「つぐみ…ハァ、く…ッ、つぐみ、つぐみ…っ!」  
「武…あ、アァッ、あんあぅ…あぁ、ハァっ…あ、ああぁぁッ――あああぁぁあんっ!」  
 
―――ジュプッ。ジュプッ、グチュチュッ!ヌプッ、ズブブブッ!  
 
 腰を突き上げる度、つぐみの胎内に満たされた愛液が掻き混ぜられて行く。  
そうして彼女の細い体を掻き乱す猛った俺の肉体を、  
つぐみの肉襞はヒクヒクとヒク付きながら締め付け締め上げて来る。  
 
 根元まで埋められたまま、ズン、ズンと身体ごと  
狭い膣内を貫いて行く肉体に、ねっとりと絡み付いて来る濡れた女の感触…。  
 
 繋がっているその部分から相手が与えてくれる痛い位に甘い感覚を、俺達は夢中になって貪りあった。  
 
「アッあぁ、あぁァッ!あんっ――あ、ああぁぁッ!  
 んぁっ、武ッ!ダメ…ッ!んっ…あんッあぁあぁぁぁあッ!」  
「っ…ハァ…はぁ…つぐみ…ッ」  
「あっ…あん、ふぁっ…あっ、あっ!!  
 ――あう、あんっ!ああっあっあッ!あっあっあぁあんッ!」  
 
 甘いつぐみの泣き声が聞こえる。熱いつぐみの胎内を感じる。  
込み上げる快感に耐える様に眉を寄せ瞳を閉じる。  
 
 その二つの存在に感覚を委ねながら、  
俺はつぐみの中へと溶けて行ってしまいそうな自分自身に気付いていた。  
 
「つぐみ…く、俺…そろそろ…ッ!」  
「武…あっ、あぁぁあんッ、あん、あぅ…アッ、イヤ…!  
 私…あぁぁん!っ、私…私も…もうッ…!あ――あぁぁああんっ!!」  
 
 切なく俺を求めてくれる言葉に閉じていた瞳を開く。  
すると其処には、俺の肉体の動きを感じて身を捩るつぐみの姿があった。  
たくし上げられた部屋着の下で、紅色に染まった乳房が揺れる。  
 
 汗でぐっしょりと濡れた細い肢体…  
その下腹部の女の部分が、美味しそうに俺の肉棒を咥え込んで蠢いている。  
 
 もう、我慢なんて出来る筈無かった。  
俺は滅茶苦茶につぐみの胎内を突き上げ続け、その度につぐみも俺の肉体を痛いくらいに締め上げて来た。  
白い…脳裏をクラクラと揺さぶる様な白い光が、何度も弾けて俺の意識を遠のかせていく。  
 
―――グチュグチュッ!ズブブッ!ズプッ!ぬぷぷっ!クチュッ!  
「武…あ、は、はげし――んぁっ!ハァ、あぁぁ…だ、ダメもう…イヤッ!  
 わ、私ダメ…んあぁぁッ!こ、こんな…こ、壊れちゃう…ッ!  
 もう…あぁ、あんっ!ハァッ…んああぁぁぁあッ!!ダメ…も、もう私…わたし…ッ  
 …あ、い、いっちゃう…また…イヤッ、いやあぁぁんっ!!」  
「ああ…俺ももう…くっ、ハァ…ッ」  
 
 全身を包み込む感覚。下腹部から込み上げてくる衝動。  
もう我慢出来ない…つぐみの中に出したい。つぐみの身体を俺の欲望で一杯に満たしてしまいたい。  
 
「つぐみ――ッ、く、俺…出る…ッ!」  
「武、武…わ、私も…イク…ッ!あぁぁっ、このまま…アァァんッ!  
 あぁっ、来て…来て、私の…私の中に…ッ!」  
「っ――行くぞ…!」  
「あっ………あぁぁぁああぁあぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」  
 
