総士の様子が可笑しかったのか、くすくすと笑った後、乙姫は続けた。
「総士は細かいことを気にし過ぎだよ。でもね、総士が気にするなら止める。」
総士のこと好きだから。そっと頬に手をふれ、少し悲しげに笑みを浮かべる乙姫に、総士は一瞬、胸の痛みを覚えた。
「けど…やっぱり総士のこと好きだからしたい。」
がしり。乙姫は総士顔を掴み、ずずいと顔を寄せた。
「だめだ。」
がしり。あと数センチというところで、乙姫の顔を掴んで阻止する。
先ほどの胸の痛みはなかった事にしよう。総士は心の中で呟いた。
思えば乙姫の気まぐれで兄を兄とも思わぬ悪魔っぷりは、自分が一番よくわかっていたはずじゃないか。
おまけに頑固だし。
乙姫は、うーん、と考えた後。
「総士だって知ってるでしょ。」
「なんだ。」
「私、後三ヶ月……うう、うん。それより短いかも知れない、私がこうしていられるのは。」
「それは……そうだが。」
視線を反らしてしまっていた。
「……だから、後悔……したくないの…………」
「だからと言って、なぜ僕じゃなければならないんだ。」
「それは私が総士の事好きだから……言ったでしょ?」
視線を乙姫に戻す、乙姫はジッと俺の胸元当たりで視線を泳がせていた。
「聞いたが肯定はできない、それは聞いただろ?」
「うん……でも……」
泳いでいた視線が、俺の目を再びみた。
「こうでもしないと…………」
言の葉が途切れ、乙姫の心配そうな視線が直視してくる。
僕は息苦しさを感じ、口を開いた。
「こうでもしないと。なんだ、何かあるのか?」
乙姫は儚げに微笑んだ…………
総士の私室前、壁に張り付く怪しい人影、その頬は朱に染まっていた。
カツンカツン、歩く音が聞こえてきた。足音は二つ。
そちらを向くと、乙姫の同級生の……名前は忘れてしまっていたが少女が一人、こちらを訝しげに見ていた。
「えと…何をしてるんですか?」
いきなり声をかけられた驚きで、一騎は身体をびくりと震わせる。
振り向くと、そこには乙姫の友人である立上芹が訝しげにこちらを見ていた。
膝をつき腹を抱えるようにしてうずくまっている様子を勘違いしたのか
「真壁先輩、もしかして具合が悪いんですか?それなら医務室へ、」
一騎を抱き起こそうと駆けより、心配そうに顔を覗きこんでくる。
「いや、大丈夫だから。なんでもないから行ってくれ。」
一騎は慌ててそれを制止する。具合が悪いわけではなかった。ただ、立ちあがる事ができないだけで。
数分前の出来事が、一騎の脳裏によぎった。
用があり総士の部屋を訪ねた。そこまではよかった。ドアに手をかけ、開けようとした。
すると二人の声が聞えた。総士とその妹である乙姫。
いつもなら、部屋に訪ねてきた一騎を笑顔で出迎える乙姫、いつもどおりのクールな態度で出迎える総士、
そんな兄妹のあまりの違いに苦笑いする自分、という光景が繰り広げられるはずだった。
しかし、今回は様子が違った。息を殺すようにして漏れる声。聞いた瞬間それを悟った。
二人の間に流れるある特殊な空気を感じ取ってしまった。
すぐに立ち去ろうと思ったのに、あまりにも驚きすぎて足が動かなかった。
そのうち、最初は拒んでいた総士の声が途切れ、乙姫の囁くような声と濡れた音が響くようになった。
一騎も男である。このような状況に遭遇して、興味を示さないなどということは無理な話だった。
その時すでに男性の象徴であるものがこの異常な状況に対して隆起し始めていた。
いつもは何事に対しても冷静に対処し表情を崩さない総士が、年端もゆかぬ少女の愛撫に声を殺して耐えている。
いつもは天真爛漫な笑顔を浮かべて話しかけてくる乙姫が、実の兄との背徳的な行為にふけっている――。
ちらりと芹に目をやると、一騎から一、二歩ほど離れたところで所在なげに佇んでいる。
自分の言う事を聞いて立ち去るか、無理矢理医務室へ連れて行くかで迷っているのだろう。
「本当に大丈夫だから。しばらくしたら僕も部屋に戻る。君も早く戻れ。」
一騎はこの状況にだんだんいらだってきていた。
パイロットにあてがわれている私室は個人のプライバシーを守る為に部屋の防音が完璧にしてある。
しかし、先ほど一騎が部屋を訪ねたときにドアを少し開けてしまっていたせいで、その効果が万全に発揮されているわけではなかった。
現にあちらの声が、微かだが漏れ聞えている。こちらの声も総士たちに聞えているとしたら、まずい。
それに、芹に自分のこの状況が本当はどういうものなのかということを悟られたらと思うと、気が気でない。
…もしかしたら、芹はドアの向こうで行われている行為についてすでに気がついていて、
自分がそれに対して反応してしまっていることも知っているのでは?
