太い腕  
逞しい肉体  
無駄口を叩かず  
信念を宿した瞳  
その全てに内包される優しさ  
 
一度結婚し、二人の娘を授けられたというのに、今更少女の様な恋心。  
何度も違うと言い聞かせた。  
私はあの人に憧れているだけ。  
父性を見いだしてるだけ。  
でも………  
 
「……遠見先生、大丈夫かね?」  
そうそうこの落ち着いた声も……  
「遠見先生?」  
「あっ、はい!?」  
駄目だ頭がボーッとしてる、しっかりしないと。  
私が恋心を抱いている相手、真壁史彦司令は心配そうにこちらを見ていた。  
「風邪を引いているのであれば無理しないでいい、今、遠見先生はこの島にとって大事な人間だからな。」  
気づかなかったがどうやら顔が朱くなっている様だ。  
「い、いえ、大丈夫です。それに今日は一騎君の定期検診以外予定は無いので、それが終わり次第、帰ろうかと思ってましたので。」  
「そうか、ならばいいが。今、君と溝口が居なくなったら、正直、愚痴を吐ける相手も居なくなる、無理はしないでくれ。」  
私を気遣う言葉。  
「いえ、私の方こそ………」  
私は照れの様な物を感じ、俯いてしまった。  
 
「君もストレスの溜まり易い仕事だ、適度に気を抜け。」  
「あ、はい。」  
ポンと手を置くと、私に、私だけにニコリと微笑み。  
「私で出来る事なら何時でも言ってくれ、力になる。」  
そう言ってメディカルルームから出ていった背中に  
「はい。」  
私は返事した。  
 
 
 
祭りの日に  
私は一つの計画を建てた。  
それが不実と解っていようとも、私は計画を実行する事にした。  
 
その日は朝からそわそわした、それはまだ引き返せるという心の叫びなのかも知れない。  
それでも私は………  
 
あの人は事前に確認した通り、露天の中でも端の方に居た。  
小楯さんとなにか喋っている。  
「売れるのかぁ?コレ」  
「売れん!」  
そう話している二人の後ろから歩みより  
「あのぉ………一つ、下さい。」  
「え?」  
小楯さんが振り返り、真壁司令も驚いた様な顔をした。  
「遠見先生、本当にこんなもん買うのか?」  
「保、流石にこんなもんは無いだろう、一応自信作……と、迄は行かなくとも。俺の中ではだな……」  
「そいやあさっき溝口が射的の的にしてたなぁ。」  
「なっ!溝口の奴、珍しく持っていったから変だとは思ったが。」  
「まっ」  
 
小楯さんは立ち上がると  
「遠見先生もこんなもんは買わずに、タダで持って来な。真壁、じゃ俺は〆切近いから帰るわ。」  
「ああ。」  
小楯さんはそう言ってスタスタと祭りの中に消えていった。  
真壁司令は私の方へ視線を移すと。  
「まあ、欲しいのがあったら言ってくれ。」  
「あっ、はい。」  
私は膝を折るとしゃがみ、ビニールシートに乗った品物を見ていく。  
「うー………ん。」  
どれも個性的、というか独創的で、どれにしたらいいのか困っていた。  
そしてここに来た目的を思い出した。  
私は花瓶に使えそうなのを指さすと、  
「これ、下さい。」  
「ん、ああ。じゃあ後で一騎にでも届けさせよう。」  
「あの、代金は……?」  
「いやいい、流石にこんな物で金は取れない。」  
苦笑しながら答える真壁司令  
「そうですか、じゃあ、すいません。お願いします。」  
「ああ。」  
 
「所で一つ、お願いがあるんですが。」  
私は心臓がバクバク言う中切り出した、司令は私の様子から『ただ事ではない』と思ったのか。  
「分かった、取りあえず」  
指で後ろの林を指し示した。  
 
「で、なにかね?」  
林の奥、微かに祭りの明かりが見える程度、月明かりだけが照らす。  
私は浴衣に包まれた体、全体が熱くなっていくのを感じる。  
「一度、一度だけでいいんです。」  
真摯な眼が私を見る。  
「私を……私の事を抱いて下さい。」  
そう言って司令の逞しい体に抱きついた。  
司令は振り解く様な事はせず、  
「バカな事を言うんじゃない、何があったのかは分からないが私として君になんの得がある。」  
穏やかに言ってくれた。しかし  
「一度だけで良いんです。」  
「ミツヒロと再会して、精神が安定しないのは分かるが、なぜ私なんだ。」  
不器用で無骨、だからこそ私は貴方を好きになり、だからこそ私の気持ちに気づかない。  
「…前から司令の事が好きだったんです、でも貴方には紅音さんが居た、でも今は……」  
「私の心には今も紅音は居る、それは誰に偽る事の無い、真実だ。だから君を抱く事は出来ない。」  
「貴方の心の中に紅音さんが居ても、貴方が私を愛してくれなくても良いんです。ただ、一度抱いてくれるだけで、良いんです。」  
静寂、虫の鳴き声が、祭りの声が微かに聞こえる。  
司令の太い手が私の腰に廻る。  
 
「一度だけ、一度だけだ。今、この場でいいのなら抱こう。そして私は君を抱いた、という事実を忘れる。それでもいいか?」  
「はい」  
私は小さく頷いた。  
司令の体が私の背後に周る。  
私は帯を下げ、胸紐の結び目を緩めると。司令は後ろからゴツゴツした手を、胸元へ入れてくる。  
「…あっ……ん…」  
司令の手が私の少し垂れてきた胸を無造作に揉み、指が乳首をグリグリとイジる。  
顔を少し斜めに傾けると、乾いた唇が私の唇に触れ、舌が進入してくる。  
「んっ………んん」  
私がその舌を軽く吸うと、舌は上顎を刺激する様に動く。  
「ああ……はぁ……はぁ……」  
久々の行為、しかも何時、誰が現れるか分からない中で。私の体は熱く、激しく、敏感になっていくのを感じる。  
手が求める様に、司令の陰茎をズボンから引き出すと、後ろ手にシゴク。熱く、堅くなった太いソレは、真壁司令そのままといった感じだ。  
司令の舌が私の口から出ていく。  
「一旦、脱ぐかね?それとも……?」  
私は司令から一旦離れると近くの木に背中を預け、浴衣の上前を帯に挟んで見せた。  
私の陰毛に覆われた秘所が月明かりの元に照らされる。  
 
「……はぁ……この…暗さで…はあ…着直すのは難しいので……これで………」  
「そうだな。」  
司令は言うと、私の秘所に手をやりイジる。  
「どうする?もう、入れてもいいかね?」  
私は頷いた。  
司令は立ったまま、私の割れ目へ陰茎をあてがい、挿入していく。  
「あ……ん…あ………ふあぅ!!」  
久々の陰茎に私の膣は喜び、全身に快感を告げていく。  
「あっ……あああ……いいっ……いいっっ………史彦さん!!………んぐぅ!……」  
司令の腰が動きはじめると、私は思わず喘いでしまい、司令は口を口で塞いだ。  
「ん……んん………んう………ぅう……んっ………」  
まるで木に突き刺されるかの様な激しい動き、私は頭が飽和していくのを感じた。  
久々の快感は、司令が一度イク迄に二度三度とエクスタシーを与えた。  
 
「これで良かったのかね?」  
「………はい」  
私は出し切った司令の陰茎を舌で拭きながら答えた。  
「また……どうしても、我慢出来なくなったら言いなさい。」  
司令はそう、言ってくれた…………  
 
 
〜fin〜  
 

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