 ……全身を取り巻くつぐみへの愛しさに背中を押される様にして。  
俺はそのまま、収縮するつぐみの胎内に、今夜二度目の欲望の雫を注ぎ込んだ。  
 
―――ドクッ!ドクン、ドクッ…びゅく、びゅくっ!  
「く…ぅ、ハァ…はぁ――良いぜ…つぐみ…凄く…」  
「や――あ…ぁぁ………」  
 
 どくん。どくん。どくん。  
俺の肉棒が白濁した液体を吐き出す度に、つぐみの身体は弓なりに反ったまま大きな痙攣を繰り返す。  
細い…今にも消えてしまいそうな小さな声が、吐き出す吐息と共につぐみの唇から漏れていた。  
 
 俺の全てを受け止めてくれてた…今もブルブルと震える身体。  
熟れた肉襞がきゅっきゅっと優しく俺の肉棒に絡みつき、最後までその精を吸い取ろうとする。  
 
「あ…ハァ…はぁ、あん…はぁはぁ…ぁ…あぁ…」  
「―――つぐみ…」  
「たけし…たけし…ぁ…はぁ…あぁん…」  
 
 そうして、最後まで俺の欲望を胎内に受け入れてくれた後で。  
力を失ったつぐみの身体は、ゆっくりと俺の上体に折り重なる様にして倒れ込んで来た。  
 
(…結局また、激しくし過ぎちまったかぁ)  
 
 そんな自分自身に少し呆れながら、  
ぐったりとして力が入らないまま荒い息遣いを繰り返すつぐみを抱きしめてやる。  
腕の中でふるふると小さく震えるつぐみの存在が溜まらなく愛しい。  
 
 全身に伝わる柔らかなつぐみの肌の温もり。  
情事の名残に火照った体から吐き出された吐息が、熱く俺の胸元を擽る。  
抱きしめながら長い黒髪に顔を埋める様にして頬擦りをしてやると、ふわりと優しい香が鼻腔を満たした。  
 
「つぐみは相変わらず良い匂いがするな…」  
「…ぁ…ハァ…ッ…」  
「甘くて美味しそうな…良い匂いだ」  
「―――知らないわよ…ハァ…こんなに一杯…」  
「へ?」  
「こんなに一杯…食べたばっかりのくせに…」  
「ははっ、そいつはスマンかった。  
 まぁ確かに…美味しく食べさせて貰ってその、非常に幸せだな〜なんて思っていたりする訳ではあるが」  
「バッ…!も、もう…本当にバカなんだから………ん…」  
 
 拗ねた様に呆れた様に俺の言葉に反応するつぐみが可愛らしくて、わざと馬鹿な事を言ってみる。  
するとつぐみは、ますます拗ねた様な表情で、じろりと愛らしく俺を睨んで来た。  
だが、すぐにまた笑顔になって…ちゅっと、可愛く俺の唇に自分の唇を重ねた。  
 
 すぐに離れてしまった口付けが名残惜しくて、俺は咄嗟に彼女の身体を引き寄せようとする。  
だが、つぐみはそんな俺の腕をするりとかわしてしまうと、くすくすとからかう様な笑みを浮かべた。  
 
「ふふっ…ダメよ。武は食い意地が張ってるんだから。  
 あんまり長くキスしてたら、どうせまたすぐに食べたい気分になっちゃうんでしょう?」  
「ぐっ―――ま、まぁそれはその…そりゃ、否定は出来ないけどさ」  
「でしょう?だから今は…もうちょっと我慢してなさい」  
「むぅ…」  
 
 此方の様子を伺う小悪魔の様な表情で、つぐみは俺の瞳を覗き込んでくる。  
そしてそんな彼女の台詞にも、表情にも、  
逆らう事の出来ない俺は、観念してもう一度優しくつぐみの身体を抱き寄せてやった。  
密着した肌から伝わるつぐみの温もりが気持ち良い。  
 