「先輩、あの、やっぱり具合が…」
芹が心配そうに、再度声をかけたその時だった。
「いい加減にしてくれ…!」
一樹は、他人の性交を盗み聞いて勃起してしまっている恥ずかしさに顔が紅潮し、思い通りにいかない今の状況に怒りで頭が沸騰させた。
そして急に立ちあがると差し伸べられた芹の手を掴み、乱暴に壁に押しつけた。
「きゃっ?先輩なにする、うぐっんむ、んんんんーー!?」
驚いて声を上げる芹の口元にスカーフをつめ込み、その上から手のひらで口元を塞ぐ。
芹は必死で一騎の腕を振り解こうとしたが、壁に一騎の身体で押し付けられているのと、
体格差、力の差がありすぎて思うように身体を動かせない。
「静かにしろ。それとも、総士や乙姫に聞えたほうがいいのか?そうだよな。
もう二人が何をしているのか知っているんだろ?俺がそれを聞いてチンチン大きくしちゃってるのも。」
暴れる芹の耳元で、一騎は興奮の為に震える声で囁く。それを聞いて芹はびくっと身体を恐怖で震わせた。
二人って?なにをしているのかって…?わけがわからず、首を横に振る。
わかっているのは、自分の背中のあたりになにか硬くて熱いものが押し付けられているということだけだ。
「嘘をつくな。ほら、お前も聞いてたんだろ?総士と乙姫がエッチしてる声。今だって聞えてる…。」
『乙姫、もうやめろ…これ以上したらっ…ぅうっ!っひぃ、だめ、や、やめろっ』
『だめだよ、ほら、総士のここはやめてほしくないって泣いてるもの。…すごいドクドクして、総士は可愛い顔してるのに、ここはすごく怖い顔…』
一騎に言われて芹は初めて気がついたようだった。壁一枚隔てた向こう側にいる親友と親友の兄のことを。
芹が呆然として抵抗する動きを弱めたところに、一騎は圧しつけたものをさらに上下させた。
逃げようとする芹の動きが再び激しくなるが、一騎にとってはそれがよけいに腰の動きを加速させる原因となった。
「ああ、は、いい。すごく気持ちいいよ。芹っていったっけ?痩せてるね。背骨の、ところ…っ、おチンチンの先があたって…っ」
「ふーっ!ふーっ!ぅうううっ、うううっ!!」
いつもの優しい穏やかな一騎からは想像できないこの陵辱行為に、芹は涙を流して抵抗を続けた。
(ただ具合が悪そうにしていた先輩を助けようとして、心配して声をかけただけなのに…!)
実は芹は親友の兄総士の友人である一騎にひそかに想いを寄せていた。
最初はファフナーを華麗に繰り次々とフェストゥムを撃破していくすごいパイロットなんだという認識しかなかった。
しかし親友である乙姫に出会って一騎とも接する機会が多くなり、いつしかその優しくて照れ屋で穏やかな人柄に惹かれていった。
(好きだったのに、ずっと好きだったのに。なんで?どうしてこんなことするの?こんなの私が好きになった先輩じゃないよぉ…!)