 そのまま…つぐみの身体を抱きしめたまま、ぼんやりと部屋の中を眺める。  
茶の間。リビング。家族の団欒の間。  
普段ならこの部屋で、此方が辟易するくらいにその身を摺り寄せてくる二人の姿が今は無い。  
たったそれだけの事を…妙に寂しく感じている自分自身に気付いて、俺は少しだけ驚いていた。  
 
 この時間なら、ソファーでTVに目を向けている俺の両脇にホクトと沙羅が陣取って。  
そんな二人の様子に笑いを噛み殺しながら、つぐみがお茶を淹れてくれて。  
そして、当のつぐみが向かいのソファーに腰を下ろしたら、  
今度はその両脇にホクトと沙羅が陣取るのを、俺は少しいじけながら見ていたりして…。  
 
 つぐみと、突然出来た二人の子供と。いきなり始まった奇妙な同居生活。  
最初は当然戸惑う事ばかりだった。  
何せ親元を離れるのも始めてなら、気になる異性と一つ屋根の下で生活をするのも始めて。  
更には自分とそう年の変わらない子供が二人も一緒と云う訳であって  
……そりゃ、幾ら俺だって、最初は違和感を隠しきれなかった。  
その度にホクトと沙羅は勿論、つぐみに寂しい想いをさせる事だってあったんだろうと思う。  
 
 だけど…そうやって、4人で過ごす時間が増えて、積み重ねられて行って。  
今こうして二人の居ないこの部屋を眺めていると…胸に込み上げてくる寂しさを隠し切れない。  
それはきっと、最初は奇妙な事だらけだった俺達だったけれど…次第に仲の良い友人の様に。  
それから本当に大切な家族として、次第に「何か」が生まれ始めていたからなんだろうと思う。  
 
 「家族の絆」。  
今胸に存在しているホクトと沙羅のいない空間への寂しさを…ひょっとしたら、そう呼ぶのかもしれない。  
 
「―――なぁ、つぐみ」  
「…なぁに?」  
「有り難うな…ホクトと沙羅を…二人を産んでくれて」  
「………武…バカね…そんな事、改まって云わないでよ…」  
「そう云うなって。その、何だかそう云いたい気分になっちまったんだからさ…可笑しかったか?」  
「ふふ…そうね。確かに、こんな体勢のまま云う様な事じゃなかったかも」  
「はははっ、そういわれてもみれば確かにそんな気もするぞい」  
 
 俺の肉体は…その、力を失った今もしっかりとつぐみの中に埋められたままな訳であって。  
つぐみの言葉の正しさに、俺も思わず呆れた様な笑い声を漏らしてしまった。  
そのままもう一度…沈黙したまま視線を周囲に漂わせる。  
 
 睦みあった後の、甘い空気に満たされた室内。  
ホクトと沙羅のいない室内をぼんやりと眺めながら…つぐみの身体を強く抱きしめる。  
 
 俺が眠っていた17年の間につぐみがどんな日々を過ごしてきたのか。  
その事を、つぐみは余り口にしようとはしない。  
俺も敢えて聞こうとはしないまま、今日まで4人で過ごして来た。  
 
 つぐみがあの事故の後もライブリヒに追われていた事。  
その中でホクトと沙羅を身篭り出産した事。  
そして…二人を巻き込まない為に一度手放した事……。  
俺が知っているのは、せいぜいその位の事だ。  
 
 だが、つぐみが――俺を失い、ホクトと沙羅から引き離された後のつぐみが。  
辛い想いを、悲しい想いを、寂しい想いを…  
沢山の痛みを抱えて生きてきたんだろうと云う事くらいは分かる。  
それが分からない程には、流石の俺もバカな訳じゃあない。  
 
 そしてその事を思うと…色々な想いが一斉に込み上げて来て、俺の胸を一杯にしてしまうのだった。  
 
 つぐみを愛しいと思う。ホクトと沙羅を大切だと思う。  
こうして腕の中で安らいだ表情を見せてくれるつぐみを…此れからは、ずっと守って行ってやりたいと思う。  
 
「―――なぁ、つぐみ」  
「…なぁに?」  
「………愛してる」  
「えっ……も、もう…らしくないわよ…バカ。でも…ふふっ、そうね」  
 
 そっと、彼女の耳元に囁いてみる。  
すると、つぐみは一瞬だけ呆れた様な表情を浮かべたが…  
すぐに、可笑しくて溜まらないと云った笑みを浮かべて俺を見つめて来た。  
 
「そうね――私も好きよ。愛してるわ…武」  
「そっか。そいつは良かった」  
「ふふふ」  
 
 そうして、もう一度笑い声を上げてから…つぐみは、ふっと表情を翳らせた。  
何処か自嘲気な微笑み。何処かで…そう、出会ってすぐのあの頃の様に。  
再会した帰りの船中で結ばれたあの時の様に。  
僅かに悲しげな光を宿した表情に、俺は思わず彼女の名前を呼んでいた。  
 
「……つぐみ?」  
「ねぇ、武…白状するわ」  
 
 その悲しげな光を瞳にも宿したまま俺を見つめ…  
つぐみはゆっくりと、けれどしっかりとした口調で語り始める。  
 
「貴方がいなくなって…貴方の子供を宿してると分かった時に。  
 正直を云えば…本当に生んでしまっても良いのかどうか、全く迷わなかった訳じゃなかった。  
 そうね、嬉しかったのは確か。この身体の中に貴方の子供が宿ってる…  
 この子がいれば、私はまだ生きて行ける。そう思った瞬間、心と身体が震えたわ。  
 今は傍にいない筈の武が、私に『生きろ』って云っているみたいに思えたの――お節介な貴方の声がね」  
「まぁ…お節介ってその点については否定しないけど、な」  
「ふふふ…そうね。でも、貴方のそのお節介のお陰で…私は、また生きてみようと思った。  
 武と一緒に生きてみたいと思えた、この点も確か。でも…でもね、それでも私は迷ってしまった。  
 もしも生まれた子供が、私の中のキュレイウイルスに感染していたら?  
 そうしたら、私は大切な…貴方との間の命にまで、自分と同じ苦しみを背負わせてしまう事になる。  
 もしも生まれた子供が、キュレイウイルスに感染していなかったら?  
 私はまた…大切な人に取り残されて、何時かは一人ぼっちにならなくてはいけない…」  
「――ッ、つぐみ…」  
 
 何処までも淡々と…込み上げてくる悲しみを懸命に噛み締める様に喋るつぐみの言葉に、胸が詰まる。  
改めて語られるつぐみの抱えた苦しみ。  
 
 ――分かっていると思っていた。理解していると思っていた。  
俺が眠っている間のつぐみが…どれだけ苦しい時間を過ごして来たのかと云う事は。  
だが、こうして語られると…否応無しに思い知らされてしまう。  
 
(結局俺はまた分かってるつもりになってただけで…  
 つぐみの本当の辛さなんて、全く分かってやれてなかったって云う事か…)  
   
 そんな自分自身に込み上げる悔しさに、俺は少しだけ強く唇を噛んだ。僅かに下唇に走る痛み。  
だがその痛みなんて、つぐみが背負ってきた痛みに比べれば…本当に些細なものなのだろうと思う。  
 
 改めて、自分の無力さや不甲斐無さを思い知らされた俺に出来る事は、  
ただ、腕の中のつぐみの身体を力の限りに抱きしめてやる事だけだった。だが…  
 
「―――もう…本当に…バカなんだから」  
「そうだな…お前がそんな辛い想いをしてる間に、海の底でぐっすり寝てたなんてさ。  
 流石に少し、自分に愛想が尽きそうになってる訳だ」  
「ばぁか…だからそうじゃないわよ…ん…ッ」  
 
 そんな俺の噛み締められた唇の上に、つぐみはそっと自分の唇を重ねてきた。  
柔らかな彼女の舌先が、チロリと俺の傷ついた唇を舐めてくれる。  
温かな唾液に濡れた舌が唇をなぞり…ゆっくりと俺の口内へと入り込んで来る。  
 