一騎の動きはますます激しさを増し、いつしか芹の背中に大きな沁みを作り始めていた。
肌に張り付く濡れた布の感触と、硬く厚い塊の感触は、芹にいいようのない悲しみと嫌悪感を募らせていく。
「そんなに、っ暴れなくても、酷い事はしない…っ、すぐ、すぐすむから、う、んんっ!」
ふいに一騎が口を塞いでいた手を離し、芹をぎゅっと優しく抱きしめた。ただし、芹が逃げられないように腕を掴んだままだったが。
思わず芹は胸が高鳴った。無理矢理陵辱された嫌悪感でいっぱいだったはずが、優しく抱きしめられただけでどうしてこんなに切なく胸が高鳴ってしまうのか。
(馬鹿だ!私は馬鹿だ!こんなことされてるのに、なんで嬉しいなんて思っちゃうのよぅ!)
「せ、先輩、もうやめてください…!」
芹は一刻も早くこの異常な状況から逃げ出すべく、一騎へ懇願する。
一騎に陵辱されている嫌悪。一騎に抱きしめられている幸福。
どちらも芹が抱いている本当の感情だ。
しかし芹にとっては、いくら相手が好きな人とはいえ、意思の疎通のできぬままのこの行為は苦痛でしかない。
それなのに、行為の最中に一騎に抱きしめられて感じてしまった感情が、芹の倫理観を破壊しようとする。
『一騎にこのまま陵辱されてもいい』 と。
ふと一騎の動きが止んだ。背中から一騎の激しい動悸が伝わってくる。
一騎の拘束の手は緩む気配がなかったが、芹は一連の行為が終わりを告げたのだとホッと息をついた。
『あんなこと』が真実にならなかったことに対しても。
耳元では一騎が荒い息をつきながら「ごめん…ごめん…」と何度も呟いていた。
自分に対しての行為への謝罪なのだろう、そう芹は思った。
一刻も早くこの状況から抜け出したい。芹は早口で一騎へ告げる。
「あの、私、今日のこと忘れますから。だから先輩も、きゃっ!?」
いきなりくるんと身体を反転させられ一騎と向き合うように抱きなおされたので、芹は驚いて声をあげた。
上を見ると、目が潤み苦しそうに歪む一騎の顔。芹は思わず顔が赤くなった。
「ごめんね、芹ちゃん。」
目を伏せ今にも泣き出しそうな顔で一騎は言った。抱きしめる手から微かに震えが伝わってくる。
否応無く高鳴る胸に戸惑う芹にはお構い無しで、一騎は急に腰の動きを止めた。
「……ッ?」
そのまま掴んでいた腕を引き、身体で壁に芹を押さえ付けると、両腕で細い身体を抱き締める。
まるで恋人にするような抱擁に、芹はうっとりと頬を染めた。先程まで抱いていた嫌悪感は、完全に消えてしまっている。
「…ごめん、…少し…」
興奮で掠れた、熱い吐息混じりの声が耳を擽る。
抱き締められた肩から、ゆっくりと胸に這い下りて来る掌も、もう怖くは無かった。
ささやかな胸を探すように間探られると、芹は胸から下腹へと走る不思議な刺激を感じ、声を漏らす。
「…んっ…」
一騎の掌が動く度、衣服と擦れる乳首に疼くような感覚を覚える。
「んっ…んふぅ…」
撫でるようにしていたそれが、いつの間にか乳房を揉みしだくような愛撫に変わると、芹はもどかしさに小さく背を反らした。
「気持ちいいのか…?」
一騎の囁きに首を振る余裕も無く、快楽にうち震える芹。そんな様子に一騎は唇に薄く笑みを乗せ、制服の上から探し当てた芹の乳首を摘みあげた。
「ふっ…ぅ…んん!!」