―――ちゅっ…ちゅる、くちゅっ…ちゅ、ちゅっ  
「ん…ん、ふ…んんッ…はぁ――んちゅ…」  
「ん――…ん…」  
 
 俺の舌に絡み付き、絡み合って来てくれるつぐみの甘い舌先。  
噛み締めていた筈の唇に押し付けられて来るつぐみの甘い唇。  
 
 其処からつぐみの優しさが伝わって、  
俺の心に込み上げてきた苦い想いを消し去って行ってくれる様な気がした。  
   
「――ふぁ…はぁ…どう?少しは思い直した?」  
「………へ?」  
「だから、自分勝手に私の気持ちを推し量って、  
 自分勝手に自分自身を責めようとしてた、武のバカな考えを…よ」  
「……ひょっとして、だから急に…俺の穢れを知らない可憐な唇を奪ったとか?」  
「そうに決まってるじゃない。何よ…何か問題でもあった?」  
「いや、それはまぁ…その、俺としては非常に嬉しかった訳ではあるが」  
「だったら良いでしょう――問題ないじゃない」  
 
 溶け合った唾液の橋が掛かったままの唇で、つぐみはくすりと魅惑的な笑みを浮かべる。  
そんなつぐみの表情は、さっきまでよりは僅かに明るい物になっていて、  
俺も安堵と共に思わず笑みを漏らしてしまった。  
 
「ったくぅ。本当にワガママなやっちゃな、お前」  
「くすくす…うん、そうね。流石にちょっとだけ、自覚があるかも。―――ねぇ、武?」  
「おう、なんじゃい」  
 
 改めて、つぐみは俺の瞳を真っ直ぐに覗き込んでくる。  
まるで出来の悪い教え子に答えを問い質す様な、何処か可笑しそうな光を浮かべて。  
 
「私ね…迷っていたわ。本当に、このお腹に宿った命を生んで…そして、守っていけるのかって」  
「つぐみ……」  
「でも………そんな時、武の言葉を思い出したの。  
 生き物は生きている限り、生きていいと思う。生きてさえいれば、良い事あると思う。  
 いや……生きていることそのものが、良い事なんだから――って。  
 私にその事を教えてくれたのは、武だった。辛い事や悲しい事も一杯あったけど…  
 でも、武に逢って…武に受け入れて貰えて。私は確かに幸せだったもの。  
 生きていて良かったと思えた。生きて貴方に出逢えて良かったと思えた…」  
 
 穏やかな口調で…まるで唇から出る言葉の一つ一つを慈しむ様にして、つぐみはゆっくりと語り続ける。  
そして俺は優しく彼女の身体を包み込みながら…  
つぐみから与えられる言葉の一つ一つを、しっかりとその胸の内に受け止めていった。  
   
 嬉しかった、つぐみの言葉が。嬉しかった、つぐみの想いが。  
胸に染み入るみたいな…温かい感情。その感情のままに、もう一度強く、つぐみを抱きしめる。  
 
「もしも貴方が傍にいたら…迷ってた私を叱ったかもしれないわね。  
 命はこの世の中で一番大切なものなんだって――偶然の中から生まれた奇跡なんだって」  
「うっ…そ、そうかな…?」  
「ふふっ、きっとそうよ…だって武だもの。でも…今なら分かる。  
 あの時の私には決して分からなかった事が。生きていれば…生きてさえいれば。  
 どんなにその時が辛くても、何時かきっと『生きてて良かった』と思える時が来るって。  
 私が武に出逢ってそう思えた様に…お腹の中のこの子にも、きっとそんな瞬間が訪れるって。  
 そう、私にもう一度信じさせてくれたのは貴方なんだから」  
「つぐみ……」  
「有り難う…武」  
「バカ。礼を云ってるのは俺の方だろうが――本当に…有り難うな、つぐみ」  
「ふふふ…どういたしまして…」  
 