くにくに、と指先で乳首を弄ばれ、芹のくぐもった嬌声が漏れる。
すっかり抵抗を忘れ、未だかつて味わったこともない性的な快感に、彼女は無意識に腰を揺らしていた。
「…んっ…んっ、んん…」
「…ごめん、…もう…」
少し苦しげな呟きと同時に再び強く、覆い被さるように抱き竦められる。
「んっ…んぅ!?」
思わず甘い気分に浸るのも束の間、太腿の間、僅かに湿り始めていた下着越しの秘部に、堅い物を押し当てられ、芹は身を竦ませた。
しきりにイヤイヤと首を振るが、一騎は更に腰を押しつけ、股間の昴りで芹の秘部を擦る。
「…挿れたりは、しないから」
「んっ、んふ…」
「こうして…擦るだけ…、うっ…」
徐々に腰の動きは早まり、擦れ合う部分から僅かに水音が漏れ始める。
掌では休まず乳首を弄ばれ、芹はいよいよ快楽に溺れて腰を揺らした。
「んっんっんっ…ふ、はぁ…あっ、ああん…」
「苦しかったよな、ごめん…もうすぐ…済むから」
口に詰められて居たスカーフを取り除かれても、最早芹の口から拒絶の言葉は無い。それどころか、生まれて初めて味わう強い快感にあられもない嬌声を抑えられずにいた。
「あっ、あぅ、おまんこ擦れてる、擦れてるよぅ…」
「気持ちいいだろ、」
一騎のペニスを疼く割れ目に、より擦りつけるように芹の腰は揺れ、彼を逃すまいと太腿を閉じる。
「あっ…く…」
摩擦が増えた刺激に、一騎が苦しげに呻く。
「芹…、最後だから、ちょっと」
胸を揉み続けていた片手に、芹は片手を取られ後ろに引かれた。
掌に熱くて堅い、けれど人肌の感触を感じる。
先刻までなら悲鳴を上げていたであろう、芹の掌の中のそれは紛れも無く、一騎のペニスだ。
「…先輩…」
「そのまま…、あ、いい…」
緩く握る形にした掌の中を、ニ、三度往復すると一騎の掌が芹の手に添えられる。
自ら一騎のペニスを割れ目に擦りつけ、芹は下腹から何かが迫る感覚に身を震わせた。
「あっ…あっ…あっ…」
「…ああっ…もう…!」
掌の中のペニスが、ドクンと脈打つ。
もう片方の一騎の手は、いつの間にか芹のスカートの中に忍び込み、下着を除けて割れ目に添えられた。
「あっ!?あっ…ああああッ」
パックリと開いた割れ目を堅いペニスの先端が滑り、クリトリスを押し潰されると、芹は一際強い刺激に小さな悲鳴を上げ、ビクビクと痙攣する。
同時に、一騎のペニスを握って居た手にも強い力が込められた。
「っ…、あ…、イ…っ」
その刺激に、一騎も強い吐精感に襲われる。
初めて味わう絶頂に気を失ってしまったのか、ぐったりした芹の掌を夢中で握り込み、愛液に塗れた割れ目から、芹の膣口に先端を押し当てた処で一騎はペニスから白濁を吐き出した。
「…っ…ごめ、ん…」
「せんぱ…、…あっ…?」
軽い失神から意識を取り戻した芹は、秘部に一騎の熱を感じながら、再三聞かされた、後悔の色濃い謝罪に、小さく、首を振った。
結局、強引に行為を始めたくせ、一騎は去り際に頭をさげてまで謝ってきた。無意識というか、彼の人柄なのだろうが、少し、ずるいと芹は思う。
「あんなこと、されたのに…」
スカートの中に残る彼の精液に、思いを馳せて頬を染める。
「嫌いになれないよ…一騎先輩…」
彼の欲望を介抱した掌で、下腹に触れてみる。
恋した彼を思うと、芹の清らかな身体は、甘い欲の記憶に、少し、疼いた。