 互いに感謝の言葉を述べながら、顔を見合せたまま小さく笑い声を漏らす。  
ただそれだけの事が、今の俺達には溜まらなく嬉しかった。  
    
「明日は、ホクトと沙羅の二人が戻って来るのを一緒に待とうな」  
「二人が好きな物を一杯作ってね――頼んだわよ、お父さん?」  
「ったくぅ………ちゃんとお前も手伝ってくれよ、ママ」  
 
 其処まで口にしてから、今度こそ本当に…二人して大きな笑い声を上げながら吹き出してしまう。  
屈託の無いつぐみの笑顔。俺の顔にも…きっと、同じ様な笑顔が浮かんでいるに違無いんだろう。  
そうしてひとしきり声を上げて笑ってから…俺達は、また互いを強く抱き締め合った。  
 
「それじゃあ…明日は、愛すべきマイサンとマイドーターの為に、  
 この腕を奮わせて貰う事にするとして…だ」  
「――するとして?」  
 
 こほん、と、わざとらしく大きな咳払いをしてから、俺はつぐみの鼻先まで自分の顔を近付ける。  
つぐみもその意図を察してくれてるんだろう。  
 
 瞳に何処かからかう様な光を浮かべて、彼女が俺の言葉の続きを待っているのが分かった。  
柔らかな肢体がまた甘い熱を帯びる。  
温かなつぐみの内側に包み込まれている肉体が、しっかりと力を取り戻し始めているのを感じる。  
 
「今夜はもうちょっと…俺にも美味しく食べさせて貰えたらな〜なんて思う物があったりする訳だ、うむ」  
「―――あら、武はもうちょっとで良いの?」  
「ぐっ……もうちょっとと云うか、出来れば満足するまでと云うか」  
「ふふっ。どっちなのか、はっきりしなさい…って、きゃっ!?」  
 
 ますますからかう様な笑みを浮かべるつぐみの表情。  
その表情が何だか妙に…俺としては小憎らしかったり悔しかったりする訳であり。  
そもそも思い出してみれば、今夜は結局最初からずっと  
つぐみに主導権を握られていた気もしたりしなかったりする訳でもあり。  
 
 不意にその事に気付いた俺は、つぐみを抱き締めたまま  
身体を反転させ、ソファーの上で強引に彼女を組み敷いてやる。  
 
「も、もう。何よいきなり…ビックリするじゃない―――あ…ッ」  
「んっ―――…ん、んむ…っ」  
「ひゃ…ん、んふ…バカ…あんっ…あぅ…ハァ…んっ、んぅぅ…!」  
 
 そのまま…今夜何度目かの濃厚な口付けを交わす。  
舌と舌を絡め合わせ、唾液と唾液を交換し合うと、  
またねっとりとした快感の波が互いの肉体に押し寄せてくるのが分かった。  
 
 つぐみの膨らみの先端の果実が、俺の胸板を押し返す。  
すっかり硬くなった肉棒を蠢かせると、ヒクヒクと肉襞が俺を締め付けて来てくれた。  
 
「―――んっ、ふぁ…ハァ…ハァ…ず、ズルイじゃないこんなの…ん、きゃうっ!」  
 
 散々溶け合わせた後に唇を解放してやると、つぐみは涙を浮かべた瞳でじろりと此方を睨みつける。  
だが俺が一端深く奥を突き上げてみると、途端に可愛い声を上げながら俺にその身を委ねてくれた。  
 
「ったく、分かってるんだろ?今夜は――朝までずっと、つぐみを食べてやりたい」  
「……本当に意地汚いんだから」  
「良いだろ?食欲ってのは人間の生きていく本能の象徴的なモノでもある訳だしさ。  
 もっともっと、腹一杯になるまでつぐみを食いたい―――イヤか?」  
「バカ…云ったでしょう?その代わりに、私も武を食べさせて貰う事にするから…って」  
 
 そんな言葉を口にしながら、つぐみのすらりとした手足が俺に絡み付いて来る。  
俺も僅かに汗ばんだ掌をつぐみの濡れた肌へと這わせ始める。  
互いの存在を求め合う…一番直接的で確かな手段。  
その方法が与えてくれる甘い一体感に…俺達はもう一度、自らの意思で溺れて行く。  
 
「なんだ…何だかんだ云ったってお前も俺を食べたいんじゃないか」  
「そうよ…だって、食欲は生きていく本能なんでしょう?  
 私に生きたいって欲求をくれたのは貴方よ、武。だから…」  
「ああ――今夜はたっぷり、その欲求を満たしてやる」  
「ふふふ…互いに、ね…んっ…」  
 
 そうして…俺を貪ろうとしてくるつぐみの可愛い唇を逆に貪り返しながら。  
俺達はもう一度、相手の与えてくれる感覚の波に素直にその身を委ねたのだった。   
   
 
   
 
・  
・  
・  
・  
・  
―――そしてその頃。第三視点のもう一つの先では。  
 
(良いよね、お父さんは…お母さんと幸せそうでさ)  
 
 「第三視点BWの宿主と成る」。  
どうやら、身体能力的には人より多少優れている物の、  
沙羅と違ってこれと云った能力の発芽が無かった僕の「特殊技能」って云うのがこの能力らしい。  
勿論そのお陰でこうしてお父さんやココを救えたって事には、感謝してるし嬉しくも思ってるけど…  
 
(そう云えば、僕と沙羅が生まれた時の事も無理やり見せられてたんだったっけ…?)  
 
 あの時と同じ、僕自身であって僕自身では無い「誰か」の視線を通じて、  
僕は自宅のリビングで繰り広げられている両親の行為を見せ付けれていた。  
だけど、それは今夜に限らず過去にも度々起こっていた現象であって  
…今の僕を窮地に立たせている原因では決して無い。断じて無い。それだけは胸を張って云う事が出来る。  
 
 そう、今僕がこうして…一人の男として、非常に困った場面に立たされている原因は  
全く別の所にあるのだった。そう、その原因は…  
 
「どうしたのお兄ちゃん?…何だか、心ここにあらずって感じでござるよ?」  
「んっ…ちゅ、はぁ。そうよぉ、本当に失礼しちゃうわよね。  
 こーんなに可愛い女の子が二人も、こうやって心を込めてご奉仕してあげてるって言うのに」  
「「ねー」」  
「いやだからっ!そもそもその『二人』って云うのが問題なんじゃないか!」  
 
 僕の腰に顔を埋めて、自分でも呆れるくらいに硬くなってしまった肉体を  
舌と口とで舐め上げていた二人が、同時に不満げな表情を浮かべる。  
 
「だって…仕方が無いじゃない…。  
 そ、そりゃ私だってこんなのはどうかと思うけど…沙羅だってホクトの事が好きだって言うし。  
 沙羅だけのけものにするのなんて、可哀想でしょう?」  
「そ、それは…確かにそうかもしれないけどさ」  
「それに、第一。  
 たまにはパパとママを二人っきりにさせてあげようって言ったのはお兄ちゃんの方でござるよ?  
 だったら、此処は男らしく言い出した責任を取るべきだと思うんだけどなぁ」  
「だーかーらー。確かにそれは認めるけどさ…だからって、何でこんな展開になるんだよっ」  
「もう、こら、ホクトっ。そんなに大声出すと沙羅が怖がってるでしょ?  
 ね、そんなに怒らないで…許してあげてよ…」  
「―――ユウ…」  
 
 ああ、ユウはこんな時にも優しいよね…。  
そんな、少し場違いな事を考えながら、今夜の事をゆっくりと思い出してみる。  
 
 そもそも、ユウの家に来る約束をした時から、今夜は田中家に御世話になる予定だったのだ。  
普段は…その、お父さんとお母さんが僕らに気兼ねして…  
声を殺してそう云う事をしてるって事が分かっていたから。  
たまには二人きりで過ごさせてあげたい。  
そう思って、ユウと沙羅に話を切り出したのは、確かに僕の方だった。  
丁度、今夜は田中先生も桑古木と約束があるらしい。  
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル